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二章 高校入学編
42 伸び悩みと共感
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「凛はいつから走るのが好きになったの?」
「いつだったかな・・・? 小学生の頃から走り回ってたけど、明確に意識し出したのは中学からだった気がする」
なるほど。筋金入りですね。
私には理解しがたい趣味ですが、趣味なんて人それぞれ。
それについてはどうこう言う問題でもないので、気にしません。
凛が持ってきてくれたお茶を一口。
「それじゃあ、もっと速く走れるようになりたいの?」
「・・・まあ、ね。走るのが好きだと言っておいてなんだけど、結果が伴えば、それは嬉しいよ。それだけが全てとも思わないけど」
「そうですか・・・。この部屋を見る限り、結果は伴っているようですね」
凛の部屋にはメダルやら賞状やらが幾つか飾られています。
十中八九、何かしらの大会で結果を残しているということでしょう。
もう一口お茶を頂き、凛の顔を窺うと・・・ちょっと辛そうにしています。
「あの・・・何か気に障ることでも・・・?」
「あ、ううん、若葉が悪いんじゃないから!」
「では、一体・・・?」
「んん・・・それは、さ・・・」
とても言い辛そうに顔を顰めています。
言いたくないのであれば、無理に言わずともいいのですが・・・。
「この部屋の賞状とかメダルって、全部小学生の頃か中学一年の時の物なんだ」
「・・・伸び悩み、ですか?」
「そ。周りがどんどん速くなっていくのに、私は殆ど変わらない。走るのが好きだと認識した時から伸び悩むなんて、皮肉なものだよね・・・」
腕を組んで自嘲気味に笑う凛。
彼女はいつも明るくて、ムードメーカー的な存在です。
そんな彼女でも、このような顔をするのですね。
いえ、それは当然のことかもしれません。
好きだからこそ、この道で生きていきたいと願うものです。
それが伸び悩みとなれば、深刻な話でしょう。
私も、<妖符師>としての能力が頭打ちになれば・・・落ち込みます。
寧ろ、既にそのことを恐れ始めていると言ってもいいでしょう。
だからこそ、毎日欠かさず練習を重ねていますし、自分なりに霊や妖力についての考察も重ねています。
私は、天才タイプでも感覚派でもないので、そういう努力を怠ったら、後は下に落ちていくだけです。
もしも、自分の力が足りないばかりに、大切なものを守れず取りこぼしてしまったらと考えたら・・・とてもサボる気にはなれませんね。
最善を尽くして、手の届く範囲で大切なものを守る。
これは私の信念であり、受け継いだ意志。
それに、この町には大切なものが増え過ぎましたし、滅びるのは御免です。
そういう訳で、軽々しくは言えませんが、少しだけ凛に共感できます。
何か、手助けになることはありませんかね・・・?
何か・・・そう、河川敷での凛を思い出して・・・。
「・・・そういえば、凛って右足に怪我をしたことがあるんじゃないかな?」
「え・・・うん、中学の初めの頃に一度。慣れないトラックで派手に転んだせいで怪我をしたよ。半月もすれば完治したし、大したことなかったけど・・・どうしてそれを?」
「えっとね。思い返してみると、河川敷で走っている凛は、微妙に右足を庇っているように思えて・・・」
「ええっ・・・!?」
この反応からして、全く心当たりが無いようですね。
無意識の行動というやつでしょうか。
妖力を目に纏って、凛が驚きつつもまじまじと見ている右足首を観察。
・・・完治という言葉に嘘は無く、何の違和感も感じ取れません。
医学の知識こそありませんが、異常の有無くらいは分かるようになりました。
異常があると、全体的に違和感が生じますからね。
ということは、です。
右足を庇う動きは心理的な要因が主だと推測できます。
これが、実はまだ怪我が治っていない、とかですと、庇う行動が正解です。
余計な悪化をさせないための本能的行動ですから。
では、心理的なものであれば・・・。
そこを改善することで何か変化が起こるかもしれません。
「凛、もう一度、河川敷に行ってみよう?」
「あ、うん。そうだね・・・。じゃあ、行ってみようかな・・・?」
上手くアドバイスができればいいんですが・・・どうでしょうね。
私はスポーツインストラクターでもなければ、コーチでもありません。
どのように伝えればいいのか、分かりかねます。
やはり、そういった知識も蓄えるべきなのでしょうか・・・?
