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4章
211 フレグランス VS ライラ
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それから一時間後。
『会場の復旧が終了しましたので、これより準々決勝第二試合を開始します!
大惨事の後で大変だとは思いますが、対戦するのは・・・こちらのお二人!』
予選四位 『【風弓の奏者】フレグランス』 《無所属》
VS
予選十二位『【太陽の姫宮】ライラ』 《太陽の王国》
『二回戦では会場を騒然とさせたフレグランス選手と、ギリギリの攻防にて見事勝利を掴み取ったライラ選手の対戦です!エフエスタさんはどう思われますか?』
『そうですね・・・フレグランス選手の連続アーツには、開発局長の私をして目を剥くものがありました。あんなことをしたら、普通は頭がパンクするはずなんですがね。そんな彼女にライラ選手がどう立ち向かうのかが実に楽しみです』
『ありがとうございました!
それでは、時間も押していますので・・・準々決勝第二試合、開始です!』
こうして、注目の一戦が始まった。
やはりというか何というか、ライラは開始と同時にフレグランスに向かってダッシュした。あの連続アーツを使われてはお終いだと思っているのだろう。
僕もそれが最善手だと思っているんだが・・・彼女がなんの対策もしていないとは考え辛いんだよなぁ。
「『ガーディアン・オーラ』『シールドバッシュ』
『ダブルスラッシュ』『オラクレア・ペンタグラム』っ!」
「『マインドセット』『マインドセット』『アブソリュート・ワン』
『ホライズン・ハーフムーン』『トルネードウォール』っっ!!」
必死に距離を詰め続けるライラと、何とか距離をとろうとするフレグランス。
舞台の端から端まで使った縦横無尽の攻防に、観客たちは盛り上がりを見せた。
上級短弓術Lv1アーツ『アブソリュート・ワン』は既出だな。
弓系アーツに必中効果を与えるアーツだ。
中級長弓術Lv20アーツ『マインドセット』。
中級短弓術Lv20アーツ『マインドセット』。
この二つは完全に同じアーツなのだが重ね掛けが可能らしい。
その効果は、心を落ち着かせて弓の命中率と威力を高めるものだ。
上級長弓術Lv1アーツ『ホライズン・ハーフムーン』。
こちらは、二人の人間を頂点として地面に敷かれた直線を軸に、半月上の軌道を空中に描いて飛来する一本の矢といったところか。
よく見ると、二人の距離が開けば開くほど威力が上がるように窺える。そのぶん、命中率は落ちていると思われるが。
上級アーツらしいプレイヤースキルが重要なアーツだな。
先程からアリアさんが食い入るように見つめている。
無理もないか。同じ弓使いとして目標とするには最高のプレイヤーだろうし。
先程会場を大パニックに陥れたミレアも、同じく見入っている。
何事も無かったかのように戻ってきた時は、開いた口が塞がらなかったな。
ちなみに、その際に死に戻ったプレイヤーには保障があるそうだ。
結界の手を抜いた運営に責任があるとか云々。
ミレアにも罰則は無しだ。
それと、NPCからの好感度下落も無いらしい。
そちらはよく分からないが、そういうものらしい。
元々上げるつもりもないものだったので、どうでもいいのだけれど。
「『クイックアロー』『アブソリュート・ワン』
『エアリアルバースト』『インパクトアロー』っ!」
「っ、しまっ・・・!?」
ここまでの戦況はライラが有利だったが、疲れてきていたライラの一瞬の隙を突いて、フレグランスが短弓アーツで彼女を弾き飛ばした。
・・・来るか。
「『クイックアロー』――――――――『クリティカルスナイプ』っ!!」
「ッッ!!」
クイックアローから始まる七つのアーツが連続で使用され、千本を超える矢がライラに襲い掛かった。
彼女はそれを、盾や剣で必死に凌ぐが・・・。
「っ、あっ・・・きゃあああっ!?」
絶えず体全体を動かし続けるなど、幾ら何でも無理だ。
足に限界がきて転んだところに、矢が殺到。
『決着っ! 勝者は・・・『【風弓の奏者】フレグランス』選手っ!』
システマの宣言がなされ、試合は終了。
勝ったフレグランスも肩で息をしているので、余裕は殆ど無さそうだ。
案外、そのスタミナが弱点かもしれないな。
それでも、プロスポーツ選手並みの体力なんだが・・・。
・・・ん?
「アリアさん、見てください。フレグランスの弓、壊れかけてます」
「・・・本当ね。この距離でよく気づいたわね、アスト」
「目は良い方ですから。ですが、武器が傷つくところなんて初めて見ました」
「・・・確かにそうね。私もそんな話は聞いたことが無いし・・・。これは、どういうことなのかしら・・・?」
このゲームでは、武具やアイテムに耐久値など設定されていない。
そのため、武器が傷いて壊れそうになるなど、あるとは思えない。
・・・武具の整備を毎日欠かさずやっている僕が何を言っているのか、といった感じではあるのだが。とにかくそんなことは起こらないはずだ。
「ミレア、それについて何かわかるか?」
困ったときのミレア頼み!
自分で考えても分からないときはこれ一択だ。
・・・兄として情けないがな。
「んー? 多分、連続アーツによる負荷が武器にも掛かってるせいだと思う」
「・・・はぁ?」
尋ねてみたら余計に分からなくなった。
それってつまり・・・どういうことなんだ?
