異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

波動の谷と到達

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 クロトとアクアは、首都から離れた場所にある、波動の谷へやって来ていた。


 東国ジャンゼパールに存在する危険地帯の1つだ。

 国内では、2、3を争う程に危険な場所と言われている。


 ちなみに1番は、世界七大危険地帯の一角だ。

 全極の島、深淵の森、ダイダル海域も、ここに含まれる。


 7つしか無い超危険地帯が3つもあるカラーヴォイス王国。

 どう考えても異常である。



 話を戻して、波動の谷のこと。


 この場所は、波動系の攻撃を使ってくる魔物が多い。

 例を挙げると、衝撃波だったり、超音波だったり。


 そして、この波動の攻撃が、周囲の谷に跳ね返って、戻ってくるのだ。

 その軌道は、てんで出鱈目で、先読みなど不可能と言われている。

 突如後ろから跳ね返って来た波動にぶつかるなどして、死者が絶えない。

 おまけに、霧が出ているせいで、跳ね返って来た波動に気づきづらい。


 危険地帯になるのも納得である。

 谷の壁は、特殊な金属が混ざっているらしい。


 それゆえに、次に来るときはローナを連れてこようと画策しているクロト。
 
 彼女のスキルなら、何かしら分かるだろう。


「では、行きましょうか。」

「ああ、そうだね。」


 そうして二人は、波動の谷へ入って行った。








「・・・半球形にて断絶せよ。半球極氷絶波!」


 アクアの魔法によって、辺りに居た魔物は一掃された。


 今使った魔法は、氷と空間の属性を瞳の波紋に乗せた攻撃、極氷絶波の進化形。

 以前、天空の迷宮の近衛騎士を一掃した魔法だ。


 それが、同心円状に広がるだけでなく、上方にも半球状に波紋が広がっている。

 その波紋の数は、余りに多すぎて、アクアを中心としたドーム状に見える。


 正確な数は分からないが、数百は下らない。

 僅か数秒間で、だ。


 以前は制御能力やMPの問題で上手くいかなかった魔法。


 しかし、大海魔法や純水魔法を覚える過程で、魔法言語と魔法の連携が上達した。

 流水魔法を覚えたことで、制御能力が格段に上がった。

 アクアリウスの水瓶で、あらゆる水を幾らでも生み出せるようになった。

 これらの理由により、今のアクアは問題なく、超絶的な魔法を使っている。

 現状、余裕すらあるようだ。


 現在のアクアの手札は、かなり多彩だ。

 氷獄魔法、空間魔法、魔法言語、大海魔法、純水魔法、流水魔法、水瓶。
 
 文字通り、あらゆる水と氷を操った戦いをし、魔法言語で強化可能。

 攻撃、防御、どちらにも一切の隙が無い。


 クロトは、もう背中を任せて戦えるのでは、と思った。


 そんな時、アクアの耳に、システムアナウンスが聞こえて来た。



<条件を満たしました スキルが統合されます>


 統合されたのは、今挙げたスキル全てを含む。


<ユニークスキル「水神魔法」を習得しました>




「えっ・・・・・・?」


 アクアはしばし呆然としたのだった。






 やがて、クロトに声を掛けられて我に返ったアクア。

 聞こえて来たシステムアナウンスについて、クロトに話した。

 アクアの話を聞いて、クロトも相当驚いた。


 すぐにアクアに頼んで、能力の確認をしてもらった。




 ユニークスキル「水神魔法」。

 水系統のスキルにおける、一つの到達点と言っても過言ではない。


 これまでのように、如何なる水も自由に扱え、凍らせることもお手の物。

 また、その間にタイムラグは無いに等しい。

 凍ることを念じれば、一瞬で凍る。


 長々と魔法言語を紡がなくとも、魔法名の宣言だけ魔法言語で行えばいい。

 それだけで、今まで以上の威力が出る。


 空間魔法を水や風に混ぜ込むことも、簡単にできる。

 こちらも、タイムラグ無しで。


 さらに、魔法全般に対する耐性ができて、水と氷に至っては無効化する。

 ただの無効化ではなく、かなり優先度の高い無効化だ。


 果てには、水系統の魔法を発動するのに、準備が要らなくなる。


 出鱈目すぎるユニークスキルだ。




 実際に使ってみたアクアは、余りの凄さに唖然とするしかなかった。

 あの「半球極氷絶波」を片手間に発動させられるくらいなのだ。

 神の名が付くに相応しい魔法だった。


「アクア・・・これは・・・・凄いよ。よく、ここまで、頑張ったね・・・!」


 クロトは溢れる感情を抑えられず、アクアを抱き締めた。

 
「クロト、さん・・・。私、クロトさんに相応しい女に、なれましたか・・・?」


 クロトは、何の躊躇いもなく、返答した。


「ああ、間違いない。今のアクアなら、完全に背中を任せて、戦えるよ?」


 クロトの命を預けられるという宣言を聞いたアクア。

 それでようやく、自分自身を納得させることが出来たようだ。


「クロトさん・・・!私・・・私っ!ついに、やりましたっ・・・!」


 アクアはようやく辿り着けたことに感激。

 嬉し涙をボロボロと流しながら、泣きじゃくった。


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