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発表会イベント
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そして発表会イベントが始まった。そしてお昼ちょい前のアリスは美術教室にいた。
絵画の出品作品は美術教室に飾られており、イーゼルに
油彩、水彩や版画等の様々な作品が飾られている。どの作品も金と手間を掛けたプロ並みの気合いの入った作品だ。その中でアリスの猫絵は教室の出口近くにちまっと飾ってあった。
目立たない端で良かった。
なアリスだった。
発表会では出品者は作品の横で見に来た人の応対をするという暗黙のルールがある。
最低でも午前中は居る事!終了1時間前も居る事!
という訳でアリスは朝からずーっと猫絵の横に立たされていた。
午後が合奏の出番のクラリアとアナベル&セシルにコーネリアは朝イチでアリスの猫絵を見に来てくれた。アリスはコーネリアが伝えてくれたグレースからの、
「午後にお客様のお相手が空いた時に必ず行くわ」
に感激しきりで、
私も必ずグレース様に会いに行く~♪
と浮かれて気付いていなかったが、アリスの周りの生徒達からは羨望嫉妬嫉みの視線が突き刺さりまくりの針ネズミ化アリスだった。
ユリアンヌ達は朝から入れ代わり立ち代わり顔を出しては見てきた出品作品の感想を喋り倒しては去っていき、その合間に目の前で繰り広げられるのが他のモブ絵画出品者達とその取り巻き達によるよいしょバトル。それも落ち着いた今では休憩様に用意された窓際のソファでモブ出品者達による舌戦が繰り広げられていた。そのお上品なバチバチの争いに、
怖い、怖いよ…。
ソファで一休みしたくても近付けないアリスだった。
出品者の上級生にもAクラス同級生にも知り合いがいないポツンアリス。
足が痛い。朝から立ちっぱなしだもん。確かゲームの中の発表会ってもっと華やかで優雅な感じだった筈なのにこれじゃ罰ゲーム。でもなんの罰?
…、クリラブ2のカレンのヤンキー座りならイケる筈。
アリスが半分ヤケになり掛けた時、
「クラリア様からの差し入れ。学園の許可は取ってあるって。作品の後ろで使えって」
と熊がスツールを手に現れた。そしてアリスは猫絵の後ろにスツールを置いて腰掛け一休みしていた。
が一人でではない。二人でひとつのスツールに無理矢理座っていた。
アリスが特別扱いされている事が面白く無いがスツールに燦然と輝くヴァニタス家の紋章に手出し出来ない上位貴族の数人が、腹いせに下級貴族の上級生に絡み始めた。たまらず逃げ出した上級生のモブ女子生徒と一緒にアリスは座っていた。
朝、最初に、
「貴方の猫の絵、とっても素敵」
と優しく話し掛けて褒めてくれた先輩。少々ぽっちゃり目だったが気さくで話好きで、かなり退屈もしていたアリスは小声で楽しくお喋りしていた。
上級生の彼女は猫好きで猫の油彩画を出品している。そして彼女の家の領地にはビックリ工房の本社がありびっくりミートの新製品開発の失敗作談等を面白おかしく話してくれるのをアリスは楽しく耳を傾けていた。
あと少しでランチの時間。この苦行も終了で後は自由の身、午後はクラリア様の発表を見てグレース様に会いに行って。このゲームイベント?もこのまま何事も無く過ぎれば無事にミッションクリアよね。優しい猫先輩ともお近付きになれてたし良かったな。
「アリスッ」
その時ユリアンヌとサーシャの声、アリスが振り返ると教室の入り口に血相を変えた二人が立っていた。
なっ何事?!
二人にビビって思わずモブ先輩女子生徒の袖を掴むアリス。ソファのモブ上位貴族生徒達に睨まれたユリアンヌとサーシャは慌てて口を押さえ、しかし静かに急ぎ足でアリスの所に飛んで来た。二人の表情が何か不味い事が起きたのを伝えていた。
「アリス、ちょっと来て」
「え、えーと」
アリスの腕を取りそのまま引っ張って行きかねない勢いのサーシャだが、アリスは、
『午前中は絶対にここを離れない!』
とクラリアに厳命されているアリス犬は、
離れたら怒られる。グレース様も同じ事を言ってたし、どうしよう。
躊躇しているアリスにスツールの隣りでで見守っていた猫先輩が袖を掴むアリスの手を優しく取ると、
「貴方の絵を見に来て下さった方は私がお相手しますから、お友達とのお話は外でなさいな」
と声を掛けてくれた。
「はい、有り難う御座います。宜しくお願いしますっ」
優しいモブ先輩に助けられアリスはパッとスツールから立つとユリアンヌとサーシャに続いて教室を飛び出した。
ユリアンヌとサーシャの後に校舎の食堂に駆け込んだアリスは、
「……」
可能ならこのままUターンして見なかった事にしようと思った。
確かに大変だわ。
食堂の受け取りカウンターのすぐ脇でエリアナとアイシャが数人の上級生モブ女子生徒に囲まれており、それを止める様にカウンター係のおばさまが間に入っていた。
そしてその後ろの壁に貼ってあったモノは、あの発表会の作品を東屋で描こうとした時に発生したイベント?で描きまくった攻略対象キャラクター4人のイラストだった。
どどどど、どーゆー事?!何故あんな所に私のイラストが貼り出されているの?あの時散らばったイラストは全て回収したと思っていたけど拾い損ねた物があった?どうして2週間以上経ってからの貼り出しなの?
