異世界隠密冒険記

リュース

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第三部「全能神座争奪戦」編

遺品の回収

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 アンジェはクロトの非情な言葉に、自分を抑えられる気がしなかった。


(合理的、それは分かります!でも、そんな言い方しなくたって・・・!!)


 クロトはアンジェの仲間を見殺しにした理由を淡々と語った。
 そこに感情の揺らぎはなく、厳然たる事実を語っているだけだった。

 そのあまりにも非人間的な様子により、彼女の心の中は幾つもの感情が湧いた。

 冷徹に見限ったことへの怒り。
 そこまで合理に徹することができることへの感嘆。
 およそ人間とは思えない存在への恐怖。

 特に三番目の感情は、アンジェの体を硬直させるに十分だった。

 普通人間なら、必ず感情というものが行動に影響を与えるものだ。
 それなのにクロトは、感情をスッパリ切り離して、合理で動いている。

 アンジェがそこに得体のしれない恐怖を抱くのも無理なからぬ話だろう。
 クロトを睨みつけながら、体が震えそうになるのを必死に堪えている。


(ッッ・・・!!)


 だがそれでも、決定的な行動には移らない。
 クロトがわざわざ懇切丁寧に説明したのを、誠実さの表れだと分かっていた故に。

 本来、クロトは見捨てたことを隠すべきなのだ。
 ここまでの思慮深さを見せている以上、それが可能なはずなのだから。

 アンジェが本能的に、何の反応もしないクロトから目を逸らすと、その視界内にシロナの姿を捉えた。
 先程からずっと微笑んでおり、お人好しそうな顔をしているシロナを。

 二人の目が合い、それに気づいたシロナがウインクをした。
 アンジェは場の雰囲気に合わないその行動にポカンとしてしまった。


「―――シロナ、そんな酷いモノを見せないように。」

「ひどぅい!? 私の渾身のウィンクを酷いものだなんてっ!!」

「状況を考えようか、状況を。」


 クロトはこめかみを押さえて頬をヒクヒクさせている。
 シロナの奇行は流石に予想外だったのである。


(案外、人間らしいところもあるんですね・・・。正反対の二人かと思ったけれど、お似合いの二人のようですね・・・。)


 アンジェは体の硬直が解け、同時に怒りも少し収まったのを感じた。
 もし何のリスクも無かったのなら、自分たちを助けてくれただろうことを本能的に理解したのだ。

 冷たいようで、心優しい人。
 二人の愛情あふれるやりとりから、クロトの評価はそんなところに落ち着いた。


「大体シロナは、いつもシリアスブレイカーで・・・。」

「空気が重かったんだからしょうがないと思わないかな~?それに、それを言うならクロトだってフラグブレイカーで空気読まないしっ!」

「それはここでは関係ないよね?僕は事実に基づいて話を―――」


 喧嘩かと思いきや、傍から見ればイチャついているようにしか見えない二人。

 アンジェは心を覆っていた悲しみが少しだけ晴れていくのを感じたのだった。


 それから数分後。


「・・・ふふっ。お二人は漫才師が向いていると思いますよ」

「「ツッコミ役の僕(私)が大変だから御免願いたいね(っ!)」」


 ・・・どうやら、互いに自分ボケ役であることを認めないようだ。
 そんな自覚が無い故に当然といえば当然なのだが。

 傍から見れば、ボケとツッコミが尋常でない早さで入れ替わっているようにしか思えないとかなんとか。


「それで、ですね・・・仲間の遺品についてなんですが・・・。」


 アンジェは自分の浅ましさを認識しながら、言葉を呑み込みそうになる自分を叱咤して、クロトとシロナへのお願いごとを口にした。


「あんな目を向けておいて都合がいいことは分かっています。ですが、どうか遺品の回収を手伝って頂けないでしょうか・・・? 私一人ではとても困難で、手を貸してくださる人にも心当たりが無いもので・・・。」


 申し訳なさそうにそう願い出たアンジェに、クロトは少し考えてから回答。


「それについては、残念ながら――――」

「いいよっ!私たちが協力して進ぜようではな痛い痛い痛いっ!!」


 クロトの言葉尻から断られると思っていたアンジェは、顔を青くしつつも目を丸くしていた。
 突然の事態に頭がついていっていないのだ。


「シロナ、人のことは言えないけど、何を勝手に答えてるのかな・・・?」

「だだだだって!それくらいなら手伝ってあげてもいいんじゃないかなぁ、って!手間もリスクも変わらないと思うしっ!!」


 シロナのお人好しが炸裂し、クロトが答える前に請け負ってしまった。
 当然の如く、クロトのアイアンクローが頭部に炸裂した。

 ただ、シロナもクロトの意向を無視した訳ではないし、そんなことは絶対にしない。彼女の優しさは他の誰よりもまずはクロトに向けられるのだから。
 クロトに不利益を被らせてまで誰かを助けようとは思わないのだ。

 では何故、今回は即答したのか。
 それは、クロトもそのつもりだったからに他ならない。
 シロナはそれを直感的に感じ取ったのである。


「はぁ・・・残念ながら、仲間全員の遺品回収は叶わない。」

「そう、ですか・・・。」


 アンジェは肩を落としたが、依頼自体は受けてもらえそうなのを知って、安堵。


「だって・・・まだ一人生きてるし。回収自体はついでに行うことができる。遺品になるまで待つ理由も無いよね?」

「「・・・・・・は?」」


 アンジェリカと、それからシロナも、口をポカンと開けて絶句した。

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