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第五章
2.予言
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大切な宝物のような優しいまなざしで、青年は少女を見つめる。
光と闇の二つをその身にもつ、ルーリックが夢見た希望の少女。
惹かれ合いながらも、争いの絶えなかった二つの民。
光の民と闇の民の抗争をルーリックは忘れていない。忘れることなどできはしない。
決して相入れはしないのだと言って、自分に剣を向けた黒髪の青年を今でもルーリックは覚えている。
血にまみれつつ、ルーリックの腕の中で息を引き取ったディアナと言う名の少女を思い、涙を流しながら黒髪の青年は叫んでいた。
お前さえ、お前たちさえ現れなければ、と。
あのときの痛みを忘れることはできない。
ルーリックは固く目を閉じる。
エリスが二つの力を持っていることは、すぐに分かった。
容姿もさることながら、とても不思議な波動を投げ掛けていたから。
絶望していたルーリックにとって、エリスはまさに希望だったのだ。
ルーリックがエリスに光を送り続けているところへ、ナナが盆を下げ入って来た。
「エリスの具合はどうだい?」
「ええ、ようやく、落ち着きました」
ナナが安堵の表情をみせる。エリスを見つめながら、ルーリックはもう一人、小さな体で勇敢に立ち回る黒髪の少年を想う。
「イアンは、大丈夫でしょうか」
「何、あの子なら大丈夫さね。まだちんまいがね、わしゃ心配はしとらんよ」
ナナは豪快に笑って見せる。心配していないはずはないだろうに。
「相手が、あのファークスという男であれば、僕も心配はしません。ですが、もしもファークスの後ろに誰かいた場合を考えると…」
「ふん、それほどの大物が後ろに控えていると、お前さんは言いたいのかい?」
ルーリックは神妙に頷く。
「まあ、あの腰抜けが一人で行動を起こす筈もないし、その考えは的を得ているかも知れないねぇ」
ナナは盆を小さな円卓の上におくと、手近な椅子を引き寄せ、腰を下ろす。
「カイユが闇に覆われて一月以上と聞きました。この間、闇は消滅もせず、逆に成長を続けている。誰かが人為的に闇を呼び集めていることも考えられる」
「闇使いが数人がかりでも、それはきつくはないかい?それとも、よほど高位の闇使いの仕業なのか」
「考えられないことではないでしょう」
老婆は青年から視線を外さず、問答を繰り返す。青年は目を伏せぎみに少女を見ているので、老婆の目が何かを含んで光ったことに気が付かなかった。
「御神のご意志とは考えられないかい?」
「まさか!彼の君の闇は、大きくて深い。近付くもの総てを取り込む。比べものにならない」
青年はすぐさま切り返し、否定した。
予想どおりの展開に、老婆は微笑する。
「やけに詳しいねぇ。まるで、見たことがあるみたいじゃないか」
我に帰った青年は、引っ掛けられたことに気が付いて、黙り込む。にやにや笑っている老婆を、青年は鋭く睨みつけた。
「ナナ」
「おや、そんな怖い顔しないでおくれよ」
普通の人間であれば、その視線だけで相手を射殺せそうな鋭い視線を、老婆は肩を竦めただけでかわす。
ルーリックは強く頭を振った。ナナが知っていて、とぼけていることはすぐ分かる。
「忘れて下さい。そのまま、知らなかったことにして下さい」
ナナは不審げに眉をひそめる。
「何故、隠さなければいけないんだい? 光の子が、何故名を隠さなきゃならないんだい?」
「やっぱり…」
案の定、老婆が自分の素性を知っていることが分かって、ルーリックはうなだれた。
「下界に何か用があって降りてきているんだろう?お忍びってことかい?」
ルーリックは苦笑にもにた笑いを浮かべていた。
「べつにそういうわけではありません。でも、話す必要も、ないでしょう?」
「そういうもんかい?」
ナナは肩を竦めて見せた。
「僕は、時間から時間を旅している。僕自身は過去のものだ。いずれ去って行く。だったら普通の旅人のままにしておいてもおかしくはないでしょう」
