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3章

162 ヨミと交渉

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 上級投擲術、疾風、集撃。
 この三つがキメラとの戦いで新たに取得可能となったスキルだ。

 上級投擲術はいいとしても、疾風と集撃は何とも言い難い。

 <疾風>は疾駆と瞬動の複合効果があるようで、かなり小回りの利くスキル。瞬動ほど融通が利かないスキルではないので上位互換と言っていい。
 おまけにレベル1段階で平均速力の基礎能力値を二割底上げする効果がある。
 疾駆は最高値の状態で二割くらいの強化率だったかな、確か。
 これは・・・取得だろうな。

 <集撃>は戦闘中に使っていた力を一点に集中させて一撃を放つスキル。
 物理攻撃力で上回っている相手でも、これを使うことで渡り合うことができる。その事実は先程の戦いにて既に実証済みだ。
 この先必要になりそうなのでやはり取得で。

 <疾風>に3ポイントと<集撃>に3ポイントで、計6ポイント消費。
 どちらもアーツは存在しなかった。

 <上級投擲術>については保留としておく。
 もっといい投擲用のナイフやら短剣やらが手に入ったら考えよう。
 今以上の投擲能力は、現状では必要ない。

 しかし・・・スキルスロットとスキルポイントがまたしてもピンチだ。
 何故いつもこうなのだろうか・・・?


「スキルポイントがキツイなぁ・・・」

「あなたもですか。私もやり繰りが大変ですよ。取得したいスキルは幾つもあるのに、スキルポイントが追いつきません。ようやく欲しいスキルを取得できたと思ったら、その時には他にも欲しいスキルが増えています・・・」


 ヨミも苦労しているようで、難しい顔でステータス画面を眺めている。
 僕はこれでも、随分と恵まれている方なんだろうな。

 そういえば、<剛力>とか<予感>とか<閃駆>とか、保留にしているスキルが結構あった気がする。他にも<嗅覚強化>や<聞き耳>なんかもあったはず。

 <剛力>は基礎能力強化系っぽいけど、物理攻撃力補正かな?
 効果は・・・<疾走>と同じなら最高値状態で一割の強化率だろう。
 1ポイントとお手頃価格だが・・・やっぱり保留で。
 しばらくは技術で補って、それでも駄目になったら取得して鍛えよう。

 あと、取得可能スキルには無いが、<鉄壁>というスキルを魔物が持っていたはずだ。どうやったら取得可能になるのか、どこかに情報が転がってないだろうか。掲示板には載ってないんだが。


「なあヨミ。<鉄壁>のスキルって知ってるか?」

「ええ、知ってますよ。私も取得してますから。
 私の戦い方だとどうしても防御面が心許なくなるので、有難いスキルです」


 何らかの操作をしながら正直に答えてくれた。
 そうとなったら話は早い。


「おお・・・!取得法を教えてくれは・・・しないか?」

「・・・教えるのは構いません。
 ですが、あまり人に漏らさないことと、対価を頂けるのであれば、です」

「情報を漏らさないのは勿論構わないが・・・対価、か」


 供出したポーション類はアイテム配分で調整する予定なので、それを対価には出来ない。ミアに炎熱獅子の牙素材を沢山持ち帰ってやりたいのもある。
 なら、何を対価にするべきか・・・。

 やはりスキルの情報か?
 いや、スキルポイントのやり繰りに苦労しているらしいし、微妙かもしれない。

 友情に免じてプライスレス・・・ヨミにゴミを見る目で見られそうだ。却下。

 カラーポーションの提供・・・これはありかもしれない。


「じゃあ、このカラーポーション四点セットでどうだ?」

「これは・・・・・・できれば、もう一声お願いします」


 むむむ・・・!
 ここから交渉してくるなんて・・・!
 先に要求を出してしまったこちらの方が圧倒的に不利だぞ・・・?


「くっ、見た目に似合わず、がめつい奴め・・・!」

「五月蠅いですね!少しくらいいいじゃないですか!あと、訂正を要求します!」

「くっ、見た目通り、がめつい奴め・・・!」

「どこを訂正しているんですか!?余計に悪化していますよっ!?」


 自分で言ってみて思ったんだが、ヨミの見た目は非情にクールなアサシンっぽいんだ。ダークブルーの服と装備も、そのイメージを助長している。

 だが、中身は見た目とあまり一致しない。

 クールな部分もあるが、おだてに弱く、少し親交が深まると隙のある部分も晒すようになる。
 わざわざツッコミを入れてくれるくらいには律儀で義理堅く、情に厚い。
 堅物ではあるが柔軟性もあり、広い視野を持つ。
 自分本位な一面もないとは言い切れないが、親しい相手を立てることも忘れない。

 ふむ・・・なるほど。
 保留していたヨミの人物評価は、いい人でいい女というところで落ち着きそうだ。


「ヨミっていい女だよな」

「なっ・・・!?な、な、な・・・・・・おだてても交渉で手加減はしませんよ!」

「いや・・・客観的に人物評価をしたまでなんだが・・・」

「っ・・・どうしてあなたはいつもそうなんですか!
 そういうところが嫌いなんだと言ったばかりでしょう!?」


 嫌い嫌いと言っておきながら嬉しそうなのはどうなんだ?
 説得力の欠片も無いと思うんだが・・・。

 まあいいや。
 それで、他に交渉で使えるものは・・・と。



 それから二分後。

 カラーポーション四点セット+ホロウシャドウウルフの魔石を差し出した。
 それと引き換えに<鉄壁>と<城塞>の情報を教えてもらった。

 難儀な交渉になったが、許容範囲内に収まったのでよしとしよう。
 ヨミはリアルでそういう職にでもついているのか、交渉が上手かったよ。うん。



【合成獣の紅蓮毛皮】素材アイテム レア度6
 トライクリムゾンキメラの合成毛皮。
 その強度は他の皮系素材と一線を画す。
 加工するのは一流生産者でなければ不可能。

【合成獣の紅蓮牙】素材アイテム レア度6
 トライクリムゾンキメラの合成された牙。
 この一本に六本分の牙が合成されている。
 加工するのは一流生産者でなければ不可能。

深紅の刺突剣クリムゾン・フルーレ】武器アイテム レア度6
 物理攻撃力+7 魔法攻撃力+7 品質9 重量〔軽〕
 赤魔法効果上昇[小] クリティカル率上昇[中]
 赤よりも濃い深紅色をした、美しい造形である刺突剣。
 非常に軽く、通常の剣よりも手数が増えて急所を突き易い。



《熟練度が一定に達し【解体】スキルがLv20になりました》
《【解体】スキルが最高値になりました》


 キメラの死体に解体を使用(その権利は僕がもらった)したのだが、三つものアイテムが手に入った。

 一つはそこそこ大きな毛皮。
 一つはそこそこ大きな一本の牙。
 一つは美しいデザインの刺突剣。


「「・・・・・・ふむ」」


 交渉・・・・・・第二ラウンド!

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