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歌が聞こえる。
遠く微かに。
降り注ぐ光のように。
とても優しく、あたたかい銀の光が降り注ぎ、壊れかけた体を包みこんで癒していく。凝っていた身体に血が通い始める。息苦しさも、寒さも、全身を襲う激痛さえも和らいで、ようやく息をついた。
「リーオン、気がついた?」
細く柔らかな声が耳元に下りてきて、優しい手がそっと額の汗を拭った。
意識が戻ってもリーオンの世界は暗闇に包まれたまま、一切の光は見えない。
柔らかな銀の光がそばにあるのを感じるだけ。その光の源が、歌声の主である少女のものだと知っているが、罪を犯し太陽神カーズ・ナシオンによって罰を受けたリーオンには、旅の途中で出会ったこの少女の姿を見ることはできない。
おそらくは、死ぬまで。
「……ユー……イ、リア……」
熱で喉が渇いて声にならない。
「もう大丈夫だから、安心して眠って……リーオン」
優しい声と手。
彼女はどうしてこんなにも献身的に看病してくれるのだろうか。
そんな疑問がいつも浮かび上がってくるのだけれど、問いかける機会もなく、ずるずると厚意に甘えてきてしまっている。
再び、歌声が聞こえてきた。
古い言葉だ。
神々が使う力ある言葉に旋律がのる。韻を踏み、繰り返す。
その言葉の意味をリーオンは知っていたはずだった。
彼もまた、神族であったからだ。
だが、今は太陽神の怒りに触れ、地上へと落とされた身。
神々の言葉も失われ、視力も奪われ、裸同然で地上にさまよっている。
待つのは、死のみ。
いつしか歌声に包まれながら眠りにつく。
幾度も襲う発作に体力は奪われながらも、長い間、地上をさまよい続けてきた。
ずっと床についたまま、動けなくなってどのくらいの日が過ぎたのだろう。
封じられた目は開くこともできず、暗闇のまま、奪われた光は戻ることはない。
それでも記憶の中の美しい月女神の御姿は決して色あせることなく、脳裏に刻み付けられている。
それが罪であっても。
罰を下されようとも、消せぬ想いがそこにはある。
手を伸ばせば触れることができそうな錯覚さえ覚え、そのたびに激しい発作が全身を苛む。
なるほど太陽神はこれほどまでにお怒りなのだと、思い知らされる。
永劫の闇。
想いを捨てぬ限り、彷徨えということなのだ、おそらく。
「リーオン、気がついた?」
明るい声。
衣擦れの音と、空気が動いて静かに人が近付いてくる気配。
ユーレイリアだ。
いつの間に眠ったのかも分からなかった。唐突な意識の消失と覚醒。
「のどが渇いているでしょう。薬湯を作ったから飲んで」
上半身を支えられるようにしてなんとか身を起こした。
鼻が曲がりそうな匂いを放つ薬湯を手渡され、思わず顔をしかめる。だが熱によってカラカラに乾いた喉は水分を欲している。一気に飲み干し、咳き込む羽目になった。
「慌てないで、リーオン」
背中をさするユーレイリアの手はとても温かく優しい。その手に支えられなければ、自分で立ち上がることもできないのだ。 情けない。自分の体なのに、なんともままならない。実際、薬湯など気休めでしかない。すでに彼女の歌によってしか、命を永らえる術は他にない。
癒しの力を持つ銀のルティナ。
月光石の力の具現は様々だが、彼女の力は歌声に宿っている。それが月光の歌姫と称される所以である。
「いつも迷惑をかけてしまうね、ユーレイリア」
「いいの。わたしはちっとも迷惑なんかじゃないから、そんなことは気にしなくていいのよ、リーオン」
暗闇の中では彼女の顔も見えない。いったいどんな顔をして笑っているのだろうか。心優しい娘だ。きっと優しい顔立ちをしているのだろう。彼女の歌を聞けばわかる。これほどまでに心や傷を癒す力を持っているのだから。
彼女の歌を聴いているときだけは、忘れることができる。
全身を苛む病の痛みも、心の奥にくすぶっている許されぬ想いも。
「ユーレイリア、歌ってくれないか」
「どこか痛むの!?」
驚いたようにユーレイリアは尋ねる。
「いいや、もうどこも痛くないよ。ただ君の歌が聞きたいんだ」
彼女が安堵の息をついたのがわかる。
「いいわ、お安い御用よ」
そうしてユーレイリアは歌い始める。
彼女の歌はいつも優しくて、だから甘えてしまうのだ。
眠らない月
静かな夜に 私は歌う
変わらない月
眠らない夜に あなたを想う
月夜の下で眠るあなたの瞼の上に
