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東方編
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大きな湖を沿うように整地された街道を歩く俊也達。
「この湖は?」
「諏訪湖だ。信濃国……元の世界では長野県にあたる」
「諏訪湖の周りを歩いて何処を目指すの?」
「装備を揃えに知り合いの鍛冶屋に行く。刀一振りだけでは装備が乏しい」
「私は戦えない」
美咲は手を左右に振り、ムリムリと呟いた。
「美咲も吉川さんもこちらの世界に来て能力が開花しているはずだ」
「吉川さんじゃなくて、絵里と呼んでください」
吉川のわかりやすく顔が赤くなり照れた顔を見て美咲はため息を吐いた。
街道脇の鍛冶屋に入ると鍛冶屋の親父は驚いた表情で出迎えた。
「帰ってきたのか!それとも向こうに帰れなかったのか!」
「帰った。そしてまた戻った」
「そうか……」
「武器を揃えたい。一つ頼まれてくれないか?」
「武器に防具なら好きなの持ってってくれ。もうすぐ廃業するからなぁ」
「何故だ」
「知らねぇのか?西の方で毛利と魔物の大戦があって、魔物が負けて魔物の軍勢は西方を攻めるのを止めて東に注力するようになって、そろそろ諏訪も危うくなってきたところでい」
「西の毛利が?」
「そうさ。なんでも西の毛利軍に西方の侍衆って強者揃いの集団が入ってから嘘みたいに息を吹き返しやがった」
「強者揃いの侍衆か。一度会ってみたいものだ。鍛冶屋の親父、刀と槍と弓、それに防具を貰っていく」
「あいよ。好きにしな」
全員軽い防具を身に着けた。
吉川は新しい刀を。
美咲は弓を手に入れ。
明日香は苦無と弓と小刀を。
俊也は槍を手にした。
武具を揃え、鍛冶屋を出た。
「これから何処へ?」
「此処も魔物が迫っているなら、一旦南下して船で西に渡り、鍛冶屋が言ってた毛利軍に入る」
「その案がいいわね。行きましょう」
明日香は賛同し
「遠いよー」美咲は嘆いた。
俊也の先導で陸路と海路の長旅の末、山城国(京都)まで魔物の軍を押し返した西の毛利軍がいる山崎城までたどり着いた。
毛利軍は魔物から奪い返した山崎城に入城して
いる。
毛利軍の侍大将と東方から来た俊也達は門前で接見した。
「東の諏訪から来たのか?我らの軍に入りたいと聞いだと……」
「そうだ。それから俺は西方の侍衆に会いに来た」
「強者揃いの侍衆に入りたいという者は多い。そなたの力量は?軍に加入する者は全員試合をしてもらう形になっている。よいか?」
「ああ。頼む」
甲冑を着た侍大将は山崎城の門前から外れた詰め所に移動する。
詰め所には兵士達が集まって待機している。
「またここでやんのかよ!」
「道場行ってくれないかなー」
と詰め所の床に座っていた兵士達は口々に不満を漏らした。
「いいじゃねーか。木刀をよこせ」
侍大将は刀を置き木刀を2本持ち、うち1本を俊也に渡した。
「構え!」と審判役の兵士が号令をする。
俊也と侍大将はお互い木刀を構えた。
「始め!」
号令と共にお互い動き出す。まさに一瞬だった。侍大将の木刀は床に落ち、首筋に軽く木刀が当たっていた。
「つ、つえぇ……」
侍大将の額には汗が滲み出た。
「こんなに強い奴は見たことがない。悟を越えたかもしれん。お主、名は?」
「嘉神俊也。それから後ろにいるのは嘉神美咲、切堂明日香、吉川絵里」
「申し遅れた。我が名は権野寺武彦。元、今坂城主だったが今坂を魔物に奪われ兵と民と共に西国に逃げたところ、毛利殿に拾うてもろうた。西方の侍衆に会いたいと言っておったな?すぐに呼んで参るぞ!」
権野寺は詰め所を飛び出て行った。
しばらくして権野寺が詰め所に戻ると権野寺の後ろから現れたのは悟ら西方の侍衆の面々だった。その中に大翔もいた。
大翔は詰め所に入るなり、明日香に抱きついた。
吉川は咄嗟に「変態!」と引き剥がそうとしたが、大翔の目は涙で溢れていた。
「鈴香!生きてたのか」
「私は鈴香じゃない!離して!」
明日香は大翔の腕を振りほどき顔を殴った。
「痛っ…鈴香じゃない?どう見ても鈴香じゃねーか」
「鈴香は双子の姉よ!貴方誰?」
大翔の顔が引き攣る。そして土下座して明日香に謝った。
鈴香との出会いから鬼になり、鈴香を殺めたこと。鈴香に救ってもらったこと。全て話し終えた時には美咲と吉川は号泣していた。
明日香は平然として
「連れてきた人が鬼と戦えるぐらい強くなったなら姉も喜ぶよ。きっと……」と言って大翔を許し労い気遣った。
