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王子、子猫になる
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七つの領土を束ねるクライス王国の第一王子であるルーベルトには数多の令嬢が婚姻を申し出るほど地位も名誉も人々を魅了する端正な顔立ちを持ち合わせたイケメン王子であった。
20歳になる誕生日を前にしてルーベルトは婚約者を公募した。そして数多の婚約者候補から5人に絞った王子は度々会食を開き4人の候補者と親交を深めていた。
ある会食の日のこと、ルーベルトが別邸の部屋で休んでいるとフードを着た怪しい女が部屋に侵入してルーベルトに魔法をかけた。その魔法は猫になる魔法だった。
1人目の婚約者候補ルブリ侯爵家の令嬢ルブリ・レベッカが王子の待つ別邸に馬車で到着した。
「青い瞳、珍しい黒髪にきめ細かな白い肌をお持ちのルーベルト殿下に貴女のような貧相な者は似合いませんわ」
馬車から降りたレベッカは隣の馬車から降りた5人目の子爵家のリリア・フィナに近寄って罵倒した。フィナは黙って耐えた。
「なぜ私と共にフィナがルーベルト殿下と同じ時間に会食する意味が私には分かりませんわ。さぁ行きますわよ」
「はい。レベッカ様」
従者と共に門を開けて王子の別邸の庭に入るレベッカ。
庭は隅々まで手入れが行き届き、綺麗に剪定された草木が左右対称に生える中央に大きな噴水が水音を立てながら湧き上がっていた。
しばらくしてフィナも庭に入る。
庭を通り別邸の扉を開く。左右対称に伸びた2つの階段と中央の扉。その中央の扉の先に長方形のデーブルと椅子が並べられている会食の部屋にレベッカとフィナが入る。
「ルーベルト殿下は居ませんわね」
レベッカがテーブルに置かれた綺麗な食器と料理に目移りしていると「ミィー!ミィー!」と子猫の鳴き声が部屋に響いた。
「なんですの!?・・・猫?」
レベッカは黒い毛の子猫を見ると引き攣った顔をして子猫から離れた。
「フィナ!早くあの雑巾のように小さなものを私から遠ざけて。動物って苦手なのよ!早く!」
フィナはみぃみぃと小さな鳴き声で近づいてくる子猫を抱き抱えた。
まだ生後1か月ぐらいだろうか。両目は開眼して小さな手をパタパタ動かしてフィナの掌から逃げようと抵抗している。
「汚いわね。よく触れるわね」
「ミィー!ミィー!」
(私はルーベルトだ!フィナよ離してくれ!)
「き・・・あ・・から・・・」
(フィナは何を喋っているのか理解出来ない。猫になったせいで人の言葉を理解出来ないのか)
全く人の言葉を理解出来ないルーベルトは困惑した。
「フィナ、猫を外に出したらルーベルト殿下を探してきて」
「しかし、まだ子猫ですから。外に追い出しては危ないです」
「いいから早くして」
レベッカは怒って、持っていた小さな鞄を投げた。フィナの手前に落ちた鞄。フィナは子猫を守るように抱き締めた。
(レベッカは気性が荒いのか。知らなかった。それに比べてフィナは)
フィナは子猫と共に2階に上がりルーベルトの部屋を開いたが誰もいない。
執事も呼び、ルーベルトを捜索したが見つからず会食は後日ということになった。
「その子猫が現れたせいで、せっかくの会食が無くなりましたわ」
レベッカは吐き捨てるように馬車に乗り去って行った。
フィナも子猫と共に別の馬車に乗り、王都に間借りしている自宅に帰った。
フィナの家は二階建ての一階の小さな部屋を間借りしている。
人1人が寝れられるベッドと洗い場、小さな暖炉と小さなテーブルがある。
「ミィ!」
(物置部屋か)
「さぁ子猫ちゃん我が家にいらっしゃい。まずは、ぬるま湯で体を洗いますよー」
フィナは腕まくりして桶にぬるま湯を入れた。子猫を持ち上げる。
(気安く触るな!私は第一王子、ルーベルトである!)
「ミィー!ミィー!」
「優しく洗うから鳴かないでねー」
(フィナよ!私はルーベルトである!)
