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三章 水の怪異編
76 双蛇組の情報
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草木も眠る丑三つ時。
このような時間には、たとえ裏家業の者といえど、普通に眠ることもある。
黒鹿組組長『鹿谷善次郎』とて、例外ではない。
温かい高級布団に入り、何不自由なく熟睡していた。
だがしかし、この世には夜にこそ活発に活動する人種というのも、少なからず存在する。鹿谷善次郎はこの日、そのことを思い知らされることになった。
まあつまり、何が言いたいのかというと――――
「――――怪盗『狐仮面フォーナ』、参上ですっ・・・!」
「はっ?なっ、うおおおおおおおおおおっっ!?!?」
耳元で突然囁かれた鹿谷は、その優れた気配察知能力のおかげもあってかすぐさま目を覚まし、その両の瞳を開いた。
すると目の前には、暗闇でも不気味に目が輝く狐仮面。
誰だって叫びたくなる状況だろう。
如何に肝の座っている組長といえど、やはり例外ではない。
「な、な、な・・・何なのだ一体っ!ちゃんと約束は守った!お前がまたここにくる理由など無いはずだ!」
布団から起き上がった体勢のまま後ずさりする鹿谷。
急なことだったせいか、普段の厳格な雰囲気はどこへやら。
否、若葉が相手だと大体こんな感じではあるが、普段はもっとヤクザらしい男なのだ、多分。
そしてそんな組長の様子に不思議そうに首を傾げる若葉・・・否。
怪盗『狐仮面フォーナ』であった。
△△△
組長さんの寝室へお邪魔したら、何故か怯えられてしまいました。
訳が分かりません。
相手が堅気の人でなくとも、理由も無く怯えられるのは悲しいですっ・・・!
私が何かしたとでも言うのでしょうかっ・・・!
・・・いいえ!
「私、何も怯えられるようなことはしてませんっ・・・!」
「嘘を吐くでないわっ!!色々やっただろうっ、色々っ!!」
「記憶にありませんっ・・・!!」
そんなことをした記憶はありませんっ・・・!
あやかし屋は善良な優良企業なのですからっ・・・!
きっと組長さんの勘違いです・・・!
「本気で分かっていない、だとぉ!?拳銃を突きつけたり子分を一網打尽にしたり、色々しただろう!?」
「・・・記憶にございませんっ!!」
「なら今の間はなんだっ!?思い出したのだろう!?忘れた振りをするでないっ!」
「私、覚えていたくないことは忘れるタイプなんです・・・!!」
「都合のいい頭だなド畜生がっ!!」
はい、本当は覚えていますよ、ええ。
ですが、人間誰しも覚えておきたくないことってありますよね?
そういうことで、知らんぷりを続けましょう。
あ、組長の鹿谷善次郎さんが裏家業の人らしい雰囲気に戻りました。
今更手遅れだと思いますよ?
既に本性が露呈していますから。
一体誰のせいなのでしょうね?
「・・・それで、こんな夜分に如何なる用だ?」
「組長さんの頭を頂きに来ました・・・!」
「堂々と暗殺宣言だと!?」
「いえ、間違えました。組長さんの知恵を借りにきたんです・・・!」
「大事な部分が微妙にっ、尚且つ大幅にズレてるだろうがああっ!!」
はい、そうですね。
二つの言葉、「頭 を 頂く」と「知恵 を 借りる」では、近いようで全く意味が違ってきますからね。
でも、わざとではないんですよ?
