異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
71 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

王都感謝祭・最終日

しおりを挟む
 武闘大会が中止となり、不完全燃焼かと思いきや、意外とそうでもない。



 なんというか、予選を楽しめたのだ、とても。

 大運動会のようなノリで終わってしまった武闘大会だった。



 そして、王都感謝祭最終日の五日目。

 この日のメインイベントは・・・?




「カップルタイム・・・?」


 発表された内容に、みんな首をひねっている。


 説明によると、一日間、異性への告白を推奨する。

 意中の人に告白して成功した場合、国から特別なプレゼントが贈られる。

 振られた場合は、その日の買い物が8割引きに。

 その判定は、全員に配られたバッジの有無で行う。

 振った者は、振られた者にバッジを渡す。

 男は黒。女は赤。

 なお、振った者は、1人につき、買い物代金が1割増加する。


 最近の人口減少の対策として、試行を検討しているとか。

 今回はそのテストケースだ。

 若干趣味の悪さはあり、反対意見も出た。

 だが、魔物の強力化のこともあり、とりあえずやってみよう、となった。

 割引などは、モデルケースにするお詫びの意味合いもある。

 王都の住人にも、それは知らされた。







「好きです!付き合ってください!」

「・・・ごめん。君とは付き合えないかな。」

「うう・・・そうですよね・・・。」


 クロトは顔見知りの女性にバッジを1つ渡す。

 
「すまないね。好きでもない人の告白は受けられないから・・・。」

「分かってます。ダメ元でしたから・・・。」


 そうして、女性は去って行った。

 今日はやけ食いするそうだ。


 クロトは、それほど罪悪感は感じていない。

 あまり好きでもない人を振ったくらいでは、心乱されないのだ。



 結果として、面白いことが判明した。


「クロト、どうだった?」

「・・・8人。ライトは?」

「・・・12人だな。」


 クロトよりもライトの方が、告白してきた人数が多かった。

 セレンは微妙な顔をしている。


「ちなみに、セレンはどうだったんだ?」

「ゼロですよ。」


 そう答えたセレンは、やはり微妙な顔をしていた。



 他のメンバーにも聞いてみると・・・


 ヴィオラは6人。これは普通だ。


 面白いのが、


「なあ。カレンとレファイスは何を落ち込んでいるんだ?」


 ライトが聞いてくるので、クロトは答えた。


「なんでも、男性と女性。両方から告白されたみたいだよ。」

「「なぜ知っている!?」」


 クロトに詰め寄ってくる二人。

 ちなみに、レファイスは女性より男性が多く、カレンはその逆。

 落ち込むというか、釈然としないのだろう。


 王都に来たばかりのアクアやエメラは、告白されないかと思いきや・・・。

 
「私は5人でした・・・。」

「ん・・・。6人、だった・・・。」


 意外と多かったようだ。

 そして、リンカはというと。


「えっと、11人、です。」


 やけに沢山、告白されていた。


 リンカも顔が悪い訳ではないが、中の上くらい。

 やはり、顔や性格だけでは決まらないのだろうか。


 
 次にナツメ、なのだが・・・。


「おい。カレンたちより落ち込んでいるんだが・・・?」


 ナツメはテーブルに突っ伏していた。


「・・・ゼロ人だったでござる。」


 これも意外な結果だ。

 ナツメは、顔も綺麗で、性格もいい。

 その上、高ランク冒険者。

 一人くらい告白してきてもおかしく無いのだが。


「なんでも、道行く人に、自分の何が駄目なのか聞いてみたらしいよ。」

「・・・それで?」

「・・・痛い人はちょっと、と言われたらしいね。」

「何故知ってるでござるか!?」


 どうやら、毒の沼地のカーバンクルの件が原因らしい。

 
 あの時ナツメは、クロトに縋りついて色々と言っていた。

 しかし、隠密者を発動したクロトは、他の人には見えない。

 その結果、痛い人として噂が広まってしまったとか。


「もうお嫁に行けないでござるぅ・・・。」


 ナツメはリンカになぐさめられているが、中々立ち直れないようだ。


 最後に、マリア。


「・・・・・・26人ですわ。」

「・・・モテるんだね、マリア。」

「殆ど関わっていないのに、なぜですの・・・?」

「マリアはツンデレさんだからね。」

「端的な説明はやめてくださいましっ!」


 どうやら、王都ではツンデレの需要があったようだ。

 
 中には、「俺を踏んでください!」とか言い出す者が居たとか。


 それはただのドMである。

 その時のマリアは、暫く放心していた。


「クロト。説明が分かり辛くとも、普通な人なら大歓迎ですわ・・・。」

「・・・・・・・・・そっか。」



 かくして、色んな人間の心に傷をつけたカップルタイムは終わったのだった。




 王都特別感謝祭のフィナーレは、大好評だった花火を打ち上げて、閉幕した。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

~The second new world~【VRMMO】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:64

のんびりVRMMO記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:504pt お気に入り:12,485

解体の勇者の成り上がり冒険譚

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:205pt お気に入り:14,970

転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:276pt お気に入り:4,916

異世界に来たら勇者するより旅行でしょう

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:2,578

スキル盗んで何が悪い!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:702

【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう

恋愛 / 完結 24h.ポイント:724pt お気に入り:6,742

転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,267pt お気に入り:23,947

悪役令嬢の残した毒が回る時

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:6,530

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。