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クラリアパパSP 社会科見学編その1
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「ここも行きたいし、お土産はどうしよう~」
ルミアはクラリアお手製マジカルクリスタルランド攻略マップを見て楽しそうにはしゃいでいた。隣りのアリスはこっくりこっくりと舟を漕いでいる。クラリアの言う通りマジカルクリスタルランドへの出発は早かった。
朝イチから楽しむぞ~!っと意気揚々と大型馬車に乗り込むアナベル&セシル。ルミアもワクワクとそれに続き、クラリアは取り澄ました顔でいるがきっと眠い。そしてアリスは思いっきり眠い全身をしていた。馬車ではクラリアは前世で培ったバレずに仮眠スキルを駆使していたが、アリスは堂々と睡眠を取っていた。その間にも皆を乗せた馬車は一路マジカルクリスタルランドへと走り続け、
「見えて来たわ!」
興奮したルミアの声にうおっ?とアリスは目を覚ました。
『もうすぐよ、早く着かないかしら~』
揃って窓の外を眺めるアナベル&セシルにつられてアリスも寝ぼけ眼をこすりつつ窓の外に目をやり、
「おおっ!!」
次の瞬間、アリスはペタッと窓に貼り付いていた。
整備された石畳の道の両側には宿屋や土産物屋、レストラン等が立ち並び、そしてその先には、
『マジカルクリスタルランド!』
大きく壮麗な大門とその前にそびえ立つ大岩を彫り込んで造られたマジカルクリスタルランドのマスコットキャラクター、ブラックビーストのモニュメント。門をくぐった先にもキャラクター公式ショップが沢山並んでいて、更にその先には切り立った岩山に大きく口を開けた坑道、その上に燦然と輝くマジカルクリスタルランドのテーマパークサイン。
坑道入口のエントランスゲートには妖精のコスチュームに身を包んだスタッフに案内されたカップルやファミリーが開園待ちの行列を作っていた。
何か、凄く見覚えのある光景。何か、とても、凄く、テンション爆上がり~!!
アリスは窓に貼り付いたまま食い入るように近づいてくるエントランスゲートを見つめ、
「これが!マジカルクリス…」
ぐいん。
その時いきなり馬車が左折した。目の前からマジカルクリスタルランドが消えた。アリスは、
「えーっ!!」
叫ぶアリスに、アリス以外全員耳を塞いだ。遠去っていくマジカルクリスタルランドを涙目で見つめ言葉にならないあうあうアリス。
「もうっ」
そのアリスの鳩尾にルミアは強めの肘鉄を食らわせた。
「あうっ」
落ち掛けるアリスにルミアは唇を尖らせてメッ!
「寝起きに叫ばない。皆様が驚かれるでしょう」
いや、そうでもない。
とクラリアは思うが口にはしなかった。アリスは涙を浮かべて、
「だあってぇ~」
と窓の外の、木々に隠れてもう見えないマジカルクリスタルランドを未練がましく見つめた。馬車は森の中を一本に伸びる石畳の道をどんどんと進んでいく。
「何で?」
首を傾げるアリスにルミアはハアっと溜息を付いた。
「朝、馬車に乗る時に説明して戴いたでしょう」
「何を?」
「やっぱり寝てたのね。マジカルクリスタルランドに行く前にその前身の施設、王立魔法研究所瘴気調査部特別分室の特例見学が出来るって言われたでしょう」
「特別分室?特例見学?」
アリスは目をパチパチした。
修学旅行の前に社会科見学?