茫然としているアリスにユリアンヌが困惑した顔で首を振った。
「ランチの席取りをしようと食堂が開いた時間を見計らって皆で来たの。そうしたら騒いでいる先輩方がいて見たらアリスのイラストが貼り出されているじゃないの。アイシャが慌てて剥がそうとしたのだけれどそこで先輩方と押し問答になってしまって」
「マダムが執り成して下さっているのだけど先輩の一人が先生に進言すると言って引かないの。それで私達がアリスを呼びに行ったのよ」
サーシャが苦々しそうに騒ぐ先輩女子を見る。吊り目にソバカスのいかにもいじわるモブ令嬢然とした女子生徒は大きな身振りで周りの席取りに早めに食堂に来ていた他の生徒達に聞こえるように大声を上げている。
「アリスのイラストだと判っているのだと思うわ。美術教室に居た上級生の取り巻きの中に居た一人だと思う」
あ~、そういう事か~。
アリスは天井を見上げて溜め息をついた。
「アリスの足を引っ張れば自分の点数が上がると思っているのよ。浅ましい事」
よいしょ合戦、舌戦の応酬の延長戦か。こんな事ならヴァニタス家の紋章入りのスツールを持ってくれば良かった。アレで殴れば一発でミッションクリアなのに。
しかし今スツールは手元に無い。
…無い物はしょうがない。必死で食い下がってくれてるエリアナとアイシャを助けなければ。
アリスは覚悟を決めるとソロソロと忍び足で騒ぐモブ上級生達の背後から近付いていった。そしてアリスは、
「ど~も~」
と言いながらモブ上級生の脇から手を伸ばしイラストを剥がそうとする。
「お待ちなさいっ」
勿論モブ上級生がそれを許す筈もない。アリスはテヘッと笑いながらエリアナとアイシャを背に立つといじわるモブ上級生達に向かって手を合わせた。
「すみませ~ん、私の落し物です~。先輩方が拾って下さったのですかぁ?ありがとうございます~ぅ」
「わ、私では無くてよ」
揉み手でくねくね挙動不審のアリスにモブ上級生は少々怯み、それを見てアリスはエリアナとアイシャに目配せしながら腕を伸ばしてパッと壁のイラストを剥がした。
「あざ~すっ」
脱出。
エリアナとアイシャは逃げ出せたがアリスは、
「まだ話は終わっていなくてよ」
大きく腕を広げたいじわるモブ上級生に阻まれる。
「拾ってくださった方へお礼を伝えなくては~」
イラストを手に首を傾げてそらっとぼけるアリスだがモブ上級生達はアリスを取り囲み、
「こんな所にまで貼り出して気を引こうなんて如何な物かしら」
「ちょっと目を掛けて頂いた位で調子に乗り過ぎではなくて?」
「立場も弁えず勘違いも甚だしいわ」
「見ているこちらが恥ずかしくてよ」
いじわるモブ上級生達は薄ら笑いを浮かべながら口々にアリスへ嫌味な言葉を投げつける。それを見てユリアンヌ達だけでなく食堂スタッフや食堂カウンターのおばさまも眉をひそめた。言い返さないアリスにいじわるモブ上級生は好き放題に嫌味を並べ立て続ける。
「全く貴族としての品格に欠けているわ」
「お止しなさいな、この子は貴族ではないようよ」
「ああ、だからなのね」
「……」
アリスは黙って待っていた。
……、まだかな~?
これは所謂乙女ゲーム的上級生女子によるいじめイベントだわ。スチルでよく似た場面を見た気がするもの。という事は熊にヴァニタス家の紋章入りのスツールを取ってこさせなくてもゲームアリスみたいに黙って聞き流していればゲームメインキャラクターが何となく助けてくれる筈。…にしては遅いな?
