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(州都って大きい・・・というか、領主様、こんな大きな商会もやってるんだ・・・。)
州都に出て、緊張しながらもまずは領主館を訪ねた。領主様って領主館にいるものだと思っていたから。でも領主館にはいなくて、商会の方にいらっしゃいます、と言われたからまさか王都?!って慌てたけど、領主館は郊外で、商会は州都の街中なのだった。
先ずは商会の入り口でカナンの北部の代官代理であることを告げ、領主様に報告があるため訪問した旨を告げる。一瞬怪訝な顔をされたけど、そこは領主様の方から報告の要請があったように匂わせて、上の階に案内されることに成功した。
で、問題はここからで、代官代理であることを告げても、領主様に大切な報告があるといっても“お待ちください”の一点張り。おそらく隣の部屋にいるであろう領主様には何も告げず、「お待ちください」とのたまわった秘書?と思われる赤毛の美人は自分の机で爪の手入れに余念がない様子。かれこれ1時間近くはたっただろうか・・。黙って案内されたソファに座り、開かない隣のドアと赤毛美人を見比べてはムムム・・・と考える。もはや不信感しかない・・・(ホントに領主様って有能なの?この赤毛美人よりはまだ家の飼い猫のルーシーの方が役に立つのでは?なんといってもいるだけで癒されるし、こちらの話もミャァー、と合いの手を入れながら聞いてくれるし・・・。ただ座って髪と爪の手入れをするだけの秘書なんていらないでしょ。)っと考えていると、突然隣のドアが開いて、中から上品な身なりの壮年男性と赤毛とは違ういかにも優秀そうな男性秘書?らしき2人が連れ立って出てくる。「ありがとうございました、良いお返事をお待ちしております。」チラリとこちらを見たもののすぐに壮年男性に向きなおおり、印象の良い笑顔をしながら男性秘書が出口の方へ壮年男性を案内する。赤毛も慌ててお見送りに参加しようと立ち上がり、後ろに続いた。
三人が出ていったのを確認して、壮年男性と男性秘書?が出てきた扉に近づいてコンコン、とノックして返事は待たないで素早く中に入ってドアを閉めた。
一瞬ビックリしたような顔をして、それから面白そうに、というかちょっと皮肉めいた感じで唇の端を上にあげて、中の中央の机の前に座っていた見たこともないような素敵な顔(カンバセ)の男性が口を開いた。「君は新しい秘書かな?」
顔がいい!とはこういう人のことをいうんだろうと思う。目、鼻の造形はもちろん、バランスが良い、神様いい仕事してますね~という感じだ。うちの父もそれなりのナイスミドルではあったし、弟も未だ若いながらもそこそこ良い男の部類には入ると思うのだけれど、この目の前の方は次元が違う、もはや王子様レベル?(いや、本物の王子様は見たことないけれども)年は20代?30代じゃないよね・・・?
「違うのかな?」と、もう一声かけられて我に返った。
「あ、違います。カナン北部の代官代理をしております、ルビアーナ・シマエーガと申します。」
「北部?・・なるほど、シマエーガの代官家は姓は領地名だったね。それでカナン領主である私に用があるんだよね、商会の会頭としての私ではなく、約束はしてあったかな?」
「申し訳ありません、約束は致しておりません、ですが、シマエーガの川の氾濫での被害に関することで何度もご連絡を差し上げたのですが、一向にお返事を頂けないもので、参上させて頂きました」
川の氾濫の被害と聞いて少し眉間にしわが寄った気がしたけどほんの一瞬で、机の向こうからこちらに出てきて、近くのソファに座るようにとてもスマートに案内された。
「被害はどの程度なのかな?人害は出ているの?川のどのあたりが決壊したんだろうか」
「人害は今のところは出ていません、3年前の堤防の決壊を教訓にして、被害が想定される区域の住民には早めに避難勧告を出しましたので。ただ今年は梅雨入りが早いと予想されていますし、堤防造成が間に合っていない氾濫予想地域があるんです。」
「三年前というと、君の御父上が亡くなられた時だね、災害の対応中の事故であったとか」
「そうです、問題なのはその時に堤防造成ができていないところです。冬場でも港が凍らなくなったことで増えてきた港経由での外国人の居留地域がそこにあって・・・」
「ちょっと待って!!冬場でも港が凍らない?初めて聞いたよ?!シマエーガの港は冬は使えない凍港だったはずだよね?凍らないって何時からなの?」
そこなんだ、気になるとこ・・・。でもそれならこの話には食いついてくるはず!「確か2年前からです。最初はたまたまシマエーガの港が凍港だと知らなかった外国船がラッキーなことに着岸できたと思ったと皆考えたのですけど、間を置かずに続けて船が入港できていることで、不凍港になったのではないかと思うようになって」
「三年前の大きな川の氾濫による堤防の決壊と地形の変形がもとで何かが変わったということか・・・?」あごの下に握った手を当ててちょっと考え込むようにした後、にっこりと笑ってこちらを向いた。「君、何度も連絡をくれたって言っていたけど、ひょっとして君の名前で手紙をくれていたってことかな?」