光のしずくをたらしましょう
これであなたの夢とつながった
眠らない月
眠らない夜
あなたの夢の中
いつでも会いにいけるでしょう
静かな夜に
変わらない月の姿を
あなたの瞼の上に
映しましょう
そうして
あなたの夢の中
いつでも会いにいけるでしょう
「リーオン、眠ってしまったの?」
寝息が聞こえてくる。
寝台に横たわり、穏やかな寝顔で眠る男を見て、ユーレイリアはほっと安堵した。
寝台のすぐ横に椅子を引き寄せ、寝顔を見つめる。痩せてこけてしまった頬や力なく投げ出された腕が痛々しい。
元々は輝くような金髪だったはずが、今はくすんだ茶色へと変化してしまっている。光を奪われ、永久に開かない瞳は若葉色。
「あんなにもあなたは光り輝いていたのに……」
リーオンは知らない。
あの時、あの場所で、太陽神が彼の瞳を焼き、彼から光を奪ったとき、自分もその場にいたことを。
旅先で会ったのは偶然ではなくて、追いかけてきたのだと。
でもそれを口にしたところでどうしようもない。
彼の想いはいまも変わらず月女神に向けられている。
太陽は月に恋をし、月も太陽を恋い慕う。
その身の内にかけらをもって生まれてきた者たちもまた、その業に縛られているのか、互いに対のかけらを探すのだ。
ねぇ わたしのかけら
どこにいるの
世界のかなた
光の向こう
いいえ かけらはすぐそばに
さがしてごらん
すぐそばに
たったひとつの 夢のかけら
己の中の真実を
さがしてごらん
夢のかけら
「わたしの……夢のかけら」
眠るリーオンの手をとって、そっと頬に押し当てる。冷たく骨ばった手。彼の命の灯はもう残り少ない。
「ねぇ、気付いて。私を見て……そうすればあなたは死なずにすむのよ?」
一筋の涙がこぼれ落ちていく。
願いはいまだ届かず、盲目の男は静かな眠りの中でしばしの休息を貪っていた。
ふわりと前触れもなく眠りの淵から舞い戻る。相変わらずの暗闇の中。夢の中のほうが色鮮やかで眩しい。
いつも夢に見るのはただ一人の女性。
誰よりも鮮やかに美しく、リーオンの心の大半を占めているのが、月女神ルティニネティだった。
禁じられてもなお想いは募る。
否、禁じられたが故に、行き場をなくした想いが、どうしようもなく胸を締め付ける。
女神の声、微笑み、芳しいほどの甘い香り、穏やかに輝く慈愛の光、その何もかも鮮明に覚えている。
触れたいと、思うことすら罪で。
それならばいっそのこと、あの時ひとおもいに、殺してくれればよかったものを、太陽神はそれすらも許さないのだ。
「ねぇ……私を見て……そうすれば、あなたは死なずにすむのよ?」
遠くからユーレイリアの声が聞こえる。まだ夢の中を漂っているような、曖昧な感覚の中で、彼女の声がまっすぐに届いてきた。その気持ちに応えられるはずもなかった。
「こんな、今にも死にそうなカーザと契約を交わしても仕方がないだろうに」
苦笑すら浮かべてしまう。
「君はまだ若いのだから。僕と運命を共にする必要はないよ」
「でも、自分の気持ちに嘘はつけないわ」
「だめだ。気持ちは嬉しいが、君が石化してしまうのは許さない」
「……でも、このままではあなたが……」
ユーレイリアが望むとおり、契約を結んで対のかけらになったとしても、おそらく未来は変わらないだろう。強大な神力故に、自らをも焼き尽くしてしまうカーザは対の銀のルティナを得ることで、生き長らえることが出来る。もともとカーザは短命なのだ。だがそれでも、ここまで消耗してしまっていては、一時的に回復はするだろうが、期限が少し延びるだけだろう。
「対のカーザを失った銀のルティナの末路を知らないわけではないだろうに」
再び夢の中へと引きずり込まれていくことに苛立ちながら、必死で諭す。この声がユーレイリアに聞こえているのかどうかも分からない。
ユーレイリアの声も遠のいていく。
それでも呼びかけずにはいられなかった。
幾度目かの覚醒。
リーオンは起き上がり、寝台から降りた。不思議なほど体は軽かった。いつもならそばにいるはずのユーレイリアの気配がない。訝しみながらも、まるで見えない月光に導かれるように、ふらふらと外に出て行った。
そして、閉ざされた暗闇の中に、突然降り注ぐ、光の奔流。
久しく忘れていた現実の光に、目を細めた。
まばゆいばかりの銀の光は月光だ。
その中に美しい女性の姿を見つけ、声を失った。
そこには、我を忘れるほどに恋焦がれた、麗しい月女神の姿があった。
どこからか、ユーレイリアの歌が聞こえていた。
