妖符師少女の封印絵巻

リュース

文字の大きさ
71 / 91
三章 水の怪異編

71 ささやかな意趣返し

しおりを挟む
 柴田さんにある程度の異常を話して確認したところ、既に逮捕可能だそうです。

 そんなに簡単で良いんでしょうか?
 私、もっと複雑な手順が必要だと思っていました。

 なお、ストーカーである男性の実家は、そこそこの名家だそうです。
 今時、そういうのが残っているものなのですね。

 政治的問題については心配無用とのこと。
 名家の方もストーカーである男の扱いに困っているようですし。
 そこはどうとでもなるらしいです。

 そういう訳で、私のやるべきことは、ここでは一つだけですね。


 ピンポーン!


『―――はい、どちら様でしょうか?』


 インターフォンを鳴らしたところ、直ぐに反応が。
 私は、鳴らしておいてなんですが、認識阻害を使用しつつその声を無視します。
 ピンポンダッシュのようなものですね。ダッシュはしませんけど。

 少しして、ストーカーは悪戯だったと思ったのか、声が止まりました。
 家の中にある映像には何も映っていませんものね。

 私はその直後に再度インターフォンを鳴らします。


 ピンポーン!


『どちら様でしょう・・・って、また居ない?ピンポンダッシュか・・・』


 後は同じことの繰り返し。
 少しは付き纏われる側の気持ちを理解するといいのです。

 繰り返すこと数回。


 ピンポーン!


「誰だっ!こんな悪戯しやがっ・・・・・・誰も居ない!?」


 インターフォンを鳴らした直後、扉の前で待ち構えていたストーカーが、勢いよくドアを開けました。予想通りの展開になりましたね。
 悪霊は私が見えても、ストーカー自体は私が見えませんから。

 その状態で、更にもう一回。


 ピンポーン!


「んなっ・・・誰も居ないのにどうして鳴るんだっ!故障か!?」


 うーん・・・夜の方が効果的でしたかね?
 次の機会があったら、夜になるのを待ってやるとしましょう。

 ピンポーン!
 ピンポーン!
 ピンポーン!

 ・・・ピピピピピピピンポーン!!


「うわああああっ!?」

「・・・多尾幻扇『弐ノ舞・硬扇』」


 腰が抜けた様子のストーカー。
 とり憑いていた中位悪霊を手早く排除し、封印。


「ななな、なっ、何なんだあああああっ!?何が居るんだああああっ!?」


 おや、姿は見えなくとも何かが居ることは分かったようですね。
 悪霊に憑かれていた影響でしょうか。

 ・・・いいことを思いつきました!

 紙と筆を取り出して、血のように赤い文字で、

「見たな?」

 と、なるべく不気味に見えるように書きました。

 去り際に、その紙をストーカーの前に落としていきます。
 これで、こちらは解決したとみていいでしょう。
 そろそろ警察も来ますからね。


「――――ギャアアアアアアアアアアッッ!!!」


 背後から男性の悲鳴が聞こえたような気がしますが、私は関係ありませんね。
 恐怖からしばらく家に閉じこもってくれれば、取り逃がす心配もないでしょう。

 では、一度報告に戻りましょうか。
 高校側からの情報流出に対する対応に関しては、先生の意向も聞いておかねばなりませんから。あやかし屋は依頼人の要望を第一に考える優良企業なのです。



 ▽▽▽



 高校教師である私、笹川美紀は、クマのぬいぐるみを抱き締めながら退屈かつ不安な時間を過ごしていました。


「はぁ・・・。影山さん、大丈夫でしょうか・・・」


 依頼しておいてなんですが、とても心配です。

 彼女の高校生とは思えない頼もしさに、つい調査を依頼してしまいましたが、本来ならば守るべき生徒にこんなことをさせるなどあり得ないことです。
 今更ながらに後悔しています。

 彼女が去り際に、「戻ってこなかったら死んだと思ってください」と告げたことで、ようやくことの重大さに気が付いたんです。
 そんなことを言うのは、死の危険が存在しているという証拠なのですから。

 私・・・教師失格ですね。
 今すぐに土下座して謝りたい気分です。

 そういえば、昨日影山さんが「入院」という言葉を口にしていましたね。
 もしかしたら、入院する原因となった怪我は、こういう依頼中に負ったものなのでしょうか・・・?

 ・・・体が震えてくるのが分かりました。

 ストーカーの件は解決できなくともいいです。
 だから、どうか無事に帰ってきてください・・・!


「無事に帰ってきてくれるのなら、今後、小さいだの可愛らしいだのと言われても怒りません。だから、どうか無事でいてください・・・!」


 ぬいぐるみを抱き締めながら、祈るような思いでそう口にしました。
 これだけで願いが叶うなら、誰も困りませんよね・・・・・・はぁ。


「その言葉に嘘はありませんか?」

「ええ、勿論です。無事に帰ってきてくれるのなら・・・・・・えっ?」


 聞き覚えのある声に振り返ってみると、そこには元気そうな影山さんが。

 ・・・何事も祈ってみるものですね。

しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...