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一章 妖符師誕生編
9 中位悪霊
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凪沙さんの部屋で異変が起きたのは午前二時ごろ。
草木も眠る丑三つ時というやつでしょうか。
深夜になって夜間よりも活発に動き始めた低位霊たちの気配で目を覚ましました。
南側の部屋から低位霊がこの部屋に続々と入ってきます。
壁抜けの術ですね。
・・・いえ、そんなことが言いたいのではなく。
低位霊が活発になる時間は個体によって異なりますので、夜中に動く霊がいてもおかしくはありません。
ですが、このように大移動となるのは不自然です。
考えられるのは、隣の部屋にナニカがやってきた、もしくはこの時間にやってくるのでそれから逃げるために移動した、ということでしょうか。
仮にそうだとして考えを進めます。
隣のお部屋は凪沙さんのお父さんの使っている部屋で、そこに訪れるナニカ。
これは、悪霊の仕業という線も考えられますね。
悪霊が人間に悪影響を与えることは決して珍しくないそうなので、近くにいる人間が病気になることも当然あります。
察するに、毎晩のように、睡眠時に悪霊の影響下に晒されたことで体調が悪化したのではないかと思います。
あくまでも過程に基づく推測ですが。
勿論、何の因果関係も無いということもありえるかと。
というより、普通に病気になったという可能性の方が高いくらいです。
妖怪書にも書いてありました。
妖符師たるもの何でもかんでも悪霊や妖怪のせいだと決めつけないこと、と。
要するに、妖の世界に足を踏み入れたからといって一般の常識を忘れては手痛いミスをするから気を付けて、ということです。
私も気を付けなくては。
さて。それでは、いつもの人間居ないと気づいた悪霊はどんな行動に出るのか。
候補としては、そのままその場に居るというものと、その場から去るというものがあります。
ですが、そう考えるのは楽観的でしょう。
一番あり得ることで、なおかつ最悪なパターン。
それは、別の人間を探し求めて近づくという行動です。
悪霊の本能みたいなものなので、そうなる確率は高いと思います。
つまり、一番近くにいる凪沙さんがが危険ということですね。
推測を重ねている間に目も覚めましたので、行動に移りましょうか。
常に持ち歩いている妖符を手に取って、小声で詠唱を紡ぎます。
「我求めるはこの世ならざる妖の力。
我が求めに応じ、今現世に現れ出でよ。
汝は扇となりしモノ・・・武装召喚<多尾狐>『フォーン』!」
妖符が黄色の扇に変化して、目の前に出現。
手に取ってフォーンと念話します。
<フォーン、調子はどうかな?>
<十分休めたから万全だコン。・・・それで、ここはどこコン?>
<ここはお店の取引先で、今晩泊まらせてもらっている沢渡さんの家だよ>
<・・・なるほど。状況は理解したコン>
フォーンは妖符の中で眠っていたようですね。
起きていることもできるみたいだけど、することもなく暇だよね。
説明せずとも状況を理解してくれるのは手間が省けて嬉しいな。
<どうなるかは分からないけど、一応戦闘の準備だけしておいて?>
<了解だコン・・・と、早速来たみたいだコン>
フォーンの言う通り、隣の部屋から不穏な気配が漂ってきます。
契約に体が慣れ始めて、そういう気配も多少は察知できるようになったんです。
悪霊は・・・やはりこちらに来ましたね。
影響の大きさからして、恐らくは中位悪霊。
「っ・・・!っ・・・!?」
「凪沙さん?どうかなさいましたか?」
「ッッ!!」
凪沙さんは目を閉じたまま、苦しそうにしています。
これは一体・・・?
