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3章
111 迷子とクエスト
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闘技大会の受付が開始された、だと!?
「レイン、どういうことなのっ!」
「えっ、と・・・今掲示板を見たんですが、闘技場で受付が始まっているという書き込みがあるんです」
なるほど。
どういう風に参加登録すればいいのか分からずやきもきしていたのだが・・・そういう手法なのか。
そうと分かれば・・・!
「「ちょっと出かけてくる!」」
「あっ、待ってくださいっ!私も行きます・・・!」
「レイン、あなたはスケイルメイルの作業中でしょう?」
「あっ、そうでした・・・!」
レインはアリアさんにそう言われてしょんぼりしてしまった。
別に、今すぐ選手登録しなくてはいけないわけではないのにな。
そんなに今すぐ登録したかったのか?
そもそも、レインも個人戦に出るんだな。
とまあ、そういうことで、僕とシエラは闘技場へ向かった。
「・・・迷ったな」
「・・・迷ったね」
闘技場へ向かう途中で見事に道に迷ってしまった。
アライアの町の居住区は広すぎるんだ。その上、地図も無いからな。
「アストは道も分からず走ってたの?」
「その言葉、そっくりそのままシエラに返すぞ」
どうやら、互いに相手を頼りに走っていたようだ。
何と間抜けな話だろうか。
「一応、システムマップはあるから元の場所へは戻れると思うが・・・」
「流石に面倒だよね?もう結構走ったし」
システムウィンドウのマップには中央広場付近から、通ってきた道が記録されているので、戻れないということはあるまい。
だが、戻れたところで意味がないのだ。
「掲示板はどうなの?」
「うーん・・・みんな道に迷っているみたいだな。
場所についての書き込みは一つも見当たらない」
「これはいよいよ闇雲に探すしかないかな・・・?」
「勘弁してくれ・・・」
未だ一パーセント未満しかマッピングできていないのに、闇雲に探したくない。
「NPCに聞こうにも、この辺り人通りがないんだけど・・・」
「そりゃあ、なあ・・・。墓地に人は居ないだろうよ」
適当に走ってたら墓地に着いてしまった件。
人通りのある場所まで戻るのは、骨が折れる。
どうしてこうなった。
「え・・・アスト様?」
「「うん?」」
突然名前を呼ばれたので振り返ってみると、そこに居たのはソフィア。
ちなみに、本日は眼鏡無しの私服っぽい。
冒険者ギルドの受付嬢が何故ここに?多分休みの日なんだろうけど。
「アスト、知り合い?」
「ああ。ギルドの受付さん、ソフィアだ。
あー、実は闘技場を探していたんだが、道に迷ってしまったんだ」
少々恥ずかしいが、ここは素直に白状しよう。
「闘技場、でしたら・・・正反対ですよ?」
「「・・・・・・」」
二人とも、思っていたよりずっと方向音痴だったらしい。
シエラは恥ずかしそうに俯いている。堂々としていればいいのに。
「よろしければ、この後ご案内致しましょうか?」
「「・・・よろしくお願いします」」
この申し出を断る選択肢は無い。
恥ずかしくても受けるべし。
「そういえば、ソフィアはここに何をしに来たんだ?」
「私はお墓参りですよ。祖父母のお墓がここにありますので」
「そ、そうなんだ・・・」
設定が凝っている、という考え方はしない方がいいな。
シエラはどう反応していいのか分からずに困っているようだ。
多分だけど、素直に受け止めて良いと思うぞ?
墓地から闘技場へ向かう途中で、ソフィアの話を聞いてみた。
「以前、私たち家族が住んでいた町に魔物が侵入しまして。
生憎と戦える父と母が外出中だったのも災いし、残念ながら祖父母は・・・。
その時家に居た幼い兄妹を守って・・・立派な最後だったと思います」
「そうか・・・。誰にでも出来ることじゃないな。心の底から尊敬するよ」
「ふふっ・・・ありがとうございます。
アスト様にそう言って頂けて、祖父母もきっと喜んでいます」
「ん?僕に褒められたくらいで喜ぶかね?」
「ええ。それはもう」
微笑みを浮かべているソフィアが嘘を吐いているようには見えないが・・・。
そこまで大した人物ではないぞ、僕は。
「あ、裏道を通りますので、逸れないように気を付けてくださいね?」
「ああ。逸れたら今度こそ迷子だからな。絶対に御免だ」
「あははは・・・」
今の今まで居心地が悪そうにしていたシエラも笑うしかない。
裏道は入り組んでいるのでマップがあっても脱出が面倒そうなのだ。
裏道を詳細に確認するためにマップを拡大すると、全体を見ることが出来ないのだ。下手したら本当に迷子になるだろう。
ソフィアの後についていき、裏道を進むこと少し。
目の前にガラの悪そうなチンピラが六人現れた。
「おーっと。この先は通行止めだぜ?」
「勿論、後ろの道もたった今から通行止めだ。ギャハハハハ!」
後ろにもチンピラが六人現れた。
突然敵性反応が現れるのはズルくないか?
これだと気配感知も役立たずだ。
いちいち住人の気配を感じ取るとかやってられないし。
だが、そんなことより気になることがある。
それはつまり・・・
――――――――――――――――――――――――
《クエスト発生!》
内容 町の裏道で襲い掛かってくる悪漢の撃退
報酬 悪漢の全財産
同行しているNPCからの親愛度+10%
備考 殺害してもよいが捕縛するのを推奨
警備兵に突き出せば金一封が貰える
――――――――――――――――――――――――
このゲームにクエストシステムがあるなんて初耳なんだが・・・!?
