妖符師少女の封印絵巻

リュース

文字の大きさ
69 / 91
三章 水の怪異編

69 クラスメイトと遭遇

しおりを挟む
 若葉が認識阻害を発動した直後、彼女の姿はその場から消え失せた。


「「消えたっ!?」」

「・・・奇妙な技を使う奴だな。目をつけられたのは運が悪かった」


 この集団、<黒鹿組>の組長たる男は、ため息を吐いて椅子に座った。
 ようやく気を抜くことが出来て、一安心といったところだろう。

 ・・・もっとも、若葉の類まれなるキャラクターのせいで、取引中に不思議と気が抜けることもしばしばあったのだが。


「組長、追いますか?」

「余計な真似はしなくていい。間違いなく藪蛇だ」

「はっ」


 組長は、蛇どころか猛獣が出てきかねないと思いつつ、部下を窘めた。
 
 ・・・何故か想像の中で出てきた猛獣は可愛い狐だったので、慌てて首を横に振って振り払う。


「しかし、交渉の通じる手合いで良かった。これが情け容赦ない殺し屋だったらと考えると・・・流石の俺も肝が冷える」

「見た目はまだ子供・・・大学生くらいでしたが、恐ろしい女でした」

「そうだな。あの年であの度胸・・・一体何モンなのか。分かっていると思うが、あの辺り一帯には手を出さんように通達しておけよ?下部組織にもだ」

「はっ、かしこまりました」


 組長は護衛の男にそう指示を出して、すっかり忘れていたことを一つ思い出す。


「あの独断専行した愚か者は、適当に躾けておけ。同じ轍を踏まれてはかなわん」

「かしこまりました。厳しく躾けておきましょう。独断専行のせいで、私も酷く恐ろしい目に遭いましたからな」

「うむ、そうしろ・・・っ!?」

「・・・組長?」

「いや、何でもない。気にするな」


 組長は護衛の男にそう告げたが、その実、内心で混乱していた。


(あの女が子分たちを一網打尽にしたのは覚えている。だが、どんな方法でやったのかがまるで思い出せん!いや、普通に肉弾戦で・・・そういう意味かっ!)


 若葉の言っていた、「どうせすぐに忘れる」という言葉の意味を、ここにきて初めて正確に理解した組長は、愕然とせざるを得ない。
 今は、まだ違和感を覚えられるが、じきにその違和感も消えるだろう。
 そうなっては、もはや何があったのかを思い出すこともできない。


(忘れてしまうというのに、本能的な恐怖は残ったまま・・・本当に、恐ろしい)


 組長は頭を抱えつつ、若葉には絶対に手を出すまいともう一度誓ったのだった。



 △△△



 ヤクザの本拠である建物を出た私は、ストーカーの追跡を開始。

 車の目立たない場所に私の妖力が籠ったお守りを括りつけておいたので、追跡することは容易です。
 現在は、再び屋根の上やら川の上やらを走ったり飛び移ったりしつつ、自らの妖力を目指して一直線に進んでいる最中です。

 時刻は既に正午を回っていますし、一度休憩しつつ昼食にしましょうかね。

 電信柱に腰掛け、用意していたサンドイッチを鞄から取り出して一口。
 自分で言うのもなんですが、とても美味しいです。


「やめてっ・・・離してくださいっ!!」

「どうして俺の想いを受け止めてくれないんだっ!そんなに顔が大事なのか!?どうして俺の内面を見てくれないんだっ!?」


 内面を見たら余計に駄目だと思うのは私だけでしょうか。

 ・・・と、そんなことを思っている場合ではありません。

 電信柱の上から男性に腕を掴まれている女性を発見しました。
 二人の居るのは人通りがある場所なのですが、誰もが見て見ぬ振りです。

 まあ、普通は関わりたくないですよね。

 あまりにも非人情だと思いますが、選択は人それぞれ。
 その選択そのものを責めることはやめておきましょう。

 ・・・おや?
 少々着飾っている女性の方は見知った顔でした。

 あれは・・・クラスメイト兼学級委員の相川愛華さんですね。
 このあたりの出身だったのでしょうか。


「あれだけ俺に優しいんだから、俺のことが好きなんだろ!?」

「違いますっ!あれは仕事でっ・・・それに、普通に接していただけです!」

「嘘だ嘘だ嘘だっ!!」


 かなり怪しい雰囲気になってきましたね。
 これは看過できないので、介入しましょう。

 私の経営するお店『あやかし屋』のモットーは、
 壱に人助け、弐に悪霊退治、参、肆が無くて、伍にお金儲けですから・・・!

 それでは、狐の仮面(繰り返しますが非売品)をつけて、認識阻害の効果を切りつつ二人の傍にジャンプです!


「愛華ちゃんが俺のものにならないなら、いっそここでっ!!」

「えっ、きゃああああっ!!誰か助けてっ!!」

「はい、承りました」


 強引に迫っていた男の背後へ着地し、相川さんを掴んでいた腕をとって足を掛け、地面に転ばせました。


「かはっ・・・!!」

「・・・え、え? 何・・・・・・誰、ですか?」


 相川さんに誰何すいかされましたが、正体を明かす訳にはいきません。
 普段なら別にいいのですが、今は仕事中で、ロングコート姿ですから。
 その他様々な理由により正体は黙秘させていただきます。

 ・・・普通に見る分には、かなり恥ずかしいんですよ、この格好。


「私は名乗るほどの者ではない。『狐仮面・フォーナ』とでも呼んでくれたまえ」

「へっ? ・・・あ、はい。分かりました。訳アリなんですね?」

「そういうことだ。理解が早くて助かるよ」


 念のため口調や声質も変えておきます。
 更に、ほんの少しだけ私自身に認識阻害をのせました。

 これでバレたら、もうどうしようもありませんね。
 バレないことを祈りましょう。

しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...