異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

水神魔法

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 アクアは、随分と長い間、断絶空間内で泣きじゃくっていた。

 だが、それを咎められる者など居ないだろう。


 アクアは、ゴブリンに負けて捕まってしまった頃から、こんなにも強くなった。

 偏に、クロトに相応しい女になって、傍に居たいがために。


 追いかけても追いかけても差がつまらない状況。

 不安に押しつぶされそうになったこともあった。

 それでも、ひたむきに努力を続けた。

 睡眠時間を削って魔法操作の練習をするなど、日常茶飯事。

 自分の力になりそうなことには妥協を許さず、一切手を抜かなかった。


 ずっとずっと頑張ってきて。

 その念願が、たった今、ついに叶ったのだ。


 咎めるようなものは、クロトがすべてを懸けてでも叩き潰すだろう。


 クロトも、アクアの努力は知っていた。

 いっそ苛烈とさえ言える努力を。


 デートのほとんどをを断念してまで、努力していた。


 それを思うと、目に涙が溜まってくる。

 そしてついに、涙が頬を伝った。


 それに驚いたのはクロトよりもアクアだ。

 あのクロトが涙を流すなど、信じられなかったのだ。


 その涙が、自分のことを思って流したものだと気づいたアクア。

 過去最大級の幸福が、彼女を襲った。


 その後、どちらからともなく、ベッドに倒れ込んだ。


「アクア・・・!」

「クロトさん・・・!」


 見つめ合う二人は濃厚なキスをした後、結ばれた。

 今までのどの行為よりも、甘美で。


 あのクロトでさえも、理性を全て手放し、溺れ切ってしまった。

 アクアがどうなったかなど、言うまでもないだろう。



 二人の幸せな日々は、数日間にも及んで続いたのだった。














 現在アクアが戦っているのは、波皇帝レベル74という強敵・・・のはずだ。

 疑問形なのは、余りにも圧倒的だからだ。

 圧倒しているのは、アクア。


 敵の波動魔法10はかなり強力だ。

 波動は音速を優に超え、数も大量。

 とても避けられたものではない。


 また、その波動が谷に跳ね返って、全周囲から襲って来る。

 例え空を飛んでも、逃れることは出来ない。


 クロトであっても正面から戦うなら、思考能力を全開にして、それでも苦戦する。

 それだけ、魔法と谷の相性が良いのだ。


 だが、アクアは苦戦すらしていない。


 敵の波動は瞳の効果で、どこから来ても感知できる。

 そして、感知した瞬間に水を生成し、水か氷で防御する。


「水神魔法・神絶多重氷壁!」


 たった今も、全周囲から襲ってきた百を超える波動を、全て個別に防いだ。

 そしてほぼ同時に、攻撃も行う。


「水神魔法・神氷絶波!」


 瞳の波紋に乗せた新たな氷絶波が、波皇帝を襲う。

 その速度は、以前よりも更に速く、敵の波動よりも速い。

 今回は敵の居る方向にしか放っていないが、本来は全周囲に放てる。


 波皇帝は己も波動魔法を使用し、相殺を狙った。

 しかしそれは、完全な悪手。

 波紋同士がぶつかれば、弱い方が呑み込まれるのだから。


 アクアの波動は、敵の波動をあっという間に浸食。

 そのまま完全に呑み込み、波皇帝を真っ二つにした。

 しかし、まだ生きているようだ。

 半物質生物だけはある。


 だが、アクアに抜かりはない。

 クロトのように、詰めの手を緩めていなかった。


「水神魔法・連鎖神氷絶波!」


 その魔法により、先ほどの波動で切断された部分を中心に、波紋が発生。

 その超高速の波紋が球体を形作り、敵をバラバラに切り刻む。

 後に残ったのは。波皇帝の細切れだった。






「クロトさん!どうだったでしょうか・・・!?」

「・・・95点、かな。」


 クロトの評価は過去最高点だった。

 どこで点数が引かれたのか気になったアクアは尋ねてみた。

 クロトの答えは・・・


「あんな細切れにしたら、素材としての価値がね・・・?」


 ・・・というものだった。


「あぅ・・・///」


 アクアはあまりの恥ずかしさに、うずくまってしまった。


(きっとグレンさんなら、なんとかしてくれるよね?)


 クロトはグレンに丸投げすることに決めて、アクアをなぐさめにかかった。





 なお、波皇帝を解体したところ、波動結晶が大量に手に入った。

 迷惑をかけたお詫びだということで、クロトも幾つか貰っている。


 迷惑というのは他でもない。

 危険極まりないアクアの波動についてだ。


 谷で跳ね返って襲って来る、アクアの波動。

 クロトはそれを、必死で回避していたのだ。


 余裕は無いながらも、回避しながらアクアの戦闘を見ていた。


 やはりこの男も異常だ。


 そしてアクアは、そんな領域に足を踏み入れてしまった。

 クロトが背中を任せられると宣言したのは、そういうことなのだ。

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