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三章 水の怪異編
69 クラスメイトと遭遇
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若葉が認識阻害を発動した直後、彼女の姿はその場から消え失せた。
「「消えたっ!?」」
「・・・奇妙な技を使う奴だな。目をつけられたのは運が悪かった」
この集団、<黒鹿組>の組長たる男は、ため息を吐いて椅子に座った。
ようやく気を抜くことが出来て、一安心といったところだろう。
・・・もっとも、若葉の類まれなるキャラクターのせいで、取引中に不思議と気が抜けることもしばしばあったのだが。
「組長、追いますか?」
「余計な真似はしなくていい。間違いなく藪蛇だ」
「はっ」
組長は、蛇どころか猛獣が出てきかねないと思いつつ、部下を窘めた。
・・・何故か想像の中で出てきた猛獣は可愛い狐だったので、慌てて首を横に振って振り払う。
「しかし、交渉の通じる手合いで良かった。これが情け容赦ない殺し屋だったらと考えると・・・流石の俺も肝が冷える」
「見た目はまだ子供・・・大学生くらいでしたが、恐ろしい女でした」
「そうだな。あの年であの度胸・・・一体何モンなのか。分かっていると思うが、あの辺り一帯には手を出さんように通達しておけよ?下部組織にもだ」
「はっ、かしこまりました」
組長は護衛の男にそう指示を出して、すっかり忘れていたことを一つ思い出す。
「あの独断専行した愚か者は、適当に躾けておけ。同じ轍を踏まれてはかなわん」
「かしこまりました。厳しく躾けておきましょう。独断専行のせいで、私も酷く恐ろしい目に遭いましたからな」
「うむ、そうしろ・・・っ!?」
「・・・組長?」
「いや、何でもない。気にするな」
組長は護衛の男にそう告げたが、その実、内心で混乱していた。
(あの女が子分たちを一網打尽にしたのは覚えている。だが、どんな方法でやったのかがまるで思い出せん!いや、普通に肉弾戦で・・・そういう意味かっ!)
若葉の言っていた、「どうせすぐに忘れる」という言葉の意味を、ここにきて初めて正確に理解した組長は、愕然とせざるを得ない。
今は、まだ違和感を覚えられるが、じきにその違和感も消えるだろう。
そうなっては、もはや何があったのかを思い出すこともできない。
(忘れてしまうというのに、本能的な恐怖は残ったまま・・・本当に、恐ろしい)
組長は頭を抱えつつ、若葉には絶対に手を出すまいともう一度誓ったのだった。
△△△
ヤクザの本拠である建物を出た私は、ストーカーの追跡を開始。
車の目立たない場所に私の妖力が籠ったお守りを括りつけておいたので、追跡することは容易です。
現在は、再び屋根の上やら川の上やらを走ったり飛び移ったりしつつ、自らの妖力を目指して一直線に進んでいる最中です。
時刻は既に正午を回っていますし、一度休憩しつつ昼食にしましょうかね。
電信柱に腰掛け、用意していたサンドイッチを鞄から取り出して一口。
自分で言うのもなんですが、とても美味しいです。
「やめてっ・・・離してくださいっ!!」
「どうして俺の想いを受け止めてくれないんだっ!そんなに顔が大事なのか!?どうして俺の内面を見てくれないんだっ!?」
内面を見たら余計に駄目だと思うのは私だけでしょうか。
・・・と、そんなことを思っている場合ではありません。
電信柱の上から男性に腕を掴まれている女性を発見しました。
二人の居るのは人通りがある場所なのですが、誰もが見て見ぬ振りです。
まあ、普通は関わりたくないですよね。
あまりにも非人情だと思いますが、選択は人それぞれ。
その選択そのものを責めることはやめておきましょう。
・・・おや?
少々着飾っている女性の方は見知った顔でした。
あれは・・・クラスメイト兼学級委員の相川愛華さんですね。
このあたりの出身だったのでしょうか。
「あれだけ俺に優しいんだから、俺のことが好きなんだろ!?」
「違いますっ!あれは仕事でっ・・・それに、普通に接していただけです!」
「嘘だ嘘だ嘘だっ!!」
かなり怪しい雰囲気になってきましたね。
これは看過できないので、介入しましょう。
私の経営するお店『あやかし屋』のモットーは、
壱に人助け、弐に悪霊退治、参、肆が無くて、伍にお金儲けですから・・・!
それでは、狐の仮面(繰り返しますが非売品)をつけて、認識阻害の効果を切りつつ二人の傍にジャンプです!
