無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

文字の大きさ
50 / 88

推せど辛い…

しおりを挟む
「のっぺらぼーが、のっぺらぼーが…」
 ランチ時で混み合う学園の食堂でテーブルに突っ伏したアリスは呻いていた。
 子供用ダンス練習用人形には踏んだら電撃なんてお仕置き機能は勿論付いていない。
「大人用ですから」
 と、色々と追加された機能の一つだった。何処を踏んだか蹴ったか笛の音色で判る便利機能。
 この前の授業ではチューリップを奏でちゃったぜ。
 練習の度にメロディを奏でるアリス、すっかりヤサグレていた。
「アリス、お待たせ~」
 そこにアリスのランチトレイも片付けくれたユリアンヌとサーシャが食後のデザートの栗のタルトを手にテーブルに戻ってきた。二人の後ろにはユリアナとアイシャの姿もある。サーシャがアリスの前にデザートとお茶を置いてくれて、アリスは筋肉痛に顔をしかめながら体を起こした。
「有り難う、ユリアンヌ、サーシャ」
『どういたしまして』
 二人はアリスの向かいの席に座り、ユリアナとアイシャはアリスの左右の席に座るとキラキラとした瞳でアリスを見た。
 ずいとユリアナがクロッキー帳をアリスに差し出してしっかとアイシャがアリスの手を握りしめた。
「素晴らしいでス。私、感動したデすよー♪」
「え、感動する味なの?」
 目の前の栗のタルトを見るアリスにアイシャはぶんぶんと首を振った。
「勿論美味しいデす。デも私が感動シたのはイラストですよー♪」
 バッとユリアナがクロッキー帳を開き、そこに描かれていたのは幼き日のカイルとアラン、ウェインやアーサーにクラリアとグレース達、クリラフ1主要キャラクターが城の中庭で楽しく遊んでいるイラストだった。
 そう、アリスは辛く厳しいダンスレッスンのストレス解消に凝りもせずクラリアがちょっと話したカイル達の子供の頃のエピソードを膨らませ妄想を足しまくってイラストを描いていた。
 木登りするカイルとアーサー、ピアノを弾くウェインそれに耳を傾けるアラン、花冠を編むクラリアとグレース、粗相をした子犬を叱るアナベル&セシル。等々、攻略対象キャラクターとライバル令嬢をモデルにイラストを描いては非公認サークルメンバーに見せてウサを晴らしていたアリスだった。
 アリスがダンスレッスン三昧なのでサークル活動は事実上休止状態。久々の燃料投下にメンバーは盛り上がっていた。
「このお子様シリーズ、最高デすよ~」
「ええ、皆様が活き活きと描かれていて楽しそうな様子が聞こえてくるようです」
「いや~、それほどでも♪」
「私は木に縛りつけられて半ベソのアーサー様のイラストが一番と思うわ」
 そこに用事を終えて戻ってきたノーラがクロッキー帳に手を伸ばしてページをめくりイチ推しのイラストを指差した。
それを見たサーシャがテーブルの向こうから手を伸ばして、
「私はこちらのカイル様が鼻に絆創膏を貼って貰ってちょっと口を尖らせているイラストがとても良いと思うわ」
 ユリアンヌも手を伸ばして、
「私はウェイン様と一緒に子犬を撫でるアラン様が愛らしくて素敵だと思うわ」
 皆は口々に推しの一枚を語り出し、アリスのイラストを真ん中にワイワイと盛り上がっていた。
 確かに鼻絆創膏カイルは我ながら良い出来。
 しかしアリスは一人盛り下がった。
 そう、アリスの一推しアレクの事を萌え語りしたくて堪らないアリスなのに皆の前でする訳にはいかなかった。クリラブ1に登場していないキャラを語る事は出来ない。
 唯一クリラブ2について語れるクラリアも聞いてはくれるが萌え語りの中に有益な情報が隠れていないか確認しているだけだ。おやつはくれるが熱量は無い。
 そもそも同じ熱量を求めるアリスが間違えている。クラリアはクリラブ1はプレイしたがイマイチでハマらず、クリラブ2が発売する前に前世を終了している。
 解っている、解っちゃいるけどっ。
 連日のダンスの猛特訓に身も心もズタボロのアリスは、
「…」
 一人黙々と栗のタルトを頬張っていたアリスの手が止まる。アリスの中で何かがプチッと音を立てて切れた。
「……、うがーっ」
 突然叫ぶアリスに流石にユリアンヌ達もお喋りを止めた。
「アリス?タルトのおかわり?」
 心配そうに聞くユリアンヌに答えずアリスはエリアナの手から奪い取った。
「えっ?」
そしてアリスは白いページを開くと一心不乱に描き始めた。
『…』
 ユリアンヌ達は何かに取り憑かれた様にイラストを描くアリスを静かに見守り、首を傾げた。
「アリスは誰を描いているの?」
 呟くサーシャにポソッとアイシャが答える。
「ワタシ、聞いた事ガあるですよ」
 皆の視線がアイシャに集まる。
「アリスは恥ずいかラ内緒よって言われタけど心配デす。このイラストの男性はアリスの憧れの人なんだソうです」
『憧れ?』
 アイシャの言葉に全員が首を傾げた。
「憧れの人って…誰?」
「学校関係者にも生徒の父兄にもこの方はいらっしゃらないと思うわ」
「アリスの地元の方ではなくて?」
ユリアンヌとエリアナは顔を見合わせ、アイシャは首を横に振る。
「アリスは、私の理想のってゆーかぁ、出会うってゆーかぁ、ト言ったデす。」
「出会う?」
 ノーラが目を丸くして、皆アリスを見つめたまま押し黙る。数秒の間の後、ポンとサーシャが思い付いた様に手を打った。
「熊と真逆な方ね」
 サーシャの言葉に皆頷くと、
「成る程、そういう事ね」
「確かにアイツさえしっかりしていればね」
 ユリアンヌ達は納得いったような少し引っ掛かる様な顔で頷きあう。
 アリスが一心不乱に描いていたのはキラキラと輝くアレクの笑顔だった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

処理中です...