妖符師少女の封印絵巻

リュース

文字の大きさ
24 / 91
一章 妖符師誕生編

24 調査の必要性と逆恨み

しおりを挟む
「なるほど・・・。では、昨夜の事件は解決したということでいいのだな?」

「はい。周りも直に、事件は解決した、と思うようになると思います」

「そうか。はぁ・・・そう言ってもらえたら一安心だ」


 病院で起きたことについて一通り説明しました。
 明日には、「不良が石を投げて窓ガラスを割って、その犯人は捕まった」という風に皆さん思い込むことになると思います。
 あくまでも予想ですので、少し内容が変わる可能性はありますが、それについては問題はありません。たいていの場合は最も自然な解釈をされますから。
 不思議な話ですよね。


「あ、出来れば警察の方であの病院の調査をお願いしたいのですが・・・」

「調査を?事情を聞かせてもらえるか?」

「ええ、勿論」


 何の理由も無く調査なんて出来ませんものね。

 昨夜・・・いえ、今日の早朝に遭遇した<高位悪霊>について。
 本来<高位悪霊>など、霊の集まりやすい鳥居町でも一年に一度出れば運が悪い方だと言えます。

 そんな<高位悪霊>と数日で遭遇するというのは・・・ちょっと違和感がありますが、そのことは一先ず脇へ置いておきましょう。

 珍しい<高位悪霊>に進化するには、長い時間を掛けるか、強い負の感情が必要です。
 前者ですと、やはり違和感がありますし、ここは後者。
 つまり、相当強い負の感情が生じていた可能性が高いです。

 思い出してほしいのが、<高位悪霊>がやってきたのは<中位悪霊>を封印した直後だということ。
 これが偶然とは思えませんので、両者に何らかの関係があるはずです。高位ともなれば中位の悪霊を支配下に置くことも可能でしょうし、その線が強いですね。

 問題は、<高位悪霊>が病院を本拠地としていたことです。
 それはすなわち、<高位悪霊>が病院で生まれたであろうこと。
 悪霊は生まれた場所から離れることはそんなにないですからね。

 要するに、あの病院に何かあるのでは?ということです。

 確かに病院はその性質上、負の感情が溜まりやすいです。
 人が死ぬ場所でもありますからね。
 ですが、その代わりに正の感情も生まれやすい場所なので、そこそこつり合いはとれることが殆どだと妖怪書に書かれていました。

 ・・・ええ。殆どは、です。

 そこに<高位悪霊>が生まれるほどのバランス悪化を生む何かがある、と疑ってしまうのはごく自然なことではないでしょうか?

 例えば・・・医療ミスとか、非合法な実験とか。

 凪沙さんのお父さんに<中位悪霊>が寄っていたのは、凪沙さんの家で封印した悪霊の残滓に惹かれたのかもしれませんね。そちらと<高位悪霊>との関係は不明です。


「―――――という訳で、お願いできませんか?」

「分かった。こちらで何とかしてみるよ」


 ふぅ・・・。これで目的は果たしましたね。
 本当なら怪我が治ってから・・・事件が解決する少し前にでも伺おうかと思っていたのですが、ままならないものですね。


「ところで、怪我をしたという話だったが・・・大丈夫なのか?」

「大丈夫・・・ではないですね。言葉を発するだけであちこち痛みます。
 父と母であれば軽く解決できたのでしょうけど・・・私はまだ未熟者ですから」

「・・・済まなかったっ!!」


 またしても土下座されてしまいました。
 今回ばかりはこの謝罪を受け取っておきましょう。
 本当に、涙が出そうなほど痛いんですから。








 そういう訳で、覆面パトカーで送られて家まで帰ってきました。


「この度は本当に申し訳ありませんでした・・・!」

「白石さんは署長さんを呼びに行ってくれていた訳ですし、どうかお気になさらないでください」


 白石さんに玄関前で頭を下げられましたが、もう済んだことですから。
 この人が何かしたのでもありませんし。


「ですが、先輩を止めることが出来ず、大変な失礼を致しまして・・・」

「はぁ・・・。でしたら、今度何か買っていってくださいな。お客さんが増えればとても嬉しいですから」

「分かりました!必ず買いにきます・・・!」


 どうやら納得してもらえたようです。
 あ、そういえば私、自己紹介をしていませんでしたね。


「改めまして、私は、雑貨店『あやかし屋』の店主、影山若葉と申します。
 長い付き合いになると思いますので、以後、お見知り置きくださいませ」」

「あ、はい。私は白石海斗です。よろしくお願いします。でも、長い付き合いというのは・・・?」


 その質問には答えず、玄関の扉を閉めました。
 まあ、これから彼は使いっ走りになるかもしれないということで。
 今は知らぬが仏でしょう。



 後日、鳥居南病院で医療ミスの隠蔽が発覚したと知りました。
 まあ、だからといって私に何があるというわけでもないのですけどね。









「クソッ!何で首を飛ばされなきゃならんのだ!
 俺は何も悪いことなんてしてないだろうがっ!なのにあのクソ署長っ!
 あの女・・・あいつさえ、あいつさえ居なければこんなことにはならなかった!
 覚えてろ・・・!何が何でも、あいつ・・・あの女のガキにに復讐してやるっ!
 そう、これは正当な権利だ!あいつのせいで俺の人生が狂ったんだからなっ!!」


 そんな声が夜中の鳥居町に響いたが、誰も聞いている者は居なかった。

しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...