ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき

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甘い二人

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昌磨は、朝起きて欲望に押し流された自分を責めた。いや、我慢できず顔を祐樹の胸に埋めて押し倒した時点ですでに、負けていた。しかし、今は自分を責めている時間はない。昨日の計画を今ここで達成させなければならない。昌磨は起き上がってベットから離れようとしたが、隣で寝ている祐樹に腕をつかまれた。もしかして、起こしてしまったかと思ったが天使のように安らかな表情で寝ているから無意識の動きなのだろう。昌磨はその手を引き裂かれる思いではがし、後ろ髪を引っ張られながらベットから降りた。

朝起きた祐樹はベットに昌磨がいないことに気が付いた。シーツに触れるとまだ暖かく、いなくなったばかりだとわかる。昨日脱いだシャツを羽織、下着をつけて隣の部屋のドアを開けた。しかし、そこは部屋ではなく洗面所で、昌磨はいなかった。
トイレではないなら、朝食を作りにキッチンに向かったのだろうか。昨日の道順を思い出し廊下に出た。そこには、一本のバラが落ちていた。こんなところにバラ?どうして?進むと何本もの赤色の薔薇が道を作るように落ちている。祐樹は拾い上げて胸に抱えた。運んでいるときに、落としたのにしては変な落ち方だ。
全て拾い上げて進むと、祐樹が入ったことのない部屋の前にたどり着いた。ノックをして遠慮がちにドアを開けた。部屋は、一面薔薇に埋もれていた。どれほどの薔薇が使われているか想像できない。花においにむせ返る。昌磨は燕尾服姿でその中央に立っていた。バックには、ハート形のバルーンがいくつもふわふわと浮かんでいる。
「おはようございます。」
「おはよう。」祐樹は条件反射で答えた。この部屋はと聞こうとしたが手招きをされたので、おずおずと昌磨に近づく。もう一度、聞いてみようとしたがその前に昌磨は、祐樹の立つ位置から一歩引いて跪いた。手のひらには、小さなケースがのっている。中には花をイメージしたデザインで、ダイヤモンドが丁寧に埋め込まれた指輪が入っていた。
「僕と、結婚してくれませんか。」
「いきなり、すぎるだろ。」馬鹿じゃねえのと言おうとしたが、目頭が熱くなって言葉が出なかった。
「それについては、僕も考えましたが、この先の人生を考えたとき祐樹さん以外の相手が思いつきませんでした。どうせ、結果は同じです。それなら、早い方がいいと思いませんか。」
「男同士って無理だろ。」今度は鼻の奥がツーンとしてきた。
「僕は、アメリカ国籍なので関係ありません。」
祐樹はそれでも悪態をつこうとしたが、言葉が続かなかった。涙で声が出ない。
「はいといってください。」
祐樹は声を出そうとしたが、その簡単な二文字が言えない。代わりに、昌磨に飛びついて激しく首を振った。我慢していた涙がとめどなく頬を伝って昌磨の首元に落ちた。昌磨はその熱いしずくを誇らしく思った。
祐樹の気持ちが落ち着いたころで、昌磨はほとんど裸のような姿の祐樹に背広をかけた。寝室に戻ろうとすると、お姫様抱っこを要求されたので、もう一度跪き仰せのままにと大げさに返事をした。笑われたが本望だ。その後祐樹を抱っこして、寝室まで運んだ。
「なあ、あの薔薇どのくらいあるんだよ。」
「わかりません。1001本にしようかと思ったのですが、思ったよりボリュームがなくって部屋を埋めるだけとオーダーしました。」
あの広いホールの部屋を埋めるだけだと考えると、数ではなく重量で考えた方がよさそうだ。
「でも、道しるべとして床に置いた薔薇の数は11本です。」
「何か意味があるのか?」
「秘密です。」
「昌磨の携帯電話はどこ?」
「後ろポケットです。」
腕を回し、わざと昌磨のお尻をつかんでから携帯電話を抜いた。
「セクハラですよ。」
さっさと教えないほうが悪い。祐樹は昌磨を無視して11本の薔薇の意味を調べた。ついでに、1001本の意味も。
「きざなやつ。」
「でも、嫌いではないでしょ?」
否定できないのが悔しい。
「やっぱり、思考回路が童貞だな。」
「また、言いましたね。昨日、そうではないと証明したはずです。」
昌磨は童貞と言われることを結構気にしている。
「そうだったかな。」
「そうです。」
「なあ、忘れたって言ったらどうする?」祐樹は挑戦的な目で昌磨を見上げた。
寝室にはとっくに着いていて、祐樹はベットの上にそっとおろされた。
昌磨はネクタイを指で緩めて抜き取った。
「もう一度、そうではないと証明して見せます。」
昌磨は、祐樹に優しく触れて体重をゆっくり乗せるように覆いかぶさった。

