彼女は俺以外にスルーされてる

三毛猫

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スキル

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鏡の前で首筋を触る。首だけ体温が低く、まるで鉄のように硬くなっていた。

「ふーん。そういうことね」

「ひぃぃ!」

突如背後に現れた舞衣に声にもならない悲鳴をあげた。

「ここ男子トイレですよ」

「ツッコむとこそこ?なんで殺そうとしたんですかー?なぜ僕は攻撃されても生きてるのですか?とか色々あるでしょう」

ふざけているような口調でも目は笑っていない。ナイフを指先でグルグルと回し、威嚇している。

「ナイフを下ろしてください!」

「貴方みたいなクズがなぜスキル持ちな訳?」

「スキル持ち?」

「そう。貴方はスキルを身につけてる。私の見立てでは硬質化。心当たりある?」

言われてみれば先月階段から転けて落ちても怪我一つなかった。
俺は何も答えなかった。クズと言われ内心腹が立っていた。

「何も言わないって事は私の推測通りね。あー、厄介な奴相手したなぁ」

舞衣は俺に背中を向けた後、振り返って俺の顔面に拳をクリーンヒットさせた。衝撃で床に倒れる。

「ーーっ!」

舞衣は悶絶し苦悶の表情を浮かべ拳を振って痛みを誤魔化す。俺の方は痛みはない。ただ殴られた頬の皮膚は硬くなっていた。

「急に何するんだよ!」

「刃物も打撃も駄目。そうなると・・・」

「俺が何したんだ!」

舞衣の胸ぐらを掴んで、押すと勢いで2人ともトイレから飛び出した。
そこに同じクラスの須藤真矢と鉢合わせた。

「えっ!夏維人と舞衣ちゃん!もうそんな関係なの?なんで舞衣ちゃんは水着なの?朝からどういうこと!?」

「仲が良いように見えるか!真矢!舞衣を押さえろ!」

「夏維人くんどうしちゃったのその口調!教室でも端っこの方にいるタイプじゃない!今の言い方はワルよ、ワル」

舞衣は俺の腕を抱え込み足払いする。俺は一瞬宙を舞い背中から倒れた。すかさず舞衣は馬乗りになり俺の喉元にナイフを突き立てた。

「きゃー!やめて舞衣ちゃん!何があったか知らないけどダメよ!」

真矢が右往左往する。

「私に体術で勝とうなんて百年早い!この平和ボケしたクズが!」

何の憎しみがあって俺を罵り殺そうとするのか分からない。だが狂気の目をした舞衣は本当の殺意が込められている。

「やめてよ。お願いだからー」

「黙れ!見られたからには、お前からやってやる!」

舞衣は真矢にナイフを突き出した。
真矢はナイフを肘で払い、溝打ちに正拳突きを当てた。

「ぐっはぁ!」
舞衣の口から唾液と胃酸のような液体が飛び散り、腹を抱えてその場に倒れた。

「言ってなかったな。真矢は空手の全国大会一位だって」


「そんなの・・・知らないわ・・・よ・・・」

舞衣は意識を失った。







「起きて舞衣ちゃん」

ゆっくりと目を開ける舞衣。真矢が舞衣の顔を覗き込む。起き上がろうとして上半身を起こすとお腹を押さえてまたベッドに倒れた。

「まだ起き上がっちゃ駄目」

「・・・ここは?」

「保健室」

「何故?私はあのクズを始末しようとしていたのよ」

「夏維人に聞いたわよー。ワルね貴女も。でも同じクラスメイトじゃない。きっと深い事情があるのよね」

舞衣は真矢を見つめ急に顔が赤くなり、布団に潜った。

「どうしたの?話したくないの?」

「真矢様。私より強い人あんまりいないから、急に負けたこと思い出して恥ずかしいのと・・・カッコいいなぁって」

「やだー。カッコいいだって」

俺は終始、冷ややかな目でやり取りを見ていた。

舞衣は布団から出て話し始めた。

「私は異世界から来た異世界人で、ある帝国の命によってこの世界のスキル持ちを駆逐しにきた暗殺者」

「暗殺者だなんて物騒ねー」

「それで俺がスキル持ちだから排除しようと?」

「そう。スキル持ちは稀にこの世界にいる。貴方が私の透明化のスキルを見破ったのもスキルの一つ。まさか2つのスキル持ちなんて思いもしなかった」

「夏維人のスキルってなに?」

「硬質化かな。殴っても切っても効かない」

「そうなのー。試しに私もいいかしら?」

真矢は腰を落とし肘を曲げて引き、勢いよく拳を突き出して俺の腹に正拳突きをした。俺の腹は硬く硬化したのだが、衝撃波が内臓に伝わり壁まで吹き飛んだ。

「うそ!やだ!大丈夫ー!?」

「い、いてぇ。硬質化したのに何故?」

「真矢様もスキル持ちの可能性があるわ」

お腹が痛すぎる。硬質化していなかったら腹に穴が空いていたかもしれない。
倒れた俺は舞衣の隣のベッドに運ばれ、しばらく安静にすることになった。


「谷代大さん具合どう?楽になってきたかな?」

保健室に保健室の先生が入ってくるなり、舞衣の隣のベッドで寝る俺に気付いた。

「なんで病人増えてるのよ!」

真矢は苦笑いして誤魔化した。

「比島くん!どうしたの!?」

「お腹が・・・」

先生は俺の制服を脱がすとお腹を曝け出した。

「ぎゃー!」
先生は叫んだ。

硬質化した部分が裂け、お腹に黒い深いアザが出来ている。

「救急車!今すぐ呼ぶから!」
焦る先生を舞衣は止め、ぶつぶつ何かを言い始めた。

「古の秘儀を以て、聖なる泉より生まれし癒しの力よ、我が手に宿りし聖なる加護により、我が魔法が叶えしは、疾患を払い、傷を癒し、疲労を癒やす。我が魔法は聖なる癒し、その名を果てしなき聖なる光よ彼のものを癒したまえ!ヒール!」

白い光が俺を包み心地よい温かさで手足の先まで血が巡り、お腹の痛みは一瞬にして消え去った。

「んなに?どういう現象?夢よね?」

保健室の先生は白目をむいて倒れた。
俺のお腹は元に戻りすっかり元気になった。
倒れた保健室の先生を俺が寝ていたベッドに寝かせた。
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