アリスは頭の中でクラリア手製クリラブ1攻略マニュアルのページをめくり直し、
「確かに貴族としての品格に欠ける行動だね」
その時、背後から聞こえた声にいじわるモブ上級生達の顔が強張る。
よっしゃ来たー!
頭の中のマニュアルを閉じて後ろを振り返ったアリスはモブ上級生達と同じ様に顔を強張らせた。
そこに居たのはマジカル学園学園長と一、二年生の学年主任の先生だった。アリスの頭の中のクリラブ1攻略マニュアルが霧散する。
…な何で?
そしてアリスはそのまま学園長室へ連れていかれた。
ゲームの中では学園長室なんて出てこなかったんだけどーっ?!
なパニックアリスの前には攻略対象キャラクター達を描き散らかしていた時にスケッチを取り上げようとしたモブ上級生女子生徒達。それを止めてスケッチブックを取り返してくれたカイルの取り巻きモブ上級生男子生徒。そして先程貼られたアリスのイラストの前で騒いだモブ上級生女子生徒達がいた。
学園長室内には学園長、学年主任の先生2名とアリスの担任の先生も追加され、主に3人の上級生により事の顛末が語られていた。カイルの取り巻きモブ男子生徒の証言によりモブ上級生女子生徒達は先生方より叱責されていた。アリスのイラストは食堂のおばさまの、
「カイル様方への感謝をお伝えしたくて描いていたのよね?」
との口添えで問題にならず、紛失の責任も問われなかった。貼り出された事も、
「拾った人が誰に返せば良いのか判らなかったのでは?」
との取り巻きモブ男子生徒の言葉で不問とされた。
アリスは担任の先生に付き添われ聞かれた事にただ機械的に頷いていた。
この世界でも校内で生徒同士の問題が起きた場合、事の成り行き次第では大人が介入する。それは当たり前の事だった。
が、アリスにとっては想定外な事態。思い切りテンパっていた。
いや、いじめイベントに教師陣が出てくるとかそんなゲーム展開は見た事が無い。リアル乙女ゲーム、マジでムズいわ。頑張っているのにアレク様の背中は遠い。オタ祭壇のアレク様を拝んで推し成分を補充しなくちゃ…。
絵画の出品作品は美術教室に飾られており、イーゼルに
油彩、水彩や版画等の様々な作品が飾られている。どの作品も金と手間を掛けたプロ並みの気合いの入った作品だ。その中でアリスの猫絵は教室の出口近くにちまっと飾ってあった。
目立たない端で良かった。
なアリスだった。
発表会では出品者は作品の横で見に来た人の応対をするという暗黙のルールがある。
最低でも午前中は居る事!終了1時間前も居る事!
という訳でアリスは朝からずーっと猫絵の横に立たされていた。
午後が合奏の出番のクラリアとアナベル&セシルにコーネリアは朝イチでアリスの猫絵を見に来てくれた。アリスはコーネリアが伝えてくれたグレースからの、
「午後にお客様のお相手が空いた時に必ず行くわ」
に感激しきりで、
私も必ずグレース様に会いに行く~♪
と浮かれて気付いていなかったが、アリスの周りの生徒達からは羨望嫉妬嫉みの視線が突き刺さりまくりの針ネズミ化アリスだった。
ユリアンヌ達は朝から入れ代わり立ち代わり顔を出しては見てきた出品作品の感想を喋り倒しては去っていき、その合間に目の前で繰り広げられるのが他のモブ絵画出品者達とその取り巻き達によるよいしょバトル。それも落ち着いた今では休憩様に用意された窓際のソファでモブ出品者達による舌戦が繰り広げられていた。そのお上品なバチバチの争いに、
怖い、怖いよ…。
ソファで一休みしたくても近付けないアリスだった。
出品者の上級生にもAクラス同級生にも知り合いがいないポツンアリス。
足が痛い。朝から立ちっぱなしだもん。確かゲームの中の発表会ってもっと華やかで優雅な感じだった筈なのにこれじゃ罰ゲーム。でもなんの罰?