「愛華ちゃんが俺のものにならないなら、いっそここでっ!!」
「えっ、きゃああああっ!!誰か助けてっ!!」
「はい、承りました」
強引に迫っていた男の背後へ着地し、相川さんを掴んでいた腕をとって足を掛け、地面に転ばせました。
「かはっ・・・!!」
「・・・え、え? 何・・・・・・誰、ですか?」
相川さんに誰何されましたが、正体を明かす訳にはいきません。
普段なら別にいいのですが、今は仕事中で、ロングコート姿ですから。
その他様々な理由により正体は黙秘させていただきます。
・・・普通に見る分には、かなり恥ずかしいんですよ、この格好。
「私は名乗るほどの者ではない。『狐仮面・フォーナ』とでも呼んでくれたまえ」
「へっ? ・・・あ、はい。分かりました。訳アリなんですね?」
「そういうことだ。理解が早くて助かるよ」
念のため口調や声質も変えておきます。
更に、ほんの少しだけ私自身に認識阻害をのせました。
これでバレたら、もうどうしようもありませんね。
バレないことを祈りましょう。
「「消えたっ!?」」
「・・・奇妙な技を使う奴だな。目をつけられたのは運が悪かった」
この集団、<黒鹿組>の組長たる男は、ため息を吐いて椅子に座った。
ようやく気を抜くことが出来て、一安心といったところだろう。
・・・もっとも、若葉の類まれなるキャラクターのせいで、取引中に不思議と気が抜けることもしばしばあったのだが。
「組長、追いますか?」
「余計な真似はしなくていい。間違いなく藪蛇だ」
「はっ」
組長は、蛇どころか猛獣が出てきかねないと思いつつ、部下を窘めた。
・・・何故か想像の中で出てきた猛獣は可愛い狐だったので、慌てて首を横に振って振り払う。
「しかし、交渉の通じる手合いで良かった。これが情け容赦ない殺し屋だったらと考えると・・・流石の俺も肝が冷える」
「見た目はまだ子供・・・大学生くらいでしたが、恐ろしい女でした」
「そうだな。あの年であの度胸・・・一体何モンなのか。分かっていると思うが、あの辺り一帯には手を出さんように通達しておけよ?下部組織にもだ」
「はっ、かしこまりました」
組長は護衛の男にそう指示を出して、すっかり忘れていたことを一つ思い出す。
「あの独断専行した愚か者は、適当に躾けておけ。同じ轍を踏まれてはかなわん」
「かしこまりました。厳しく躾けておきましょう。独断専行のせいで、私も酷く恐ろしい目に遭いましたからな」
「うむ、そうしろ・・・っ!?」
「・・・組長?」
「いや、何でもない。気にするな」
組長は護衛の男にそう告げたが、その実、内心で混乱していた。
(あの女が子分たちを一網打尽にしたのは覚えている。だが、どんな方法でやったのかがまるで思い出せん!いや、普通に肉弾戦で・・・そういう意味かっ!)
若葉の言っていた、「どうせすぐに忘れる」という言葉の意味を、ここにきて初めて正確に理解した組長は、愕然とせざるを得ない。
今は、まだ違和感を覚えられるが、じきにその違和感も消えるだろう。
そうなっては、もはや何があったのかを思い出すこともできない。
(忘れてしまうというのに、本能的な恐怖は残ったまま・・・本当に、恐ろしい)
組長は頭を抱えつつ、若葉には絶対に手を出すまいともう一度誓ったのだった。
△△△
ヤクザの本拠である建物を出た私は、ストーカーの追跡を開始。
車の目立たない場所に私の妖力が籠ったお守りを括りつけておいたので、追跡することは容易です。
現在は、再び屋根の上やら川の上やらを走ったり飛び移ったりしつつ、自らの妖力を目指して一直線に進んでいる最中です。
時刻は既に正午を回っていますし、一度休憩しつつ昼食にしましょうかね。
電信柱に腰掛け、用意していたサンドイッチを鞄から取り出して一口。
自分で言うのもなんですが、とても美味しいです。
「やめてっ・・・離してくださいっ!!」
「どうして俺の想いを受け止めてくれないんだっ!そんなに顔が大事なのか!?どうして俺の内面を見てくれないんだっ!?」
内面を見たら余計に駄目だと思うのは私だけでしょうか。
・・・と、そんなことを思っている場合ではありません。
電信柱の上から男性に腕を掴まれている女性を発見しました。
二人の居るのは人通りがある場所なのですが、誰もが見て見ぬ振りです。
まあ、普通は関わりたくないですよね。
あまりにも非人情だと思いますが、選択は人それぞれ。
その選択そのものを責めることはやめておきましょう。
・・・おや?
少々着飾っている女性の方は見知った顔でした。
あれは・・・クラスメイト兼学級委員の相川愛華さんですね。
このあたりの出身だったのでしょうか。
「あれだけ俺に優しいんだから、俺のことが好きなんだろ!?」
「違いますっ!あれは仕事でっ・・・それに、普通に接していただけです!」
「嘘だ嘘だ嘘だっ!!」
かなり怪しい雰囲気になってきましたね。
これは看過できないので、介入しましょう。
私の経営するお店『あやかし屋』のモットーは、
壱に人助け、弐に悪霊退治、参、肆が無くて、伍にお金儲けですから・・・!
それでは、狐の仮面(繰り返しますが非売品)をつけて、認識阻害の効果を切りつつ二人の傍にジャンプです!
「愛華ちゃんが俺のものにならないなら、いっそここでっ!!」
「えっ、きゃああああっ!!誰か助けてっ!!」
「はい、承りました」
強引に迫っていた男の背後へ着地し、相川さんを掴んでいた腕をとって足を掛け、地面に転ばせました。
「かはっ・・・!!」
「・・・え、え? 何・・・・・・誰、ですか?」
相川さんに誰何されましたが、正体を明かす訳にはいきません。
普段なら別にいいのですが、今は仕事中で、ロングコート姿ですから。
その他様々な理由により正体は黙秘させていただきます。
・・・普通に見る分には、かなり恥ずかしいんですよ、この格好。
「私は名乗るほどの者ではない。『狐仮面・フォーナ』とでも呼んでくれたまえ」
「へっ? ・・・あ、はい。分かりました。訳アリなんですね?」
「そういうことだ。理解が早くて助かるよ」
念のため口調や声質も変えておきます。
更に、ほんの少しだけ私自身に認識阻害をのせました。
これでバレたら、もうどうしようもありませんね。
バレないことを祈りましょう。
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