無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

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イベント発生!なのか?2

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「ふ~っ」
 食堂の注文カウンターでパンケーキセットを頼んだアリスは受け取りカウンターの列に並びながら息をついた。
 発表会かぁ。
 ゲームの中ではアリスは魔法学の先生から発表会の声掛けを受ける。学年主任でAクラスの担任でもある魔法学の先生は慣れない学園生活の中で一人懸命に努力するアリスを高く評価していて声を掛けている。そしてそれがクラリアとのいじめイベントへとつながっていくのだ。が、現在アリスはBクラスの生徒でクラスメイトに囲まれ楽しく過ごしており、Bクラスの担任の薬学科の先生はそれを温かく見守っている。更に薬学科の先生は発表会の推薦枠を持っていない。
 一体どうやって発表会の推薦をGETしろっていうのよ。ユリアンヌ達も無茶を言うわ。モグラの着ぐるみを着て踊って笑いを取れとでもいうのか?笑われてどうなる。私はこれでも一応乙女ゲームのヒロインなのよ。喪女ルート選択しているけど。
 アリスはぷうっと頬を膨らませ、
「はい、アリスちゃん。お待たせ」
 そこに明るい声と共にアリスの目の前にパンケーキセットが現れた。一瞬でパアッとアリスの表情が明るくなる。
「蜂蜜をたっぷりオマケしておいたよ」
「ありがとう♪」
 満面の笑顔で食堂のおばさまからパンケーキセットを受け取ったアリスの関心はあっという間に蜂蜜のたっぷり掛かったふわふわパンケーキとペチャクチャとお喋りしながらアリスが戻るのを待つユリアンヌ達の中のアイシャの膝の上のバッグの中の物へと移っていった。
 チビアレク様ぬいぐるみマスコットお着替え付き。どーにかして一分一秒でも早く手に入れられないかしら。先にイラストを、いやいや喪女ルート限定スチルが先、いやいやでもアレク様オタ祭壇に今すぐ飾り拝みまくりたいんだけど~♪
 起こる筈もない発表会イベントより目の前のアレク様グッズ。
 アリスは本気で土下座を考えた。
「アリス嬢、ちょっと宜しいかな」
 校舎裏に呼び出して土下座で頼んでみるとか…。
「アリス嬢、ちょっと宜しいかねっ」
 ……ん?
 振っていたユリアンヌの手が止まりサーシャは目を見開いてノーラは口をパクパクさせている。
 アリスは足を止めると後ろを振り返った。
 まさか。

「……」
 アリスは渡り廊下の角で寮へと続く扉を覗っていた。一般の生徒はランチを校舎の食堂で済ませるが自分専用の食堂を持つ4階以上の部屋を使用する生徒は寮の自分の部屋でランチを取る事が多い。校舎の食堂でクラリアを見つけられなかったアリスは寮の出入り口でクラリアの出待ちをしていた。
 午後の授業が始まるまで既に十分を切っている。
 早く出て来て、クラリア様~っ。
 アリスは縋る気持ちでじいと扉を見つめる。
 どうすれば良いのか解りません。教えて下さい、クラリア様っ。この選択肢はどっちが正解なんですか~っ。
 焦れる気持ちをもて余したアリスがその場駆け足を始めた時、スッと音も無く扉が開かれメイド達に見送られ楽しそうにお喋りするアナベル&セシル、そしてクラリアが現れた。
「クラリア様~っ!」
 その瞬間、アリスは半ベソでクラリアに向かって猛ダッシュしていた。
『?!』
 半ベソアリスにアナベル&セシルはギョッとして足を止めその前に警護役のメイドかサッと立ちはだかり、
 ブンッ。バコッ!
「ぐえっ」
 バタッ。
 クラリアがぶん投げた教科書を顔面キャッチしたアリスはその場に仰向けにひっくり返った。
『なっ何なんですのー、一体?!』
 叫ぶアナベル&セシルと念の為にアリスを縛り上げておこうとロープを手にするメイドを手で制し、クラリアはヒョイと教科書を拾い上げるとアリスの横にしゃがみ込んだ。
「どうしたの、一体?」
「発表会に4番目に声掛けられましたぁ」
 渡り廊下に大の字で倒れたアリスが絞り出した言葉にクラリアの眉間のシワがキュッと寄る。
 4番目に、ね。
 クラリアは小さく溜め息をつくとツンとアリスのデコを突付いた。
「おめでとう。発表会の推薦はとても名誉な事よ、アリス」
「でもゲームと違うんです。絵を描いてはどうかと学年主任の先生から~」
 アリスがパニックを起こすのも無理はなかった。発表会に出るように言われたがゲーム設定とは違う絵の出品だった。そしてアリスのイラストについて学園側がどう考えているのか先生の口ぶりから推し量る事がアリスには出来なかった。これをゲームイベント発生と考えていいのかも分からなかった。
「そう。で、推薦をお受けしたの?」
「いえ、私がなんて信じられな~いとかゴニョゴニョ言いながら逃げて来ました」
『えーっ!!』
 そこにアナベル&セシルが驚愕の声を上げた。
『アリスが発表会に?!そんな馬鹿な。お手もまともに出来ないのに。待ても怪しいのにっ』
 ……おい。
 アリスはムクッと半身を起こした。何よとアナベル&セシルが攻撃体制に入る。
 はあ…。
 クラリアは大きな溜め息をつくとスッと立ち上がった。
「いい事、アリス。学年主任の先生に先程の失礼をお詫びして、いつもの手慰みに描いている物で宜しければ是非にと伝えなさい。OKが出たらお受けしなさい」
「はい。で、あの、」
「グレースのお茶会でその話をしたらグレースは喜ぶでしょう。もうすぐ午後の授業が始まるわ。教室へ向かいましょうか」
『はい、お姉様♪』
 アリスにそう言うとさっさと歩き出すクラリアの両脇にアナベル&セシルはピタッと貼り付いて三人は何事もなかったかのようにメイドに見送られて歩き出した。が、数歩歩いてアナベル&セシルはクルッと取り残されたアリスを振り返ってベッと舌を出した。
『貴方のお姉様のイラスト、ちっともお姉様の素晴らしさを描けていなくてよ。本当にヘタクソっ』
「はいはい、だからアリスに描いて頂いたイラストを大事に部屋に飾っているのね」
『そ、そうだけど、違うのよお姉様ぁ』
「はいはい、ハンカチにちびキャラを刺繍中ね」
『愛らしさに手が止まりがちで中々進まないのはアリスのせいなのよっ』
 悪態をつく二人にクラリアは優しく微笑み掛け、三人はイチャイチャしながら教室へ向かって歩いて行く。
「……」
 それをメイドに手を借りて立ち上がりながら見送ったアリスはぷうと頬を膨らませた。
 いや、そうじゃないでしょ。イチャつく暇があるなら助けてよ!寮長様の地獄のお茶会とか、発表会イベントが発生か?!とか。私一人で頑張ったらどうなるのか私は全く制御不能なんだからさ。喪女ルートを走れているのか別ルートに転がり込んだのか私さっぱり分からないんだからっ。
 そんな事だけ自信有りなアリス。
 カーン、カーン、カーン。
 その時、予鈴の鐘が響いた。
「やっばっ」
 兎に角、今は授業だ。
 アリスはメイドに見送られながら走り出した。


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