…、クリラブ2のカレンのヤンキー座りならイケる筈。
アリスが半分ヤケになり掛けた時、
「クラリア様からの差し入れ。学園の許可は取ってあるって。作品の後ろで使えって」
と熊がスツールを手に現れた。そしてアリスは猫絵の後ろにスツールを置いて腰掛け一休みしていた。
が一人でではない。二人でひとつのスツールに無理矢理座っていた。
アリスが特別扱いされている事が面白く無いがスツールに燦然と輝くヴァニタス家の紋章に手出し出来ない上位貴族の数人が、腹いせに下級貴族の上級生に絡み始めた。たまらず逃げ出した上級生のモブ女子生徒と一緒にアリスは座っていた。
朝、最初に、
「貴方の猫の絵、とっても素敵」
と優しく話し掛けて褒めてくれた先輩。少々ぽっちゃり目だったが気さくで話好きで、かなり退屈もしていたアリスは小声で楽しくお喋りしていた。
上級生の彼女は猫好きで猫の油彩画を出品している。そして彼女の家の領地にはビックリ工房の本社がありびっくりミートの新製品開発の失敗作談等を面白おかしく話してくれるのをアリスは楽しく耳を傾けていた。
あと少しでランチの時間。この苦行も終了で後は自由の身、午後はクラリア様の発表を見てグレース様に会いに行って。このゲームイベント?もこのまま何事も無く過ぎれば無事にミッションクリアよね。優しい猫先輩ともお近付きになれてたし良かったな。
「アリスッ」
その時ユリアンヌとサーシャの声、アリスが振り返ると教室の入り口に血相を変えた二人が立っていた。
なっ何事?!
二人にビビって思わずモブ先輩女子生徒の袖を掴むアリス。ソファのモブ上位貴族生徒達に睨まれたユリアンヌとサーシャは慌てて口を押さえ、しかし静かに急ぎ足でアリスの所に飛んで来た。二人の表情が何か不味い事が起きたのを伝えていた。
「アリス、ちょっと来て」
「え、えーと」
アリスの腕を取りそのまま引っ張って行きかねない勢いのサーシャだが、アリスは、
『午前中は絶対にここを離れない!』
とクラリアに厳命されているアリス犬は、
離れたら怒られる。グレース様も同じ事を言ってたし、どうしよう。
躊躇しているアリスにスツールの隣りでで見守っていた猫先輩が袖を掴むアリスの手を優しく取ると、
「貴方の絵を見に来て下さった方は私がお相手しますから、お友達とのお話は外でなさいな」
と声を掛けてくれた。
「はい、有り難う御座います。宜しくお願いしますっ」
優しいモブ先輩に助けられアリスはパッとスツールから立つとユリアンヌとサーシャに続いて教室を飛び出した。
ユリアンヌとサーシャの後に校舎の食堂に駆け込んだアリスは、
「……」
可能ならこのままUターンして見なかった事にしようと思った。
確かに大変だわ。
食堂の受け取りカウンターのすぐ脇でエリアナとアイシャが数人の上級生モブ女子生徒に囲まれており、それを止める様にカウンター係のおばさまが間に入っていた。
そしてその後ろの壁に貼ってあったモノは、あの発表会の作品を東屋で描こうとした時に発生したイベント?で描きまくった攻略対象キャラクター4人のイラストだった。
どどどど、どーゆー事?!何故あんな所に私のイラストが貼り出されているの?あの時散らばったイラストは全て回収したと思っていたけど拾い損ねた物があった?どうして2週間以上経ってからの貼り出しなの?
茫然としているアリスにユリアンヌが困惑した顔で首を振った。
「ランチの席取りをしようと食堂が開いた時間を見計らって皆で来たの。そうしたら騒いでいる先輩方がいて見たらアリスのイラストが貼り出されているじゃないの。アイシャが慌てて剥がそうとしたのだけれどそこで先輩方と押し問答になってしまって」
「マダムが執り成して下さっているのだけど先輩の一人が先生に進言すると言って引かないの。それで私達がアリスを呼びに行ったのよ」
サーシャが苦々しそうに騒ぐ先輩女子を見る。吊り目にソバカスのいかにもいじわるモブ令嬢然とした女子生徒は大きな身振りで周りの席取りに早めに食堂に来ていた他の生徒達に聞こえるように大声を上げている。
「アリスのイラストだと判っているのだと思うわ。美術教室に居た上級生の取り巻きの中に居た一人だと思う」
あ~、そういう事か~。
アリスは天井を見上げて溜め息をついた。
「アリスの足を引っ張れば自分の点数が上がると思っているのよ。浅ましい事」
よいしょ合戦、舌戦の応酬の延長戦か。こんな事ならヴァニタス家の紋章入りのスツールを持ってくれば良かった。アレで殴れば一発でミッションクリアなのに。