「おかしくは、ないが…」
ナナが言いかけたとき、青年ははっとして振り返った。エリスが上体を起こし、青年を食い入るように見ていた。
「…ティアリス・エル・クルト?」
ギクリと青年の体が強張る。
そんな名で呼ばれていることも、青年は知っていた。
ティアリス・エル・クルト。
時間を旅する光の子。
いつから気付いていたのか、エリスは青い瞳に涙を浮かべながら、ルーリックを見上げている。
「ルーリックが、そうなの。だから、大丈夫だったのね」
「…ああ、僕を心配してくれてたんだね」
伸ばされた手を取り、エリスを横にさせ、ひざをついて屈み込む。
エリスは真っすぐな視線を、青年に傾けている。青年の瞳から何かを読み取ろうとする、真摯なまなざし。
「ぼくは大丈夫だから、エリス。今は君のほうが体を休めなくては…」
ルーリックはエリスにそっと手をかざし、光を送る。その光がエリスを眠りに誘う。
「昨日と逆ね」
エリスは安心しきった顔で笑い、すぐに寝息へと変わった。
ほうっと息をついて、ルーリックは立ち上がる。
青年が夢にまで見た黒髪の少女は、穏やかな寝息を立てて眠っている。
愛しいという感情とは、少し違う。
その感情は今も、ディアナにだけ向けられている。
青年の望みを具現した少女、エリス。
ルーリックは静かにエリスを見つめていた。
「ティアリス・エル・クルト、だと?」
緑の塔、ネリアムの私室でネリアムが、そしてカイユ入口で通信用の水晶を前にしてリョウラが、同時に愕然とつぶやいた。
リューイを通して映されるカイユの映像は、ナナの家の中、ルーリックとナナの会話をも鮮明に伝えていた。
リョウラは、空間に投影されている金色の青年を食い入るように見詰めた。
光り輝く金の髪、深い青の瞳、透き通るような白い膚。内面から輝くような美貌。決してそれは冷たい印象はなく、浮かぶ柔らかな微笑は、日の光にもにて温かい。
言い伝えどおりの光の子だ。
肖像画の間に飾られている、初代女王セリスティーナに瓜二つである。
「まさか、本当に…」
ネリアム老は言葉もなく、見入ってしまっている。
光使いなら、こうして見つめるだけで、新たな力が沸き上がるような高揚感を感じる。
体が勝手に震えて来て、止まらない。
それは、ネリアム老も同様らしい。
ティアリス・エル・クルトが存在していたのは、もう何百年も昔のことである。
アスファーダ建国の際にも、妹セリスティーナを助け、ランシェル公と共にティアルーヴァを設立した。
そして、それより過去にも存在していたと言い伝えられている。
ティアリス・エル・クルトは時の河を渡る光の旅人とさえ言われている。
そして、おそらく彼の君は、未来にも関与しているのだろう。
予言が語る。
『…大地の均衡破れ 紫闇広がり
混沌の大地 闇に沈まん…
光と闇の乙女
均衡破れし大地の姿をうつし
時の河の水面
失われし古えの
二つの大地 見定めぬ
時至りて 願う大地の名を唱えん
予言は果され 大地はかくなりぬ』
新世紀の到来を告げる予言。
それは、世界の終わりをも告げている。
「…アスファーダは失われるのか」
ネリアム老は力なく、座り込んだ。
闇の地に光と闇の乙女、そして光の子。すべてがそろってしまっている。
「そんな馬鹿なことがあってたまるものか! ネリアム老、バランスはまだ崩れていない。カイユが人為的に闇に取り込まれているのなら、それを正せば良いはずです」
氷と表される青年が、珍しく激高している。ネリアムは初めて、青年が熱くなった所を見た気がした。
ネリアム老の目にも険のんな光が宿る。
「…闇使いファークスという名が出ておったな」
独り言のようにつぶやくネリアム老を、リョウラは黙って頷いた。
「カイユに駐在していたはずであったが、どれ、調べて見よう」
ネリアム老は呼び鈴を鳴らすと、闇の塔へと使いを出した。
リョウラには、カイユへの突入、【浄化】への準備を改めて命じる。
「タイミングはそなたに任せる。用意が出来次第、早急に【浄化】を行うのだ」
「はっ!」
リョウラは頭を下げて、ネリアムとの通信を切った。
もはや一刻の猶予もない。
時間が経てば経つほど、事態はより悪い方向へと向かって行ってしまうのだ。
光と闇の二つをその身にもつ、ルーリックが夢見た希望の少女。
惹かれ合いながらも、争いの絶えなかった二つの民。
光の民と闇の民の抗争をルーリックは忘れていない。忘れることなどできはしない。
決して相入れはしないのだと言って、自分に剣を向けた黒髪の青年を今でもルーリックは覚えている。
血にまみれつつ、ルーリックの腕の中で息を引き取ったディアナと言う名の少女を思い、涙を流しながら黒髪の青年は叫んでいた。
お前さえ、お前たちさえ現れなければ、と。
あのときの痛みを忘れることはできない。
ルーリックは固く目を閉じる。
エリスが二つの力を持っていることは、すぐに分かった。
容姿もさることながら、とても不思議な波動を投げ掛けていたから。
絶望していたルーリックにとって、エリスはまさに希望だったのだ。
ルーリックがエリスに光を送り続けているところへ、ナナが盆を下げ入って来た。
「エリスの具合はどうだい?」
「ええ、ようやく、落ち着きました」
ナナが安堵の表情をみせる。エリスを見つめながら、ルーリックはもう一人、小さな体で勇敢に立ち回る黒髪の少年を想う。
「イアンは、大丈夫でしょうか」
「何、あの子なら大丈夫さね。まだちんまいがね、わしゃ心配はしとらんよ」
ナナは豪快に笑って見せる。心配していないはずはないだろうに。
「相手が、あのファークスという男であれば、僕も心配はしません。ですが、もしもファークスの後ろに誰かいた場合を考えると…」
「ふん、それほどの大物が後ろに控えていると、お前さんは言いたいのかい?」
ルーリックは神妙に頷く。
「まあ、あの腰抜けが一人で行動を起こす筈もないし、その考えは的を得ているかも知れないねぇ」
ナナは盆を小さな円卓の上におくと、手近な椅子を引き寄せ、腰を下ろす。
「カイユが闇に覆われて一月以上と聞きました。この間、闇は消滅もせず、逆に成長を続けている。誰かが人為的に闇を呼び集めていることも考えられる」
「闇使いが数人がかりでも、それはきつくはないかい?それとも、よほど高位の闇使いの仕業なのか」
「考えられないことではないでしょう」
老婆は青年から視線を外さず、問答を繰り返す。青年は目を伏せぎみに少女を見ているので、老婆の目が何かを含んで光ったことに気が付かなかった。
「御神のご意志とは考えられないかい?」
「まさか!彼の君の闇は、大きくて深い。近付くもの総てを取り込む。比べものにならない」
青年はすぐさま切り返し、否定した。
予想どおりの展開に、老婆は微笑する。
「やけに詳しいねぇ。まるで、見たことがあるみたいじゃないか」
我に帰った青年は、引っ掛けられたことに気が付いて、黙り込む。にやにや笑っている老婆を、青年は鋭く睨みつけた。
「ナナ」
「おや、そんな怖い顔しないでおくれよ」
普通の人間であれば、その視線だけで相手を射殺せそうな鋭い視線を、老婆は肩を竦めただけでかわす。
ルーリックは強く頭を振った。ナナが知っていて、とぼけていることはすぐ分かる。
「忘れて下さい。そのまま、知らなかったことにして下さい」
ナナは不審げに眉をひそめる。
「何故、隠さなければいけないんだい? 光の子が、何故名を隠さなきゃならないんだい?」
「やっぱり…」
案の定、老婆が自分の素性を知っていることが分かって、ルーリックはうなだれた。
「下界に何か用があって降りてきているんだろう?お忍びってことかい?」
ルーリックは苦笑にもにた笑いを浮かべていた。
「べつにそういうわけではありません。でも、話す必要も、ないでしょう?」
「そういうもんかい?」
ナナは肩を竦めて見せた。
「僕は、時間から時間を旅している。僕自身は過去のものだ。いずれ去って行く。だったら普通の旅人のままにしておいてもおかしくはないでしょう」
「おかしくは、ないが…」
ナナが言いかけたとき、青年ははっとして振り返った。エリスが上体を起こし、青年を食い入るように見ていた。
「…ティアリス・エル・クルト?」
ギクリと青年の体が強張る。
そんな名で呼ばれていることも、青年は知っていた。
ティアリス・エル・クルト。
時間を旅する光の子。
いつから気付いていたのか、エリスは青い瞳に涙を浮かべながら、ルーリックを見上げている。
「ルーリックが、そうなの。だから、大丈夫だったのね」
「…ああ、僕を心配してくれてたんだね」
伸ばされた手を取り、エリスを横にさせ、ひざをついて屈み込む。
エリスは真っすぐな視線を、青年に傾けている。青年の瞳から何かを読み取ろうとする、真摯なまなざし。
「ぼくは大丈夫だから、エリス。今は君のほうが体を休めなくては…」
ルーリックはエリスにそっと手をかざし、光を送る。その光がエリスを眠りに誘う。
「昨日と逆ね」
エリスは安心しきった顔で笑い、すぐに寝息へと変わった。
ほうっと息をついて、ルーリックは立ち上がる。
青年が夢にまで見た黒髪の少女は、穏やかな寝息を立てて眠っている。
愛しいという感情とは、少し違う。
その感情は今も、ディアナにだけ向けられている。
青年の望みを具現した少女、エリス。
ルーリックは静かにエリスを見つめていた。
「ティアリス・エル・クルト、だと?」
緑の塔、ネリアムの私室でネリアムが、そしてカイユ入口で通信用の水晶を前にしてリョウラが、同時に愕然とつぶやいた。
リューイを通して映されるカイユの映像は、ナナの家の中、ルーリックとナナの会話をも鮮明に伝えていた。
リョウラは、空間に投影されている金色の青年を食い入るように見詰めた。
光り輝く金の髪、深い青の瞳、透き通るような白い膚。内面から輝くような美貌。決してそれは冷たい印象はなく、浮かぶ柔らかな微笑は、日の光にもにて温かい。
言い伝えどおりの光の子だ。
肖像画の間に飾られている、初代女王セリスティーナに瓜二つである。
「まさか、本当に…」
ネリアム老は言葉もなく、見入ってしまっている。
光使いなら、こうして見つめるだけで、新たな力が沸き上がるような高揚感を感じる。
体が勝手に震えて来て、止まらない。
それは、ネリアム老も同様らしい。
ティアリス・エル・クルトが存在していたのは、もう何百年も昔のことである。
アスファーダ建国の際にも、妹セリスティーナを助け、ランシェル公と共にティアルーヴァを設立した。
そして、それより過去にも存在していたと言い伝えられている。
ティアリス・エル・クルトは時の河を渡る光の旅人とさえ言われている。
そして、おそらく彼の君は、未来にも関与しているのだろう。
予言が語る。
『…大地の均衡破れ 紫闇広がり
混沌の大地 闇に沈まん…
光と闇の乙女
均衡破れし大地の姿をうつし
時の河の水面
失われし古えの
二つの大地 見定めぬ
時至りて 願う大地の名を唱えん
予言は果され 大地はかくなりぬ』
新世紀の到来を告げる予言。
それは、世界の終わりをも告げている。
「…アスファーダは失われるのか」
ネリアム老は力なく、座り込んだ。
闇の地に光と闇の乙女、そして光の子。すべてがそろってしまっている。
「そんな馬鹿なことがあってたまるものか! ネリアム老、バランスはまだ崩れていない。カイユが人為的に闇に取り込まれているのなら、それを正せば良いはずです」
氷と表される青年が、珍しく激高している。ネリアムは初めて、青年が熱くなった所を見た気がした。
ネリアム老の目にも険のんな光が宿る。
「…闇使いファークスという名が出ておったな」
独り言のようにつぶやくネリアム老を、リョウラは黙って頷いた。
「カイユに駐在していたはずであったが、どれ、調べて見よう」
ネリアム老は呼び鈴を鳴らすと、闇の塔へと使いを出した。
リョウラには、カイユへの突入、【浄化】への準備を改めて命じる。
「タイミングはそなたに任せる。用意が出来次第、早急に【浄化】を行うのだ」
「はっ!」
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