「レイン、どういうことなのっ!」
「えっ、と・・・今掲示板を見たんですが、闘技場で受付が始まっているという書き込みがあるんです」
なるほど。
どういう風に参加登録すればいいのか分からずやきもきしていたのだが・・・そういう手法なのか。
そうと分かれば・・・!
「「ちょっと出かけてくる!」」
「あっ、待ってくださいっ!私も行きます・・・!」
「レイン、あなたはスケイルメイルの作業中でしょう?」
「あっ、そうでした・・・!」
レインはアリアさんにそう言われてしょんぼりしてしまった。
別に、今すぐ選手登録しなくてはいけないわけではないのにな。
そんなに今すぐ登録したかったのか?
そもそも、レインも個人戦に出るんだな。
とまあ、そういうことで、僕とシエラは闘技場へ向かった。
「・・・迷ったな」
「・・・迷ったね」
闘技場へ向かう途中で見事に道に迷ってしまった。
アライアの町の居住区は広すぎるんだ。その上、地図も無いからな。
「アストは道も分からず走ってたの?」
「その言葉、そっくりそのままシエラに返すぞ」
どうやら、互いに相手を頼りに走っていたようだ。
何と間抜けな話だろうか。
「一応、システムマップはあるから元の場所へは戻れると思うが・・・」
「流石に面倒だよね?もう結構走ったし」
システムウィンドウのマップには中央広場付近から、通ってきた道が記録されているので、戻れないということはあるまい。
だが、戻れたところで意味がないのだ。
「掲示板はどうなの?」
「うーん・・・みんな道に迷っているみたいだな。
場所についての書き込みは一つも見当たらない」
「これはいよいよ闇雲に探すしかないかな・・・?」
「勘弁してくれ・・・」
未だ一パーセント未満しかマッピングできていないのに、闇雲に探したくない。
「NPCに聞こうにも、この辺り人通りがないんだけど・・・」
「そりゃあ、なあ・・・。墓地に人は居ないだろうよ」
適当に走ってたら墓地に着いてしまった件。
人通りのある場所まで戻るのは、骨が折れる。
どうしてこうなった。
「え・・・アスト様?」
「「うん?」」
突然名前を呼ばれたので振り返ってみると、そこに居たのはソフィア。
ちなみに、本日は眼鏡無しの私服っぽい。
冒険者ギルドの受付嬢が何故ここに?多分休みの日なんだろうけど。
「アスト、知り合い?」
「ああ。ギルドの受付さん、ソフィアだ。
あー、実は闘技場を探していたんだが、道に迷ってしまったんだ」
少々恥ずかしいが、ここは素直に白状しよう。
「闘技場、でしたら・・・正反対ですよ?」
「「・・・・・・」」
二人とも、思っていたよりずっと方向音痴だったらしい。
シエラは恥ずかしそうに俯いている。堂々としていればいいのに。
「よろしければ、この後ご案内致しましょうか?」
「「・・・よろしくお願いします」」
この申し出を断る選択肢は無い。
恥ずかしくても受けるべし。
「そういえば、ソフィアはここに何をしに来たんだ?」
「私はお墓参りですよ。祖父母のお墓がここにありますので」
「そ、そうなんだ・・・」
設定が凝っている、という考え方はしない方がいいな。
シエラはどう反応していいのか分からずに困っているようだ。
多分だけど、素直に受け止めて良いと思うぞ?
墓地から闘技場へ向かう途中で、ソフィアの話を聞いてみた。
「以前、私たち家族が住んでいた町に魔物が侵入しまして。
生憎と戦える父と母が外出中だったのも災いし、残念ながら祖父母は・・・。
その時家に居た幼い兄妹を守って・・・立派な最後だったと思います」
「そうか・・・。誰にでも出来ることじゃないな。心の底から尊敬するよ」
「ふふっ・・・ありがとうございます。
アスト様にそう言って頂けて、祖父母もきっと喜んでいます」
「ん?僕に褒められたくらいで喜ぶかね?」
「ええ。それはもう」
微笑みを浮かべているソフィアが嘘を吐いているようには見えないが・・・。
そこまで大した人物ではないぞ、僕は。
「あ、裏道を通りますので、逸れないように気を付けてくださいね?」
「ああ。逸れたら今度こそ迷子だからな。絶対に御免だ」
「あははは・・・」
今の今まで居心地が悪そうにしていたシエラも笑うしかない。
裏道は入り組んでいるのでマップがあっても脱出が面倒そうなのだ。
裏道を詳細に確認するためにマップを拡大すると、全体を見ることが出来ないのだ。下手したら本当に迷子になるだろう。
ソフィアの後についていき、裏道を進むこと少し。
目の前にガラの悪そうなチンピラが六人現れた。
「おーっと。この先は通行止めだぜ?」
「勿論、後ろの道もたった今から通行止めだ。ギャハハハハ!」
後ろにもチンピラが六人現れた。
突然敵性反応が現れるのはズルくないか?
これだと気配感知も役立たずだ。
いちいち住人の気配を感じ取るとかやってられないし。
だが、そんなことより気になることがある。
それはつまり・・・
――――――――――――――――――――――――
《クエスト発生!》
内容 町の裏道で襲い掛かってくる悪漢の撃退
報酬 悪漢の全財産
同行しているNPCからの親愛度+10%
備考 殺害してもよいが捕縛するのを推奨
警備兵に突き出せば金一封が貰える
――――――――――――――――――――――――
このゲームにクエストシステムがあるなんて初耳なんだが・・・!?
応援ありがとうございます!
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