ヤバい、睡魔が再び見参だよ。
アリスは気を抜くと下がってくる瞼を必死で留めていた。
馬車は10分ほど走り急に辺りの視界が開けた。そこにはしっかりとした作りの鉄柵に囲まれた頑強そうな煉瓦造りの建物がありその奥には分厚い鉄板で出来た扉で塞がれた坑道があった。頑丈そのものの門をくぐり、アリス達の乗った馬車は煉瓦造りの建物の前に停まった。馬車を降りるなりアナベル&セシルは、
『私達は先に行ってますわ~♪』
と奥の坑道の扉へ向かって走り出し、慌ててメイドが二人で大きなカゴを抱えて後を追いかけていく。それを笑顔で見送るクラリアとポカンと見送るアリスとルミア。そこに白衣姿のメガネ男子おじ様達がわらわらと現れて、王立魔法研究所瘴気調査部特別分室の幹部の方々はアリス達を取り囲んだ。思わず身構えるアリスとアリスの腕に縋るルミア。クラリアはスッと優雅にお辞儀をすると、
「ご機嫌よう、分室長様。本日は分室長様自ら施設の説明をして戴けるとの事。有難うございます」
と笑顔のクラリアの言葉に分室長は満面の笑顔で、
「いやいや、拙い説明でお恥ずかしい」
そしてアリスとルミアは分室長の説明付きで研究所内を連れ回されていた。クラリアは二人の付き添いとして二人と一緒に回っていた。クラリアの笑顔は説明が始まって以来ビクともしない。鉄壁の愛想笑い。しかしアリスは、
……、どうして社会科見学の説明はどこの世界でも眠りの呪文なんだろう。
分室長の説明をルミアは真摯な姿勢で傾聴している。しかしアリスは、
…眠い。
アリスはゲーム内で魔素やら魔力やら瘴気やら全ての知識を何なら先取り気味に習得済。分室長自らの説明も全て聞き流れていき、まぶたの上に目を描いておけば良かったと分室長の気持ちも考えず本気で思うアリスだった。
「…ですが。えー、丁度6年程前ですかな。村人の通報でこの森の中を捜索した討伐隊が魔物化した猪親子を発見し駆除しました。この先のマジカルクリスタルランドの辺りです。そこの廃坑道の放置されたトロッコの陰に魔物化しきれなかった猪の子供、ウリ坊が一匹大怪我をしていまして、恐らくは魔物化した親か兄弟に襲われたのでしょう。外見は魔物化していましたが巨大化も無く魔物特有のバーサク状態にもなっておらず、瞳がウリ坊のままだったそうで討伐隊の若い騎士の一人が殺せず手当てしてたんですな。結果として半獣半魔の希少な研究対象が手に入りました。本当にラッキーでした。はっはっはっ」
「そうなんですか」
「その騎士に懐きまして、今は彼が世話をしてくれています。獣舎の中をチョコチョコ歩いて尻尾を振りながら近寄って来る姿は可愛いですよ~。マジカルクリスタルランドのテーマパークマスコットキャラクターになる位♪で研究保護施設を作り、コチラで瘴気で魔物化する原因等を様々な研究を行っています。本来はコチラが元なのですが、今や国王陛下が魔法や瘴気、無害化した魔物の活用の正しい知識を広める為に造られたマジカルクリスタルランドの方がメインになってしまいました。ウチの孫達も大好きです」
「はい、そうですね」
感心して頷くルミアに合わせてこっくりしてみせるのが精一杯のアリス。先程の説明はマジカルクリスタルランド攻略マップのクラリア豆知識及びクリラブ攻略本で予習済だった。
びっくりミートの肉のパックにも安全管理について書いてあるし。4コマ漫画で。おや?
くんくん。
案内されていた廊下の先から漂ってくる匂いにアリスは気付いた。
「そしてこれから案内するのが、こちらのクラリア嬢が東国の調味料、味噌為る物の製造を領地で成功させしかもその製造方法を広く公開して頂いたお陰で一気に進んだ研究施設です」
分室長の白衣の背中を見つめながらルミアも鼻をひくつかせている。途中から一行に加わった魔法省の上級職の制服を着た一団も鼻をひくつかせていた。分室長が満面の笑顔で
「こちらですっ」
と言いながら開けた扉の向こうには、
味噌蔵だぁ。
レンガ造りの大きな部屋にはワイン樽の面影を残した大きな味噌樽が幾つも並び、何やら漬け込んである小さめな樽が所狭しと置いてあった。
「元来瘴気で汚染され魔物化した為に駆使した動物や植物は炎で焼き払う以外に無害化する方法がありませんでした。十数年前迄は瘴気を土の魔法で払う事が間に合わず魔物化した植物や魔物の死骸を森の動物が食べてしまい又魔物化していまうという悪循環に陥っていました。しかしクラリア様が栄養価の高い調味料として製造された味噌の麹菌が瘴気化した魔素で汚染された魔物の死骸を無毒化するという事がクエーレ領の村で発見された事によって好循環に変わりました。魔物の肉や毒化した実なども味噌漬けする事によって食用になり、平民の人々も肉を食べる機会が増えて焼却処分量も大幅に減り手間も経費も抑える事に成功したのです。ビックリ工房のびっくりミートシリーズのソーセージやハム、ナーラ村のお化け瓜の漬物のナーラ漬け等が有名ですな」
樽の間を歩き回りながら説明する分室長に合わせて、おそらくビックリ工房やナーラ村漬物協同組合の出向研究員らしき人達が研究中の漬物樽のフタを開けて中を見せてくれる。
…味噌まみれで全て同じに見える。
物珍しそうに樽を覗き込むルミアの隣りで同じ様に樽を覗き込みながらアリスは、
コック服みたいな服の人の樽が肉かな?半被っぽい方の人がナーラ漬けの人?ってゆーかナーラ漬けって。
等とぼんやり考えていた。
どっちの研究員もビジネスの視線で樽を見定めているクラリアに、
「こちらが商品開発中のベーコンに加工予定の肉漬けです。是非とも御意見を伺いたく」
「ナーラ漬けに改良を加えまして子供でも食べ易くしています。アドバイス等戴けましたら」
と熱烈アピールしている。
…もしかしてレア物の試食がある?