ちょっと失敗しただけです。
「それで、二匹の蛇がついた紋章について知りませんか?」
「二匹の蛇だと? ふん・・・嫌な話を思い出した」
どうやらご存知のようですね。
流石は裏家業の組長さんです。
「二匹の蛇なら、<双蛇組>だろうよ。うちのシマに度々手を出してきやがる、組長からしていけ好かないクソ野郎どもだ」
「・・・同じ裏家業同士、仲が良いのではないのですか?」
「あやつらのやり方とは反りが合わん。うちだって口が裂けても善良だとは言えんが、あそこまで非道ではない」
ええまあ、そうですね。
先生の情報を売り買いして、生徒を盾に取るよう勧めるくらいですから。
・・・思い出したら怒りが湧いてきました。
「・・・おいっ、殺気を引っ込めろ。その件は手打ちになったはずだ。もう二度と手は出さん故に矛を収めてくれ!」
「・・・ええ、分かっていますよ。約束は・・・守ります、多分」
「本当に信じていいのか、これは・・・?」
信じてくれていいですよ。
よほどのことが無ければ、約束は守りますから。
それよりも今は情報です。
「その<双蛇組>というのは、どのような活動を?」
「・・・あまり大きな声では言えんが、違法薬物やら人の売り買いなんて序の口だ。女を薬漬けにして奴隷のように扱ったり、弄んだり」
それは・・・あまりにも非道ですね。
自分が関わっていないから平然としていられますが・・・。
「そういやぁ、情報が入ってたな。確か、ここ数日『あやかし屋』とかいう店で売り子をやっている女を攫って、誰かを脅そうとしているとか。どこかのお偉いさんの娘かなんかだろうが、きっと奴隷同然に―――」
ドゴオオッ!!!
気づいたら、後ろにある壁を見もせずに殴りつけていました。
穴が空いてしまいましたので、弁償が必要ですね。
でも、今は後回し。
「―――そのお話、本当ですか?」
「っ、あ、ああっ!子分の報告の中にそんな話が混ざってたのだ! 俺は関知してないからその殺気を抑えてくれっ!!建物が揺れてやがるっ!!」
「っと、失礼しました」
少々我を忘れていたようですね。
咲良さんをどうこうされると聞いた時点で、駄目でした。
怒れる時こそ冷静に、です。
とはいえ、次の目的は定まりました。
どこに手を出したのか、思い知ってもらいましょうか。
このような時間には、たとえ裏家業の者といえど、普通に眠ることもある。
黒鹿組組長『鹿谷善次郎』とて、例外ではない。
温かい高級布団に入り、何不自由なく熟睡していた。
だがしかし、この世には夜にこそ活発に活動する人種というのも、少なからず存在する。鹿谷善次郎はこの日、そのことを思い知らされることになった。
まあつまり、何が言いたいのかというと――――
「――――怪盗『狐仮面フォーナ』、参上ですっ・・・!」
「はっ?なっ、うおおおおおおおおおおっっ!?!?」
耳元で突然囁かれた鹿谷は、その優れた気配察知能力のおかげもあってかすぐさま目を覚まし、その両の瞳を開いた。
すると目の前には、暗闇でも不気味に目が輝く狐仮面。
誰だって叫びたくなる状況だろう。
如何に肝の座っている組長といえど、やはり例外ではない。
「な、な、な・・・何なのだ一体っ!ちゃんと約束は守った!お前がまたここにくる理由など無いはずだ!」
布団から起き上がった体勢のまま後ずさりする鹿谷。
急なことだったせいか、普段の厳格な雰囲気はどこへやら。
否、若葉が相手だと大体こんな感じではあるが、普段はもっとヤクザらしい男なのだ、多分。
そしてそんな組長の様子に不思議そうに首を傾げる若葉・・・否。
怪盗『狐仮面フォーナ』であった。
△△△
組長さんの寝室へお邪魔したら、何故か怯えられてしまいました。
訳が分かりません。
相手が堅気の人でなくとも、理由も無く怯えられるのは悲しいですっ・・・!
私が何かしたとでも言うのでしょうかっ・・・!
・・・いいえ!
「私、何も怯えられるようなことはしてませんっ・・・!」
「嘘を吐くでないわっ!!色々やっただろうっ、色々っ!!」
「記憶にありませんっ・・・!!」
そんなことをした記憶はありませんっ・・・!