<若葉、多分金縛りに遭ってるコン。稀にそういう人も居るんだコン>
<そうなんだ・・・。こういう時は確か・・・!>
私は凪沙さんの首元に手を当てて、干渉している妖力を遮断しました。
あ、妖力というのは口では説明し辛いのでそういうものだと思ってください。
金縛りが解けた凪沙さんは、静かな寝息を立てながら再び眠りました。
これでこちらは大丈夫でしょう。
あとは・・・。
「この中位悪霊を封印すれば解決だね」
<若葉、十分に気を付けるんだコン!>
「うん。油断なんてしないよ」
壁を越えて目の前に現れた中位悪霊を見据えながら、扇を構えます。
憎々し気に迫ってくる悪霊を、足さばきを意識しながら扇で打ち付ける。
あまり物音を立てると凪沙さんが起きて見られてしまうので、注意が必要です。
認識阻害付きコートを着ていれば、そこまで心配はなかったのですが。
低位悪霊よりも速く、なおかつタフでしたが、ちゃんと戦えています。
<若葉、一日で扇の扱いが上達し過ぎだコン。どれだけ練習したコン?>
<え?二時間くらいしかやってないよ?>
<・・・どの口が運動神経は鈍いというんだコン>
運動神経は鈍いですよ?
扇もそこまで上手く扱えているとは思えませんし。
でも、呑気に念話する余裕があるので、上達はしているのでしょうね。
そう考えると嬉しいものがあります。
・・・と、そうこうしている間に、中位悪霊が限界まで弱りましたね。
中位悪霊のへ向けて白符を飛ばし、封印。
白い符は中位悪霊を吸い込んで、みるみるうちに黒くなっていき、最終的には<低位符>よりも濃い黒になりました。
黒に濃いも薄いもないかもしれませんが、私にはそう見えるんです。
これが<中位符>ですね。
大事に使いましょう。
今回は<低位符>を使いませんでしたが、多対一になれば出番がありそうです。
なるべく数的不利には陥らないようにしたいですが、絶対はありません。
細心の注意を払いつつ、いずれは臨機応変に対応できるようになりたいですね。
<フォーン、お疲れ様。後はゆっくり休んでね>
<若葉もお疲れ様。今回はちゃんと召喚を解除してほしいコン!>
言われずともそのつもりですよ。
では・・・。
「じゃあまたね。『召喚解除』。・・・ふぅ」
これで一件落着です。
凪沙さんのお父さん、元気になるといいですね。
草木も眠る丑三つ時というやつでしょうか。
深夜になって夜間よりも活発に動き始めた低位霊たちの気配で目を覚ましました。
南側の部屋から低位霊がこの部屋に続々と入ってきます。
壁抜けの術ですね。
・・・いえ、そんなことが言いたいのではなく。
低位霊が活発になる時間は個体によって異なりますので、夜中に動く霊がいてもおかしくはありません。
ですが、このように大移動となるのは不自然です。
考えられるのは、隣の部屋にナニカがやってきた、もしくはこの時間にやってくるのでそれから逃げるために移動した、ということでしょうか。
仮にそうだとして考えを進めます。
隣のお部屋は凪沙さんのお父さんの使っている部屋で、そこに訪れるナニカ。
これは、悪霊の仕業という線も考えられますね。
悪霊が人間に悪影響を与えることは決して珍しくないそうなので、近くにいる人間が病気になることも当然あります。
察するに、毎晩のように、睡眠時に悪霊の影響下に晒されたことで体調が悪化したのではないかと思います。
あくまでも過程に基づく推測ですが。
勿論、何の因果関係も無いということもありえるかと。
というより、普通に病気になったという可能性の方が高いくらいです。
妖怪書にも書いてありました。
妖符師たるもの何でもかんでも悪霊や妖怪のせいだと決めつけないこと、と。
要するに、妖の世界に足を踏み入れたからといって一般の常識を忘れては手痛いミスをするから気を付けて、ということです。
私も気を付けなくては。
さて。それでは、いつもの人間居ないと気づいた悪霊はどんな行動に出るのか。
候補としては、そのままその場に居るというものと、その場から去るというものがあります。
ですが、そう考えるのは楽観的でしょう。