期待に胸を膨らませるアリス。ルミアはそんなアリスの隣りでクラリアを尊敬の眼差しで見つめていた。
「クラリア様、本当に凄い方ね!同じ年とは思えないわ」
そう耳打ちしてくるルミアにアリスは、
外側は同じ年だけど中身は還暦超え経験値の元バリキャリなんだよ♪とは言えず黙って頷いた。
凄いのは確か。
「いや~、流石宰相様御自慢の姫様ですな」
「クレムラート王国内のみならず近隣国でも評判の才媛であらせられますから」
「しかもマジカル学園に通っていらっしゃるとは非の打ち所がありませんな」
周りの魔法省や工房、組合の人達がクラリアを取り囲み口々に褒めちぎる。ヴァニタス公爵令嬢で父は宰相のクラリアにあやかり隊の壁にあっと言う間にクラリアの姿が見えなくなる。ひゃ~っとアリスは壁に押し退けられた分室長を支えながら人壁を見て、
「お褒めに預かり光栄ですわ。妹達が待っておりますのでそれでは皆様御機嫌よう」
クラリアがあっさり壁を割って出てきた。分室長がやれやれという顔で、
「では、参りましょうか」
と歩き出し、御機嫌よう組を残して一行は動き出した。アリスとルミアも歩き出し、その一行の間を縫ってクラリアが二人の所へやってきた。ニッコリと微笑むクラリアにアリスとルミアは、
『大変ですね』
対するクラリアは、
「そう?それよりここからがコースディナーでのメインデッシュの目的地、さっき分室長様の説明にあった半魔半獣のウリ坊の保護施設よ。マジカルクリスタルランドのマスコットキャラクター、ブラックビーストのモデルとなった子よ。お父様が特別にもぐもぐタイムを体験出来るように取り計らって下さったの。アナベル&セシルは待ちきれなくて先に保護棟の方に行っているわ。お父様スペシャル、楽しみにしていてね。ふふふっ♪」
嬉しそうなクラリアにアリスとルミアは顔を見合わせた。クラリアは後方で控えていたメイド達に何やら指示していて、リンゴのカゴとかキャベツがどうのと言っている。アリスとルミアは同時に呟いた。
「魔物にもぐもぐ?」
この社会科見学は結構命懸けなのだろうか。
さっき見たマジカルクリスタルランド前のモニュメントのブラックビーストは全身を硬い針の様な黒い毛皮に覆われた鋭い牙が恐ろしいウリ坊の面影は背中の縞模様だけのガチ魔物だ。マジカルクリスタルランドで大人気のブラックビーストショーではブラックビーストは皆を守るヒーローだ。
私がスペシャルもぐもぐされるって事は無いよね?
