4 / 21
音路町ロストガール
4
しおりを挟む
「や~だ~燎ちゃん!しばらくぶり~!」
音路工業高校機械科卒、元応援団団長のヒメ子さんがピーナッツみたいな頭を揺らしながらやって来た。夜湾のダウジングロッドが異様な反応を示したのはヒメ子さんの花屋である。
「あれっ?今日は充ちゃんはいないの?」
「仕事中ですからねぇ、ところでヒメ子さん……」
「あらっ!天峰ちゃんったら!今日は乃月ちゃんいないわよぉ!」
「あっ、あの。オレら今日は乃月に用がある訳じゃなくて……」
1人で暴走するヒメ子さんに落ち着きなさいよアンタ!と平手を食らわせたのは同じく音路工業高校機械科卒、元相撲部のマドカさんだ。ヒメ子さんとは違う金髪の盛り髪の下はスキンヘッドらしい。
「ここに、金髪の緑のパーカーを着た女の子が……」
「あ、ひょっとしたらこの娘?」
マドカさんが店の奥を手招きした。奥からのっそりと出て来たのは紛れもない美音だ。
「お兄ちゃん!」
「えぇっ!妹?」
「マジで?」
俺はつい駆け寄ってきた美音にビンタをしてしまった。
「痛っ!」
「いきなりいなくなる馬鹿がどこにいるんだよ!」
「……ごめんなさい……」
「とにかく、無事でよかった。ほら、ヒメ子さんとマドカさんに礼を言うんだ」
「あっ、ありがとうございます」
「この天峰にも……」
「やっ、あ!あの変質者!」
「変質者じゃねっつの!」
俺は美音に言った。
「こいつは針生天峰。陶芸家のタマゴ。俺らの仲間だ」
「な?変質者じゃないだろ?」
「そっかぁ、すいませんでした。でもね、髪はちょっと切った方がいいですよ」
「なっ……!」
「ハリさん、認めましょうよ~、その髪型、鬼太郎にしか見えないんすから」
「とりあえず、今日は終わりだから、ご飯でも食べていきなさいよ」
全員が顔を見合わせた。
「マジすか?」
「もちろん!」
†
実はマドカさんは以前イタリアンシェフを目指した経験があるらしく、半年イタリアにいた事があるらしい。その腕前は超がつくくらいに本格的で、乾麺は使わず、セモリナ粉から手打ちした生パスタを作るところから始まる。
「やっぱりね、日本人よりイタリアの男の人のほうが紳士的なのよ~、オカマに対しても」
「マドカちゃん、パスタだけじゃなくて、ちゃんこも美味しいのよ。相撲部屋にいた事もあるし……」
「あらやだわぁ~!言わないで~!」
重量級のマドカさんが作る大皿には大量のカルボナーラとボロネーゼ、ライスコロッケにチョリソーのソテーが盛られている。
「うわっ!すっげぇ美味そ!」
「食べて食べて~!残したらぶちかましよ~!」
美音はカルボナーラをフォークに巻いて口に入れた。
「うんまっ!」
「麺がむちゃくちゃモチモチしてる!」
「マドカさん!嫁に行けまっせホンマ!」
「や~だわ~!夜湾ちゃん貰って~!」
「彩羽なら開いてまっせ!」
「ぶっ!」
ヒメ子さんはテーブルに肘を突いて、フルートグラスに入れたシャンパンを舐めるように飲みながら訊いた。
「美音ちゃん、だっけ?アンタホントに、あの一番くんの娘さんなの?」
「はい、父はどっか行っちゃいましたけど」
「燎ちゃんにどっか、やっぱり似てるわねぇ」
「ホントですか……?」
「あ、そうだアマさん」
鵲がライスコロッケをちまちま食べながら言った。
「アマさん、美音ちゃんと一緒にお店やったらどうですかね?」
「え?このガキとか?」
「失礼ねぇ、もう19なんだけど!」
「嘘っ!」
「ハリさん、いくつだと思ったの?あたい」
「……まだ中1くらいかと……」
全員は爆笑している。その時、俺のスマホに着信があった。見たら充だった。
「充か」
【アマさん、鵲くんから訊きました。美音ちゃん、見つかったんですか?】
「おう、お陰さまでな。ところでお前、今大丈夫か?」
【今日はもう早めに上がりました。アマさんは?】
「今、ヒメ子さんの花屋で晩御飯食べてるんだ」
【お、マドカさんですか?】
「そうだ、来るか?」
【えぇ、ちょうど僕もお腹空いてたんです。マドカさんのボロネーゼ、凄く美味しいですから】
俺はマドカさんにこれから充が来ることを告げた。マドカさんはかなり充がタイプらしい。しかし、マドカさんのボロネーゼが食べたいと言っているとは言っていない。
――間違いなく、食べきれないくらい作るだろうから。俺はマドカさんのぶちかましを食らって、無事で帰れる自信が無い。
