異世界魔剣士タイムトラベラーは異世界転移を繰り返して最弱でしたが特殊能力が開花します

三毛猫

文字の大きさ
1 / 18

逃げろって何から?

しおりを挟む
 「逃げろ!」

大声でいきなり怒鳴られた。頭上から聞こえるオッサンの声。逃げろって何から!?
意味が分からない。

 「立ってひたすら走れ!」

また同じオッサンに怒鳴れた。

っていうか、ここどこだよ・・・。

俺は比良松連司、24歳。身長174cm、中肉中背、鋭い目をしているらしい、稀に怖がられる。地方公務員になり損ねた会社員。スーツ姿で通勤途中。乗り換えのため駅のホームで電車を待っていた。
電車がホームに到着してドアが開いた。電車に乗ろうと一歩足を出した瞬間、床が抜け落ちたように床が真っ黒になり、その黒い空間の中に落ちた。

「やべっ!」

階段から落ちるような感覚が一瞬伝わった。咄嗟に両腕を伸ばして顔を庇った。瞬きする一瞬の内に草の生えた地面に四つん這いになっていた。

そして怒鳴るオッサンとの出会いだ。
四つん這いで倒れていると「逃げろ」と声がした。顔だけを上げて声の主を見ると中世ヨーロッパで使っていそうな両刃の剣を構えた勇ましい中年のオッサンが右隣にいた。
顔には傷跡が複数ある。無駄な脂肪は何処にも見当たらないマッチョボディ。しかし皮は少し弛み、ハリがない。そこは中年という感じだ。短髪の髪に額に銀色の鉢金を締めている。

「今起きるよ!」
半ギレ気味の俺。

「逃げてください!後ろから来ます」

次の声の主は少女だった。ローブを着て、頭に三角帽子、手には杖を構えている。

「コスプレパーティーか?」

「そのままだと尻から喰われるぞ!」

オッサンに言われて四つん這いの体勢からチラリとお尻の方を見た。何か黒い影が俺の方に向かってくる。ゾワっとした寒気が体を襲い飛び上がるように体を起こした。

青い空、見渡す限りの草原に美しい山々が広がる長閑な風景の中に猛スピードで動く猛獣の姿はライオンに似ていた。しかし体毛は黒く、目は赤い。巨体からは想像できない速さで近づいてくる。

そんな猛獣が五匹も人間という餌に向かってきた。
頭が混乱する暇もなく、猛獣から逃げた。

 「そのまま走って門まで行け!」

門?オッサンが言っていた門は300メートルほど先にあった。

 「リュードさんは右の三体を!私は左の二体を」

 「おうよ!」

後ろからオッサンと三角帽子少女の声が聞こえてくる。振り向く余裕がない。地味に走りにくいスーツで必死に走った。
途中足がもつれて転けて上着の袖が破れた。

門が近くなると門にいた槍を持つ兵士に「早く来い!」と急かされた。


木製の扉が開く。俺が門に入った瞬間に門は閉ざされた。


「幸運だったな」
門の兵士が俺の肩を叩いた。俺はゼェゼェと肩で息をして汗だくになった上着を脱いで額の汗を拭う。門の中は中世ヨーロッパのような建物が建ち並ぶ町だった。


「外の二人は?」

「君を助けた二人は大丈夫さ。町が雇った強い冒険者だからさ」

「冒険者?」

「外の様子が見たいなら上から見るといい」

門兵に連れられて、門の見張り台に上がると草原が一望できた。
草原にいたオッサンは猛獣相手に華麗な剣捌きを見せていた。
三角帽子少女は杖からビームのような光線や炎の球を発射し猛獣を圧倒している。


三角帽子の少女は杖から魔法を放っている。鉢金のオッサンは人間離れした瞬発力に動きで巨体の猛獣と戦っている。

この光景を見て理解した。
間違いない。俺は異世界に転移した。






 「終わったぞー!」

鉢金オッサンの声に反応して物見台から門兵は手を振った。
門が開き数名の兵士が倒された猛獣に向かって列になって行進を始めた。

入れ替わるように鉢金のオッサンと三角帽子少女が門を潜り町に入った。

「先程は助けていただき、ありがとうございました」

俺は深々と礼をした。

「突然現れた変な格好の兄ちゃん。俺は傭兵のリュードとこっちの魔法使いはアイラ。名前は?」

「比良松連司です」

「じぁあレンジだな。レンジは何処から来た?」

「日本です」

「聞いたことのない国だな。アイラは知っているか?」

アイラは顔を横に振る。
よく見るとアイラの耳は横に長く出っ張っていた。俺が顔を近づけて見ようとすると三角帽を深々と被り耳と顔を隠した。

「珍しいだろう。アイラはエルフ族だ。この辺りでは人族・亜人・獣人・ドワーフがほとんどだ」

その後、俺はリュードとアイラと共に町を案内された。辺境の町ミルクテにはリュードとアイラが倒した魔獣が度々町を襲っていた。そこで町の長は強者の傭兵リュードに魔獣討伐を依頼したそうだ。

ミルクテは人口1000人ほどの小さな町。魔物や魔獣対策で塀で町を囲み、商人や旅人・冒険者を労う宿が多く建ち並んでいた。リュードは俺に町のことを教えてくれた。

「広い草原で歩き疲れた者を癒す町になった訳だ。レンジ、酒場に行くぞ」

「昼間からお酒ですか?」

「何言ってる。俺たちはもう魔獣討伐を済ませた。レンジも逃げ切れた祝いだ」

首をがっしり掴まれて酒場に入った時には後ろを歩いていたアイラはいつの間にか姿が消えていた。酒場には昼間から数人が飲んでいた。リュードが入ってくると皆「リュードさん、お疲れ様です」と声を掛けてくる。

「知名度高いですね」

「まぁな。毎日討伐終わりに酒場に来りゃ顔馴染みばかりって訳だ」
と言って笑っていた。


リュードと俺が円卓に座ると空いていた席に次々に人が座り、あっという間に円卓に6人集まった。
女将が酒の入った樽型のジョッキを円卓に置くとリュードが「魔獣討伐完了とレンジとの出会いに。乾杯!」とジョッキを高く上げた。

俺もジョッキを高く上げ、乾杯!と叫んだ。


気付くと電車の中だった。

「かんぱーい・・・へ?・・・夢?なにこれ?」

電車内。乗客の姿勢が集まる。ドアの前で乾杯と手を掲げたまま立っていた俺は、時より振動して横揺れする。車窓からは景色が流れ、いつもの通勤風景が見える。座っていた学生からは笑われ、向かいに立っていたスーツ姿の乗客からは「昼間から酔っ払いかよ」と吐き捨てて気味悪がられてその場から去って行った。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...