アリスは不安全開で研究員のおじ様方に話し掛けられ笑顔で応えているクラリアを見た。アリスの脳裏には昨晩の、セシルを肩に乗せラスボス化しているアナベルに
「やっておしまいっ」
のクラリアがよぎりまくる。
……大丈夫。
アリスは自分に言い聞かせ、ちょっと不安そうなルミアに頷いてみせた。アリスもルミアも魔物を直接見た事は無い。討伐され町に運ばれてきた死骸を荷車の覆いの隙間から見た事があるだけだ。
大丈夫!半分だもん。半分。
ルミアはクラリアお手製マジカルクリスタルランド攻略マップを見て楽しそうにはしゃいでいた。隣りのアリスはこっくりこっくりと舟を漕いでいる。クラリアの言う通りマジカルクリスタルランドへの出発は早かった。
朝イチから楽しむぞ~!っと意気揚々と大型馬車に乗り込むアナベル&セシル。ルミアもワクワクとそれに続き、クラリアは取り澄ました顔でいるがきっと眠い。そしてアリスは思いっきり眠い全身をしていた。馬車ではクラリアは前世で培ったバレずに仮眠スキルを駆使していたが、アリスは堂々と睡眠を取っていた。その間にも皆を乗せた馬車は一路マジカルクリスタルランドへと走り続け、
「見えて来たわ!」
興奮したルミアの声にうおっ?とアリスは目を覚ました。
『もうすぐよ、早く着かないかしら~』
揃って窓の外を眺めるアナベル&セシルにつられてアリスも寝ぼけ眼をこすりつつ窓の外に目をやり、
「おおっ!!」
次の瞬間、アリスはペタッと窓に貼り付いていた。
整備された石畳の道の両側には宿屋や土産物屋、レストラン等が立ち並び、そしてその先には、
『マジカルクリスタルランド!』
大きく壮麗な大門とその前にそびえ立つ大岩を彫り込んで造られたマジカルクリスタルランドのマスコットキャラクター、ブラックビーストのモニュメント。門をくぐった先にもキャラクター公式ショップが沢山並んでいて、更にその先には切り立った岩山に大きく口を開けた坑道、その上に燦然と輝くマジカルクリスタルランドのテーマパークサイン。
坑道入口のエントランスゲートには妖精のコスチュームに身を包んだスタッフに案内されたカップルやファミリーが開園待ちの行列を作っていた。
何か、凄く見覚えのある光景。何か、とても、凄く、テンション爆上がり~!!
アリスは窓に貼り付いたまま食い入るように近づいてくるエントランスゲートを見つめ、
「これが!マジカルクリス…」
ぐいん。
その時いきなり馬車が左折した。目の前からマジカルクリスタルランドが消えた。アリスは、
「えーっ!!」
叫ぶアリスに、アリス以外全員耳を塞いだ。遠去っていくマジカルクリスタルランドを涙目で見つめ言葉にならないあうあうアリス。
「もうっ」
そのアリスの鳩尾にルミアは強めの肘鉄を食らわせた。
「あうっ」
落ち掛けるアリスにルミアは唇を尖らせてメッ!
「寝起きに叫ばない。皆様が驚かれるでしょう」
いや、そうでもない。
とクラリアは思うが口にはしなかった。アリスは涙を浮かべて、
「だあってぇ~」
と窓の外の、木々に隠れてもう見えないマジカルクリスタルランドを未練がましく見つめた。馬車は森の中を一本に伸びる石畳の道をどんどんと進んでいく。
「何で?」
首を傾げるアリスにルミアはハアっと溜息を付いた。
「朝、馬車に乗る時に説明して戴いたでしょう」
「何を?」
「やっぱり寝てたのね。マジカルクリスタルランドに行く前にその前身の施設、王立魔法研究所瘴気調査部特別分室の特例見学が出来るって言われたでしょう」
「特別分室?特例見学?」
アリスは目をパチパチした。
修学旅行の前に社会科見学?
