辺境令嬢は追放されても気にしない

オイモ

文字の大きさ
16 / 17

16

しおりを挟む

さて、今日は大公に会う日だ。

「よし、気合を入れて行くぞ」

昨日は温泉を堪能しておまけにマッサージまで受けたから気力体力ともに充実している。

「大公がどれほどまでの男なのか見定めねばな」

イクリツィアに居る陛下のために。
とりあえず私は気合を入れるために素振りをする事にした。

「おはようございますエルイース様!…って、何をしてるんです??」

50回ほど素振りをしたところでリーリアが部屋に来たのだが、素振りをしている私の姿を見て目を丸くした。

「おはようございます、リーリア。何って素振りですよ。何しろあの大公に会うんですから気合いを入れとかないと」

「エルイース様ったら、決闘に行くんじゃないのに…。大公の姿を見てときめきとかなかったのかしら」

「ときめき…、ですか。いや、あの人間離れした目が合った途端、武者震いが走ったのは事実です。ですので気持ちで負けないよう、百回素振りしてからお会いしようとと思って、いまして。後30回!」

私は素振りしながらリーリアに答えた。

「はぁ、エルイース様には大公のハンサム具合も通じないのね、ピッピ」

「キュイィ」

リーリアが使い魔と呆れたように話す。

「リーリア、人間は顔の良し悪しで、いいか悪いか決まるもんではありませんよ」

「美人のエルイース様が言っても説得力がないですけど…。私だってエルイース様みたいな金髪が良かったし」

リーリアが不満げに自分の髪をいじって言う。

「そうですか?私はリーリアのその髪の色が大好きですが……」

「エルイース様が好きなのは私の髪の色じゃなくてお父様の髪の色じゃないかしら」

「んな!?」

リーリアの言葉に、私は素振りしていた剣を取り落とした。

「い、いやボルコフ卿が、というか、ボルコフ卿もリーリアの髪も素敵だと、思いって…」

「エルイース様はお父様がお好きなの?」

「な、な、な!私は、その、好きというかそ、尊敬をしてまして…、その…」

私はますます顔を赤くしてうろたえた。
ここだけの話、ボルコフ卿は私の初恋の相手だったのだ。
父の親友で、強くて紳士的なボルコフ卿へ憧れていたので、

「私を将来お嫁さんにしてください!」

なんて子供の頃に言った事をボルコフ卿は、忘れているといいのだが…。
そのボルコフ卿が、今は亡きリーリアの、お母上と結婚すると聞いた時には大泣きをして父を困らせたものだった。

そんな訳で、今でもボルコフ卿に優しい言葉をかけられると、ドギマギしてしまう。

(ボルコフ卿が今でも素敵だから子供の頃のようにときめいてしまって困る…、いやむしろダンディさが増してより格好良くなった気が…、な、何を考えてるんだ、私は!)

そんな顔を真っ赤にしている私にリーリアはギュッと、抱きついてきた。

「??リーリア?」

どうしたのかと、リーリアの頭をそっと撫でると、

「…エルイース様を大公の所へ行かせたくないわ。だって帰ってこない気がするんですもの」

「リーリア、そんな事ありません、私は…」

「大公のドラゴンの力は本物なの、エルイース様」

リーリアが、私の目を見て言った、

「だから怖いの。大公は絶対エルイース様を気に入るわ。そしたら手放さなくなりそうで…」

「リーリア、安心してください、必ずリーリアのところでへ帰ってくると約束します」

私は安心させるようにリーリアの頭を撫でながら言った。

「……本当?」

「ええ、エルラント家の名にかけて」



☆☆☆☆


午後になると昨日採寸したドレスが届いていた。

「……こ、これは胸元があきすぎなのでは?」

白くてふんわりとした素材のドレスは私の体にピッタリ合っていたのはいいのだが、ざっくりあいた胸元からは胸の谷間がまる見えで、私は赤面した。

「いーえ、これが流行りなんですよ。うん、サイズピッタリ!さすがは私!どうですか?このビジュー、エルイース嬢のイメージに合わせて昨日徹夜で一つ一つ貼り付けたんですよ!既製品の作り替えとはいえ、まったく新しい1枚!清楚さとエロさを兼ね備えた完璧な一着!これで大公もイチコロですね!」

