魔法で子猫になった第一王子の婚約者選び

三毛猫

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森の魔女

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 ーー リノラ視点 ーー

黒い子猫の可愛い殿下を連れて森の中に入った。スカートを履いたまま飛び出して逃げたのを後悔している。細かな枝木が脚に擦りギズをつけていく。
治癒薬はない。回復魔法は使えない。

このまま森を進むしかない。追っ手から逃げ切って次の町か近くの民家に早く着かないと小さな生命力の弱いルミィの命も危ぶまれる。

「ミィ~」
小さく鳴くルミィ。
寒いのだろうか。お腹が空いたのだろうか。紙と筆も置いてきたからルミィの言葉の意味は分からない。


夜通し移動して森を抜けた先にあった荒屋に入った。荒屋の中には本棚があった魔術書が乱雑に並べられ、部屋の真ん中には煮詰まって鍋や乾燥した植物が干して置いてあった。

「ミィー」
ルミィが震えている。私もこの独特な雰囲気の空間が怖い。

ギィーと扉が開く音がして扉から出てきたのは如何にも怪しいローブ姿の魔女。シワだらけの顔に高い鼻。腰は少し曲がっている。

「今追われている子だね」

私は咄嗟に荒屋から出ようとした。

「待ちなさい。その猫のような生き物はどこで拾ってきた」

「それは・・・」
言葉に詰まった。会ったばかりの人にルーベルト殿下の名前を出して捕まえたり悪用したりしないだろうかと不安になる。

「私は森の魔女と呼ばれているマーブラだよ。その猫は魔法にかかった人か魔物かい?」

「この人を元に戻す方法を知っていますか?教えてください」

「たしか」と言いながらマーブラは本棚から一冊の魔術書を取り出して開いた。

「これだ。古い禁じられた魔法で毛があれば何でも変身できる魔法だが、元に戻るには幾つか方法がある」

「その方法とは?」

「まず簡単なのは魔法をかけた者を倒す。あるいは、好いた者同士なら自然と元に戻ると書かれている」

私はルミィを見た。小さな顔にピンク色の小さな鼻、潤んだ瞳、小さな手に肉球、ツンと立った耳。どれも可愛い。可愛い気持ちが先行してとても好きになることができない。子猫としては好きだけど、殿下とはまだ話したこともない。

「他には?」

「分からぬ」
マーブラはそのまま黙ってしまった。




 ーー ルーベルト視点 ーー


私は机に置かれた魔術書を読んでいる。
その姿を見たマーブラは「器用な子猫じゃな」と笑っていたが思っているより事態は深刻だった。私に魔法をかけたフィナを倒すには王都に戻らないといけない。しかし今は偽ルーベルトから追われていて王都には入れない。

魔術書をぺちぺち叩く、次に羽ペンを叩くとリノラは気付いた。

「マーブラさん、紙とペンを貸してください」

「ええぞ」

羽ペンは子猫の私でも両前足で辛うじて持てた。筆談で今後の事をリノラに伝えた。

「隣国の第四婚約者候補、ビビ令嬢の父、辺境伯グラントに会いに行ってくれ」

リノラは頷いた。

マーブラと別れ、隣国へ向かった。

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