ヤバい、睡魔が再び見参だよ。
アリスは気を抜くと下がってくる瞼を必死で留めていた。
馬車は10分ほど走り急に辺りの視界が開けた。そこにはしっかりとした作りの鉄柵に囲まれた頑強そうな煉瓦造りの建物がありその奥には分厚い鉄板で出来た扉で塞がれた坑道があった。頑丈そのものの門をくぐり、アリス達の乗った馬車は煉瓦造りの建物の前に停まった。馬車を降りるなりアナベル&セシルは、
『私達は先に行ってますわ~♪』
と奥の坑道の扉へ向かって走り出し、慌ててメイドが二人で大きなカゴを抱えて後を追いかけていく。それを笑顔で見送るクラリアとポカンと見送るアリスとルミア。そこに白衣姿のメガネ男子おじ様達がわらわらと現れて、王立魔法研究所瘴気調査部特別分室の幹部の方々はアリス達を取り囲んだ。思わず身構えるアリスとアリスの腕に縋るルミア。クラリアはスッと優雅にお辞儀をすると、
「ご機嫌よう、分室長様。本日は分室長様自ら施設の説明をして戴けるとの事。有難うございます」
と笑顔のクラリアの言葉に分室長は満面の笑顔で、
「いやいや、拙い説明でお恥ずかしい」
そしてアリスとルミアは分室長の説明付きで研究所内を連れ回されていた。クラリアは二人の付き添いとして二人と一緒に回っていた。クラリアの笑顔は説明が始まって以来ビクともしない。鉄壁の愛想笑い。しかしアリスは、
……、どうして社会科見学の説明はどこの世界でも眠りの呪文なんだろう。
分室長の説明をルミアは真摯な姿勢で傾聴している。しかしアリスは、
…眠い。
アリスはゲーム内で魔素やら魔力やら瘴気やら全ての知識を何なら先取り気味に習得済。分室長自らの説明も全て聞き流れていき、まぶたの上に目を描いておけば良かったと分室長の気持ちも考えず本気で思うアリスだった。
「…ですが。えー、丁度6年程前ですかな。村人の通報でこの森の中を捜索した討伐隊が魔物化した猪親子を発見し駆除しました。この先のマジカルクリスタルランドの辺りです。そこの廃坑道の放置されたトロッコの陰に魔物化しきれなかった猪の子供、ウリ坊が一匹大怪我をしていまして、恐らくは魔物化した親か兄弟に襲われたのでしょう。外見は魔物化していましたが巨大化も無く魔物特有のバーサク状態にもなっておらず、瞳がウリ坊のままだったそうで討伐隊の若い騎士の一人が殺せず手当てしてたんですな。結果として半獣半魔の希少な研究対象が手に入りました。本当にラッキーでした。はっはっはっ」
「そうなんですか」
「その騎士に懐きまして、今は彼が世話をしてくれています。獣舎の中をチョコチョコ歩いて尻尾を振りながら近寄って来る姿は可愛いですよ~。マジカルクリスタルランドのテーマパークマスコットキャラクターになる位♪で研究保護施設を作り、コチラで瘴気で魔物化する原因等を様々な研究を行っています。本来はコチラが元なのですが、今や国王陛下が魔法や瘴気、無害化した魔物の活用の正しい知識を広める為に造られたマジカルクリスタルランドの方がメインになってしまいました。ウチの孫達も大好きです」
「はい、そうですね」
感心して頷くルミアに合わせてこっくりしてみせるのが精一杯のアリス。先程の説明はマジカルクリスタルランド攻略マップのクラリア豆知識及びクリラブ攻略本で予習済だった。
びっくりミートの肉のパックにも安全管理について書いてあるし。4コマ漫画で。おや?
くんくん。
案内されていた廊下の先から漂ってくる匂いにアリスは気付いた。
「そしてこれから案内するのが、こちらのクラリア嬢が東国の調味料、味噌為る物の製造を領地で成功させしかもその製造方法を広く公開して頂いたお陰で一気に進んだ研究施設です」
分室長の白衣の背中を見つめながらルミアも鼻をひくつかせている。途中から一行に加わった魔法省の上級職の制服を着た一団も鼻をひくつかせていた。分室長が満面の笑顔で
「こちらですっ」
と言いながら開けた扉の向こうには、
味噌蔵だぁ。
レンガ造りの大きな部屋にはワイン樽の面影を残した大きな味噌樽が幾つも並び、何やら漬け込んである小さめな樽が所狭しと置いてあった。
「元来瘴気で汚染され魔物化した為に駆使した動物や植物は炎で焼き払う以外に無害化する方法がありませんでした。十数年前迄は瘴気を土の魔法で払う事が間に合わず魔物化した植物や魔物の死骸を森の動物が食べてしまい又魔物化していまうという悪循環に陥っていました。しかしクラリア様が栄養価の高い調味料として製造された味噌の麹菌が瘴気化した魔素で汚染された魔物の死骸を無毒化するという事がクエーレ領の村で発見された事によって好循環に変わりました。魔物の肉や毒化した実なども味噌漬けする事によって食用になり、平民の人々も肉を食べる機会が増えて焼却処分量も大幅に減り手間も経費も抑える事に成功したのです。ビックリ工房のびっくりミートシリーズのソーセージやハム、ナーラ村のお化け瓜の漬物のナーラ漬け等が有名ですな」
樽の間を歩き回りながら説明する分室長に合わせて、おそらくビックリ工房やナーラ村漬物協同組合の出向研究員らしき人達が研究中の漬物樽のフタを開けて中を見せてくれる。
…味噌まみれで全て同じに見える。
物珍しそうに樽を覗き込むルミアの隣りで同じ様に樽を覗き込みながらアリスは、
コック服みたいな服の人の樽が肉かな?半被っぽい方の人がナーラ漬けの人?ってゆーかナーラ漬けって。
等とぼんやり考えていた。
どっちの研究員もビジネスの視線で樽を見定めているクラリアに、
「こちらが商品開発中のベーコンに加工予定の肉漬けです。是非とも御意見を伺いたく」
「ナーラ漬けに改良を加えまして子供でも食べ易くしています。アドバイス等戴けましたら」
と熱烈アピールしている。
…もしかしてレア物の試食がある?
