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あなたがそのつもりなら
「君が好きだ、一生大切にするよ。僕の愛する女性は君だけで、それは死が二人を別つまで変わることはないよ・・・。」
なんて・・・・
そんなことはあるはずがないと、私は知っている。
ブボーシェ侯爵家の本館2階の居間からは、整えられた庭園と、その先には別邸までも見渡すことができる。冬を迎えた別邸周りの木々はほとんど葉が落ちて、期待される目隠し効果が今はない。二人ぴったりと寄り添って歩く、夫ランスと恋人のアン嬢の姿は丸見えだった。
私の名はリリアーヌ・ブボーシェ(今はまだ)。コーク子爵家の長女で、一人娘として本来なら婿を取って子爵家を継ぐ予定だった。
何の因果か学園で2歳年上の現夫・ランス・ブボーシェ侯爵に一目ぼれされた挙句につきまとい(あれはそうだといえる!)を受け、上↑のような甘ったるい告白をさんざんされ、根負けした形で学園を卒業後、この侯爵家に嫁いできたのは1年前。
溜息・・・(しかでない)
建国以来の旧家ではあるが、ただの子爵家と上位貴族の侯爵家では釣り合わないと何度も親に反対されたが、夫ランスの情熱と「息子が2人できたら一人が子爵家をつげばいい、もし跡継ぎに恵まれなくても、僕の君への愛は変わることはないよ。」という言葉にころりと騙され今がある。
まあいいわよ、あなたがそのつもりなら私にも考えがあるし・・・
「これを別邸の侯爵様に届けてもらえるかしら?今すぐよ」
家令を呼びつけて、侯爵夫人の印を押した封筒を預ける。正式な侯爵夫人の印章なんてあまり家内で使うことはないから、慌てて家令は出て行った。
そろそろ午後のお茶を・・・という時間になって、バタバタと俄かに本邸内が騒がしくなり、ランスが帰ってきたのだと分かった。
「リリアーヌ!!大切な話とは何なんだい?!侯爵夫人の印章まで使って・・・!私は忙しいんだよ!君は分かっているのか?」階段を駆け上がり、ノックをしたのかわからないままの凄い勢いでランスが私の部屋に入ってきた。
「ごめんなさい、侯爵様。こちらにサインを頂ければいいの、たいした時間はかからないわ」
私は椅子から立ち上がってランスの前に行き、テーブルの上に離婚届とそれに伴う誓約書を置いて彼を見つめてニッコリとしてみた。
「離婚届?!!」一瞬ランスは青ざめたが、直ぐにこれ見よがしのため息を一つついて諭すように話しかけてくる。
「何を拗ねているんだい?リリィ?僕の君への愛は変わっていないよ。」
手を伸ばして頬に触れようとする手を振り払って答える。
「気持ち悪い愛称で呼ばないでくだいませ。一生大切にするなんて言っておいてなんですか!あなたの一生ってたった1年なんですね、死が二人を別つまで私だけを愛するというなら、今すぐ死んでいただくことになりますがいいんですか?!」
「リリィ?」ビックリしたように目を見開いてランスは私を見ていた。それはそうだろう、こんなに夫に対して長く発言したことはないから。愛人を別邸に迎え入れるまで、私に甘ったるい言葉をささやいて、しゃべり続けるのは夫の専売だった。私は面倒なのでほぼ無言を貫いていたのだ
「本館から丸見えの別亭であれだけイチャイチャ見せつけておいて、よく愛は変わらないなんてでたらめが言えますね、気持ち悪い。」
「気持ち悪い?」ランスの顔が怒りで赤くなる。さっきまで青かったのに・・忙しい人だ。
「君が僕の子をいつまでたっても生んでくれないからだろう?!!ぼくだって辛いんだ!」
「跡継ぎができなくても愛は変わらないといったのはあなたです!このうそつき侯爵!