『会場の復旧が終了しましたので、これより準々決勝第二試合を開始します!
大惨事の後で大変だとは思いますが、対戦するのは・・・こちらのお二人!』
予選四位 『【風弓の奏者】フレグランス』 《無所属》
VS
予選十二位『【太陽の姫宮】ライラ』 《太陽の王国》
『二回戦では会場を騒然とさせたフレグランス選手と、ギリギリの攻防にて見事勝利を掴み取ったライラ選手の対戦です!エフエスタさんはどう思われますか?』
『そうですね・・・フレグランス選手の連続アーツには、開発局長の私をして目を剥くものがありました。あんなことをしたら、普通は頭がパンクするはずなんですがね。そんな彼女にライラ選手がどう立ち向かうのかが実に楽しみです』
『ありがとうございました!
それでは、時間も押していますので・・・準々決勝第二試合、開始です!』
こうして、注目の一戦が始まった。
やはりというか何というか、ライラは開始と同時にフレグランスに向かってダッシュした。あの連続アーツを使われてはお終いだと思っているのだろう。
僕もそれが最善手だと思っているんだが・・・彼女がなんの対策もしていないとは考え辛いんだよなぁ。
「『ガーディアン・オーラ』『シールドバッシュ』
『ダブルスラッシュ』『オラクレア・ペンタグラム』っ!」
「『マインドセット』『マインドセット』『アブソリュート・ワン』
『ホライズン・ハーフムーン』『トルネードウォール』っっ!!」
必死に距離を詰め続けるライラと、何とか距離をとろうとするフレグランス。
舞台の端から端まで使った縦横無尽の攻防に、観客たちは盛り上がりを見せた。
上級短弓術Lv1アーツ『アブソリュート・ワン』は既出だな。
弓系アーツに必中効果を与えるアーツだ。
中級長弓術Lv20アーツ『マインドセット』。
中級短弓術Lv20アーツ『マインドセット』。
この二つは完全に同じアーツなのだが重ね掛けが可能らしい。
その効果は、心を落ち着かせて弓の命中率と威力を高めるものだ。
上級長弓術Lv1アーツ『ホライズン・ハーフムーン』。
こちらは、二人の人間を頂点として地面に敷かれた直線を軸に、半月上の軌道を空中に描いて飛来する一本の矢といったところか。
よく見ると、二人の距離が開けば開くほど威力が上がるように窺える。そのぶん、命中率は落ちていると思われるが。
上級アーツらしいプレイヤースキルが重要なアーツだな。
先程からアリアさんが食い入るように見つめている。
無理もないか。同じ弓使いとして目標とするには最高のプレイヤーだろうし。
先程会場を大パニックに陥れたミレアも、同じく見入っている。
何事も無かったかのように戻ってきた時は、開いた口が塞がらなかったな。
ちなみに、その際に死に戻ったプレイヤーには保障があるそうだ。
結界の手を抜いた運営に責任があるとか云々。
ミレアにも罰則は無しだ。
それと、NPCからの好感度下落も無いらしい。
そちらはよく分からないが、そういうものらしい。
元々上げるつもりもないものだったので、どうでもいいのだけれど。
「『クイックアロー』『アブソリュート・ワン』
『エアリアルバースト』『インパクトアロー』っ!」
「っ、しまっ・・・!?」
ここまでの戦況はライラが有利だったが、疲れてきていたライラの一瞬の隙を突いて、フレグランスが短弓アーツで彼女を弾き飛ばした。
・・・来るか。
「『クイックアロー』――――――――『クリティカルスナイプ』っ!!」
「ッッ!!」
クイックアローから始まる七つのアーツが連続で使用され、千本を超える矢がライラに襲い掛かった。
彼女はそれを、盾や剣で必死に凌ぐが・・・。
「っ、あっ・・・きゃあああっ!?」
絶えず体全体を動かし続けるなど、幾ら何でも無理だ。
足に限界がきて転んだところに、矢が殺到。
『決着っ! 勝者は・・・『【風弓の奏者】フレグランス』選手っ!』
システマの宣言がなされ、試合は終了。
勝ったフレグランスも肩で息をしているので、余裕は殆ど無さそうだ。
案外、そのスタミナが弱点かもしれないな。
それでも、プロスポーツ選手並みの体力なんだが・・・。
・・・ん?
「アリアさん、見てください。フレグランスの弓、壊れかけてます」
「・・・本当ね。この距離でよく気づいたわね、アスト」
「目は良い方ですから。ですが、武器が傷つくところなんて初めて見ました」
「・・・確かにそうね。私もそんな話は聞いたことが無いし・・・。これは、どういうことなのかしら・・・?」
このゲームでは、武具やアイテムに耐久値など設定されていない。
そのため、武器が傷いて壊れそうになるなど、あるとは思えない。
・・・武具の整備を毎日欠かさずやっている僕が何を言っているのか、といった感じではあるのだが。とにかくそんなことは起こらないはずだ。
「ミレア、それについて何かわかるか?」
困ったときのミレア頼み!
自分で考えても分からないときはこれ一択だ。
・・・兄として情けないがな。
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「・・・はぁ?」
尋ねてみたら余計に分からなくなった。
それってつまり・・・どういうことなんだ?
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