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3章

86 父親からの手紙

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「冒険者ギルドにもそんな事情があったんですね・・・」

「ああ。細部までしっかりしているから、蔑ろにすると手痛いしっぺ返しを喰らいそうだ。レインも気を付けてな?」


 レインとしばらく雑談していると、ギルドの話になった。
 流石にリアルの話はしていないが、そこはそういうものなので仕方ない。


「勿論そのつもりです。・・・あ、そろそろ時間ですので落ちますね?」

「ああ。今日もお疲れ様。それと、また明日」

「はい、また明日・・・・・・あの、今度リアルでも会いませんか・・・?それで、リアルの話もしましょう・・・!では、失礼します!」

「あ、ああ。そうだ、な・・・?」


 言い切る前にレインはログアウトしてしまった。
 少々名残惜しくはあるが、幸せな時間だったな。

 さ、僕もログアウトしよう。









 ログアウトしてしばらく後、ベッドに入って寝ようとすると、少し遅れてログアウトしてきた美鈴が驚きの行動に出た。


「美鈴、何故僕のベッドに入ってくるんだ・・・?今朝だけじゃなかったのか?」

「最近一緒に寝てなかったから、しばらく一緒に寝ようよ、お兄ちゃん!」

「いや・・・美鈴、もう高校生なんだし・・・その、色々と大丈夫なのか?」


 僕は構わないが、こんな兄離れできない状態では恋人とかできないぞ?
 本当に大丈夫なのだろうか。


「大丈夫。さあ、早く寝て早く起きるよ!」

「はいはい・・・。じゃあ、明かりを消すな?」


 小さな音とともに明かりは消え、部屋の中は真っ暗に。


「・・・美鈴?あんまり抱き締められると眠り辛いんだが?」

「えー?むぅ・・・」


 不満そうな声を出しつつも少し緩くなったので、問題なく眠れそうだ。

 僕はそのまま瞳を閉じて、眠りに落ちた。









 ゲーム開始から十一日目の火曜日の朝。

 いつもと同じような朝・・・ではなく、久しぶりに美鈴に密着されて迎えた朝になった。
 美鈴を起こして朝食の支度をする。

 朝食が完成してテーブルに運んだ後、美鈴がやってきた。


「お兄ちゃん!家のポストに手紙が届いてたよ!お父さんから!」

「なぬ?珍しいこともあるもんだな・・・」


 うちの両親は海外に出張中のはずだが、手紙が届くことはおかしくない。
 以前から定期的に届いていたからな。
 だが、この時期にというのは珍しいのだ。

 封を切って、手紙の内容を二人で読んでいく。





<愛する息子と娘へ>


「相変わらず恥ずかしげもなくこういうことを書くんだよな・・・」

「お父さんらしいよね・・・」


<日本は暑さが厳しくなる時期ですが、元気に過ごしていますか?>


「心配性、という訳でもないんだろうけど・・・」

「はーい!暑い中でもお兄ちゃんの料理のおかげで元気!」


<こちらは氷点下五十度ですので大変涼しいですね。羨ましいでしょう?>


「氷点下!?我が両親はどこの国へ出張に行ってるんだ・・・!?」

「涼しいどころじゃないし羨ましくもないよっ!?」


<そういえば、昨日から私のいる国で戦争が始まりました>


「戦争・・・?今時戦争なんてやってないから、内戦か何かか?」

「戦争!?内戦!?お父さんとお母さん大丈夫なの!?」

「危険なら手紙なんてよこさないだろう。もう安全な場所に避難したはずだ」


<すぐ傍を矢が飛び交う中、この手紙を書いております>


「「矢が飛び交う!?」」


<まあ、そんなことはどうでも良いんです>


「「どうでもよくない!」」


<飛鳥は美鈴と同衾してはいないでしょうね?手を出したらお祝いしますよ?>


「タイミングピッタリ過ぎじゃないか!?」

「お兄ちゃん、お父さんはお祝いしてくれるんだって!」

「普通兄妹で何やってるんだと怒るところだろう!何故祝う!?」


<あと、飛鳥が最近会った女性にデレデレしているというのは本当ですか?>


「デレデレしてない!だが、何故知ってるんだ・・・?」

「ただの当てずっぽう、じゃなさそうだよね」


<まさかとは思いますが、美鈴と二股をかけてはいませんよね?>


「二股もなにも美鈴とは何でもないんだが・・・」

「優香の方は否定しないんだね?」

「・・・言葉の綾だからな?」


<いいですか?ちゃんと二人とも幸せにするのですよ?>


「「・・・・・・。」」


<『第X世界線アイスワールド・ブリザード王国』から愛をこめて>


「どこだよ!?」

「どこのことなの!?」



 手紙はそこで終わっていた。

 ツッコミどころが多すぎてどこからツッコんでいいのかわからん。

 この手紙は父のジョークだと思っておこう。
 うん。その方が精神衛生上よろしいだろう。

 さ、朝食を頂いてFSOにログインしよう!

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