そんなに跡継ぎがほしいなら、最初にそう言えばいいじゃないですか?!言われていたら、あなたとなんか結婚しませんでしたよ。」
「リリィ・・・」ランスが困ったようにこちらを見る。
「アンは母の遠縁の女性なんだ、侯爵家に跡取りができないのは困ると母にさんざん言われて仕方なくなんだよ。」両手を上にあげてのオーバーリアクションで訴えてくる。
「知ってますよ、お義母様にさんざん嫌味っぽく言われましたから」
「母が君に何か言ったのか?!」
「嫌味はいつものことですから別に気にしません」
「・・・・・・」
「侯爵家にとって、跡取りは何よりも大切ということですよね?」
「まぁ・・・そうだな」
「それなら離縁してください、私はあなたに侯爵家の跡取りを与えてはあげられません」
「まだわからないだろう?!正妻は君だ!私の君への気持ちは変わらない!!」
「たった一年で愛人を迎える人の言うことなんて信じられません。それに、夫を他の女性と共有するなんて気持ち悪いことは無理です」
「気持ち悪い・・・・」
何度も私からの口撃を受けて、ランスは無言になった。
「こちらに離婚届と今後わたしが侯爵家になんの要求もしないとの誓約書があります。同じように、侯爵家からも私に対して何の請求もできないとの誓約書にサインを頂きます」
はぁ・・・と溜息をついて、サインをする前にランスがこちらを見る。「本当に君はこれでいいのか?跡継ぎができないと判断されるのに後未だ2年もある。慰謝料はいいのか?それに、君のことを好きなのは変わっていない。簡単にあきらめられない。」
「簡単に裏切っておいて何言ってるんですか!?幸い実家に帰ってきてもいいと言われているので慰謝料なんていりません。今後は外で会っても話かけないでください」
離婚届と誓約書を確認すると、私は準備していた小さな鞄を持ってドアの方に向かった。
「もう行くのか!!」
「ええ、これは帰りに提出しておきます。途中病院にも寄らないといけないので、これで失礼します」
「病院??!!」
離婚後ブボーシェ侯爵が自分に跡継ぎができていたと知るのは10か月後。しつこい求愛で結婚し、わずか1年で愛人を迎え離婚したのに、慰謝料すら払わなかったと世間は侯爵家を冷たい目で見るし、誓約書がある為面会請求さえできず・・・。
子爵家に戻ったリリアーヌは10か月後元気な男の子を産んだ。しつこく謝罪と復縁を願う手紙がブボーシェ侯爵から来るが丸っと無視している。あまりしつこいので、一度、誓約書があるのでこれ以上言ってきたら訴えると返したら手紙は来なくなった。
今度結婚するならお互いに信頼できる関係を築かないとね・・・流されちゃだめだわ・・・。
息子を抱っこしながらリリアーヌは呟いた。
なんて・・・・
そんなことはあるはずがないと、私は知っている。
ブボーシェ侯爵家の本館2階の居間からは、整えられた庭園と、その先には別邸までも見渡すことができる。冬を迎えた別邸周りの木々はほとんど葉が落ちて、期待される目隠し効果が今はない。二人ぴったりと寄り添って歩く、夫ランスと恋人のアン嬢の姿は丸見えだった。
私の名はリリアーヌ・ブボーシェ(今はまだ)。コーク子爵家の長女で、一人娘として本来なら婿を取って子爵家を継ぐ予定だった。
何の因果か学園で2歳年上の現夫・ランス・ブボーシェ侯爵に一目ぼれされた挙句につきまとい(あれはそうだといえる!)を受け、上↑のような甘ったるい告白をさんざんされ、根負けした形で学園を卒業後、この侯爵家に嫁いできたのは1年前。
溜息・・・(しかでない)
建国以来の旧家ではあるが、ただの子爵家と上位貴族の侯爵家では釣り合わないと何度も親に反対されたが、夫ランスの情熱と「息子が2人できたら一人が子爵家をつげばいい、もし跡継ぎに恵まれなくても、僕の君への愛は変わることはないよ。」という言葉にころりと騙され今がある。
まあいいわよ、あなたがそのつもりなら私にも考えがあるし・・・
「これを別邸の侯爵様に届けてもらえるかしら?今すぐよ」
家令を呼びつけて、侯爵夫人の印を押した封筒を預ける。正式な侯爵夫人の印章なんてあまり家内で使うことはないから、慌てて家令は出て行った。
そろそろ午後のお茶を・・・という時間になって、バタバタと俄かに本邸内が騒がしくなり、ランスが帰ってきたのだと分かった。
「リリアーヌ!!大切な話とは何なんだい?!侯爵夫人の印章まで使って・・・!私は忙しいんだよ!君は分かっているのか?」階段を駆け上がり、ノックをしたのかわからないままの凄い勢いでランスが私の部屋に入ってきた。
