異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

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4章

259 第二回ランダムバトル

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 システマからの五分前通告を聞いた僕とシエラは、クマ石像の前から《ウェザリア》の本拠へ転移してきた。


「次は私が行くねっ」


 緊急会議が始まってすぐ、ミレアがランダムバトルへの参加を表明した。

 彼女は、頭脳戦・魔法戦・武術戦――どのような競技も死角なし。
 魔法と頭脳に至っては、このゲーム内で勝てる奴が居るのか怪しいレベルだ。
 正直、僕が出向くよりも余程安心して待っていられることだろう。

 ……あれ? 
 なんか負けフラグっぽくなってないか?
 心配しなくとも大丈夫、だよな?

 そんな不安をかるーく放り投げるように笑い、僕と守役を変わったミレアは、全力ダッシュで緑のゲートへと飛び込んだ。

 残された僕たちは、敵がやってくるまでは思い思いに時間を潰す。
 アリアさんは弓の修練、レインは満タンのMP消費もかねた土魔法の制御特訓、シエラは第二拠点に張りついてクマの守護。

 ……クマを守るって、相当みょうちきりんな表現だな。

 ミアはというと、ギルド戦に持ち込んだ素材で僕の投槍を作製に精を出している。あと少しで完成するそうなので、僕は近くでスキル上げをしながら待機。


《第二職業が<火焔魔法士>Lv12になりました》
《第四職業が<土石魔法士>Lv18になりました》
《熟練度が一定に達し【火焔魔法】スキルがLv13になりました》
《熟練度が一定に達し【土石魔法】スキルがLv18になりました》
《熟練度が一定に達し【中級料理】スキルがLv17になりました》
《熟練度が一定に達し【気配遮断】スキルがLv11になりました》
《熟練度が一定に達し【魔力遮断】スキルがLv11になりました》
《熟練度が一定に達し【連携】スキルがLv14になりました》


 背後にて、たくさんの火焔玉と岩玉を、8の字型に回転させる。
 それと同時進行で、適当な食糧から料理を数品作り上げる。
 ミアの邪魔にならないよう、気配と魔力を立つのも忘れない。

 かなりの荒行だったのか、スキルレベルがにょきにょきと上昇した。特に【土石魔法】など、驚きのスリーランクアップである。

 完成した料理は、酢豚。
 バーチャル世界とはいえ、十分もかからずに完成するのは凄い。 

 大会中の空腹度パラメータは増減しない設定みたいだが、飲食が禁止されているわけでもない。夕食の時間にでも、みんなにご馳走しよう。 

 そうと決まれば味見を……うん、美味しい。


《熟練度が一定に達し【嗅覚強化】スキルがLv4になりました》
《熟練度が一定に達し【味覚強化】スキルがLv3になりました》


 酢豚だけじゃ寂しいし、もう一品くらい作っておこう。
 


 ○○○



《第四職業が<土石魔法士>Lv19になりました》
《熟練度が一定に達し【土石魔法】スキルがLv19になりました》
《熟練度が一定に達し【中級料理】スキルがLv18になりました》
《熟練度が一定に達し【嗅覚強化】スキルがLv10になりました》
《【嗅覚強化】スキルが最高値になりました》
《熟練度が一定に達し【味覚強化】スキルがLv10になりました》
《【味覚強化】スキルが最高値になりました》


 テーブルの料理を仕舞っていると、左前方の地面から白く光る非固体ゲートがせり上がってきた。もう十分経ったのか。敵の襲来もなく穏やかな時間だった。

 当然のようにゲートから出てきたミレアは、いつも通り元気いっぱい……ではないな。ほんの少し気分が落ちてるっぽい。よく観察しないと分からないレベルだが。


「おかえり。無事なようで良かった。んで、なんか嫌なことでもあったか?」

「え? うーん……ちょっとだけ? 大したことじゃないから大丈夫だよ」

「そっか。お前がそう言うなら、本当に問題はないんだろうな」


 その辺りの感覚は、ミレアを信用している。僕もそうだが、何か悪影響があることなら、互いに迷わず相談を持ち掛けるタイプだからな。
 下手に隠して後に尾を引くより、恥ずかしい思いをしてでも問題の芽を手早く摘む。そうした方が相手に迷惑をかけないし、鬱憤を溜めなくて済むのだ。

 ま、これは僕とミレアが、互いに心の底から信頼しあっているからこそ、迷いなく取れる手段になっているのだけども。


「話したくないわけじゃないんだな? なら、何があったのかキリキリ吐くといい。豚丼食べるか? どこぞで戦争に巻き込まれてる両親が泣くぞ?」


 何となくノリで、刑事ドラマの取り調べを真似してみた。
 言ってから気づいたが、親が戦争に巻き込まれたら泣くのは寧ろ僕たちの方だわ。

 するとミレアは、僕がテーブルに出したどんぶりを「むむむっ」と注視。そののち、手を合わせ首をコテンと傾げ、うるうるとした瞳で上目遣いに。


「アスト兄アスト兄。私、今は豚丼より牛丼がいいなー、なんて」

「じゃあ食べんでよろしい。無理矢理吐かせる方針に変更だ」

「やっぱり豚丼でいいよっ! だから、これを引っ込めようとしないでっ! お願いだから蓋から手を離してアスト兄っ!!」


 僕はため息を吐いて、どんぶりから手を離した。

 花が咲いたような笑顔でお礼を言ったミレアは、すぐさま「いただきます!」と挨拶し、できたての豚丼を美味しそうに頬張りだした。その顔といったらとてもとても幸せそうで、作ったこっちまで嬉しくなる。

