妖符師少女の封印絵巻

リュース

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二章 高校入学編

45 授業開始と桜

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 月曜日。授業が本格的に始まります。

 そのせいか、一限目を前にして、みんな少し緊張気味です。
 誰しも、授業についていけるか不安になりますよね。


「凪沙さん、私が落ちこぼれたら一緒に頑張ろうねっ・・・!」

「何で私が落ちこぼれる前提なの!?」

「「「ぶふっ!?」」」


 そんなこんなで担当の先生がやってきて、授業が始まりました。







「んんっ・・・ふぅ」


 午前の授業が終わりましたので軽く伸びをします。
 今の授業は数学Ⅰでしたので、私の頭では少々難しかったです。
 あやふやな部分もありますので、家で復習する箇所に印をつけておきます。

 細かいところまで印をつけて・・・お終いです。
 随分多くのチェックがついてしまいました・・・。
 時間だけは沢山ありますから、頑張って復習しましょう。


「若葉っ、凪沙っ、一緒にお昼ご飯食べよっ!」

「お友達と一緒にお昼ご飯・・・・・・!」

「若葉さん? ・・・ダメ、トリップしてる」


 ハッ!?いけません、せっかく誘ってもらえたのに返事もせず・・・!
 えっと、えっと・・・・・・。


「私、今まで生きてきた中で一番幸せです・・・!」

「「そこまで言うのっ!?」」


 今のはお世辞というやつですが・・・分かってますよね?
 と、机を少しだけ移動させて、お弁当を取り出します。
 私たちの机は横一線に並んでいますから、本当に少しだけです。


「わっ、若葉のお弁当、凄く綺麗!」

「本当だね。もしかしなくても自作だよね・・・?」

「はい。朝早くに起きて作りました。私としては、凪沙さんや凛のお弁当の方が美味しそうに見えますけれどね」


 そこはかとなく、お母さんの愛情を感じます。
 きっと、娘の話題作りのために頑張ったのでしょう。


「ところで、先程の数学・・・どうだった? 私はあやふやな部分が多くて・・・」

「私は・・・後半が怪しいかも? あはは、いきなり危ないかも・・・」

「展開とは何ぞや、て感じだった・・・」


 やはり高校生の勉学は難しいですね。
 二人とも苦戦しているようです。

 補習だけは勘弁願いたいところで・・・。









「――――という訳なんですが、何かいい方法は無いでしょうか・・・?」

「・・・知らん。そんな方法があれば誰もが使ってるだろ。勉強で悩む奴なんてこの世からいなくなるぞ」

「やはりそうですか・・・」


 放課後、桜の木を訪れて確認するついでに尋ねてみました。
 当然の如く、そんな方法はないとのご回答を頂くことになりましたが。


「・・・大体、何故それを俺に聞く」

「知人の中で一番物知りそうだからです」

「・・・知人が少ないんだな」

「ううっ・・・気にしていることをハッキリ言われてしまいました・・・」


 中学までは交友関係そのものが存在しませんから、どうしても・・・。
 でも、これから巻き返していけばいいんです・・・!


「そういう訳ですので、私とお友達になってください・・・!」

「断る」

「そんなっ・・・!?」


 呆気なく断られてしまいました・・・!
 もう少し段階を踏むべきだったかもしれません・・・。
 きっと一年ぐらい時間を掛けて仲良くなるべきだったのです・・・!


「・・・そこまで落ち込むことか?」

「はい・・・。両親が事故で亡くなった時以来の悲しさです・・・」

「っ・・・そこまで言うか」


 おや?少し表情が崩れましたね?
 今の会話に何か思うところでもあったのでしょうか?


「大体がして、何故俺に関わろうとするんだ?」

「それは・・・何となく、気になるからですね」

「はぁ・・・?」


 上手く言えませんが、何故か気になるのです。
 放っておけないといいますか・・・不思議な感覚ですね。


「・・・あ、この間はありがとうございました」

「・・・何の話だ?」

「私に教えてくださったではないですか・・・この桜のことを」

「・・・っ!?」


 と、そろそろ時間切れですね。


「バスの時間が迫っているので、今日はこれで失礼しますね」

「っ、待て。お前、この桜のことが・・・って、速っ!?」


 安倍晴幸くんが桜から慌てて降りてきた時、既に私は遠く離れていました。


「ととっ、私のことが知りたいのでしたら、お友達になる決意を固めた後で、今度はそちらから私を訪れてくださいね?」

「なっ・・・!?」


 言いたいことだけ言って、私はバスに飛び乗りました。
 色々なことが分かりましたし、今日は実りの多い一日でした。

 それにしても・・・・・・いえ、邪推はやめておきましょうか。






「・・・友達、か。断っておいて、今更そんなこと言いにい行けるかよ・・・」

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