異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

ディアナの想い

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 その後二人は、ディアナとインフィをアイシアとともに宿へ運んだ。


「ありがとうございました、師匠。」

「どういたしまして。」


 三人部屋のベッドに酔っ払い二人を寝かせて、一安心。

 そこでクロトはアイシアがもじもじしているのを見つけたので、率直に教えた。


「アイシア、お手洗いなら一階だよ?」

「そのくらい知ってます!はっきり言わないでください!」

「いつまでも我慢していると体に悪いよ?」

「ううっ・・・師匠、先輩たちをよろしくお願いしますっ!」


 そう言い残して部屋を飛び出していったアイシア。

 泥酔した女性と、男性を同じ部屋に残していくのは流石に不安だったのだろう。

 それでも、最後には任せるあたり、その信頼度が窺える。


「だからと言って、僕が短気を起こしたらどうするつもりなのやら・・・。
 悪い気はしないけど、ちょっと短絡的だね。君もそう思うだろう、ディアナ?」


 クロトは眠っているはずのディアナにそう問いかけた。


「・・・・・・ぐう。」

「いや、明らかに狸寝入りだよね?バレバレだよ?」

「・・・・・・何で分かったのよ。」


 ディアナはそう言いながら、誤魔化すのを諦めて起き上がった。

 頭が痛そうな表情を浮かべているが、意識ははっきりしているように見える。

 まだ顔が赤いのは、酔いが残っているからだろう。


「まあ、五感は鋭い方だからね。宿へ戻る時に起きたことくらいは分かるよ。」

「ふーん・・・流石としか言えないわね。」

「それはどうも。ついでに言うと、激しく動揺してたことも、起きたことを伝えるかどうか葛藤してたのも知ってるよ?」

「そんな余計な事まで知らなくていいわっ!!」


 目が覚めたらクロトにおぶられていたディアナは、それはもう動揺した。

 まさか、酔った勢いで関係を持ったのでは、とまで想像した。

 もっとも、クロトがそんな男でないのは分かっていたので違うと結論付けたが。


 そんな内心を全て見透かされていたかと思うと、恥ずかしくて仕方ないだろう。

 クロトに詰め寄ろうとするも、酔いのせいで足元が覚束ず、失敗。

 転びそうなところをクロトがすかさず支えて、ゆっくりベッドに座らせた。


「・・・ありがとう。」

「しおらしいディアナを見るたびに偽者を疑わなくちゃいけないから面倒だね。」

「なんですってぇぇぇ!!」


 今度は立ち上がらずにギンッ!と睨みつける。

 クロトはそれでこそディアナだと満足気に頷いた。


 頭に血が上ったディアナは酔いのせいもあってか頭がクラクラした。

 危険を感じてベッドに横になる。


「酔いがさめない内に怒るとよくないよ?」

「誰のせいだと、思ってるのよ・・・。」


 クロトに文句を言いながらも、その声に張りが無い。

 自分の体が自分のものではなくなったかのような錯覚に襲われているのだ。

 彼女は泥酔した経験がないので、その感覚はさぞ不安を覚えるであろう。


 そして、感情の制御が緩くなって、自分が抱えてきたものを曝け出す。


「・・・ねえクロト。」

「ん?どうかした、ディアナ?」


 クロトはその口調から真剣なものを感じ取って、茶化さずに聞く体制に入った。

 
「・・・私、さ。あんたのことが・・・好きだったんだと思う。」

「・・・・・・へぇ。」


 クロトは目を見開きながらも、過去形であることに妙な安心感を覚えた。


「死者の迷宮で助けられて、父の汚名返上にも手を貸してもらって・・・。
 多分、目的を果たして少しスッキリしたその頃から、あなたに惹かれてた。」


 ディアナは、過去の事を思い返すように、ゆっくりと語る。


「あなたが氷雪女帝狙いでソーラドールに来たとき、恋人が居ると知った。
 まだ子供だった私は、失恋の痛みに耐えられなかった。
 あんなに幸せそうに話すのだから、きっと最高の恋人なのだと思った。
 だがら諦めなくちゃいけないと思って。でも・・・踏み切れなかった。」


 クロトは、そのことはおおよそ察していた。

 だからこそ、その次に会った時に、少々驚いたのだ。

 ディアナが完全に吹っ切っているように見えた故に。


「だから、私は無意識のうちに頼ったのだと思うわ。
 特殊条件9の、「断ち切られし未練」に。
 きっと、そういう効果もあるのよ。ただの推測だけれど。」


 クロトはそれを聞いて納得のいくものがあったようで、なるほど、と頷いた。

 つまるところ、ディアナからクロトへの未練を断ち切った、ということだ。


「それで・・・あの日、私の心が耐えられると判断されて、封印が解けかけた。
 そこに感情の波が押し寄せて、特殊条件は一段上に変化して、それで・・・。
 封印されていた感情、父への不満や怒りが、一度に湧いてきて驚いたわ。」


 アイシアが嫉妬の使い方を教わり、エメラと模擬戦をした日のことだろう。
 
 あの日の夜、ディアナは一つの転機を迎えたのだ。


「その時、直ぐには気づかなかったけど、あなたへの想いも溢れてきたわ。
 しばらくの間、ちょっと距離感を図りかねてしまったけれど・・・。
 でも、この前ちゃんと整理できたわ、あなたへの想い。」


 それはつまり、こういうことだ。


「私は・・・クロトのことが好きだった。
 でも、今現在あなたに向ける感情は・・・尊敬と憧れだけよ。」

「・・・そっか。」


 クロトはその答えを予想していたが、それでも深く安堵した。

 ディアナを振らずに済んだことは、望外の結果なのだ。


「感情を整理できた今だから分かるわ。
 私は純粋に、最大限尊敬するあなたの、力になりたい。
 あなたはとても強いから、私の力なんて要らないかもしれない・・・。」

「・・・・・・。」

「けれど万が一、私の力が必要になったらなら・・・。
 この命を賭して、クロトのために戦うわ・・・!」


 そう宣言したディアナの瞳には、とてつもなく強い意思が感じられた。

 そこに居るのは、英雄の資質を開花させた、一人の女性。


「・・・ありがとう、ディアナ。その時が来たら、遠慮なく頼らせてもらう。
 だから、覚悟して・・・いや、強くなって、待っていてくれ。」


 クロトは、ディアナを自分に追いついてくる逸材と認め、そう答えたのだった。

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