音路町ライオット〜音路町ストーリー2〜

回転焼き。

文字の大きさ
16 / 21
音路町ライオット

2

しおりを挟む
 木枯らしが木の葉をヤバいくらいに舞わせていたその日、俺は今川焼きを売り終わり、【甘納豆】を訪ねた。動画撮影を終えたばかりの二人はこちらに向けて歩いてきた。

「アマさん、毎度。その顔は間違いなく、【捜し屋】の仕事絡みですよね?」
「察しがいいな、彩羽。まさしくそうだよ」
「これから鵲連れて飲み行こかと思ってたとこなんすわ。あ、来た来た」

 鵲がやって来た。こちらに頭を下げると、小走りになった。緑色のナイロンパーカーに、ジーパンを履いている。

「アマさん、御無沙汰してます」
「飲み行くのか?」
「の、つもりだったんですけど、なんかありそうですね?」
「そう。ちょっと作戦会議といこうか。折角だからゲストも呼びたいし」
「え?女の子やったらええなぁ」
「そうだよ。可愛らしい女の子だ」
「うひょ、合ってた!」
「漏れなく天峰も呼ぼうかと」
「ハリさんも?」
「あぁ、ひょっとしたら、あいつのピッキングを使わせてもらうかもしれない」

 神業のような手先の器用さをもつ天峰。ピッキングの腕前も一流だ。問題は……

「ハリさん、来るかなぁ」
「どうかな。充は仕事だしな」
「ま、おらんかったらおらんかったで、どうにかしましょ」



 美音、夜湾、彩羽、鵲。そして偶然にも捕まった(というより、晩飯で釣った)天峰に、もえむ。7人はいつもの居酒屋に集まった。あまり酒を酌み交わしながら会合はしないが、今回はまぁ、いいとしよう。

「お兄ちゃん、皆来たよ」
「珍しいっすね。ハリさんが来るなんて」
「なんだか面白そうだと思ったからな」
「アホな、腹減ってたからやないんですか?」
「まぁな。今日の昼はたこ焼きを20舟しか食べてないからな」
「ようけ食ってるやないすか!」

 もえむはやや異様な風体の天峰を見て少し目を泳がせた。美音は言う。

「ハリさん、悪いひとじゃないからね?」
「はっ、はぁ……」
「にしても、こないな可愛い娘。何捜してんの?」
「彼を……」
「ンだ、コブつきかよ。まぁいいか」
「残念がるなよ彩羽。詳しく話してくれないか」

 もえむは我相がいなくなってしまった事、我相がボカロPの【ワーイ】である事、一軒家を借りて住んでいる事を伝えた。

「バリバリ有名人やないかい……」
「にしても、あの有名人がこんな、その……坊主っくりだとは……」
「しかもこんな可愛い彼女さん。世間って不平等だよなぁ。ねぇハリさん」
「お、オレはそんなのは興味ない」

 俺はビールジョッキを半分片付け、本題に入った。

「夜湾、ダウジングできそうか?」
「ん~、ちょっと難しいかもしれへん。何しろ、ぼやけまくってようわからへんのですわ」
「なら、やっぱり忍び込むしかないか」
「お、オレの出番かな」
「……でもALSOKとは入ってたら、通報されちゃいますよ」
「……あ」
「お兄ちゃん、ツメが甘いって!」

 俺はビールを空にした。アルコールでやや頭を冷やそう。いや、熱くなってしまうか。

「い、いや、アマさん。他にありますよ?」
「どうした?鵲。他に?」
「あの、け、刑事さん」
「あ~!あの目開いてない!」
「駄洒落ばっか言ってる!」
「御夕覚か!」
「お兄ちゃん、刑事さんに知り合いが?」

 御夕覚。生活安全課の刑事で、俺の昔からの友人。多分飲みに誘えばすぐにやって来るであろう逸材だ。

「ちょっと連絡してみたらええやないすか?」
「だな。ちょっと待ってろ」

 俺はほろ酔いの頭のまま、御夕覚に電話をかけた。1コールもしないうちに電話を取った御夕覚から余裕の欠片は一つも感じられなかった。

「お、御夕覚。俺だよ俺」
【天河か。どうした?】
「飲みに行かないか?」
【すまない、飲みたいのはヤマヤマなんだが、俺様はちょっと最近忙しくてな】
「どうした?まさか失踪?」
【……お前、なんか知ってるのか?】
「ボカロPが失踪したって奴か?」
【……そんだけじゃないんだなぁ】
「え?」
【今、この音路町は神隠しかってくらい失踪する人が多くてな】
「何だって?」
【すまないが、今日は勘弁してくれ。日を改めて話そう。なんだか、お前ら一枚噛んでそうだからな】

 俺は通話を切った。楽しそうに飲んでいる【捜し屋】のメンバーを見て、今日はやめておこうと思う。当のもえむも、軽く気持ちよさそうに酔ってそうだから。
――とりあえず、次の一手は明日以降に考えることにしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...