魔法で子猫になった第一王子の婚約者選び

三毛猫

文字の大きさ
1 / 9

王子、子猫になる

しおりを挟む
 七つの領土を束ねるクライス王国の第一王子であるルーベルトには数多の令嬢が婚姻を申し出るほど地位も名誉も人々を魅了する端正な顔立ちを持ち合わせたイケメン王子であった。

20歳になる誕生日を前にしてルーベルトは婚約者を公募した。そして数多の婚約者候補から5人に絞った王子は度々会食を開き4人の候補者と親交を深めていた。
ある会食の日のこと、ルーベルトが別邸の部屋で休んでいるとフードを着た怪しい女が部屋に侵入してルーベルトに魔法をかけた。その魔法は猫になる魔法だった。





1人目の婚約者候補ルブリ侯爵家の令嬢ルブリ・レベッカが王子の待つ別邸に馬車で到着した。


「青い瞳、珍しい黒髪にきめ細かな白い肌をお持ちのルーベルト殿下に貴女のような貧相な者は似合いませんわ」

馬車から降りたレベッカは隣の馬車から降りた5人目の子爵家のリリア・フィナに近寄って罵倒した。フィナは黙って耐えた。

「なぜ私と共にフィナがルーベルト殿下と同じ時間に会食する意味が私には分かりませんわ。さぁ行きますわよ」

「はい。レベッカ様」
従者と共に門を開けて王子の別邸の庭に入るレベッカ。
庭は隅々まで手入れが行き届き、綺麗に剪定された草木が左右対称に生える中央に大きな噴水が水音を立てながら湧き上がっていた。

しばらくしてフィナも庭に入る。

庭を通り別邸の扉を開く。左右対称に伸びた2つの階段と中央の扉。その中央の扉の先に長方形のデーブルと椅子が並べられている会食の部屋にレベッカとフィナが入る。

「ルーベルト殿下は居ませんわね」


レベッカがテーブルに置かれた綺麗な食器と料理に目移りしていると「ミィー!ミィー!」と子猫の鳴き声が部屋に響いた。

「なんですの!?・・・猫?」

レベッカは黒い毛の子猫を見ると引き攣った顔をして子猫から離れた。

「フィナ!早くあの雑巾のように小さなものを私から遠ざけて。動物って苦手なのよ!早く!」

フィナはみぃみぃと小さな鳴き声で近づいてくる子猫を抱き抱えた。
まだ生後1か月ぐらいだろうか。両目は開眼して小さな手をパタパタ動かしてフィナの掌から逃げようと抵抗している。

「汚いわね。よく触れるわね」

「ミィー!ミィー!」
(私はルーベルトだ!フィナよ離してくれ!)

「き・・・あ・・から・・・」
(フィナは何を喋っているのか理解出来ない。猫になったせいで人の言葉を理解出来ないのか)

全く人の言葉を理解出来ないルーベルトは困惑した。

「フィナ、猫を外に出したらルーベルト殿下を探してきて」

「しかし、まだ子猫ですから。外に追い出しては危ないです」

「いいから早くして」

レベッカは怒って、持っていた小さな鞄を投げた。フィナの手前に落ちた鞄。フィナは子猫を守るように抱き締めた。

(レベッカは気性が荒いのか。知らなかった。それに比べてフィナは)

フィナは子猫と共に2階に上がりルーベルトの部屋を開いたが誰もいない。
執事も呼び、ルーベルトを捜索したが見つからず会食は後日ということになった。


「その子猫が現れたせいで、せっかくの会食が無くなりましたわ」
レベッカは吐き捨てるように馬車に乗り去って行った。

フィナも子猫と共に別の馬車に乗り、王都に間借りしている自宅に帰った。
フィナの家は二階建ての一階の小さな部屋を間借りしている。
人1人が寝れられるベッドと洗い場、小さな暖炉と小さなテーブルがある。

「ミィ!」
(物置部屋か)