昌磨の提案で、祐樹の学校が夏休みに入ってから二人は昌磨の兄が所有する南の国のプライベートリゾートビーチに遊びに来ていた。二人が、部屋に入って、ベットをみるとシーツの上には南国の花びらで作られたハート形のアーチがあった。昌磨の兄が気遣ってくれたのだろう、部屋のところどころに花が飾られ祐樹を赤面させた。どうやらロマンチック体質は遺伝のようだ。テーブルの上にはウェルカムドリンクのシャンパンが用意されており、二人はさっそくそれをベットの上で楽しんだ。しかし、祐樹の方が昌磨より弱く既に酔っぱらい始めていた。顔の色は変化がないせいか、昌磨はそれに全く気が付いていない。
「なあ、昌磨って俺より年下なんだろ。本当はいくつなんだよ。」
祐樹は、忘れたことを思い出して聞いたが、昌磨は直ぐに答えてくれなかった。
「なぁ、答えろよ。」
「じゅう、きゅう」
「19歳?お酒飲んじゃダメじゃん。」
「僕はアメリカ人で、ここは海外なので、許してください。」
「それもそうか。でも、本当は16くらいじゃない。」
「そんなに、幼くありません。」
「そうかな、最近気が付いたけど子供っぽいよな。」
昌磨は、上半身を勢いよく起こした。
「具体的に教えてください。改善します。」
年齢で嘘をついたのは、年下すぎると相手にされないのではないかと危惧したからだ。
「教えてもらおうとしてる時点で、もうダメ。大人なら自分で見つけて改善するもんだろ。」
言われれば、そうだ。しかし、直ぐには思いつかない。
「ヒントだけください。」
「今まで何人の女の子と付き合ったの?」
「それって、関係ありますか?」
「あるよ。大いにある。」
「それを、答えるのはちょっと。」昌磨は予想外の質問に困った。
「答えないなら、こっちで勝手に予想するよ。俺の考えでは、50人は固いな。」
「そんなに、ありません。付きあったと言っていいのは、10人程度です。」
「へえ、『付きあったと言っていいのは、10人程度』ね。」
昌磨はきれいに、祐樹の罠に引っかかった。
「程度ってどのくらい?19人とか?」
「そんなにはありません。」
「付き合ったといっていい、の意味は何?あいまいな関係もあったってこと?」
「それは、」昌磨は言葉を濁した。どう答えても、いい方向に物事が進まない。
そこで、祐樹の携帯電話の着信音が鳴り響いた。天の助けだと思った相手は母だった。
「なぜ、母と?」
「色々ね。それより、昌磨の母親に聞けばわかるかも。」
昌磨は慌てた。確かに、母なら昌磨の付き合ってきた人数を完璧とはいかないでも把握しているはずだ。だが、大げさに物事を伝えるのが母の悪い癖だ。正確な数字ではなく、息子ひいきに、もてたことをひけらかそうとして数字は大きく言われる可能性も否定できない。
「それは、その良くないかと。」昌磨は祐樹の携帯電話に手をかけた。
「離せよ。」
「できません。」
祐樹は、突然屈んで携帯電話を掴んでいる手にキスをした。それも、一度ではなく何度も、バードキスだが、昌磨はたまらず、手を引っ込めた。
その隙に、素早く文字を打ち込んで昌磨の母親にメッセージを送った。
母からの返信は直ぐ来て、祐樹は画面を見て笑っていた。
気になって昌磨は何ですか?と聞く。祐樹はメッセージが開かれた画面を差し出した。
『0人よ。』母なりに気を遣ってくれたのかもしれない。しかし、この場では逆効果だ。
「昌磨は可愛いよな。初心だし。本当は童貞なのに10人ほどの女性と付き合ったって見栄を張るし。」
「張ってはいません。」
「じゃあ、正確な数字を教えて。」
「ですから、それが子供っぽさと何が関係あるのか教えてください。」
「え~駄目だよ。関係性を教えたら、昌磨直しちゃうでしょ。俺、子供っぽい昌磨好き。」
この時点になってようやく、自分は遊ばれていることに気が付いた。
「祐樹さん、こんなこと言いたくありませんが、人をからかうのは悪趣味です。」
「昌磨は、優しくってかっこよくって、完璧な人間だよな。することなすことスマートだし。大胆な時もあるけど、それでいて紳士的だし。それに、可愛いところもある。」
昌磨は全身が熱くなっていくのを感じた。こんなこと、普段は絶対に言ってくれない。昌磨はお酒に酔うことはない。だから、気が付かなかったが、祐樹は大分酔っぱらっている。祐樹は酔うと、普段の倍、手に負えなくなる。今後は絶対に飲ませないようにしよう。酔っぱらった祐樹には勝てない。
昌磨はそのまま、ベットに倒れこんで、好きにしてくださいと諦めた。
「なんだ、詰まんないの。」
昌磨は何も言い返さず、微動だにしない。
「なあ~しょうま~。ごめんって、遊びすぎた。」
祐樹が腕に絡みついてくる様子は可愛かった。思わずにやけてしまう。それを悟られないように顔を背けた。
祐樹は、昌磨のその様子を見て、勢いよく腕を引っ張って、無理やり自分の方に引き寄せた。
「でも、たとえ昌磨が何人と付き合おうと、実は童貞だろうと俺は大好きだけどね。」耳元で囁くように言われ、昌磨はあえなく撃沈した。やっぱり、悪魔だ。敵わない。
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