 目に入れても痛くないというのは、こういうことを言うのだろうな。 
 両親、妹、恋人に恵まれ、僕はこの上ない幸せ者だ。冗談抜きで、世界一幸せを謳歌している自信がある。恥ずかしいからわざわざ口には出さないけどな。 


「さあ、色々と話してもらおうか。まず、どんなゲームだったんだ?」

「んぐ……えっとね、今回は頭脳戦+バトルみたいなルールだったよ。あ、ゲーム名は『アクロバティック人狼ゲーム』ね」

「うん。名前だけ聞いても訳わからん」


 いやいや……『アクロバティック人狼ゲーム』ってどんなゲームだよ。

 『人狼ゲーム』は知ってる。
 村人陣営と人狼陣営に分かれて戦うアレだよな?
 実際にやったことはないに等しいが、ルールはおおよそ把握している。

 だからこそ、『アクロバティック』の追加が意味わからん。
 アクロバティックな人狼ゲームって、どんな人狼ゲームだよ。元々のルールにアクション要素なんて一つもないじゃないか。
 夜時間、人狼に襲撃されたらバトル勃発なのか?
 そんな馬鹿な。ゲームバランスがしっちゃかめっちゃかになるだろ。

 あり得ない予想を頭から追い出して、ミレアに詳しい内容を尋ねる。 


「細かいルール? 基本的には普通の人狼ゲームと同じだよ。夜時間は実際に寝ないといけない上、人狼に襲撃されたら返り討ちにすることもできるけどね」


 まさかまさかのトンデモ予想がストライク!

 チーム分けとか、村会議とか、ほかにもオリジナルと違う部分はあったらしいけど……そこのところは説明を割愛された。後で時間があったら話すそうだ。

 というか、どれだけ長時間ゲームやってたんだ……?
 一回やって終わり、ってわけじゃないんだよな?


「形式は勝ち抜け戦か? 最終結果はどうだったんだ?」

「ううん。勝ち抜けより総当たり戦に近かったかな。順位を決めたのは最終的な勝率。私は一位だったよ」


 わぁ。負けフラグを真っ向からへし折った。
 

「優勝おめでとう。そしてお疲れ様。それで、だ。落ち込んでた理由は?」

「本当に些細なことなんだけど……最終組の人狼ゲームが終わった後、勝率順に上位十人の名前が大画面に表示されたの。もちろん、具体的な勝率も書かれてた」

「あー、何となく読めた。要は、化け物扱いされたわけだ」

「正解。30戦30勝0敗――勝率100%だったの。精神的に疲れてたのもあるんだろうけど、隣の席だった二位の子が怯えたように私を見て、『うそ、でしょ……! っ、この、化け物っ……!』って。その子は八割近く勝ってて一位の自信があったから、余計にショックだったみたい」


 無駄にその子の真似に力が入っているのはさておき。

 やはり、ミレアの頭脳を傍から見れば、さも異常に映るのだろう。じゃんけんで三十連勝されると考えれば、まったく理解できないでもない。
 ただ、色々とおかしな家庭で育ったおかげか、僕にとってのミレアは頭が良くて可愛いだけの妹である。

 信じられるか?
 うちの父親、分厚い本の表紙だを見ただけで、見てないはずの中身まで、一言一句違わず暗記できるんだぜ……?
 うちの母親、襲ってきた熊を刀で細切れにできるんだぜ……?


「災難だったな。よし、夕飯のゴーヤは減量してやろう」

「ほんとにっ? やったー!」


 物凄くいまさらな反応のされ方だし、ミレアも早々に吹っ切ったようだ。もはや喜ぶ彼女の顔に、陰りは一欠片も残されていない。
 
 たとえどれだけ異端扱いされようとも、ただ一人理解者がいてくれれば、それだけで心は救われるんだ。僕もミレアも、そのことがよーく分かっている。

 僕にとっての美鈴も、美鈴にとっての僕も……決して替えの利かない存在であり、失ってはならないパーツ。

 僕は彼女が、どこまでも幸せになることを願っている。

 それがゆえに……あの決勝戦の賭けなのだ。


「ところで、優勝ボーナスは何を選んだんだ?」

「もちろん、【月魔法】だよ!」


 なにが『もちろん』なのかは分からないが、僕は笑みを浮かべ一言、「そうか」とだけ答えた。


 ……『金のたわし』、マジ許すまじ。




―――――――――――――――――――――――――――――――
『ギルド対抗「攻城戦」開催中!』 <残り十八時間四十五分>

 ・参加ギルド 302ギルド
 ・残りギルド 196ギルド/302ギルド

 ・獲得フラッグ52 喪失フラッグ0
 ・獲得ポイント52 喪失ポイント0

 ・総合ポイント52

 ・広域マップ確認
 ・周辺マップ確認《ウェザリア》《第二拠点》
 ・空き陣地争奪戦
 ・―――――
―――――――――――――――――――――――――――――――

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