一番あり得ることで、なおかつ最悪なパターン。
それは、別の人間を探し求めて近づくという行動です。
悪霊の本能みたいなものなので、そうなる確率は高いと思います。
つまり、一番近くにいる凪沙さんがが危険ということですね。
推測を重ねている間に目も覚めましたので、行動に移りましょうか。
常に持ち歩いている妖符を手に取って、小声で詠唱を紡ぎます。
「我求めるはこの世ならざる妖の力。
我が求めに応じ、今現世に現れ出でよ。
汝は扇となりしモノ・・・武装召喚<多尾狐>『フォーン』!」
妖符が黄色の扇に変化して、目の前に出現。
手に取ってフォーンと念話します。
<フォーン、調子はどうかな?>
<十分休めたから万全だコン。・・・それで、ここはどこコン?>
<ここはお店の取引先で、今晩泊まらせてもらっている沢渡さんの家だよ>
<・・・なるほど。状況は理解したコン>
フォーンは妖符の中で眠っていたようですね。
起きていることもできるみたいだけど、することもなく暇だよね。
説明せずとも状況を理解してくれるのは手間が省けて嬉しいな。
<どうなるかは分からないけど、一応戦闘の準備だけしておいて?>
<了解だコン・・・と、早速来たみたいだコン>
フォーンの言う通り、隣の部屋から不穏な気配が漂ってきます。
契約に体が慣れ始めて、そういう気配も多少は察知できるようになったんです。
悪霊は・・・やはりこちらに来ましたね。
影響の大きさからして、恐らくは中位悪霊。
「っ・・・!っ・・・!?」
「凪沙さん?どうかなさいましたか?」
「ッッ!!」
凪沙さんは目を閉じたまま、苦しそうにしています。
これは一体・・・?
<若葉、多分金縛りに遭ってるコン。稀にそういう人も居るんだコン>
<そうなんだ・・・。こういう時は確か・・・!>
私は凪沙さんの首元に手を当てて、干渉している妖力を遮断しました。
あ、妖力というのは口では説明し辛いのでそういうものだと思ってください。
金縛りが解けた凪沙さんは、静かな寝息を立てながら再び眠りました。
これでこちらは大丈夫でしょう。
あとは・・・。
「この中位悪霊を封印すれば解決だね」
<若葉、十分に気を付けるんだコン!>
「うん。油断なんてしないよ」
壁を越えて目の前に現れた中位悪霊を見据えながら、扇を構えます。
憎々し気に迫ってくる悪霊を、足さばきを意識しながら扇で打ち付ける。
あまり物音を立てると凪沙さんが起きて見られてしまうので、注意が必要です。
認識阻害付きコートを着ていれば、そこまで心配はなかったのですが。
低位悪霊よりも速く、なおかつタフでしたが、ちゃんと戦えています。
<若葉、一日で扇の扱いが上達し過ぎだコン。どれだけ練習したコン?>
<え?二時間くらいしかやってないよ?>
<・・・どの口が運動神経は鈍いというんだコン>
運動神経は鈍いですよ?
扇もそこまで上手く扱えているとは思えませんし。
でも、呑気に念話する余裕があるので、上達はしているのでしょうね。
そう考えると嬉しいものがあります。
・・・と、そうこうしている間に、中位悪霊が限界まで弱りましたね。
中位悪霊のへ向けて白符を飛ばし、封印。
白い符は中位悪霊を吸い込んで、みるみるうちに黒くなっていき、最終的には<低位符>よりも濃い黒になりました。
黒に濃いも薄いもないかもしれませんが、私にはそう見えるんです。
これが<中位符>ですね。
大事に使いましょう。
今回は<低位符>を使いませんでしたが、多対一になれば出番がありそうです。
なるべく数的不利には陥らないようにしたいですが、絶対はありません。
細心の注意を払いつつ、いずれは臨機応変に対応できるようになりたいですね。
<フォーン、お疲れ様。後はゆっくり休んでね>
<若葉もお疲れ様。今回はちゃんと召喚を解除してほしいコン!>
言われずともそのつもりですよ。
では・・・。
「じゃあまたね。『召喚解除』。・・・ふぅ」
これで一件落着です。
凪沙さんのお父さん、元気になるといいですね。
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