異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

次なる試練は獅子

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「そういう訳で、天の塔へ行くよ。」

「・・・・・・。」

「・・・マリア?」

「・・・・・・。」


 マリアは俯いたまま何も言わない。

 あまりの恥ずかしさに言葉が出ないようだ。


 クロトは、こんな時なんて言うべきだったかを記憶から引っ張り出した。


「返事が無い、ただの屍のようだね。」

「縁起でも無い事を言わないでくれませんのっ!?」


 間違いなく、これからダンジョンに行く者の発言ではないだろう。


「それで、何を恥ずかしがっていたの?」

「どの口が言うんですのっ!クロトのせいですわよっ!」


 リンカに大笑いされて、しばらく顔を合わせ辛くなったほどに恥ずかしいとか。


「でも、原因はマリアだよね?」

「それ以上言うならその口を無理やり塞ぎますわよっ!」


 マリアは暴力的な意味合いを含めて言ったのだろう。

 しかし、その言い方では誤解が生まれそうだ。


「別に塞いでくれても良いよ?ほら。」


 クロトはマリアに顔を近づけ、瞳を閉じた。


「なっ・・・!?」


 マリアは激しく葛藤した。

 人通りが少ないとはいえ往来でそんな真似など恥ずかしくて出来ない。

 だが、ここで拒絶したら、クロトを傷つけるのではないか。

 そもそも、自分が紛らわしい言い方をしたせいでこうなったのに・・・。


 そんな数秒に及ぶ葛藤の後、マリアは意を決して己の唇を近づけ・・・。


「ま、冗談はさておき・・・・・・マリア?どうかした?」

「・・・・・・あああああっ!!」


 マリアは両手の手のひらで顔を覆い隠し、激しく悶えた。

 クロトは不思議そうに首を捻ったのだった。











 天の塔1F 台座の間



「それじゃあ、6F~9Fにある獅子の試練へ向かおうか。」

「獅子がどうこうって、こういうことでしたのね・・・。」


 妙に得心してしまったマリア。


「本当は皆で攻略したいんだけど・・・。」

「色々忙しい人たちですわよね。・・・無職だから暇なのではありませんわよ?」


 マリアは事前に予防線を張った。

 流石と言える行動だが、まだまだ甘い。


「マリアは無職みたいなものだから暇なんだね。」

「わたくしの予防線はどこへいったんですのっ!?完全に無意味でしたの!?」


 クロトは予防線を投げ捨てたらしい。

 そしてさらに追撃。


「百年の恋も醒める、か・・・。マリアが言うと説得力があるよね。」

「今それを持ち出すんですの!?いい加減年の事は言わないでくださいまし!?」


 涙目のマリアを可愛いと思いながら、視線を階段に向ける。


「それはさておき、獅子の試練へ挑もうか。」

「さておかないでくださいましっ!!」









 天の塔6F



「一体何段あるんですの、この階段・・・?」

「さぁ?数える気にはならないね。」


 6Fに上がってきた二人の前には、遥か上まで続く階段が存在していた。

 所々に獅子の石像があるので、場所は間違えていないはずだが・・・。


「階段を上るのが試練なんですの?」

「そういう訳でもないと思うんだけど・・・。」


 普通の人間からしたら、間違いなく試練ではある。

 だが、ここまでやってきた超人たちに課す試練とも思えないのだ。


 クロトが気になって解析してみたところ、またしても酷い仕掛けだった。


「マリア、この階段、一段上るごとに能力値が減っていくみたいだよ?」

「そんな・・・!?」


 それはつまり、上れば上るほど体が重くなるということ。

 さすがに永続ではないようだが、なぐさめにもならない。

 ご丁寧に、飛行禁止地帯でもある。


「マリア、さっさと上るよ?」

「分かりましたわ・・・。」


 嫌々ながらも、上ることを了承したマリア。







「うううっ・・・体が重いですわ・・・!」

「マリアはそんなに重くないから元気出して?」

「そういう意味ではありませんわ・・・!」


 ツッコミにもいつものキレがない。

 能力値減少というのは、強者殺しといえるかもしれない。


「クロト、少し休憩させてくださいまし・・・。」

「いいよ。十分程小休止で。」


 クロトがそう告げると、マリアは階段の踊り場で寝転がった。


「マリア、だらしないよ?」

「これくらいは許してくださいまし・・・。」

「はぁ・・・。今だったら、そこらの暴漢に襲われても抵抗でき無さそうだね。」

「うっ・・・。」


 マリアは、つい想像してしまった。

 今の状態で暴漢に襲われたら、碌に抵抗できず、自分は汚されるだろうことを。

 現実的に思えてありえない未来だと分かっているが、絶対に御免だと思った。


「クロト、もっとそばに来てくださいまし・・・。」

「・・・マリアがデレた?」

「何でもいいですので、早く来てくださいまし。」

「・・・了解。」


 クロトはマリアのすぐそばに寄り添った。


「クロト・・・汚されるくらいなら、死を選ぶべきですわよね・・・?」

「・・・それは、マリア次第じゃないかな。」


 マリアが死にたいと思うのなら、止めることは出来ないということだ。

 クロトは、意志というものをとても尊重し、大事にするタイプなので。


 一応真面目に答えたが、そんな未来を訪れさせるつもりなど無い。


 クロトは滅多に断言などしないのだが、この時ばかりは断言した。

 クロトの言葉を聞いたマリアは、かつてないほど、心臓の鼓動が激しくなった。







「そんな未来、僕の全てを賭けて叩き潰すから、何も心配はいらないよ。」


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