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第三部「全能神座争奪戦」編
深紅鬼と外道の所業
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クロトとシロナは追いかけられていた女性の救出を実行した。
やり方は簡単で、シロナが遠くから攻撃して鬼の注意を引き、その隙に『隠密神』を使用したクロトが女性をかっさらう、というものだ。
助けた理由は・・・憐れみ、ではない。
単に敵の情報を少しでも得ようという考えでの行動だ。
救助のメリットとデメリットを天秤にかけて、前者を選んだだけである。
そういうところは絶対にブレないクロトであった。
二人は事前に決めていた集合場所である<赤鬼キャンプ>にて合流。
「クロトっ、無事に救出、って、うええっ!?何でこの人土下座してるのっ!?」
「・・・女性に間違えられたから、怒って元いた場所に投げ返そうとしたら、こうなったよ。一応謝罪はしたし、許すことにしたけどね。」
「私も今度からそのネタでクロトを弄るのは控えようかなっ!?」
シロナはクロトの苛烈な反応に冷や汗を掻きながらそう叫んだ。
これまでは自分だからこそ手加減されていたのだと理解させられたようだ。
なお、控えはするが、やめるとは言ってない。
そもそも、最初に性別を間違えられるだけなら、クロトはそこまで怒らない。
今回激怒したのは、何度言っても信じてもらえないどころか、肌の艶や匂いなどの女性らしい点を次々に挙げられて女性だと断言されたからだ。
これが、助けられた直後の妙な高揚感のせいでなければ、既に彼女は森に投げ返されていたことだろう。
クロトのガチ怒りに晒されれば、それは土下座もするだろう。
シロナが戻ってきたあたりで、アンジェの高揚感と現実逃避が解けてゆき、仲間と妹を失った痛みが再び蟹所に襲い掛かる。
そして、土下座というより蹲った状態になり、再び涙を流し始めた。
ようやくアンジェが落ち着いた頃に、クロトは助けた対価を頂くことに。
「それじゃあ、まずはその深紅鬼モドキについて話してもらえるかな?」
「はい。あの鬼の見た目は、深紅鬼にかなり近いものがありました。私たちも遭遇した時は、精々変異種くらいに思っていました。ですが、実態は全く違います・・・!あの鬼には解析が上手くはたらかず、拳による一撃は軽々と森を破壊しました!」
「その拳の一撃について詳しく。」
「はい・・・。一言でいうならば、飛ぶ拳、です。馬鹿力なのはいいにしても、あの威力の攻撃が一直線上に遥か先まで飛ぶなど、深紅鬼なはずがありませんっ!」
時折悲しみに襲われながらも、アンジェはその時のことをしっかりと思い出してクロトに伝えた。それが助けてくれたクロトにできる唯一のことだからだ。
彼女はこのとき、クロトに対して複雑な感情を抱いていた。
助けてくれたことへの感謝。
女性と勘違いしたことへの申し訳なさ。
何故もっと早く助けにきてくれなかったのかという憎しみ。
最後の感情は逆恨みだと本人も分かっている。
これまで、仲間を失ってた者など何度も見てきたし、いずれ自分がその立場になる覚悟もしていた。
しかし、だからといって、簡単に割り切れるものではないのだ。
クロトの求めていた情報を全て伝え終えたアンジェは、一つ尋ねることにした。
「―――失礼を承知で尋ねさせて頂きます。あなたたちであれば、もっと早く・・・私たちを助けられたのではありませんか・・・?」
それは、何故自分以外の三人も助けてくれなかったのか、ということを暗に言った非難の言葉であった。
その核心を突いたアンジェの問いに、クロトはそっけなく回答した。
「そうだね。話を総合するに、頑張れば一人目以外は助けられたかもしれないね。」
「んなっ・・・!?」
あまりにも平然と答えられてしまい、呆気にとられるアンジェ。
やがて、クロトの言葉が心に浸透していき・・・。
「―――ら。だったら・・・!何故っ、助けてくれなかったのですかっ!そんなに余裕があったのなら!ガーランドも、エアリスも!何故助けてくれないのですかっ!?」
「・・・第一に、僕としては生き残り人数は一人で十分だ。情報を得ることが目的だからね。超越者が碌な情報も持ち変えれないとは思えないし。」
「・・・・・・」
「第二に、危険を冒してまで助ける理由が薄い。いざという時の口封じは人数が少ない方がありがたいからね。」
「なっ・・・!?」
クロトの口から出た物騒な言葉に、怒りで赤くなっていたアンジェの顔がスッと青くなった。口封じというのは、間違いなくそういう意味なのだから。
あの深紅鬼から楽々と逃げおおせた以上、自分より強いのはほぼ確実。
そんな相手にそんな言葉を吐かれたら、誰だって青ざめもする。
しかしクロトは、アンジェの変化に構わず回答を続ける。