「ミィ!ミィ!」
フィナは雑巾で子猫を拭いて水気を取り、薪の小さな暖炉の前で乾くまで子猫と一緒に過ごした。
「ミィ~」
(非常に眠い)
子猫は目を瞑りフィナの腕の中で眠りました。
ところが、ミルクの香りでパッと飛び起きるといつの間にか離れてミルクを用意していたフィナに飛び付きました。
「ミィ!ミィ!ミィー!」
(ミルクを所望する!ミルクを!ミルクをー)
尻尾をフリフリしながらフィナの服に爪を立てて這い上がる子猫。
ミルクが入ったお皿を床に置くと子猫はペロペロとミルクを勢いよく飲み始め、あっという間に飲み干しました。
(少し落ち着いた。食欲が強くなった。我を忘れてフィナに飛び付いてしまった。本能というは恐ろしいな)
ぺちぺち、ヨタヨタと慣れない四足歩行に苦戦するルーベルト王子。
もう少しでフィナが用意してくれたトイレ代わりの砂場に辿り着く。
用を済ませ、猫の本能なのか砂を必死に掻いて臭いを消す。
(フィナはなかなか面倒見が良い。もしレベッカに拾われていたなら今頃私はどうなっていたか考えるだけでも悍ましい)
「全然違う違う場所を掻いてますよ」
(うまく手足を使えぬ)
フィナは子猫を持ち上げると手足を軽く拭いて抱き寄せた。そして子猫の顔を自分の顔と近付けてニッコリと笑い。
「可愛い子猫になりましたね。ルーベルト殿下」と囁いた。
子猫のルーベルトには人語がわからない。
フィナの言った意味すら分からず返事をするように「ミィ」と鳴き返した。
20歳になる誕生日を前にしてルーベルトは婚約者を公募した。そして数多の婚約者候補から5人に絞った王子は度々会食を開き4人の候補者と親交を深めていた。
ある会食の日のこと、ルーベルトが別邸の部屋で休んでいるとフードを着た怪しい女が部屋に侵入してルーベルトに魔法をかけた。その魔法は猫になる魔法だった。
1人目の婚約者候補ルブリ侯爵家の令嬢ルブリ・レベッカが王子の待つ別邸に馬車で到着した。
「青い瞳、珍しい黒髪にきめ細かな白い肌をお持ちのルーベルト殿下に貴女のような貧相な者は似合いませんわ」
馬車から降りたレベッカは隣の馬車から降りた5人目の子爵家のリリア・フィナに近寄って罵倒した。フィナは黙って耐えた。
「なぜ私と共にフィナがルーベルト殿下と同じ時間に会食する意味が私には分かりませんわ。さぁ行きますわよ」
「はい。レベッカ様」
従者と共に門を開けて王子の別邸の庭に入るレベッカ。
庭は隅々まで手入れが行き届き、綺麗に剪定された草木が左右対称に生える中央に大きな噴水が水音を立てながら湧き上がっていた。
しばらくしてフィナも庭に入る。
庭を通り別邸の扉を開く。左右対称に伸びた2つの階段と中央の扉。その中央の扉の先に長方形のデーブルと椅子が並べられている会食の部屋にレベッカとフィナが入る。
「ルーベルト殿下は居ませんわね」
レベッカがテーブルに置かれた綺麗な食器と料理に目移りしていると「ミィー!ミィー!」と子猫の鳴き声が部屋に響いた。
「なんですの!?・・・猫?」
レベッカは黒い毛の子猫を見ると引き攣った顔をして子猫から離れた。
「フィナ!早くあの雑巾のように小さなものを私から遠ざけて。動物って苦手なのよ!早く!」
フィナはみぃみぃと小さな鳴き声で近づいてくる子猫を抱き抱えた。
まだ生後1か月ぐらいだろうか。両目は開眼して小さな手をパタパタ動かしてフィナの掌から逃げようと抵抗している。
「汚いわね。よく触れるわね」
「ミィー!ミィー!」
(私はルーベルトだ!フィナよ離してくれ!)
「き・・・あ・・から・・・」
(フィナは何を喋っているのか理解出来ない。猫になったせいで人の言葉を理解出来ないのか)
全く人の言葉を理解出来ないルーベルトは困惑した。
「フィナ、猫を外に出したらルーベルト殿下を探してきて」
「しかし、まだ子猫ですから。外に追い出しては危ないです」
「いいから早くして」
レベッカは怒って、持っていた小さな鞄を投げた。フィナの手前に落ちた鞄。フィナは子猫を守るように抱き締めた。
(レベッカは気性が荒いのか。知らなかった。それに比べてフィナは)
フィナは子猫と共に2階に上がりルーベルトの部屋を開いたが誰もいない。
執事も呼び、ルーベルトを捜索したが見つからず会食は後日ということになった。
「その子猫が現れたせいで、せっかくの会食が無くなりましたわ」
レベッカは吐き捨てるように馬車に乗り去って行った。
フィナも子猫と共に別の馬車に乗り、王都に間借りしている自宅に帰った。
フィナの家は二階建ての一階の小さな部屋を間借りしている。
人1人が寝れられるベッドと洗い場、小さな暖炉と小さなテーブルがある。
「ミィ!」
(物置部屋か)
「さぁ子猫ちゃん我が家にいらっしゃい。まずは、ぬるま湯で体を洗いますよー」
フィナは腕まくりして桶にぬるま湯を入れた。子猫を持ち上げる。
(気安く触るな!私は第一王子、ルーベルトである!)
「ミィー!ミィー!」
「優しく洗うから鳴かないでねー」
(フィナよ!私はルーベルトである!)
「ミィ!ミィ!」
フィナは雑巾で子猫を拭いて水気を取り、薪の小さな暖炉の前で乾くまで子猫と一緒に過ごした。
「ミィ~」
(非常に眠い)
子猫は目を瞑りフィナの腕の中で眠りました。
ところが、ミルクの香りでパッと飛び起きるといつの間にか離れてミルクを用意していたフィナに飛び付きました。
「ミィ!ミィ!ミィー!」
(ミルクを所望する!ミルクを!ミルクをー)
尻尾をフリフリしながらフィナの服に爪を立てて這い上がる子猫。
ミルクが入ったお皿を床に置くと子猫はペロペロとミルクを勢いよく飲み始め、あっという間に飲み干しました。
(少し落ち着いた。食欲が強くなった。我を忘れてフィナに飛び付いてしまった。本能というは恐ろしいな)
ぺちぺち、ヨタヨタと慣れない四足歩行に苦戦するルーベルト王子。
もう少しでフィナが用意してくれたトイレ代わりの砂場に辿り着く。
用を済ませ、猫の本能なのか砂を必死に掻いて臭いを消す。
(フィナはなかなか面倒見が良い。もしレベッカに拾われていたなら今頃私はどうなっていたか考えるだけでも悍ましい)
「全然違う違う場所を掻いてますよ」
(うまく手足を使えぬ)
フィナは子猫を持ち上げると手足を軽く拭いて抱き寄せた。そして子猫の顔を自分の顔と近付けてニッコリと笑い。
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子猫のルーベルトには人語がわからない。
フィナの言った意味すら分からず返事をするように「ミィ」と鳴き返した。
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