異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

アクリルの町

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 一通り観光を終えて旅館に戻ってくると、何やら騒がしかった。


「そこを何とか。前回来た、ここの宿が気に入っているのです。」

「しかし、生憎とお部屋は満室でして・・・。」


 そのセリフだけでおおよその事情を察したクロトは、関わらないことに決めた。

 皆に目配せをして、気配を消して部屋に向かった。

 面倒なテンプレイベントは起こさせないに限る。







 翌日の朝、クロトたちは宿を出て、次の町へ向かった。

 勿論、全員戦闘服だ。


「次の町のアクリルまで、1日だったよね?結構近いんだね。」

「狭い島ゆえ、致し方ないのでござるよ。」


 クロトの言う通り、町と町の間隔は、大分狭い。

 現在、乗合馬車に乗っているのだが、2日もあれば着くそうだ。


 冒険者として雇われた訳ではない。

 せっかくの旅行気分なのだし、そもそも、この辺りは魔物が少ないらしいのだ。

 そのため、護衛はいらない、と。



 そして、本当に何事も無いまま、アクリルの町へ到着。


「クロトのことですから、大量の魔物にでも襲われると思ってましたわ・・・。」

「仮にそうなったとして、それは僕のせいなのかな?」


 失礼なことを言ってきたマリアに尋ね返すクロト。

 確かに、今までそういうことは多かったが、自分のせいではない。

 魔物が大量発生かつ強力化しているのがいけないのだ。

 つまり何が言いたいのかというと。


「みんなカリスが悪いんだ。やっぱり排除対象だね。」

「いくらなんでも、それはあんまりですの・・・。」


 既に敵になったとはいえ、マリアはカリスと長い付き合いだ。

 さすがに可哀そうに思えたようだ。


(そういえば、そろそろもう1つの仕掛けが発動しそうかも・・・?)


 クロトは、下級魔人を捕獲して、爆発魔法陣を隠蔽して貼り付けておいた。

 カリスの招集に応じて、その下級魔人が拠点へ向かっているのだ。

 魔法陣は、カリスの存在を感知して発動する。


(上手くいくといいんだけどな・・・。)


 そんな禄でもないことを考えながら、町の中を歩くクロトだった。





 その日、シンクレア王国で爆音が鳴り響いたそうだ。

 クロトには何の関係のない話だ。



「・・・これは、私が準備で手が離せないことを分かってやっているのか?」


 そんな煤だらけのカリスの呟きは、誰にも聞かれなかった。

 下級魔人は、当然のごとく即死だ。








「じゃあ、今回も別行動で。僕はナツメと行くから。」


 事前に説明はしていたため、クロトのその言葉を合図に別行動を開始した。




「ナツメ、行こう?」

「そ、そうでござるな・・・。」


 ナツメは少しどもりながらも肯定した。


 クロトがナツメと行動するのは、恋人らしい雰囲気をつくるためだ。

 恋人として家に報告するのに、余所余所しくては疑われる。

 そのため、今の内から慣れておこうと考えたわけだ。


「もう少し肩の力を抜いて?」

「し、しかし・・・気恥ずかしい上に緊張するでござるよ・・・。」


 クロトは、ナツメの気持ちも分からないでは無い。

 ゆえに、急ぐことはせず、ゆっくり解していこうと決めた。


「ナツメ、あの店に入ってみよう。」

「しし、し、承知したでござる。」


 先は長そうだと苦笑を浮かべたクロトだった。






「ああ・・・外れたでござる・・・。」

「惜しかったね。もう少しだったんだけど。」


 現在、二人は的当てゲームをやっている。

 シレーマの町でアクアとデートした時も、似たようなゲームをやった。

 恐らく、この国の物が変化して伝わったのだろう。


 クロトはそう推測しつつ、日本でいうストラックアウトのゲームに挑戦。

 十六枚の的に向けて、刃を潰した短剣を投げていく。


 ナツメは、十四枚の商品である綺麗な髪飾りを狙っていた。

 だが、投擲は得意では無かったようで、十枚どまり。


 クロトは十四枚目まで一回も外さなかった。

 まだ回数は残っていたが、躊躇いなくそこで終了し髪飾りを受け取る。

 そして、ナツメに髪飾りをつけてあげた。


「あっ・・・。感謝するでござる、クロト殿・・・。」


 ナツメは、自分の為に挑戦しているとは思っていなかったようだ。

 髪飾りをつけられて驚いていたが、とても嬉しそうだ。

 薄桃色の髪飾りは、黒髪にとても映えていて、よく似合っている。


「よく似合っているよ、ナツメ。」

「そ、そうでござるか・・・。」


 ナツメは相変わらず恥ずかしそうだが、恥ずかしさの種類は変わったようだ。



 その後も二人は、恋人らしく振舞う練習をしたのだった。

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