妖符師少女の封印絵巻

リュース

文字の大きさ
76 / 91
三章 水の怪異編

76 双蛇組の情報

しおりを挟む
 草木も眠る丑三つ時。
 このような時間には、たとえ裏家業の者といえど、普通に眠ることもある。

 黒鹿組組長『鹿谷善次郎』とて、例外ではない。
 温かい高級布団に入り、何不自由なく熟睡していた。

 だがしかし、この世には夜にこそ活発に活動する人種というのも、少なからず存在する。鹿谷善次郎はこの日、そのことを思い知らされることになった。

 まあつまり、何が言いたいのかというと――――




「――――怪盗『狐仮面フォーナ』、参上ですっ・・・!」

「はっ?なっ、うおおおおおおおおおおっっ!?!?」


 耳元で突然囁かれた鹿谷は、その優れた気配察知能力のおかげもあってかすぐさま目を覚まし、その両の瞳を開いた。
 すると目の前には、暗闇でも不気味に目が輝く狐仮面。

 誰だって叫びたくなる状況だろう。
 如何に肝の座っている組長といえど、やはり例外ではない。


「な、な、な・・・何なのだ一体っ!ちゃんと約束は守った!お前がまたここにくる理由など無いはずだ!」


 布団から起き上がった体勢のまま後ずさりする鹿谷。
 急なことだったせいか、普段の厳格な雰囲気はどこへやら。
 否、若葉が相手だと大体こんな感じではあるが、普段はもっとヤクザらしい男なのだ、多分。

 そしてそんな組長の様子に不思議そうに首を傾げる若葉・・・否。
 怪盗『狐仮面フォーナ』であった。



 △△△



 組長さんの寝室へお邪魔したら、何故か怯えられてしまいました。
 訳が分かりません。

 相手が堅気の人でなくとも、理由も無く怯えられるのは悲しいですっ・・・!
 私が何かしたとでも言うのでしょうかっ・・・!

 ・・・いいえ!


「私、何も怯えられるようなことはしてませんっ・・・!」

「嘘を吐くでないわっ!!色々やっただろうっ、色々っ!!」

「記憶にありませんっ・・・!!」


 そんなことをした記憶はありませんっ・・・!
 あやかし屋は善良な優良企業なのですからっ・・・!

 きっと組長さんの勘違いです・・・!


「本気で分かっていない、だとぉ!?拳銃を突きつけたり子分を一網打尽にしたり、色々しただろう!?」

「・・・記憶にございませんっ!!」

「なら今の間はなんだっ!?思い出したのだろう!?忘れた振りをするでないっ!」

「私、覚えていたくないことは忘れるタイプなんです・・・!!」

「都合のいい頭だなド畜生がっ!!」


 はい、本当は覚えていますよ、ええ。

 ですが、人間誰しも覚えておきたくないことってありますよね?
 そういうことで、知らんぷりを続けましょう。

 あ、組長の鹿谷善次郎さんが裏家業の人らしい雰囲気に戻りました。
 今更手遅れだと思いますよ?
 既に本性が露呈していますから。

 一体誰のせいなのでしょうね?


「・・・それで、こんな夜分に如何なる用だ?」

「組長さんの頭を頂きに来ました・・・!」

「堂々と暗殺宣言だと!?」

「いえ、間違えました。組長さんの知恵を借りにきたんです・・・!」

「大事な部分が微妙にっ、尚且つ大幅にズレてるだろうがああっ!!」


 はい、そうですね。
 二つの言葉、「頭 を 頂く」と「知恵 を 借りる」では、近いようで全く意味が違ってきますからね。

 でも、わざとではないんですよ?
 ちょっと失敗しただけです。


「それで、二匹の蛇がついた紋章について知りませんか?」

「二匹の蛇だと? ふん・・・嫌な話を思い出した」


 どうやらご存知のようですね。
 流石は裏家業の組長さんです。


「二匹の蛇なら、<双蛇組>だろうよ。うちのシマに度々手を出してきやがる、組長からしていけ好かないクソ野郎どもだ」

「・・・同じ裏家業同士、仲が良いのではないのですか?」

「あやつらのやり方とは反りが合わん。うちだって口が裂けても善良だとは言えんが、あそこまで非道ではない」


 ええまあ、そうですね。
 先生の情報を売り買いして、生徒を盾に取るよう勧めるくらいですから。

 ・・・思い出したら怒りが湧いてきました。


「・・・おいっ、殺気を引っ込めろ。その件は手打ちになったはずだ。もう二度と手は出さん故に矛を収めてくれ!」

「・・・ええ、分かっていますよ。約束は・・・守ります、多分」

「本当に信じていいのか、これは・・・?」


 信じてくれていいですよ。
 よほどのことが無ければ、約束は守りますから。

 それよりも今は情報です。


「その<双蛇組>というのは、どのような活動を?」

「・・・あまり大きな声では言えんが、違法薬物やら人の売り買いなんて序の口だ。女を薬漬けにして奴隷のように扱ったり、弄んだり」


 それは・・・あまりにも非道ですね。
 自分が関わっていないから平然としていられますが・・・。


「そういやぁ、情報が入ってたな。確か、ここ数日『あやかし屋』とかいう店で売り子をやっている女を攫って、誰かを脅そうとしているとか。どこかのお偉いさんの娘かなんかだろうが、きっと奴隷同然に―――」


 ドゴオオッ!!!


 気づいたら、後ろにある壁を見もせずに殴りつけていました。
 穴が空いてしまいましたので、弁償が必要ですね。

 でも、今は後回し。


「―――そのお話、本当ですか?」

「っ、あ、ああっ!子分の報告の中にそんな話が混ざってたのだ! 俺は関知してないからその殺気を抑えてくれっ!!建物が揺れてやがるっ!!」

「っと、失礼しました」


 少々我を忘れていたようですね。
 咲良さんをどうこうされると聞いた時点で、駄目でした。

 怒れる時こそ冷静に、です。

 とはいえ、次の目的は定まりました。


 どこに手を出したのか、思い知ってもらいましょうか。

しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...