無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

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もうすぐクリスマス

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 ユリアンヌ達、モブ令嬢の企みはヒロインアリスにあっさり粉砕された。そしてアリス達はまたいつもの日常に戻った。アレクとのクリスマスデートの余韻に浸る間もなくアリスはダンスと花飾り作りの練習に明け暮れていた。
 クリスマス舞踏会も近付いてきたとある休日。午前のダンスレッスンを終えたアリスは休む間もなく教室の前で待ち構えていたクラリア付きメイドによってクラリアの寮の部屋に連行された。
 そこにはカイルの派遣の仕立て業者がアリスの仕上がりドレスを手に待ち構えておりそのままアリスは王子様ドレスを試着させられた。
 サイズはピッタリ♪誇らしげな仕立て屋の女性スタッフにクラリアは、
「良いわね」
 クラリアはマネキンアリスを細かくチェックしながら頷き、アナベル&セシルも、
『合格にしてあげてもよろしくてよ』
 と渋々頷く。がアリスは、
 腹減った…、頭が空腹過ぎて頭が全く回らない。
 と機械的に頷くだけで精一杯だった。
 へとへとアリスに代わって受け答えをしたクラリアはその他の細かい事を聞き、要望を伝え、
「では、当日にまたお伺いいたします」
 女性スタッフは笑顔で去っていった。
「…」
 しかしふらふらアリスは嫌な予感に気付き、余計にふらついた。
 レッスン後のアリスはお腹がペコペコ、お腹と背中がくっつきそう。それでピッタリという事は…。
「ランチ、まだでしょう」
 の言葉と共に出された昼食は豆サラダがメインのあっさりさっぱりランチ。
「…」
 食べた気が全くしない。肉、炭水化物、肉、糖分、肉、脂、肉。午後もダンスレッスンがあるのよ~っ。
 ユリアンヌ達や非公認サークルメンバーが集まっている談話室に戻ったアリスは窓辺で一人食べ足りない気持ちで講堂前に飾られたクリスマスツリーを眺めていた。
 飾り付けを直しているらしく木に梯子を架けて庭師が何人かが上に登って作業をしている。
 無邪気にクリスマスツリーを見上げていたあの頃が懐かしい。今じゃ踊れどミニゲームクリアの気配も見えず更にひもじい事この上もないっ。
 クリスマスツリーが巨大シュラスコに、上の星が唐揚げに見えるアリス。
 その時、アリスは梯子に乗った一人がこちらに向かって手を振っているのに気が付いた。んーっとアリスは目を凝らし、
 あ、キツネさんだ。
 若い庭師のキツネがアリスに向かい大きく手を振っていた。アリスは反射的に振り返し、
 部屋の中からじゃ見えないか。
 アリスは窓を開けるとキツネに向かって手を振り返し、
 ピシャッ。
 窓が直ぐさま閉められた。鍵をしっかりと掛けたサーシャは振り返るとキョトンとした顔のアリスをメッと睨んだ。
「あ、寒かった?ごめん、ごめん」
 謝るアリスに、
「油断も隙もない」
「?」
 首を傾げるアリスにサーシャは溜め息をつき、そこにユリアンヌがズイッと一枚のイラストを差し出した。
「これを眺めて共に空腹を幸福で埋めましょう」
 ユリアンヌが手にしていたのはアリスが描いたあの東屋で狸寝入りしているカイルだった。青い薔薇が舞い散る中を穏やかな寝息まで聞こえてきそうなカイルのイラスト。
『しかもカラー♪』
 エリアナ達非公認サークルメンバーが声を揃える。
『これがあればどんな困難にも耐えられますわ♪』
 アリスのカラーイラストを中心にモブ令嬢はハートで溢れた瞳を輝かせ手を取り合い頷きあっている。
 しかしアリスは、
 いや、私は最推しではないので…。
 効果は限定的だった。アリスはへこんだお腹を押さえた。
 ユリアンヌ達他の生徒もほぼドレスは仕上がりもうどうにもならない。皆でワイワイと互いのドレスの出来映えを喋り合いながら砂糖もミルクも抜きの紅茶を飲んでいる。お茶菓子は無い。アリスの紅茶には色すら付いていない。ノーラ曰く、
「紅茶のカロリーすら避けるべきよ」
 いや、色素にカロリーは無い。
 冷めたお湯の入ったカップを手に取ったアリスははぁと溜め息を付き、そこに、
 コンコン、コンコン。談話室のドアをノックする音がした。
「どうぞ」
 ユリアンヌの返事にドアを開けたのはメイドだった。手に箱を持っている。
「ユリアンヌ嬢、ご自宅よりお荷物が届いております。至急と注意書きが御座いましたのでお持ち致しました」
「ありがとう御座います。何かしら?」
 荷物を受け取ったユリアンヌはメイドが退室するのを待ってから丁寧に梱包された箱をテーブルの上に置いた。
「兄貴の文字だわ」
箱の送り主を確認したユリアンヌは訝しがりながら包みを解き始める。
 …もしかしてユリアンヌ兄がクリスマススイーツを贈ってきた?シュトーレンとかクグロフケーキとかジンジャークッキーとかミンスパイにブッシュドノエルに。
 アリスの頭の中をクリスマススイーツが駆け巡る。箱を開けたユリアンヌの横から箱の中を覗き込んだアリスやモブ令嬢達は、
『あ』
 箱の中には色とりどりのコサージュが6個と兄リチャードのメモが入っていた。
 もう注文キャンセル不可だったので送ります。
 メモを指で摘んだユリアンヌはフッと笑うとスッと頭上にコサージュの入った箱を掲げた。
「兄貴からの差し入れよ~。これでグレース様に懸想と妄想していくせに、組んでやってもいいぜ呼ばわりなパートナー無しお馬鹿男子共を丁重にお断り致しましょう。入り用な方は仰って♪」
「ハイッ!」
 その時アリスの花飾り作り特訓用の花を受け取りに行き戻ったエリアナが、抱えた花の束の上にエリアナ分の花も乗せられてふらつくアイシャを残して、バッとユリアンヌのこの指止まれに一番乗りした。
「これで恩着せがましいナスビ顔で我慢せずにすみますわ」
「私もっ」
 二番乗りはノーラ。
「これで鼻で笑う父に頭を下げずにすむわ」
「あの、私にも」
「私も頂きたく~」
 他にも非公認サークルメンバー数人が手を上げる。
『では、どれが良いかしら?』
 ワッとモブ令嬢達はコサージュが必要な令嬢もそうでない令嬢も箱のコサージュに群がった。これが良い、あれが良いとワイワイ喧しくコサージュを選び始める。
「…無念じゃ」
 腹ペコなままで午後のダンスレッスンに突入確定か。クリラブ1のクリスマスイベントスチル回収がこんなに難易度が高いとは思わなかった。リアル乙女ゲーム恐るべし。こうなってくるとイベント後が待ち遠しくなってくるな~。
 アテが外れたアリスは悲しくそれを眺めると虚しくお湯を啜った。
 バサッ。
 アリスの目の前に大量の花が置かれる。顔を上げるとニッコリ笑顔のアイシャが、
「さー、花飾りヲ作るでスよ。今日こそ赤点回避デすよ~!」
「…」






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