俺と彼女は入れ替わり

三毛猫

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テメェ馬鹿かよ

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 ーー ミズキ視点 ーー

マサトとの出会いは最悪だった。親友のあやちと入れ替わって、あやちの正体をバラした。
それから、私とも入れ替わって私の病気を皆にバラした。

でも今は感謝してる。
隠し事がないあやちは前より明るくて活き活きしている。
好きだった運動も数年ぶりに出来た。マサトの体で行けなかった場所にも行けた。好きな物を沢山食べることも出来た。
避けてた快斗とも仲良くなれた。
マサトの母親は本当の親より親っぽくて、親の温かさを初めて知った気がした。
なにより病気がバレて隠すことを止めて数ヶ月でも正直に生きれた。



だからもう、いっぱい感謝してるのに……



「テメェ、馬鹿かよ!」

私の……ミズキの体に向かって叫ぶ。




それは突然だった。私は暗闇の中から急に明るい病室の中にいた。マサトは私に言いつけを聞かず、また入れ替わった。


仰向けに寝ているミズキの体の上に手紙が置いてあった。

『ミズキさんへ
その時が来るまでこのままミズキさんの体でいようと決めました。だから、俺の体で生きてください。今まで苦しんだ分、きっとこれから沢山楽しいことが待ってるから。治るまで待ってて』

私の病気の5年生存率はゼロに近い。治る見込みなんてない。
手紙を読み終えて私は、元に戻ろうとした。
でも元には戻れなかった。


「なんで戻れないの……自分勝手だよ」

生きたいと願ったことも何度も何度もあった。でもこんな形じゃない。



それから長い月日が経った。5年生存率はゼロに近いというのは嘘みたいに私の体は長く生きた。
医療技術は進歩して私の病気の原因と治療薬が認証され、投薬治療が始まり根治するに至った。

ある日、私が病院に行くと上半身を起こして外を眺める私の体。意識が戻った。


「マサト!」

「……ミズキ……あー、俺の顔。前より老けたな……」

「7年が過ぎたの」

「7年か……病気は治ったのか?」

「ええ。治ったよ」

「元に戻ろうか」

私はマサトと入れ替わり元の体に戻った。
7年間寝たきりの体は筋力がなくて腕も上がらない。

「マサト。ありがとう」

「いや、いいんだ。俺が望んだことだから」

「一つ聞いていい?」

「ん?」

「マサトが私と入れ替わる時にマサトが隠していたことって何?」

「それは……ミズキが好きだってことを隠してた」

お互い照れて頬と耳が赤くなる。

「私でいいの?」

「ミズキが好きだ」

マサトは軽く優しく抱きしめてくれた。

「嬉しい」
私の目から大粒の涙が溢れる。

「ずっと待ってた。きっと良くなるって信じてた」

「でも突然入れ替わって治るまで待とうなんて無茶苦茶よ……ありがとう」

「ミズキだから信じて待てた」

またお互いの顔が赤くなる。


「これからリハビリとか大変だと思うけど、支えていくから」

「大丈夫よ。私は体を動かすことが好きだから、マサトの体に入れ替わってた7年間の成果よ。お腹を見て」

マサトは上着を捲り上げて腹を露出する。

「シックスパック!お腹が6つに割れてる!しかも全身筋肉隆々!」

「どう?すごい?」

「……あ、あぁ」

「あれ?若干引いてる?筋トレやりすぎたかなぁ?」

「鍛えてくれた体型維持頑張ります!」

「それから、もう入れ替わりは禁止ね」

「もう入れ替わる必要なんてない」



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