異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
553 / 600
第三部「全能神座争奪戦」編

そして外側の世界へ

しおりを挟む
 クロトはマリアに掴みかかられても平然としている。


「だって、カレンの涙目なんて、物凄くレアだと思わないかい?」

「それは分かりますわ!でも、この状況で言うことがそれなんですのっ!?」

「え?この状況で他に何か言うことでも?」

「カレンの行動についてに決まっていますわっ!!」


 カレンが涙を流したままポカンとしている間に、マリアがクロトに掴みかかる。
 激しく前後にクロトを揺らし、真意を問うた。

 クロトは困ったような表情で、己の見解を述べた。


「そう言われても、ゴーサインをだしたのは僕だし、何も言えないよ?」

「・・・はい?」

「カレンが何か企んでいるのを黙認したのは僕だし、その責任は僕にある。」

「っ、違うっ!これは私が勝手に・・・!」


 カレンはとんでもないことを言い出したクロトの方を向いて、釈明した。
 カレンがその時に初めて見たクロトの顔は・・・無表情。

 つまりは・・・平常運転だ。
 カレンへの負の感情は欠片も感じられない。

 カレンは自責の念を抱きつつも、心の中が歓喜に包まれていくのを自覚した。
 それが醜くて卑しい反応だと分かっていながらも、抑えることができなかった。

 クロトに悪く思われていないというだけでこんなにも嬉しいのかと驚愕もした。


「まあ、マリアに言わせてもらうと・・・もう少し信じてあげて?」

「っ・・・!?」

「カレンはカレンなりに、僕たちの為を思っての行動なんだから、さ。」

「・・・・・・。」


 クロトのその言葉はマリアだけでなく、他の者たちにも掛けられたものだ。
 全員、何かを考え始め、そして同じ結論を出した。

 納得できない部分はあるが、責めるべきではない、と。


「・・・カレン、怒って悪かったですわ。」

「っ、マリア・・・。」

「でも、いずれ説明は要求致しますわよ!何故こんなことをしたのかの!」

「ああ。必ず、話す・・・!」


 様々な事情から今は無理だと考え、いずれ、という条件をつけたマリア。
 カレンはその要求を呑み、いずれ必ず話すと約束した。


 そこで、ついに神界が大きく歪み、大きな穴が空いた。
 その穴は神界の中から外への力が働いており・・・。


「っ、クロト!神界から排出されますっ!衝撃に備えてくださいませっ!」


 クラリエルがこれから起きると予想されることを叫んだ。
 とはいえ、それはまたしても手遅れであった。

 カシャンという音とともに聖域が壊れ、全員が穴に吸い込まれた。
 逸れないように手を繋ぐ余裕さえ無かった。
 唯一出来たのは、アクアがクラリエルを召喚石に強制帰還させることのみ。


「ところで、次に会う時まで、二人にはその涙目を保持してほしいな、と。」

「それは断るっ!」

「嫌に決まってますわっ!!」

「はぁ・・・。クロトさん、こんなときもブレませんね・・・。」


 アクアがため息をついたのを最後として、全員の記憶はそこで途切れた。



 〇〇〇



「――――と、そんな感じかな。」

「なるほどねぇ・・・クロトも大変だったんだね。よしよし。」

「頭を撫でるのはやめてくれないかい?それと、膝枕の体勢もやめない?」

「それはダメ!まだ本調子じゃないんだから、素直に私に甘えておきたまえ!」

「はぁ・・・・・・。」


 クロトは諦めたようにため息をついて、為されるがままになった。
 抵抗しようにも押さえつけられて動けないので仕方ないのだ。

 クロトも一度休んでから動き出すのが最善だと分かっているので、逆らえない。


(何気に、シロナに膝枕されるって、初めてかな・・・?)


 気恥ずかしさを堪えながら、頭の片隅でそんな思考をするクロト。
 これが、相手がアクアやヴィオラであれば、恥ずかしさなど感じない。

 だが、相手はあのシロナなのだ。

 お互い、相手の強いところも弱いところも知りつくしている二人。
 一緒に、酸いも甘いも噛み分けてきた、親友である二人。

 それゆえに、とても厳しく、なおかつ、とても甘い関係にある。

 自分の全てをゆだねているからこその恥ずかしさとも言える。


(前はここまでの恥ずかしさを感じなかったんだけど・・・月日のせいかな。)


 二人が会えなかった月日。
 二人を昔より大人にした月日。

 クロトはその二つを思い浮かべながら、ショートパンツと二―ソックスの間から露出しているシロナの太腿にその身を委ねた。

 ・・・その柔らかさにドギマギさせられつつ。
 

 なお、一方のシロナもクロトと同じようにドギマギしていた。
 その場の流れでやってしまった膝枕だが、これが予想以上に・・・。


(予想以上に恥ずかしいねっ、これ!?クロトが動くとくすぐったいし!)


 シロナは太腿がムズムズしてくるのを我慢しつつ、平然を装って膝枕を続けた。

 お互い、相手の感情を何となく読み取っているため、更に恥ずかしい二人。
 相手の感情を指摘すると、同じ要素を指摘した絶妙なカウンターが飛んでくる。
 故に、決してそれを言うことはしないが。

 何だかんだでこの二人、似た者同士である。

しおりを挟む
感想 1,172

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。