ドレスを私に着せながら昨日採寸したチーフらしき若い女性リーダーが自信満々で私に話した。
確かに一日で作ったにしては素晴らしい出来ばえだ。
しかし、イチコロ?とは?なんだかおだやかな話ではない。

「…あの、素晴らしいドレスには間違いないのだが、べ、別に私は大公を誘惑するために会うのではないし、これは少し、恥ずかしいのだが…」

「あれ?私の受けたオーダーは、大公を虜にするような清楚さと女の魅力にあふれた一着、なんですがね」

「な?!だ、誰がそんな注文を……」

「これは素晴らしい!エルイース様、よくお似合いですよ」

そこへローレンスがやってきた。

「ローレンスさん!どうですかこのドレス!オーダー通りでしょう」

「ああ、ジルさん、さすがはオルドアいちのドレスデザイナーです。このドレスでしたら大公も喜ぶと思いますよ」

「いやー、良かったです。もう少しセクシーにしようかとも思ったんですけど、それだとエルイース嬢の凛々しい魅力も失われちゃいますしこれくらいがベストかなあって」

和気あいあいとするローレンスと、ジルの後ろで私はワナワナと震えた。

「ローレンス殿!あなたがこのようなドレスを注文なさったのですか!これでは男をあさりに行く軽薄な女のようではないですか!」

「まあまあ、落ち着いてください。何もそんな深刻に考えなくても、これは大公の心象を良くするためのサービスのようなものです。それに、このドレスはそんなに軽い女には見えませんよ」

確かに言われてみれば、胸元は大胆だが、腰回りは上品で、そこから伸びるドレスの裾はむしろ清楚さを感じさせる。

鏡に映った私の姿は、思ったよりは淫靡には見えず、神々しくも見える。

「…すまない、ジル殿。あまりこういった露出の多い服は着ないので、感情的になってしまったようだ。素晴らしいドレスに感謝する」

「え?えー、気に入ってもらえたなら良かったです。んじゃ、後はアクセサリーやメイク担当が来ますんで、あたしはこれで。あ、エルイース嬢、今後ともご贔屓に~」

ジルはひらひら手を降って去って行った。

私とあまり年は違わないようなのに、とうデザイナーとしてトップと言われるとは、中々の傑物のようだ。

その後もメイクやら髪のセットやら、アクセサリー類を付けたり外したり、あっという間に日が落ちて、もう大公の所へ向かう時間だ。

「エルイース殿、用意は出来ましたかな」

ボルコフ卿が私を呼びに来た。

「!ボルコフ卿、皆大げさです、まるでこれから輿入れするような騒ぎではないですか。私の格好などどうでもいいのに…」

慌てて胸元を手で隠して応対する。

「いや…、とてもお綺麗ですよ。貴女のお母上の婚礼の時も、こんな美しい人は見たことがないと思いましたが……、今のエルイース殿はその時より美しく見えます」

「ボ、ボルコフ卿…」

そう言われると何も言えなくなる。

「エルイース様、馬車の準備が出来ましたよ。さあこちらへ」

ローレンスに誘われて宿の前に停まっていた馬車の前に立つ。

「…また、これは、いくら大公の所へ行くと言ってもやり過ぎなのでは?」

馬車は8頭立てで、白地に金の装飾がなされた豪華なものだった。

「…こんなのは王家の婚礼でしか見たことが無いぞ。なんでまた…」

文句を言いつつも、馬車に乗り込もうとすると、見送りに来たリーリアの顔が不安気に歪んでいるのが気にかかり、彼女の所へ戻る。

「そんな顔をしなくても必ず戻って来ますよ。そして一緒にボルコフ卿の領地へ帰りましょう」

「……きっとよ、エルイース様」

リーリアの頭を撫でて馬車に乗り込む。
向かうは大公の居る王宮だ。



馬車が行ってしまうと、ボルコフは独りごちた。

「娘を嫁にやるような複雑な気持ちだな…。大公も無茶を言いなさる」

大好きなエルイースが行ってしまって、不満げな娘の方を見て、あることに気づいた。

「リーリア?お前の使い魔はどこへ行ったんだい?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。 身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。 だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり―― それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。

処理中です...