妖符師少女の封印絵巻

リュース

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三章 水の怪異編

62 笹川先生の悩み

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 現在私は、学校の周りを凛と一緒に走っています。


「ねぇ若葉、本当に運動苦手なの?私、ちょっと自信無くすんだけどな・・・」

「私はズルしているだけなので、運動は本当に苦手なんです・・・!」

「ズルって何なのっ!?」

「企業秘密ですっ・・・!」


 あやかし屋の秘密ですから、企業秘密と言って差し支えないかと。

 凛のプライドに傷をつけたのではないかと心配したのですが、問題無さそうです。
 欠片も負の感情が感じられませんからね。

 そして、気づきました。
 私、手を抜くことがとても苦手みたいです・・・!

 幼い頃から何事も本気でやってきましたから、その癖が出ているんですね。
 悪い癖ではないのですけど・・・日常生活では厄介な癖です。
 流石に妖力は使いませんけどね。

 それにしても、走っている凛はとても凛々しいですね・・・。


「凛って、女性にモテそうだよね・・・」

「うええっ!?私、そんなタイプじゃないよっ!?」

「でも、今の凛はとっても格好良いよ?」

「ううっ・・・!褒めてもらえて嬉しいのに、物凄く微妙な気分だ・・・!」


 凛々しい表情を歪ませて何とも言えない顔になりました。
 この顔は、あまり好みではありませんね・・・。


「私としては、涙目の方が好きだけどねっ・・・!」

「全然嬉しくないっ!というか早く忘れてよっ!!」

「百年くらいしたら忘れるかもしれませんね」

「それってもう寿命迎えてるよね!?」


 ・・・はて。私の寿命、どうなっているんでしょうかね?



 十周走り終えて休憩していると、間もなくして授業が終わりました。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・。二人とも、はぁ、体力、あるんだね・・・。」

「お疲れ様、凪沙さん・・・おっと」


 凪沙さんが私の方に寄り掛かってきたので慌てて受け止めます。


「はぁ・・・どうして初っ端からマラソンなんだろうね・・・?」

「さぁ・・・?学校の方針なのか、別の理由があるのか・・・」


 残念ながら分かりかねますが、暫くの辛抱ですよ。


「若葉と凪沙・・・百合百合しいね?」

「なっ・・・私にそんな趣味はないからっ!」

「私にもありませんね・・・。可愛らしいとは思うのですけど・・・」

「若葉さんっ!そこは明確に否定してよっ!!」








「それでは、今週もお疲れ様でした。土日でゆっくり羽を伸ばしてください。休む時はゆっくり休まないと成長できないかもしれませんからね?」

「笹川先生が言うと説得力があるっ!」

「藤井くんっ、また居残りにしますよっ!!」


 教室内に笑い声が起こりました。
 笹川先生は赤くなって・・・相変わらず可愛らしいですね。


「影山さんっ!そんな子供を愛でるような目で見ないでくださいっ!!」

「何故バレてしまったのでしょうか・・・!?」

「父と母が私に向ける目に似ているからですっ!」


 なるほど、そうでしたか。
 それはそれは・・・。


「優しいご両親で・・・笹川先生の可愛らしい性格はそこで培われたのですね」

「相川さんっ!挨拶をお願いしますっ!! 影山さんは少し残ってくださいっ!」


 おや、私の発言は無視されてしまいました。

 ですが、残ってほしい理由は、もしかすると・・・?





 放課後、二人だけが残った教室で。


「・・・影山さん、『あやかし屋』というお店は、どこまでの仕事を請け負ってくれるのでしょうか?」

「どこまで、ですか・・・?」


 開口一番、難しい質問が来ましたね。
 一応、表向きは雑貨屋なのですが、実態は何でも屋ですから・・・。

 大抵のことはやりますが、非合法な依頼は基本的にNGです。
 合法であるなら、配達でも悪漢退治でも、料金次第で引き受けます。

 ですが、どこまでか、と聞かれると・・・どう答えればいいのでしょうか?


「とりあえず、義のある軽犯罪くらいなら握り潰せなくもないですよ・・・?」

「誰もそこまでは求めてませんっ!! まるで私が犯罪に手を染めたみたいな言い方はやめてくださいっ!! 人聞きが悪いですからっ!!」


 そういうつもりではなかったのですが・・・。
 今の言い方ではそういう風に聞こえてもおかしくはありませんかね。


「とりあえず、大抵のことはやるという認識でいてくだされば、それでいいかと」

「そう、ですか・・・。では、突拍子もないことを依頼しても、笑ったりはしません、よね・・・?」

「ええ、勿論。馬鹿にするような反応はしないことをお約束します」


 そんなことをしては、あやかし屋の名折れですからね。
 勿論、依頼人の秘密も守りますから、遠慮なく話してくださいな。

 笹川先生は少し逡巡した後、意を決したように話し始めました。


「実は・・・とある男性の方に言い寄られて、困っているんです」

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