妖符師少女の封印絵巻

リュース

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三章 水の怪異編

77 罠と罠

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 黒鹿組の組長さんも、<双蛇組>の本拠地は知らないそうです。
 まあ、互いの本拠地を知っていたら、もっと争いが激化しそうですよね。

 壁を破壊した件は、情報料や迷惑料も合わせて、貸しを一つ消費することで許してもらいました。

 それはさておき、鳥居町にある私はいま繁華街にやってきています。
 本拠地が分からないのであれば、構成員に聞いてしまえばいいのです。

 そういう意図で、以前柴田さんに用意してもらった大学生風の服装で夜の町を歩いているわけです。決してグレてしまったわけではないのです。

 首尾よく構成員に声を掛けられますかね?
 借金のカタとして連れ去る意外だと、こういうところで女性に声を掛けて、そこから攫うのが常套手段だそうですから。可能性はあると思うのですが・・・。


 結局、この日は声が掛かりませんでした。
 捜査は明日に持ち越しですね。

 やはり、私が魅力的でないのがいけないのでしょうか・・・?



 〇〇〇



 調査二日目。
 今宵も繁華街へ向かいます。

 依頼でもなんでもない一件ですが、このまま捨て置くことはできませんから。
 あやかし屋の従業員に手を出すという行為が何を意味するのか、知らしめねば。

 言うならば、これは報復行為です。



「そこの綺麗なお嬢さん、ちょっとお話しませんか?」

「・・・はい?私ですか?」


 声を掛けられたので振り返ると、そこには二十代中ほどの男性が。
 容姿はかなり良い方だと思いますが・・・右手に二匹の蛇マークがあります。

 これは、当たりですね。


「ええ、そうですよ。あまりにもお綺麗なもので、つい声を掛けてしまいました」

「私が、ですか・・・?」


 この人は目が節穴なのでしょうか?
 私の何処が綺麗だというのでしょう?

 ・・・ああ、そういう誘い文句なのですね。納得です。

 男性は私が首を傾げていると意外そうな顔になって言葉を続けます。


「決してお世辞ではありませんよ。俺は本気で言ってます。ところで、もしよろしければ、この後一緒に食事でもどうですか?」

「えっと・・・済みませんが、そういうのはお断りします」

「そこをなんとか・・・!俺、凄く良いお店を知ってるんです」


 いきなりOKすると怪しまれそうですので、一度お断りを。
 そうすると、案の定食い下がられました。

 迷惑そうな様子を装い、熱意に根負けしたといった風に、最後には承諾。

 男の道案内に従ってついていきます。


「着きました。ここの料理がまた、とても美味しいんですよ」

「そうなのですか・・・。ちょっと楽しみですね」


 今の言葉に嘘はありません。
 美味しい料理というのは、本当に楽しみです。

 そのお店は、小さな居酒屋のような感じで、裏通りにあるという点以外は、ごく普通のお店に見えます。

 店内は静かで薄暗い感じですが、印象は悪くありません。
 お洒落な雰囲気で人も少なく、割と落ち着ける空間です。

 店内の一角にある席に座り、お品書きを見ます。
 そこにはお酒が結構な種類並んでいました。

 今更ですが、高校生が来ていいところではありませんね。


「迷うようなら・・・これ。これがお薦めですよ」

「そうですか。では、これを頂きます」

「飲み物はどうします?ここはいいお酒も揃ってますが」

「あ、お酒は苦手なので・・・」


 幾ら調査とはいえ、飲酒は駄目です。
 まだ未成年ですからね。

 必要とあらば軽く法を犯すこともありますが、必要ない犯罪は駄目です。
 我が『あやかし屋』におけるルールですし。

 中には、身内に手を出された時は報復を躊躇うべからず、というルールも。
 時折物騒な内容も混ざっていますね。


「でしたら、適当にドリンクを頼んでおきますね」

「はい。ありがとうございます」


 双蛇組の構成員と推測される男の人が、私の分の注文もしてくれました。
 普通に優しそうな好青年に見えるんですが・・・残念です。

 男性と世間話をしながら待つことしばし。
 頼んだ料理と飲み物が届きました。

 この間、男性は私の身の上について聞いてきましたが、適当にはぐらかしました。

 では、注目の料理を一口。
 ん・・・・・・普通に美味しいですね。


「どうですか?」

「はい、とっても美味しいです」

「それは良かったです」


 私は飲み物に口をつけつつ返答。
 美味しかったのは本当ですから、嘘を吐く必要はありません。

 ・・・おや?このお茶、何やら変な味がしたような・・・?


「ところで、お嬢さんは本当に綺麗ですよね」

「そんなことはありません、よ?」

「いえいえ、本当にお美しい。ですから・・・そんな貴女を弄べるのが嬉しくて堪らないんです」

「・・・え?」


 ガシャンッ!!


 ついに尻尾を出した。
 そう思った瞬間、手から力が抜けてグラスをとり落としてしまいました。

 それに、なんだか眠くなってきたような・・・?

 やがて、眠気が極限に達した私は、テーブルに突っ伏しました。


「思ったよりも睡眠薬が効かなくて焦りましたよ」

「睡眠、薬・・・?」

「ええ、そうです。ほら、もう眠いでしょうから、我慢せずに寝るといいですよ?次に起きた時は、私たちが丁重におもてなししますから」


 本性を現した男の卑しい笑み。
 それも瞼が重くなることで、よく見えなくなって・・・。

 私は眠気に任せて、瞼を完全に閉じてしまいました。
 寝たら不味いのは、分かり切って、いますから、少し、目を、閉じる、だけ、です。

 直ぐに、目を、開けば、いい・・・・・・・・・

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