占い師さんは名探偵

回転焼き。

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「まさかね、あの人が自殺なんてありえねぇっすよ」

 ヘビースモーカーの渋谷は、失礼と一言添えて灰皿を自分に引き寄せると、セブンスターを一本引き抜いて火をつけ、うまそうに吸い込む。ここは少し都心から離れた場所にあるもつ焼きの美味しいと言われているホルモン焼き屋。そもそも店内が白煙で煙ってよく見えなくなるくらいだ。分煙化などという概念はなさそう。

「あ、食ってみてくださいよ。俺ね、普段はモツなんて食えませんけど、ここのは別なんすよ」
「あっ、うんまいっスよ先輩、ここの焼きもつ」
「そうだな」

 僕はホルモン大好きだ。確かにかなり美味い。臭みはなく、歯応えも良い。

「杉森ちゃんにも、食べさせたかったっスわぁ」
「はぁ?」

 す、杉森ちゃんだぁ?このじゃがいもが何をほざく。LINEで流してやりたいくらいだったが、やめた。優歌さんは夕方から別の仕事があるという理由で、占い師稼業に戻った。もとい、僕のスマホでそれは筒抜けにはなっているが。あ~あ、知らないぞ。
 渋谷はタバコを吸いながらくちゃくちゃとモツを噛む。満足そうな顔をしながら言った。

「うちではコラムを書いてくれてましたがね。正直、あの人のコラム、年齢層高めで若い子にはあんまりウケなかったんですよね。はっきり言って」
「なるほど、渋谷さん、あの日は…?」
「六車さんに呼ばれて、行きつけのイタ飯屋に行ったんですよ。結構早い時間からあの人夕食食べるんすよね。6時くらいでしたわ。こっちは忙しくて、昼食ったの5時ちょい前だったのに」
「はぁ…」
「あ、そうだ。あの人の昔の奥さん、会いました?」

――東郷雛子。まだ会ってはいないが…

「俺ね、ファンだったんすよ。悔しかったなぁ。昔アイドル歌手。それからジャズシンガーって。歌がすっごく上手くてね。六車さん、顔は良いからなぁ、しゃあないと思うしか…」

 渋谷は痩せぎすの歯が出てるネズミのようなフォルムの小男だ。長身の六車とは釣り合わなそうだ。悪いけど。

「とにかく、俺は知らないっすよ。何も」
「なるほど」
「とりあえず、ここのモツ、そちら持ちっすよね?ビール、頼んだらダメっすよね?」



「あっつかましい野郎でしたねぇ」

 小杉は言った。僕もちらとスマホを見たが、優歌さんは有益な話は聞けなそうと判断したのか、通話を速やかに切っていた。どこまで聞いていたのだろうか?僕はメッセージを見た。

【じゃがいも、好き勝手言うてる(@_@)】
【ネズミ男ww】
【一応話は聞いといて】
【あたし、忙しいねん】

――以上。
小杉はこちらを見ながら小指を立ててニヤニヤしている。

「コレスか?」
「いつの時代のサインだよ」
「珍しいなって。センパイにしちゃ」
「そんなんじゃないって」

――かと言って見せる訳にはいかないが。
僕は小杉に訊いた。

「お前。東郷雛子って知ってる?」
「知らないっス。とりあえず、今日はやめておきましょうよ」

 もう夜だ。先程もつ焼きを食べたせいでもう何も食べる気にはなれない。僕らはここで一度署に帰り、情報を整理することにする。

「そういや、この近くなんスよね」
「何が?」
「SKY FMの本社っスよ」
「だな」
「【石井由梨亜のてっぺんGROOVE】、調べる価値ありそうじゃないスか?」

――たまには良い事を言うじゃないか。じゃがいもよ。って優歌さんが居たら言うかもしれない。

「でもまぁ、今日はいいっすね。疲れたし」

――根性あらへんなって、優歌さんなら言う。
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