異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
412 / 600
第二部「創世神降臨」編

第三の道

しおりを挟む
「そ、それは・・・マリア殿の方が美しいでござるよ?」

「なっ・・・!」


 先手を取られて動揺するマリア。


「そ、そんなことはありませんわ!ナ、ナツメの方が美しいですわよ?」

「せ、拙者が美しい・・・!?」


 マリアにそう言われて照れてしまうナツメ。


「拙者などより、大人の魅力があるマリア殿の方が・・・!」

「それをいうなら、天真爛漫なナツメの方が・・・!」

「・・・・・・っ!」


 互いに褒め合う妙な状況が生まれ、クロトは笑いを堪えるのが大変のようだ。


(これは確かに、面白い状況だね・・・!)


 ナツメとマリアを連れてきていなかったら、こうはなっていなかっただろう。

 主に人数の都合上。


(アクアたちの方はどうなっているかな?見られないのは残念だね。)


 心底そう思いながら、マリアとナツメのやり取りを温かく見守る。

 そして、二人とも羞恥と照れで真っ赤になった頃に答えを出す。


 ドカンッ!


「「・・・・・・は?」」


 クロトは二つの道の中央にある壁を破壊した。

 マリアとナツメは間抜けな声を漏らす。

 破壊した壁の向こう側には、正解と書かれた石板が。


「・・・まあ、人の美醜なんて主観が混じるし、答えの出しようもないよね?」

「「・・・・・・ッッ!!」」


 マリアとナツメは、先程までのやりとりを思い出し、耳まで赤くなった。

 自分たちは、なんと恥ずかしいことをしていたのか、と。


「僕は顔の造形だけで好きにはならないし、実に無駄な討論だったね?」

「だったら恥をかく前に言ってくださいましっ!?」

「いらぬ恥をかいたでござるよっ!」


 マリアとナツメはクロトに文句をつけるが、大事なことに気づいていない。


「だって・・・それが目的でわざわざ二人に聞いたんだよ?」

「「クロト(殿)は鬼畜ですわっ(でござるっ)!!」」


 そんな二人の反応を見て、満足気に頷いたクロトであった。









 中央の道を進むと、ボス部屋の前に到着した。

 いつの間にか天の塔33Fに突入していたようだ。


「あ、クロトさん!こっちです!」

「アクア。ここまでお疲れ様。」


 近くにあった安全地帯から、アクアの声が掛かった。

 クロトたちより先に到着していたようだ。


「遅くなってごめん。マリアとナツメが、どちらが美しいかで揉めてね。」

「その言い方だと醜い争いをしていたように聞こえるでござる!」

「言葉が足りてませんわよっ、クロト!」


 まるで、自分の方が美しいと譲らなかったみたいな言い方に、異議を唱えた。


「ああ・・・最終問題ですね?こちらも大変でした・・・。」

「へぇ?それはどういう風に?」

「それはですね・・・。」


 アクアの話では、問題は同じで、選択肢に上がったのはヴィオラとエメラ。

 二人とも迷わず、自分ではない選択肢の方へ進もうとしたのだそうだ。

 アクアは二人を引き留めるのに苦労したのだとか。


 最終的に、アクアが壁を破壊して事なきを得たが・・・。

 ヴィオラとエメラは自己評価が低すぎるようだ。


「マリア、ナツメ、聞いた?」

「「・・・・・・っ!」」


 二人は、自分たちの譲り合いが、酷く醜いものに思えてきてしまった。


「あ、僕はヴィオラとエメラを美しいと思ってるからね?」

「・・・!?私は美しくなど・・・!」

「ん・・・。ありがとう、クロト・・・?」


 ヴィオラは赤くなって否定し、エメラは素直に誉め言葉を受け取った。

 人の性格がよくわかる問題だったようだ。


 ヴィオラは自分を美しいと思った事など無いが、そう思われたい願望はある。

 エメラは美しいかどうかなど些事だが、クロトに褒められれば嬉しい。

 マリアとナツメは、多少は自分の容姿を評価している。

 だが、自信をもってそう言えるほどではない。


 大体こんな感じだ。

 クロトからすれば、思わぬ収穫であった。






「ところで、ナツメさんの可愛らしい服装は、新しいご趣味ですか?」

「違うでござるよ!?そんな趣味は無いでござる!!」

「本当ですか・・・?」

「本当でござる!」

「そうですか・・・。いえ、分かっていた事ですけれどね。」


 アクアがニコニコしながら、ナツメを揶揄った。

 揶揄われたことに気づいたナツメは愕然とした。


「アクア殿がクロト殿に毒されたでござるっ!」

「心外だね。ナツメはもっと恥ずかしい侍服を着せられたいのかな?」

「とっても可愛いでしょうし、私は賛成です!着せてあげましょう・・・!」

「アクア殿!?」


 妖艶に微笑むアクアに、ドキドキさせられてしまうナツメ。

 山羊の試練以来、こういう展開が多くなった。







「賛成多数ということで、今度ミューラに作ってもらうね。」

「どこが多数でござるかっ!?そしてミューラとは誰でござるか!?」


 ナツメがそんなツッコミを入れた十数分後星十二天「天秤」は討伐された。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:163pt お気に入り:6,347

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,130pt お気に入り:33

この世界の平均寿命を頑張って伸ばします。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:7,422

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:20,214pt お気に入り:11,868

いずれ最強の錬金術師?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14,037pt お気に入り:35,311

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,491pt お気に入り:4,185

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,439pt お気に入り:305

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,528pt お気に入り:846

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。