あやかし屋は善良な優良企業なのですからっ・・・!
きっと組長さんの勘違いです・・・!
「本気で分かっていない、だとぉ!?拳銃を突きつけたり子分を一網打尽にしたり、色々しただろう!?」
「・・・記憶にございませんっ!!」
「なら今の間はなんだっ!?思い出したのだろう!?忘れた振りをするでないっ!」
「私、覚えていたくないことは忘れるタイプなんです・・・!!」
「都合のいい頭だなド畜生がっ!!」
はい、本当は覚えていますよ、ええ。
ですが、人間誰しも覚えておきたくないことってありますよね?
そういうことで、知らんぷりを続けましょう。
あ、組長の鹿谷善次郎さんが裏家業の人らしい雰囲気に戻りました。
今更手遅れだと思いますよ?
既に本性が露呈していますから。
一体誰のせいなのでしょうね?
「・・・それで、こんな夜分に如何なる用だ?」
「組長さんの頭を頂きに来ました・・・!」
「堂々と暗殺宣言だと!?」
「いえ、間違えました。組長さんの知恵を借りにきたんです・・・!」
「大事な部分が微妙にっ、尚且つ大幅にズレてるだろうがああっ!!」
はい、そうですね。
二つの言葉、「頭 を 頂く」と「知恵 を 借りる」では、近いようで全く意味が違ってきますからね。
でも、わざとではないんですよ?
ちょっと失敗しただけです。
「それで、二匹の蛇がついた紋章について知りませんか?」
「二匹の蛇だと? ふん・・・嫌な話を思い出した」
どうやらご存知のようですね。
流石は裏家業の組長さんです。
「二匹の蛇なら、<双蛇組>だろうよ。うちのシマに度々手を出してきやがる、組長からしていけ好かないクソ野郎どもだ」
「・・・同じ裏家業同士、仲が良いのではないのですか?」
「あやつらのやり方とは反りが合わん。うちだって口が裂けても善良だとは言えんが、あそこまで非道ではない」
ええまあ、そうですね。
先生の情報を売り買いして、生徒を盾に取るよう勧めるくらいですから。
・・・思い出したら怒りが湧いてきました。
「・・・おいっ、殺気を引っ込めろ。その件は手打ちになったはずだ。もう二度と手は出さん故に矛を収めてくれ!」
「・・・ええ、分かっていますよ。約束は・・・守ります、多分」
「本当に信じていいのか、これは・・・?」
信じてくれていいですよ。
よほどのことが無ければ、約束は守りますから。
それよりも今は情報です。
「その<双蛇組>というのは、どのような活動を?」
「・・・あまり大きな声では言えんが、違法薬物やら人の売り買いなんて序の口だ。女を薬漬けにして奴隷のように扱ったり、弄んだり」
それは・・・あまりにも非道ですね。
自分が関わっていないから平然としていられますが・・・。
「そういやぁ、情報が入ってたな。確か、ここ数日『あやかし屋』とかいう店で売り子をやっている女を攫って、誰かを脅そうとしているとか。どこかのお偉いさんの娘かなんかだろうが、きっと奴隷同然に―――」
ドゴオオッ!!!
気づいたら、後ろにある壁を見もせずに殴りつけていました。
穴が空いてしまいましたので、弁償が必要ですね。
でも、今は後回し。
「―――そのお話、本当ですか?」
「っ、あ、ああっ!子分の報告の中にそんな話が混ざってたのだ! 俺は関知してないからその殺気を抑えてくれっ!!建物が揺れてやがるっ!!」
「っと、失礼しました」
少々我を忘れていたようですね。
咲良さんをどうこうされると聞いた時点で、駄目でした。
怒れる時こそ冷静に、です。
とはいえ、次の目的は定まりました。
どこに手を出したのか、思い知ってもらいましょうか。
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