遠く微かに。
降り注ぐ光のように。
とても優しく、あたたかい銀の光が降り注ぎ、壊れかけた体を包みこんで癒していく。凝っていた身体に血が通い始める。息苦しさも、寒さも、全身を襲う激痛さえも和らいで、ようやく息をついた。
「リーオン、気がついた?」
細く柔らかな声が耳元に下りてきて、優しい手がそっと額の汗を拭った。
意識が戻ってもリーオンの世界は暗闇に包まれたまま、一切の光は見えない。
柔らかな銀の光がそばにあるのを感じるだけ。その光の源が、歌声の主である少女のものだと知っているが、罪を犯し太陽神カーズ・ナシオンによって罰を受けたリーオンには、旅の途中で出会ったこの少女の姿を見ることはできない。
おそらくは、死ぬまで。
「……ユー……イ、リア……」
熱で喉が渇いて声にならない。
「もう大丈夫だから、安心して眠って……リーオン」
優しい声と手。
彼女はどうしてこんなにも献身的に看病してくれるのだろうか。
そんな疑問がいつも浮かび上がってくるのだけれど、問いかける機会もなく、ずるずると厚意に甘えてきてしまっている。
再び、歌声が聞こえてきた。
古い言葉だ。
神々が使う力ある言葉に旋律がのる。韻を踏み、繰り返す。
その言葉の意味をリーオンは知っていたはずだった。
彼もまた、神族であったからだ。
だが、今は太陽神の怒りに触れ、地上へと落とされた身。
神々の言葉も失われ、視力も奪われ、裸同然で地上にさまよっている。
待つのは、死のみ。
いつしか歌声に包まれながら眠りにつく。
幾度も襲う発作に体力は奪われながらも、長い間、地上をさまよい続けてきた。
ずっと床についたまま、動けなくなってどのくらいの日が過ぎたのだろう。
封じられた目は開くこともできず、暗闇のまま、奪われた光は戻ることはない。
それでも記憶の中の美しい月女神の御姿は決して色あせることなく、脳裏に刻み付けられている。
それが罪であっても。
罰を下されようとも、消せぬ想いがそこにはある。
手を伸ばせば触れることができそうな錯覚さえ覚え、そのたびに激しい発作が全身を苛む。
なるほど太陽神はこれほどまでにお怒りなのだと、思い知らされる。
永劫の闇。
想いを捨てぬ限り、彷徨えということなのだ、おそらく。
「リーオン、気がついた?」
明るい声。
衣擦れの音と、空気が動いて静かに人が近付いてくる気配。
ユーレイリアだ。
いつの間に眠ったのかも分からなかった。唐突な意識の消失と覚醒。
「のどが渇いているでしょう。薬湯を作ったから飲んで」
上半身を支えられるようにしてなんとか身を起こした。
鼻が曲がりそうな匂いを放つ薬湯を手渡され、思わず顔をしかめる。だが熱によってカラカラに乾いた喉は水分を欲している。一気に飲み干し、咳き込む羽目になった。
「慌てないで、リーオン」
背中をさするユーレイリアの手はとても温かく優しい。その手に支えられなければ、自分で立ち上がることもできないのだ。 情けない。自分の体なのに、なんともままならない。実際、薬湯など気休めでしかない。すでに彼女の歌によってしか、命を永らえる術は他にない。
癒しの力を持つ銀のルティナ。
月光石の力の具現は様々だが、彼女の力は歌声に宿っている。それが月光の歌姫と称される所以である。
「いつも迷惑をかけてしまうね、ユーレイリア」
「いいの。わたしはちっとも迷惑なんかじゃないから、そんなことは気にしなくていいのよ、リーオン」
暗闇の中では彼女の顔も見えない。いったいどんな顔をして笑っているのだろうか。心優しい娘だ。きっと優しい顔立ちをしているのだろう。彼女の歌を聞けばわかる。これほどまでに心や傷を癒す力を持っているのだから。
彼女の歌を聴いているときだけは、忘れることができる。
全身を苛む病の痛みも、心の奥にくすぶっている許されぬ想いも。
「ユーレイリア、歌ってくれないか」
「どこか痛むの!?」
驚いたようにユーレイリアは尋ねる。
「いいや、もうどこも痛くないよ。ただ君の歌が聞きたいんだ」
彼女が安堵の息をついたのがわかる。
「いいわ、お安い御用よ」
そうしてユーレイリアは歌い始める。
彼女の歌はいつも優しくて、だから甘えてしまうのだ。
眠らない月
静かな夜に 私は歌う
変わらない月
眠らない夜に あなたを想う
月夜の下で眠るあなたの瞼の上に
光のしずくをたらしましょう
これであなたの夢とつながった
眠らない月
眠らない夜
あなたの夢の中
いつでも会いにいけるでしょう