「さぁ子猫ちゃん我が家にいらっしゃい。まずは、ぬるま湯で体を洗いますよー」
フィナは腕まくりして桶にぬるま湯を入れた。子猫を持ち上げる。

(気安く触るな!私は第一王子、ルーベルトである!)
「ミィー!ミィー!」

「優しく洗うから鳴かないでねー」

(フィナよ!私はルーベルトである!)
「ミィ!ミィ!」

フィナは雑巾で子猫を拭いて水気を取り、薪の小さな暖炉の前で乾くまで子猫と一緒に過ごした。

「ミィ~」
(非常に眠い)

子猫は目を瞑りフィナの腕の中で眠りました。
ところが、ミルクの香りでパッと飛び起きるといつの間にか離れてミルクを用意していたフィナに飛び付きました。

「ミィ!ミィ!ミィー!」
(ミルクを所望する!ミルクを!ミルクをー)

尻尾をフリフリしながらフィナの服に爪を立てて這い上がる子猫。

ミルクが入ったお皿を床に置くと子猫はペロペロとミルクを勢いよく飲み始め、あっという間に飲み干しました。

(少し落ち着いた。食欲が強くなった。我を忘れてフィナに飛び付いてしまった。本能というは恐ろしいな)

ぺちぺち、ヨタヨタと慣れない四足歩行に苦戦するルーベルト王子。
もう少しでフィナが用意してくれたトイレ代わりの砂場に辿り着く。
用を済ませ、猫の本能なのか砂を必死に掻いて臭いを消す。
(フィナはなかなか面倒見が良い。もしレベッカに拾われていたなら今頃私はどうなっていたか考えるだけでも悍ましい)

「全然違う違う場所を掻いてますよ」

(うまく手足を使えぬ)

フィナは子猫を持ち上げると手足を軽く拭いて抱き寄せた。そして子猫の顔を自分の顔と近付けてニッコリと笑い。

「可愛い子猫になりましたね。ルーベルト殿下」と囁いた。

子猫のルーベルトには人語がわからない。
フィナの言った意味すら分からず返事をするように「ミィ」と鳴き返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

追放された地味なメイドは和菓子職人の記憶に目覚める 〜王子たちの胃袋を『あんこ』で掴んだら、王宮で極甘に溺愛されています〜

あとりえむ
恋愛
「起きなさい、この穀潰し!」 冷たい紅茶を浴びせられ、無実の罪で男爵家を追放された地味なメイド、ミア。 泥濘の中で力尽きようとしたその時、彼女の脳裏に鮮やかな記憶が蘇る。 それは、炊きたての小豆の香りと、丁寧にあんこを練り上げる職人としての誇り…… 行き倒れたミアを救ったのは、冷徹と恐れられる第一王子ミハエルだった。 バターと生クリームの重いお菓子に胃を痛めていた王族たちの前に、ミアは前世の知恵を絞った未知のスイーツ『おはぎ』を差し出す。 「なんだ、この食感は……深く、そして優しい。ミア、お前は私の最高のパートナーだ」 小豆の魔法に魅了されたミハエルだけでなく、武闘派の第二王子やわがままな王女まで、気づけばミアを取り合う溺愛合戦が勃発! 一方で、有能なミアを失い、裏金のカラクリを解ける者がいなくなった男爵家は、自業自得の崩壊へと突き進んでいく。 泣いて謝っても、もう遅い。 彼らを待っていたのは、処刑よりも皮肉な「全土小豆畑の刑」だった…… これは、一粒の小豆から始まる、甘くて爽快な逆転シンデレラストーリー。 あなたの心も、あんこのように「まあるく」癒やしてみせます。

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

家族の靴を磨いていた私が、実は【神の加護を磨き上げた聖女】だった件。隣国の冷徹皇帝に「君の献身は世界を救う」と誘拐、24 執着されています

唯崎りいち
恋愛
「お前は一生、靴でも磨いていろ」 家族に虐げられ、靴を磨き続けた私。 実はその靴、磨くたびに『神の加護』が宿る聖具になっていました。 噂を聞きつけた隣国の冷徹皇帝に、出会い頭にさらわれて―― 「君は俺のものだ。24時間、指一本触れさせない」 靴を履かせてもらえず、移動は常に皇帝の腕の中!? 磨き上げた加護のせいで、皇帝の執着が神レベルに育ってしまう溺愛物語。

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

処理中です...