しかし今スツールは手元に無い。
…無い物はしょうがない。必死で食い下がってくれてるエリアナとアイシャを助けなければ。
アリスは覚悟を決めるとソロソロと忍び足で騒ぐモブ上級生達の背後から近付いていった。そしてアリスは、
「ど~も~」
と言いながらモブ上級生の脇から手を伸ばしイラストを剥がそうとする。
「お待ちなさいっ」
勿論モブ上級生がそれを許す筈もない。アリスはテヘッと笑いながらエリアナとアイシャを背に立つといじわるモブ上級生達に向かって手を合わせた。
「すみませ~ん、私の落し物です~。先輩方が拾って下さったのですかぁ?ありがとうございます~ぅ」
「わ、私では無くてよ」
揉み手でくねくね挙動不審のアリスにモブ上級生は少々怯み、それを見てアリスはエリアナとアイシャに目配せしながら腕を伸ばしてパッと壁のイラストを剥がした。
「あざ~すっ」
脱出。
エリアナとアイシャは逃げ出せたがアリスは、
「まだ話は終わっていなくてよ」
大きく腕を広げたいじわるモブ上級生に阻まれる。
「拾ってくださった方へお礼を伝えなくては~」
イラストを手に首を傾げてそらっとぼけるアリスだがモブ上級生達はアリスを取り囲み、
「こんな所にまで貼り出して気を引こうなんて如何な物かしら」
「ちょっと目を掛けて頂いた位で調子に乗り過ぎではなくて?」
「立場も弁えず勘違いも甚だしいわ」
「見ているこちらが恥ずかしくてよ」
いじわるモブ上級生達は薄ら笑いを浮かべながら口々にアリスへ嫌味な言葉を投げつける。それを見てユリアンヌ達だけでなく食堂スタッフや食堂カウンターのおばさまも眉をひそめた。言い返さないアリスにいじわるモブ上級生は好き放題に嫌味を並べ立て続ける。
「全く貴族としての品格に欠けているわ」
「お止しなさいな、この子は貴族ではないようよ」
「ああ、だからなのね」
「……」
アリスは黙って待っていた。
……、まだかな~?
これは所謂乙女ゲーム的上級生女子によるいじめイベントだわ。スチルでよく似た場面を見た気がするもの。という事は熊にヴァニタス家の紋章入りのスツールを取ってこさせなくてもゲームアリスみたいに黙って聞き流していればゲームメインキャラクターが何となく助けてくれる筈。…にしては遅いな?
アリスは頭の中でクラリア手製クリラブ1攻略マニュアルのページをめくり直し、
「確かに貴族としての品格に欠ける行動だね」
その時、背後から聞こえた声にいじわるモブ上級生達の顔が強張る。
よっしゃ来たー!
頭の中のマニュアルを閉じて後ろを振り返ったアリスはモブ上級生達と同じ様に顔を強張らせた。
そこに居たのはマジカル学園学園長と一、二年生の学年主任の先生だった。アリスの頭の中のクリラブ1攻略マニュアルが霧散する。
…な何で?
そしてアリスはそのまま学園長室へ連れていかれた。
ゲームの中では学園長室なんて出てこなかったんだけどーっ?!
なパニックアリスの前には攻略対象キャラクター達を描き散らかしていた時にスケッチを取り上げようとしたモブ上級生女子生徒達。それを止めてスケッチブックを取り返してくれたカイルの取り巻きモブ上級生男子生徒。そして先程貼られたアリスのイラストの前で騒いだモブ上級生女子生徒達がいた。
学園長室内には学園長、学年主任の先生2名とアリスの担任の先生も追加され、主に3人の上級生により事の顛末が語られていた。カイルの取り巻きモブ男子生徒の証言によりモブ上級生女子生徒達は先生方より叱責されていた。アリスのイラストは食堂のおばさまの、
「カイル様方への感謝をお伝えしたくて描いていたのよね?」
との口添えで問題にならず、紛失の責任も問われなかった。貼り出された事も、
「拾った人が誰に返せば良いのか判らなかったのでは?」
との取り巻きモブ男子生徒の言葉で不問とされた。
アリスは担任の先生に付き添われ聞かれた事にただ機械的に頷いていた。
この世界でも校内で生徒同士の問題が起きた場合、事の成り行き次第では大人が介入する。それは当たり前の事だった。
が、アリスにとっては想定外な事態。思い切りテンパっていた。
いや、いじめイベントに教師陣が出てくるとかそんなゲーム展開は見た事が無い。リアル乙女ゲーム、マジでムズいわ。頑張っているのにアレク様の背中は遠い。オタ祭壇のアレク様を拝んで推し成分を補充しなくちゃ…。
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