「そして第三に・・・仮に君が嘘を吐いても、死体から敵の情報を多少は手に入れられるから。以上三つの理由で・・・僕は君の仲間を見殺しにしたよ。」
やり方は簡単で、シロナが遠くから攻撃して鬼の注意を引き、その隙に『隠密神』を使用したクロトが女性をかっさらう、というものだ。
助けた理由は・・・憐れみ、ではない。
単に敵の情報を少しでも得ようという考えでの行動だ。
救助のメリットとデメリットを天秤にかけて、前者を選んだだけである。
そういうところは絶対にブレないクロトであった。
二人は事前に決めていた集合場所である<赤鬼キャンプ>にて合流。
「クロトっ、無事に救出、って、うええっ!?何でこの人土下座してるのっ!?」
「・・・女性に間違えられたから、怒って元いた場所に投げ返そうとしたら、こうなったよ。一応謝罪はしたし、許すことにしたけどね。」
「私も今度からそのネタでクロトを弄るのは控えようかなっ!?」
シロナはクロトの苛烈な反応に冷や汗を掻きながらそう叫んだ。
これまでは自分だからこそ手加減されていたのだと理解させられたようだ。
なお、控えはするが、やめるとは言ってない。
そもそも、最初に性別を間違えられるだけなら、クロトはそこまで怒らない。
今回激怒したのは、何度言っても信じてもらえないどころか、肌の艶や匂いなどの女性らしい点を次々に挙げられて女性だと断言されたからだ。
これが、助けられた直後の妙な高揚感のせいでなければ、既に彼女は森に投げ返されていたことだろう。
クロトのガチ怒りに晒されれば、それは土下座もするだろう。
シロナが戻ってきたあたりで、アンジェの高揚感と現実逃避が解けてゆき、仲間と妹を失った痛みが再び蟹所に襲い掛かる。
そして、土下座というより蹲った状態になり、再び涙を流し始めた。
ようやくアンジェが落ち着いた頃に、クロトは助けた対価を頂くことに。
「それじゃあ、まずはその深紅鬼モドキについて話してもらえるかな?」
「はい。あの鬼の見た目は、深紅鬼にかなり近いものがありました。私たちも遭遇した時は、精々変異種くらいに思っていました。ですが、実態は全く違います・・・!あの鬼には解析が上手くはたらかず、拳による一撃は軽々と森を破壊しました!」
「その拳の一撃について詳しく。」
「はい・・・。一言でいうならば、飛ぶ拳、です。馬鹿力なのはいいにしても、あの威力の攻撃が一直線上に遥か先まで飛ぶなど、深紅鬼なはずがありませんっ!」
時折悲しみに襲われながらも、アンジェはその時のことをしっかりと思い出してクロトに伝えた。それが助けてくれたクロトにできる唯一のことだからだ。
彼女はこのとき、クロトに対して複雑な感情を抱いていた。
助けてくれたことへの感謝。
女性と勘違いしたことへの申し訳なさ。
何故もっと早く助けにきてくれなかったのかという憎しみ。
最後の感情は逆恨みだと本人も分かっている。
これまで、仲間を失ってた者など何度も見てきたし、いずれ自分がその立場になる覚悟もしていた。
しかし、だからといって、簡単に割り切れるものではないのだ。
クロトの求めていた情報を全て伝え終えたアンジェは、一つ尋ねることにした。
「―――失礼を承知で尋ねさせて頂きます。あなたたちであれば、もっと早く・・・私たちを助けられたのではありませんか・・・?」
それは、何故自分以外の三人も助けてくれなかったのか、ということを暗に言った非難の言葉であった。
その核心を突いたアンジェの問いに、クロトはそっけなく回答した。
「そうだね。話を総合するに、頑張れば一人目以外は助けられたかもしれないね。」
「んなっ・・・!?」
あまりにも平然と答えられてしまい、呆気にとられるアンジェ。
やがて、クロトの言葉が心に浸透していき・・・。
「―――ら。だったら・・・!何故っ、助けてくれなかったのですかっ!そんなに余裕があったのなら!ガーランドも、エアリスも!何故助けてくれないのですかっ!?」
「・・・第一に、僕としては生き残り人数は一人で十分だ。情報を得ることが目的だからね。超越者が碌な情報も持ち変えれないとは思えないし。」
「・・・・・・」
「第二に、危険を冒してまで助ける理由が薄い。いざという時の口封じは人数が少ない方がありがたいからね。」
「なっ・・・!?」
クロトの口から出た物騒な言葉に、怒りで赤くなっていたアンジェの顔がスッと青くなった。口封じというのは、間違いなくそういう意味なのだから。
あの深紅鬼から楽々と逃げおおせた以上、自分より強いのはほぼ確実。
そんな相手にそんな言葉を吐かれたら、誰だって青ざめもする。
しかしクロトは、アンジェの変化に構わず回答を続ける。
「そして第三に・・・仮に君が嘘を吐いても、死体から敵の情報を多少は手に入れられるから。以上三つの理由で・・・僕は君の仲間を見殺しにしたよ。」
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