期待に胸を膨らませるアリス。ルミアはそんなアリスの隣りでクラリアを尊敬の眼差しで見つめていた。
「クラリア様、本当に凄い方ね!同じ年とは思えないわ」
そう耳打ちしてくるルミアにアリスは、
外側は同じ年だけど中身は還暦超え経験値の元バリキャリなんだよ♪とは言えず黙って頷いた。
凄いのは確か。
「いや~、流石宰相様御自慢の姫様ですな」
「クレムラート王国内のみならず近隣国でも評判の才媛であらせられますから」
「しかもマジカル学園に通っていらっしゃるとは非の打ち所がありませんな」
周りの魔法省や工房、組合の人達がクラリアを取り囲み口々に褒めちぎる。ヴァニタス公爵令嬢で父は宰相のクラリアにあやかり隊の壁にあっと言う間にクラリアの姿が見えなくなる。ひゃ~っとアリスは壁に押し退けられた分室長を支えながら人壁を見て、
「お褒めに預かり光栄ですわ。妹達が待っておりますのでそれでは皆様御機嫌よう」
クラリアがあっさり壁を割って出てきた。分室長がやれやれという顔で、
「では、参りましょうか」
と歩き出し、御機嫌よう組を残して一行は動き出した。アリスとルミアも歩き出し、その一行の間を縫ってクラリアが二人の所へやってきた。ニッコリと微笑むクラリアにアリスとルミアは、
『大変ですね』
対するクラリアは、
「そう?それよりここからがコースディナーでのメインデッシュの目的地、さっき分室長様の説明にあった半魔半獣のウリ坊の保護施設よ。マジカルクリスタルランドのマスコットキャラクター、ブラックビーストのモデルとなった子よ。お父様が特別にもぐもぐタイムを体験出来るように取り計らって下さったの。アナベル&セシルは待ちきれなくて先に保護棟の方に行っているわ。お父様スペシャル、楽しみにしていてね。ふふふっ♪」
嬉しそうなクラリアにアリスとルミアは顔を見合わせた。クラリアは後方で控えていたメイド達に何やら指示していて、リンゴのカゴとかキャベツがどうのと言っている。アリスとルミアは同時に呟いた。
「魔物にもぐもぐ?」
この社会科見学は結構命懸けなのだろうか。
さっき見たマジカルクリスタルランド前のモニュメントのブラックビーストは全身を硬い針の様な黒い毛皮に覆われた鋭い牙が恐ろしいウリ坊の面影は背中の縞模様だけのガチ魔物だ。マジカルクリスタルランドで大人気のブラックビーストショーではブラックビーストは皆を守るヒーローだ。
私がスペシャルもぐもぐされるって事は無いよね?
アリスは不安全開で研究員のおじ様方に話し掛けられ笑顔で応えているクラリアを見た。アリスの脳裏には昨晩の、セシルを肩に乗せラスボス化しているアナベルに
「やっておしまいっ」
のクラリアがよぎりまくる。
……大丈夫。
アリスは自分に言い聞かせ、ちょっと不安そうなルミアに頷いてみせた。アリスもルミアも魔物を直接見た事は無い。討伐され町に運ばれてきた死骸を荷車の覆いの隙間から見た事があるだけだ。
大丈夫!半分だもん。半分。
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