・・・いえ、時期尚早ですね。
まだ妖力の使い方すら未熟なのに、あちこち手を付けていたら駄目です。
私のキャパシティは決して大きくはないのです。
だから焦らずに、一つずつコツコツやりましょう。
「ところで凛、その恰好で行くの?」
「えっ、あっ・・・すぐに着替えるよっ!?」
「はい。では待っていますね」
今の彼女はラフな部屋着ですので、このまま外に出るのは嫌ですよね。
そんなことさえ失念するとは、本当に走るのが好きなのですね・・・。
「―――よし、着替え完了!それじゃあ・・・って、何その温かい眼差しっ!?」
「いつだったかな・・・? 小学生の頃から走り回ってたけど、明確に意識し出したのは中学からだった気がする」
なるほど。筋金入りですね。
私には理解しがたい趣味ですが、趣味なんて人それぞれ。
それについてはどうこう言う問題でもないので、気にしません。
凛が持ってきてくれたお茶を一口。
「それじゃあ、もっと速く走れるようになりたいの?」
「・・・まあ、ね。走るのが好きだと言っておいてなんだけど、結果が伴えば、それは嬉しいよ。それだけが全てとも思わないけど」
「そうですか・・・。この部屋を見る限り、結果は伴っているようですね」
凛の部屋にはメダルやら賞状やらが幾つか飾られています。
十中八九、何かしらの大会で結果を残しているということでしょう。
もう一口お茶を頂き、凛の顔を窺うと・・・ちょっと辛そうにしています。
「あの・・・何か気に障ることでも・・・?」
「あ、ううん、若葉が悪いんじゃないから!」
「では、一体・・・?」
「んん・・・それは、さ・・・」
とても言い辛そうに顔を顰めています。
言いたくないのであれば、無理に言わずともいいのですが・・・。
「この部屋の賞状とかメダルって、全部小学生の頃か中学一年の時の物なんだ」
「・・・伸び悩み、ですか?」
「そ。周りがどんどん速くなっていくのに、私は殆ど変わらない。走るのが好きだと認識した時から伸び悩むなんて、皮肉なものだよね・・・」
腕を組んで自嘲気味に笑う凛。
彼女はいつも明るくて、ムードメーカー的な存在です。
そんな彼女でも、このような顔をするのですね。
いえ、それは当然のことかもしれません。
好きだからこそ、この道で生きていきたいと願うものです。
それが伸び悩みとなれば、深刻な話でしょう。
私も、<妖符師>としての能力が頭打ちになれば・・・落ち込みます。
寧ろ、既にそのことを恐れ始めていると言ってもいいでしょう。
だからこそ、毎日欠かさず練習を重ねていますし、自分なりに霊や妖力についての考察も重ねています。
私は、天才タイプでも感覚派でもないので、そういう努力を怠ったら、後は下に落ちていくだけです。
もしも、自分の力が足りないばかりに、大切なものを守れず取りこぼしてしまったらと考えたら・・・とてもサボる気にはなれませんね。
最善を尽くして、手の届く範囲で大切なものを守る。
これは私の信念であり、受け継いだ意志。
それに、この町には大切なものが増え過ぎましたし、滅びるのは御免です。
そういう訳で、軽々しくは言えませんが、少しだけ凛に共感できます。
何か、手助けになることはありませんかね・・・?
何か・・・そう、河川敷での凛を思い出して・・・。
「・・・そういえば、凛って右足に怪我をしたことがあるんじゃないかな?」
「え・・・うん、中学の初めの頃に一度。慣れないトラックで派手に転んだせいで怪我をしたよ。半月もすれば完治したし、大したことなかったけど・・・どうしてそれを?」
「えっとね。思い返してみると、河川敷で走っている凛は、微妙に右足を庇っているように思えて・・・」
「ええっ・・・!?」
この反応からして、全く心当たりが無いようですね。
無意識の行動というやつでしょうか。
妖力を目に纏って、凛が驚きつつもまじまじと見ている右足首を観察。
・・・完治という言葉に嘘は無く、何の違和感も感じ取れません。
医学の知識こそありませんが、異常の有無くらいは分かるようになりました。
異常があると、全体的に違和感が生じますからね。
ということは、です。
右足を庇う動きは心理的な要因が主だと推測できます。
これが、実はまだ怪我が治っていない、とかですと、庇う行動が正解です。
余計な悪化をさせないための本能的行動ですから。
では、心理的なものであれば・・・。
そこを改善することで何か変化が起こるかもしれません。
「凛、もう一度、河川敷に行ってみよう?」
「あ、うん。そうだね・・・。じゃあ、行ってみようかな・・・?」
上手くアドバイスができればいいんですが・・・どうでしょうね。
私はスポーツインストラクターでもなければ、コーチでもありません。
どのように伝えればいいのか、分かりかねます。
やはり、そういった知識も蓄えるべきなのでしょうか・・・?
・・・いえ、時期尚早ですね。
まだ妖力の使い方すら未熟なのに、あちこち手を付けていたら駄目です。
私のキャパシティは決して大きくはないのです。
だから焦らずに、一つずつコツコツやりましょう。
「ところで凛、その恰好で行くの?」
「えっ、あっ・・・すぐに着替えるよっ!?」
「はい。では待っていますね」
今の彼女はラフな部屋着ですので、このまま外に出るのは嫌ですよね。
そんなことさえ失念するとは、本当に走るのが好きなのですね・・・。
「―――よし、着替え完了!それじゃあ・・・って、何その温かい眼差しっ!?」
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