その明日香の健気な姿勢に権野寺や兵士達も号泣し、詰め所からは泣き声が響いた。
「この湖は?」
「諏訪湖だ。信濃国……元の世界では長野県にあたる」
「諏訪湖の周りを歩いて何処を目指すの?」
「装備を揃えに知り合いの鍛冶屋に行く。刀一振りだけでは装備が乏しい」
「私は戦えない」
美咲は手を左右に振り、ムリムリと呟いた。
「美咲も吉川さんもこちらの世界に来て能力が開花しているはずだ」
「吉川さんじゃなくて、絵里と呼んでください」
吉川のわかりやすく顔が赤くなり照れた顔を見て美咲はため息を吐いた。
街道脇の鍛冶屋に入ると鍛冶屋の親父は驚いた表情で出迎えた。
「帰ってきたのか!それとも向こうに帰れなかったのか!」
「帰った。そしてまた戻った」
「そうか……」
「武器を揃えたい。一つ頼まれてくれないか?」
「武器に防具なら好きなの持ってってくれ。もうすぐ廃業するからなぁ」
「何故だ」
「知らねぇのか?西の方で毛利と魔物の大戦があって、魔物が負けて魔物の軍勢は西方を攻めるのを止めて東に注力するようになって、そろそろ諏訪も危うくなってきたところでい」
「西の毛利が?」
「そうさ。なんでも西の毛利軍に西方の侍衆って強者揃いの集団が入ってから嘘みたいに息を吹き返しやがった」
「強者揃いの侍衆か。一度会ってみたいものだ。鍛冶屋の親父、刀と槍と弓、それに防具を貰っていく」
「あいよ。好きにしな」
全員軽い防具を身に着けた。
吉川は新しい刀を。
美咲は弓を手に入れ。
明日香は苦無と弓と小刀を。
俊也は槍を手にした。
武具を揃え、鍛冶屋を出た。
「これから何処へ?」
「此処も魔物が迫っているなら、一旦南下して船で西に渡り、鍛冶屋が言ってた毛利軍に入る」
「その案がいいわね。行きましょう」
明日香は賛同し
「遠いよー」美咲は嘆いた。
俊也の先導で陸路と海路の長旅の末、山城国(京都)まで魔物の軍を押し返した西の毛利軍がいる山崎城までたどり着いた。
毛利軍は魔物から奪い返した山崎城に入城して
いる。
毛利軍の侍大将と東方から来た俊也達は門前で接見した。
「東の諏訪から来たのか?我らの軍に入りたいと聞いだと……」
「そうだ。それから俺は西方の侍衆に会いに来た」
「強者揃いの侍衆に入りたいという者は多い。そなたの力量は?軍に加入する者は全員試合をしてもらう形になっている。よいか?」
「ああ。頼む」
甲冑を着た侍大将は山崎城の門前から外れた詰め所に移動する。
詰め所には兵士達が集まって待機している。
「またここでやんのかよ!」
「道場行ってくれないかなー」
と詰め所の床に座っていた兵士達は口々に不満を漏らした。
「いいじゃねーか。木刀をよこせ」
侍大将は刀を置き木刀を2本持ち、うち1本を俊也に渡した。
「構え!」と審判役の兵士が号令をする。
俊也と侍大将はお互い木刀を構えた。
「始め!」
号令と共にお互い動き出す。まさに一瞬だった。侍大将の木刀は床に落ち、首筋に軽く木刀が当たっていた。
「つ、つえぇ……」
侍大将の額には汗が滲み出た。
「こんなに強い奴は見たことがない。悟を越えたかもしれん。お主、名は?」
「嘉神俊也。それから後ろにいるのは嘉神美咲、切堂明日香、吉川絵里」
「申し遅れた。我が名は権野寺武彦。元、今坂城主だったが今坂を魔物に奪われ兵と民と共に西国に逃げたところ、毛利殿に拾うてもろうた。西方の侍衆に会いたいと言っておったな?すぐに呼んで参るぞ!」
権野寺は詰め所を飛び出て行った。
しばらくして権野寺が詰め所に戻ると権野寺の後ろから現れたのは悟ら西方の侍衆の面々だった。その中に大翔もいた。
大翔は詰め所に入るなり、明日香に抱きついた。
吉川は咄嗟に「変態!」と引き剥がそうとしたが、大翔の目は涙で溢れていた。
「鈴香!生きてたのか」
「私は鈴香じゃない!離して!」
明日香は大翔の腕を振りほどき顔を殴った。
「痛っ…鈴香じゃない?どう見ても鈴香じゃねーか」
「鈴香は双子の姉よ!貴方誰?」
大翔の顔が引き攣る。そして土下座して明日香に謝った。
鈴香との出会いから鬼になり、鈴香を殺めたこと。鈴香に救ってもらったこと。全て話し終えた時には美咲と吉川は号泣していた。
明日香は平然として
「連れてきた人が鬼と戦えるぐらい強くなったなら姉も喜ぶよ。きっと……」と言って大翔を許し労い気遣った。
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