妖符師少女の封印絵巻

リュース

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一章 妖符師誕生編

23 署長の柴田さん

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 結局私は警察署に来てしまいました。
 あのまま引きこもっても騒がしくされそうでしたので。
 近所迷惑になるにはNGです。


「だからよ、てめぇがやったんだろ?」

「何度も言うように、残念ながら違いますよ。病院の窓ガラスが割れた原因は私ではありません」


 ええ。悪霊の仕業ですもの。嘘は吐いていません。
 直接的に窓を割ったのは私かもしれませんが、あれは不可抗力です。

 バンッ!!


「そんな嘘が通ると思ってんのか!?」


 先程から似たようなことを続けていますが、飽きないのでしょうか?

 きっと我慢強い人なんですね。
 机を叩いて痛そうにしているのに、何度も繰り返していますから。
 その我慢強さを別のところに発揮すればいいと思います。

 ・・・この部屋、暖かいですね。ついつい、うたた寝しそうになります。


「すぅ・・・すぅ・・・」

「クソッ!こいつ、さっきから俺を馬鹿にしてやがる!!」


 ドンッ!!


「・・・んぅ?
 ・・・もう昼食ですか?かつ丼よりパンの方がいいですね」


 おや?どうして額に青筋を浮かべているのでしょうか?

 ・・・はい。私のせいですね。
 流石にわざとやってたんですよ?私、天然さんではありませんので。

 その時、誰かが廊下をバタバタと走ってこちらに向かってくる音が。
 足音が四つですから馬・・・ではなく、人間が二人ですね。
 バタンと部屋の扉が開きました。


「先輩、手を出してないですよね!?手を出してたら首が飛びますよ!?」

「伊藤ッ!貴様は何をやっていやがるっ!!」

「しょ、署長!?何って、このガキの取り調べをぐほあっ!?」


 中年さんが署長さんに殴り飛ばされました。
 ・・・ご臨終です。


「貴様ぁぁぁああ!!咲夜さんと紅葉さんの娘さんを取調室に閉じ込めた挙句、取り調べ染みた真似をしやがってぇぇぇぇ!貴様はここで地獄に送ってやるぅぅぅぅ!!」

「ゲハッ、ゴハッ!?」

「署長、落ち着いてください!幾ら何でもここで殺したら不味いですよ!」


 若手の白石さん、殺すこと自体は止めないのですね。
 私としてはどうでもいいので、早く休みたいです。


「すぅ・・・すぅ・・・」

「この状況で寝てる!?どんな図太い神経してるんですか・・・!?」





 ところ変わって署長室。


「本当に、本当に済まなかった・・・!」

「いえ、別に構いませんので、土下座はやめてくれると助かります」


 ここ数日で二回目の土下座を敢行されています。
 もう勘弁してください。


「しかし、若葉嬢にあのような扱いを・・・!」

「父と母にお世話になったのは分かりますが、それは私がやったことではないですから。ですので私にまでかしこまる必要はありません」


 ようやく頭を上げてくださったのは鳥居警察署の署長さん。
 お名前は柴田誠也さん。年齢は四十歳です。

 話せば長くなるので簡潔に言うと、柴田さんは父と母にとてもお世話になった人だそうです。



 ここ鳥居町は、古くから不思議な現象や事件、事故が相次ぐ町。
 それらは大抵、霊や妖怪の仕業なのですが、そんなことは誰も知りません。

 怪奇現象を警察が真っ向から解決できるはずもありませんが、事件や事故が起こった近隣住民からすれば、そんなことは知ったことではありません。
 まあ、悪霊絡みの事故や事件だとどれほど不自然でも、不思議とそういうものだと受け止められてしまいます。

 例えば、妖怪が火事を起こしたら、放火犯を捕まえてくれ!となるわけです。
 ですので、誰が悪いというわけではないんです。

 どれもこれも碌に対応できないので住民たちからの受けが悪く、勤め先としてはどう考えても酷い貧乏くじです。
 知った話では、非常に肩身の狭い警察署だったとか。

 柴田さんは、そんな鳥居警察署に左遷されてきた人です。
 左遷先としてよく使われてきましたので、それ自体はそう珍しくもありません。

 ですが、丁度そのあたりの時期に私の両親、影山咲夜と影山紅葉が<妖符師>として活動を始めます。
 色々な補助を受ける代わりに物理的な力では解決できない問題を解決していき、時間を追うごとに鳥居警察署の評判は上がっていきました。
 現在では、住民受けはそこそこですね。全国平均くらいだそうで。

 表向きの手柄を次々と受け取ることになった柴田さんは面白いように昇格していき、あっという間に署長へ就任。
 途中から父と母が面白がって、これ以上の身分は重荷だと嫌がる柴田さんだけに、功績を押し付け続けた結果です。
 ・・・私の両親がご迷惑をお掛けしました。

 半ば無理やりではありましたが、柴田さんも家庭を持つ身。
 収入が大幅に増え、他にも色々と恩恵を受けることになったので、感謝してもしきれない、とのこと。
 本部の警視総監からお褒めの言葉もあったようです。

 なお、父のメモによると、貸しをつくったつもりなどないそうです。
 それだけ裏から手を回す作業などが無茶ぶりの連続だったのでしょうね。
 ご愁傷さまです。


 そういう訳で、二人の娘である私にも大変腰が低いのです。
 両親についてはとやかく言いませんが、私にまでかしこまる必要はないのですが。

 そんな感じのことをしばらく説明したところ、何とか納得してもらえました。


「しかしまさか、伊藤の奴があんな馬鹿をやらかすとは・・・。白石が駆け込んできて話を聞いたときは、数秒程意識が飛んでしまったよ・・・。その件についてはご両親に関係なく謝らせて頂く。申し訳ない!」

「はい。謝罪を受け取りました。これ以上ことを荒立てるつもりもありません」

「ありがとう・・・!」


 まあ、警察官があんな真似をしたとなれば、大問題ですよね。
 表沙汰になれば、色々お終いでしょう。

 後で聞いた話ですが、伊藤という警察官には厳しい処分が下ったとのこと。
 少し気になる点はありますが、まあいいでしょう。

 これにてお話は終了です。


「それで、本題に入らせてもらうが・・・昨夜の件について、だ」


 ・・・そういえば、それが目的でしたね。すっかり忘れてました。

 休めるのはまだ先になりそうです。
 身から出た錆ですので、もうひと頑張りしましょうか。

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