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クリスマスがやってくる

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 そして発表会は終わり、イベントの熱も冷めた学園内はいつもの日常に戻っていた。が、とある日の放課後の学園の食堂の端の席でアリスはやさぐれた心を大盛りプリンで癒やしていた。
 発表会の午後をアリスは上級生女子生徒とのトラブルについて聞き取り調査を受けていた為に発表会の自由時間をほぼ拘束されていた。
 なので開放された時にはクラリア達の合奏はとっくに終了、グレースの作品の展示教室は遠く行く事を止められ、勿論他の展示作品を見る余裕も無い。僅かな可能性に賭けて大急ぎで美術室に戻ったがグレースとアランは帰った後。お昼ご飯も食べ損なったアリスは、
 何が発表会イベントじゃ~っと暴れ掛けたがアリスに代わりグレースとアランの対応をした猫絵の猫先輩がお礼にとこっそりくれたびっくりミートの新作ジャーキーで事無きを得た。が発表会の話題で盛り上がる友人達の会話に入っていけないアリスはヤサグレた。
 話題が移り変わっても、いや、だからアリスは絶賛ヤサグレ中。その隣りではユリアンヌとサーシャにノーラが紅茶を片手にワイワイと盛り上がっていた。
 ユリアンヌ達だけでなく他の生徒達も今一番の話題の中心は、一年目の学園生活での目玉イベント、クリスマス舞踏会だ。
 皆が目の色を変えて出席の為に奔走する。出席はペアが基本、相手のいない生徒は必死で探す。しかし既に婚約者がいる生徒も多いので、胸に婚約者から贈られたコサージュを付けてのシングルでのもしくはシングル同士で仮のペアを組んでの出席も可能だ。出席は必須ではないが殆どの生徒は参加する。いや、絶対出席する!舞踏会だ。
 人脈づくり、パートナーがいない人には嫁、婿探しの格好の場所。いてももっと良い方に出会えるかも♪だ。男女共にクリスマス舞踏会に向けて盛り上がっていた。
 クリラブ1ゲーム内でもクリスマス舞踏会は一年目の重要イベント。これまでにこなしたイベントで好感度が一定以上に上がった各攻略対象キャラクターから身に付ける品を贈られる。
 カイルードレス、アランー手袋、ウェインー靴、アーサーー首飾り、リュカーコサージュ、シークレットー髪飾りだ。
 ゲームアリスの基本装備は母が贈ってくれたシンプルな白いドレスとなっている。このイベントでは贈り物の中からどれか一点を選択して手作りの花飾りを贈り返す。そして攻略対象キャラクターからの贈り物を身に着けてクリスマス舞踏会に出席するのだ。攻略対象キャラクターとのキラキラスチルを堪能し、選ばれなかった攻略対象キャラクター達からの恨み言スチルを見る事となる。
 そしてニ年目からは選んだ攻略対象キャラクターの好感度上げに勤しみつつ他攻略対象キャラクターからのチョッカイを上手くかわして好感度を下げないように気を付けながらゲームを進めていく。
 のだがアリスは、
 私は喪女ルート一択だしな~。しかもダンスは父しか踊ってくれないレベル…。
 だった。がユリアンヌ達は意味有り気な目で、
『アリスはもうパートナー探しは必要ないもんね~♪』
 だった。
 対するアリスは、
 ;ヒロインでありながらモテなくて悪かったな~、喪女ってて文句あるか~;
 だった。
 母ミティアからは、
「ドレスは任せなさい!」
 と気迫入りまくりの手紙が何通も届いている。無駄になるからヤメテと返事を返して後は無視していたら、どうやら母はユリアンヌに手紙を送っているらしい。
 アリスはスプーンを半分になった大盛りプリンに突き立てた。
 マジでヤメて。コサージュを自分で用意して地元に婚約者がいる体で出席なんてマジで恥ずい。
 しかし舞踏会に出席はしたいアリスだった。
 従姉妹のオタ姉に見せてもらったクリラブ1のクリスマス舞踏会の優雅で綺羅びやかなパーティシーン、生で見たい。モブ位置からでいいから若かりし頃の生アイルたんを、カイル王太子をガン見したい。
 ゲームのアリスは初めての舞踏会をとても楽しんでた。リアルアリスは実は地元で男爵家や子爵家で舞踏会デビューは済ませている。なので、
 壁の花になって、あのカイル王太子から贈られたブルーのドレスを身に纏ったアリスとカイル王太子が青い薔薇が舞い散る中を踊る美しきダンスシーンを見たい。相手は誰でもいいので見たーい!絶対に見たい。そしてあの豪華な御馳走の数々を食べたい。
 アリスはスプーンをガジガジとかじりながら、
「生アイルたんを、生アイルたんを…」
 と呪文の様にぶつぶつと唱えていた。ユリアンヌ達は慣れているのでアリスの奇行は気にも留めず、
「私、パートナーを見つけ出す自信が無いわ。兄貴に笑われたくなくてドレスは頼んだけど…」
「この前、廊下で意味有り気な視線を送ってきた上級生の方が居たじゃない。どうなのよ?」
「彼氏持ちは気が楽ね。アレ、イマイチ何ていうかピンとね~」
「何て事を、贅沢は敵よ。まずは出席!あ~、あの方が誘って下さったりしないかしら」
「お互いに身に付ける物を贈り合うのも考えないと。お互い負担なく見栄えする物はないかしら」
「身内に借り合えば良いのよ、頼める宛はないの?」
 ペチャクチャと喋り続けるユリアンヌ達。不意にそのお喋りが止まった。アリスはスプーンを齧りながら顔を上げて、
「?!」
 アリスの口からスプーンが落ちた。
 キキキキキ、キラキラ来たー!!



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