「ごめんなさい、侯爵様。こちらにサインを頂ければいいの、たいした時間はかからないわ」
私は椅子から立ち上がってランスの前に行き、テーブルの上に離婚届とそれに伴う誓約書を置いて彼を見つめてニッコリとしてみた。
「離婚届?!!」一瞬ランスは青ざめたが、直ぐにこれ見よがしのため息を一つついて諭すように話しかけてくる。
「何を拗ねているんだい?リリィ?僕の君への愛は変わっていないよ。」
手を伸ばして頬に触れようとする手を振り払って答える。
「気持ち悪い愛称で呼ばないでくだいませ。一生大切にするなんて言っておいてなんですか!あなたの一生ってたった1年なんですね、死が二人を別つまで私だけを愛するというなら、今すぐ死んでいただくことになりますがいいんですか?!」
「リリィ?」ビックリしたように目を見開いてランスは私を見ていた。それはそうだろう、こんなに夫に対して長く発言したことはないから。愛人を別邸に迎え入れるまで、私に甘ったるい言葉をささやいて、しゃべり続けるのは夫の専売だった。私は面倒なのでほぼ無言を貫いていたのだ
「本館から丸見えの別亭であれだけイチャイチャ見せつけておいて、よく愛は変わらないなんてでたらめが言えますね、気持ち悪い。」
「気持ち悪い?」ランスの顔が怒りで赤くなる。さっきまで青かったのに・・忙しい人だ。
「君が僕の子をいつまでたっても生んでくれないからだろう?!!ぼくだって辛いんだ!」
「跡継ぎができなくても愛は変わらないといったのはあなたです!このうそつき侯爵!
そんなに跡継ぎがほしいなら、最初にそう言えばいいじゃないですか?!言われていたら、あなたとなんか結婚しませんでしたよ。」
「リリィ・・・」ランスが困ったようにこちらを見る。
「アンは母の遠縁の女性なんだ、侯爵家に跡取りができないのは困ると母にさんざん言われて仕方なくなんだよ。」両手を上にあげてのオーバーリアクションで訴えてくる。
「知ってますよ、お義母様にさんざん嫌味っぽく言われましたから」
「母が君に何か言ったのか?!」
「嫌味はいつものことですから別に気にしません」
「・・・・・・」
「侯爵家にとって、跡取りは何よりも大切ということですよね?」
「まぁ・・・そうだな」
「それなら離縁してください、私はあなたに侯爵家の跡取りを与えてはあげられません」
「まだわからないだろう?!正妻は君だ!私の君への気持ちは変わらない!!」
「たった一年で愛人を迎える人の言うことなんて信じられません。それに、夫を他の女性と共有するなんて気持ち悪いことは無理です」
「気持ち悪い・・・・」
何度も私からの口撃を受けて、ランスは無言になった。
「こちらに離婚届と今後わたしが侯爵家になんの要求もしないとの誓約書があります。同じように、侯爵家からも私に対して何の請求もできないとの誓約書にサインを頂きます」
はぁ・・・と溜息をついて、サインをする前にランスがこちらを見る。「本当に君はこれでいいのか?跡継ぎができないと判断されるのに後未だ2年もある。慰謝料はいいのか?それに、君のことを好きなのは変わっていない。簡単にあきらめられない。」
「簡単に裏切っておいて何言ってるんですか!?幸い実家に帰ってきてもいいと言われているので慰謝料なんていりません。今後は外で会っても話かけないでください」
離婚届と誓約書を確認すると、私は準備していた小さな鞄を持ってドアの方に向かった。
「もう行くのか!!」
「ええ、これは帰りに提出しておきます。途中病院にも寄らないといけないので、これで失礼します」
「病院??!!」
離婚後ブボーシェ侯爵が自分に跡継ぎができていたと知るのは10か月後。しつこい求愛で結婚し、わずか1年で愛人を迎え離婚したのに、慰謝料すら払わなかったと世間は侯爵家を冷たい目で見るし、誓約書がある為面会請求さえできず・・・。
子爵家に戻ったリリアーヌは10か月後元気な男の子を産んだ。しつこく謝罪と復縁を願う手紙がブボーシェ侯爵から来るが丸っと無視している。あまりしつこいので、一度、誓約書があるのでこれ以上言ってきたら訴えると返したら手紙は来なくなった。
今度結婚するならお互いに信頼できる関係を築かないとね・・・流されちゃだめだわ・・・。
息子を抱っこしながらリリアーヌは呟いた。
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