音路工業高校機械科卒、元応援団団長のヒメ子さんがピーナッツみたいな頭を揺らしながらやって来た。夜湾のダウジングロッドが異様な反応を示したのはヒメ子さんの花屋である。
「あれっ?今日は充ちゃんはいないの?」
「仕事中ですからねぇ、ところでヒメ子さん……」
「あらっ!天峰ちゃんったら!今日は乃月ちゃんいないわよぉ!」
「あっ、あの。オレら今日は乃月に用がある訳じゃなくて……」
1人で暴走するヒメ子さんに落ち着きなさいよアンタ!と平手を食らわせたのは同じく音路工業高校機械科卒、元相撲部のマドカさんだ。ヒメ子さんとは違う金髪の盛り髪の下はスキンヘッドらしい。
「ここに、金髪の緑のパーカーを着た女の子が……」
「あ、ひょっとしたらこの娘?」
マドカさんが店の奥を手招きした。奥からのっそりと出て来たのは紛れもない美音だ。
「お兄ちゃん!」
「えぇっ!妹?」
「マジで?」
俺はつい駆け寄ってきた美音にビンタをしてしまった。
「痛っ!」
「いきなりいなくなる馬鹿がどこにいるんだよ!」
「……ごめんなさい……」
「とにかく、無事でよかった。ほら、ヒメ子さんとマドカさんに礼を言うんだ」
「あっ、ありがとうございます」
「この天峰にも……」
「やっ、あ!あの変質者!」
「変質者じゃねっつの!」
俺は美音に言った。
「こいつは針生天峰。陶芸家のタマゴ。俺らの仲間だ」
「な?変質者じゃないだろ?」
「そっかぁ、すいませんでした。でもね、髪はちょっと切った方がいいですよ」
「なっ……!」
「ハリさん、認めましょうよ~、その髪型、鬼太郎にしか見えないんすから」
「とりあえず、今日は終わりだから、ご飯でも食べていきなさいよ」
全員が顔を見合わせた。
「マジすか?」
「もちろん!」
†
実はマドカさんは以前イタリアンシェフを目指した経験があるらしく、半年イタリアにいた事があるらしい。その腕前は超がつくくらいに本格的で、乾麺は使わず、セモリナ粉から手打ちした生パスタを作るところから始まる。
「やっぱりね、日本人よりイタリアの男の人のほうが紳士的なのよ~、オカマに対しても」
「マドカちゃん、パスタだけじゃなくて、ちゃんこも美味しいのよ。相撲部屋にいた事もあるし……」
「あらやだわぁ~!言わないで~!」
重量級のマドカさんが作る大皿には大量のカルボナーラとボロネーゼ、ライスコロッケにチョリソーのソテーが盛られている。
「うわっ!すっげぇ美味そ!」
「食べて食べて~!残したらぶちかましよ~!」
美音はカルボナーラをフォークに巻いて口に入れた。
「うんまっ!」
「麺がむちゃくちゃモチモチしてる!」
「マドカさん!嫁に行けまっせホンマ!」
「や~だわ~!夜湾ちゃん貰って~!」
「彩羽なら開いてまっせ!」
「ぶっ!」
ヒメ子さんはテーブルに肘を突いて、フルートグラスに入れたシャンパンを舐めるように飲みながら訊いた。
「美音ちゃん、だっけ?アンタホントに、あの一番くんの娘さんなの?」
「はい、父はどっか行っちゃいましたけど」
「燎ちゃんにどっか、やっぱり似てるわねぇ」
「ホントですか……?」
「あ、そうだアマさん」
鵲がライスコロッケをちまちま食べながら言った。
「アマさん、美音ちゃんと一緒にお店やったらどうですかね?」
「え?このガキとか?」
「失礼ねぇ、もう19なんだけど!」
「嘘っ!」
「ハリさん、いくつだと思ったの?あたい」
「……まだ中1くらいかと……」
全員は爆笑している。その時、俺のスマホに着信があった。見たら充だった。
「充か」
【アマさん、鵲くんから訊きました。美音ちゃん、見つかったんですか?】
「おう、お陰さまでな。ところでお前、今大丈夫か?」
【今日はもう早めに上がりました。アマさんは?】
「今、ヒメ子さんの花屋で晩御飯食べてるんだ」
【お、マドカさんですか?】
「そうだ、来るか?」
【えぇ、ちょうど僕もお腹空いてたんです。マドカさんのボロネーゼ、凄く美味しいですから】
俺はマドカさんにこれから充が来ることを告げた。マドカさんはかなり充がタイプらしい。しかし、マドカさんのボロネーゼが食べたいと言っているとは言っていない。
――間違いなく、食べきれないくらい作るだろうから。俺はマドカさんのぶちかましを食らって、無事で帰れる自信が無い。
0
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる