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第1章 ウツロへ集いし者たち

第20話 チーム・ウツロ

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「面目ない……」

 ディオティマに対しなりゆきとはいえケンカをふっかけ、その結果宣戦布告を受けてしまったウツロは、さくらかんへ戻るや状況を説明し、このように頭を下げた。

「いや、壱騎いっきさんの言うとおり、結果は結果だ。おまえの判断は間違っちゃあいねえ。気にすんなって、ウツロ」

 南柾樹みなみ まさきはこんなふうにかばってみせた。

「ま、遅かれ早かれだし、いいんじゃない? わたしもまどろっこしいのは嫌いだしね」

 星川雅ほしかわ みやびもあきれる反面、ウツロの決断を称賛した。

「面白くなってきやがったぜ。血が騒ぐってもんよ」

 万城目日和まきめ ひよりは目つきを鋭くしている。

龍影会りゅうえいかいにディオティマか……敵は多いけれど、そのほうが燃えてくる。そうでしょ、みんな?」

 星川雅のふりに、一同はニヤリとした。

「まったく、どいつもこいつも。これもウツロ病の一種なのかな?」

 彼女は両手をひるがえしてため息をついた。

「で、これからどうするんだ? 待ってるだけってのもなんだかな~だし。いっそこっちからしかけるか?」

 万城目日和は好戦的だ。

 ウツロは少し考えて、

「いや、壱騎さんの御前試合の件もあるし、少なくともそれが済むまでは動かないほうがいいと思う。どうだろう、みんな?」

 こう提案した。

「そうだな。あれもこれもじゃ収集がつかねえし。それが一番だと思う。壱騎さんはどうっすか?」

 南柾樹はウツロの判断を合理的と見なし、姫神壱騎ひめがみ いっきへ確認を取る。

「なんだか申し訳ないよ。みんな俺の都合につきあってくれて」

 彼は顔をくもらせた。

「壱騎さん、どうか気に病まないでください。誤解はあるのかもしれないけど、俺たちはあなたの力になりたいんです」

「……」

 あいかわらず晴れわたったまなざし。

 嘘などついてはいない、大真面目だ。

 姫神壱騎はまた打ちのめされた気がして、くすっと笑った。

「俺よりも若いのに、みんなお人よしだね。そして、強い」

 一同は恐縮した。

「向き合っているって意味でね。それなら俺も、覚悟を決めなきゃ」

「壱騎さん……」

 その眼光が凛としていく様を、全員が見た。

「この姫神壱騎、みんなという存在に出会えたこと、心から感謝する。そして、みんなの心意気と勇気に敬意を表し、チーム・ウツロへの入団を志願する」

「チーム・ウツロ……」

 姫神壱騎は決然として申し出をした。

 一同はびっくりしたが、解答など決まりきっていた。

 ウツロもその思いに答える。

「壱騎さん、あなたという人間を、心の底から尊敬します。このウツロ、平伏してあなたを仲間に迎え入れたい。どうか、よろしくお願いします」

 周囲はフッとほほえんだ。

「う~ん、なんだか堅いなあ」

「そ、そうでしょうか?」

 姫神壱騎はウツロの顔をのぞきこむ。

「そこはさ、友達でいいんじゃない?」

「友達……」

 みんなの顔がほころんだ。

「壱騎さん、改めてよろしくお願いします」

 真田虎太郎は両手を広げてペコリとした。

「特生対本部に許可を取ってあります。壱騎さんのお部屋も用意してありますよ?」

 星川雅が粋なはからいを提案する。

「マンションじゃあ、いろいろと経費がかかるっしょ? 壱騎さん、遠慮しねえでここへ住んだらいい」

 南柾樹も乗り気だ。

「ふふふ、これで24時間、壱騎さんといられるんだね」

 真田龍子さなだ りょうこは乙女になっている。

「龍子、どういう意味だい?」

「だってウツロ、最近なんだか冷たいしぃ? それに年上って、けっこう興味あるんだあ」

 姫神壱騎の手を取って、ニコニコとする。

「うわあ、龍子! やっぱりてめぇビ〇チかよ! 男なら誰でも〇開くんだろ!?」

「なんだって、このトカゲ女? あんたは中指とでもよろしくやってればいいんだよ!」

「き、きい~っ! てめえ、言わせておけば!」

「や~いや~い、トカゲ女~」

「うるせえ、このジャージスパッツ女!」

 あの清楚だった龍子はどこへ行ってしまったのか?

 いや、それも俺のエゴなのか?

 ウツロは悶々と、そんなことを考えていた。

「やっぱ素敵だね、君たちは」

 姫神壱騎はその光景にほっこりし、後輩ながら頼れるメンバーをうれしく思った。

 こうして彼は、正式にウツロたちとパーティを組むことになったのである。

   *

 その夜――

 日付が変わるころ、自室で思索にふけっていたウツロは、かすかな気配を感じて窓の外を見た。

「日和……」

 薄暗いが、確かに万城目日和だ。

 彼女は南側の勝手口から周囲を確認して外へと出て行った。

 建物の位置的に、その場所を目視できるのはウツロの部屋からのみである。

「まさか……」

 彼は猛烈な不安に襲われ、急いで身支度をすると、ほかのメンバーに気づかれないように、そっと万城目日和を追った。

 事件が起こったのは、そのすぐあとである。
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