静かな夜に
変わらない月の姿を
あなたの瞼の上に
映しましょう
そうして
あなたの夢の中
いつでも会いにいけるでしょう
「リーオン、眠ってしまったの?」
寝息が聞こえてくる。
寝台に横たわり、穏やかな寝顔で眠る男を見て、ユーレイリアはほっと安堵した。
寝台のすぐ横に椅子を引き寄せ、寝顔を見つめる。痩せてこけてしまった頬や力なく投げ出された腕が痛々しい。
元々は輝くような金髪だったはずが、今はくすんだ茶色へと変化してしまっている。光を奪われ、永久に開かない瞳は若葉色。
「あんなにもあなたは光り輝いていたのに……」
リーオンは知らない。
あの時、あの場所で、太陽神が彼の瞳を焼き、彼から光を奪ったとき、自分もその場にいたことを。
旅先で会ったのは偶然ではなくて、追いかけてきたのだと。
でもそれを口にしたところでどうしようもない。
彼の想いはいまも変わらず月女神に向けられている。
太陽は月に恋をし、月も太陽を恋い慕う。
その身の内にかけらをもって生まれてきた者たちもまた、その業に縛られているのか、互いに対のかけらを探すのだ。
ねぇ わたしのかけら
どこにいるの
世界のかなた
光の向こう
いいえ かけらはすぐそばに
さがしてごらん
すぐそばに
たったひとつの 夢のかけら
己の中の真実を
さがしてごらん
夢のかけら
「わたしの……夢のかけら」
眠るリーオンの手をとって、そっと頬に押し当てる。冷たく骨ばった手。彼の命の灯はもう残り少ない。
「ねぇ、気付いて。私を見て……そうすればあなたは死なずにすむのよ?」
一筋の涙がこぼれ落ちていく。
願いはいまだ届かず、盲目の男は静かな眠りの中でしばしの休息を貪っていた。
ふわりと前触れもなく眠りの淵から舞い戻る。相変わらずの暗闇の中。夢の中のほうが色鮮やかで眩しい。
いつも夢に見るのはただ一人の女性。
誰よりも鮮やかに美しく、リーオンの心の大半を占めているのが、月女神ルティニネティだった。
禁じられてもなお想いは募る。
否、禁じられたが故に、行き場をなくした想いが、どうしようもなく胸を締め付ける。
女神の声、微笑み、芳しいほどの甘い香り、穏やかに輝く慈愛の光、その何もかも鮮明に覚えている。
触れたいと、思うことすら罪で。
それならばいっそのこと、あの時ひとおもいに、殺してくれればよかったものを、太陽神はそれすらも許さないのだ。
「ねぇ……私を見て……そうすれば、あなたは死なずにすむのよ?」
遠くからユーレイリアの声が聞こえる。まだ夢の中を漂っているような、曖昧な感覚の中で、彼女の声がまっすぐに届いてきた。その気持ちに応えられるはずもなかった。
「こんな、今にも死にそうなカーザと契約を交わしても仕方がないだろうに」
苦笑すら浮かべてしまう。
「君はまだ若いのだから。僕と運命を共にする必要はないよ」
「でも、自分の気持ちに嘘はつけないわ」
「だめだ。気持ちは嬉しいが、君が石化してしまうのは許さない」
「……でも、このままではあなたが……」
ユーレイリアが望むとおり、契約を結んで対のかけらになったとしても、おそらく未来は変わらないだろう。強大な神力故に、自らをも焼き尽くしてしまうカーザは対の銀のルティナを得ることで、生き長らえることが出来る。もともとカーザは短命なのだ。だがそれでも、ここまで消耗してしまっていては、一時的に回復はするだろうが、期限が少し延びるだけだろう。
「対のカーザを失った銀のルティナの末路を知らないわけではないだろうに」
再び夢の中へと引きずり込まれていくことに苛立ちながら、必死で諭す。この声がユーレイリアに聞こえているのかどうかも分からない。
ユーレイリアの声も遠のいていく。
それでも呼びかけずにはいられなかった。
幾度目かの覚醒。
リーオンは起き上がり、寝台から降りた。不思議なほど体は軽かった。いつもならそばにいるはずのユーレイリアの気配がない。訝しみながらも、まるで見えない月光に導かれるように、ふらふらと外に出て行った。
そして、閉ざされた暗闇の中に、突然降り注ぐ、光の奔流。
久しく忘れていた現実の光に、目を細めた。
まばゆいばかりの銀の光は月光だ。
その中に美しい女性の姿を見つけ、声を失った。
そこには、我を忘れるほどに恋焦がれた、麗しい月女神の姿があった。
どこからか、ユーレイリアの歌が聞こえていた。
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