「そうです、もちろんシマエーガの代官代理であることが判るように公的な封書は使用しましたけど、差出し名は私でした。」
ちょうどその時、壮年紳士の見送りから帰ってきた男性秘書?が私を見つけて目を三角にしながら近づいて来ようとしたけど、領主様が手を挙げて制止して、“必要ない”というように首を横に振った。
「アンドリュー、お茶の用意をしてくれ、それから、レディ・サンデールにはもうお帰りいただいて、明日からは出社に及ばずと伝えてもらっていいかな、領主宛の公的な手紙を私情で止めていたからね。こちらはシマエーガの代官代理でルビアーナ嬢だ。シマエーガの災害に関することで私宛に何度も手紙を公的封書で出してくれていたそうなんだけどね」
アンドリューと呼ばれた男性秘書?はちょっと目を見開くような仕草をした後、全てを理解したように不機嫌そうにうなずいた後入ってきたドアから出ていった。ドアの外で多分赤毛美人と何らかのやり取りをしているんだろう、女性の怒るような声がしばらく続いたあと、アンドリューさん?はお茶の用意をして戻ってきた。
私にも紅茶を勧めてくれながら、領主様は優雅にカップをもってお茶を味わっていた。
「あの・・・レディ?なんですよね、お一人でお帰りいただいても大丈夫なんでしょうか?」
爵位もちのお嬢様にぞんざいな扱いをして大丈夫なんだろうか・・・心配になったので尋ねると、何でもないように領主様は答える。
「かまわないよ、向こうが勝手にきて役にも立たない秘書役をしていたんだからね、あぁ、たまに下手なお茶出しで男性の来客者の目を少しは楽しませていたのかな」にこやかに言いながらも物凄い皮肉な気がする・・・。
確かに、お嬢様にしてはスカート丈も短かったし胸元も随分開いていたような・・・
顔が少し赤くなってしまったかも・・・おかしそうにこちらを見ている領主様を無視して私もゆっくりと紅茶を口に含んだ。
と・・・!!「あ!これ、スプリング・ロイヤルブレンドですね?!久しぶりに飲みました!やっぱり美味しい。」思わず笑顔になってしまう。
「紅茶に詳しいの?よくわかったね」領主様も嬉しそうに尋ねてくる。
「いえ、これだけです、ちゃんとわかるのは。母が大好きでしたので、王都にいたときはよく飲みましたし、シマエーガに戻ってからも取り寄せて飲んでいました。」本当に久しぶりに飲んだ、値段が高いので中々手が出なくなってしまったのと、何よりこの紅茶が大好きだった母はもういない、父も母も元気で、年の半分を王都で暮らしていたころの懐かしい味だ。
「母君はお元気なのかな?」
「いえ・・・昨年の秋に病で・・・。すいません、丁度葬儀と領主様の代替わりのお祝いの式典が同時期だったので、式には伺えなかったんです」そう、父が亡くなり、翌年には母も亡くなって、未成年の弟と二人、本当に大変だったのだ。
「そうだったんだね、失礼した。式典に参加しなかったのではなく、できなかったということだったんだ、いや、そういう事情だったとは・・・私の方こそ失礼したね、お悔やみの連絡もしなかった。」
「いいんです。」にっこりして続ける。「前年の父に続いての葬儀でしたので、身内だけでひっそりと済ませましたし。」
「ところで・・・」領主様はこちらをみて続ける「堤防の補強や修繕は基本その土地の代官の仕事だけど、君が私のところに来たのは、新たに堤防を造成したいので、領主にも援助をしてほしいということでいいのかな?」
きたぞ~!!ここが資金を出してもらえるかの正念場よね!ちょっと息を整えて話し出す。「そうです。というのも、不凍港になったことで、冬でも外国船が次々とやってきて、港周辺はちょっとした外国人居留地となっています。シマエーガでは、今そこが一番発展して、にぎわっている場所なんですが、そこは三年前の補強場所からは外れていて、しっかりとした防波堤がないんです。」
「三年前までは冬は凍る港だったから、人も少ないし、船もなかったからだね、なるほど・・・カナンの地で港はシマエーガだけ、しかも不凍港となれば大切にしなければならないね」
さすが有能といわれる領主様!これで上手く堤防造成の資金援助をしてもらえると心の中でガッツポーズをしようとしたとき、領主様はおもむろに立ち上がって窓の方に行き、こちらを向いてニッコリとした。
「外国人居留地に堤防を造設することは私も賛成だよ、本当に不凍港ならそこを中心に貿易が回り、シマエーガは発展していくだろう」
うんうん、そうだよね、わかってらっしゃる。
「でもね・・・」???何か?
「港が今後も不凍であるとは限らないし、領の税収だけで堤防造成の資金を賄うことは難しいだろう。他にもしなければならないこともあるしね」
う!・・・・まぁ・・・そうなのかな・・・。
「資金が足りない分、私が自分のお金を出す価値はなんなんだろうね?」
「えーと・・・領主様の商会の支店をシマエーガに出して、輸出入に関する権利を・・・」
「港が今後も不凍港であるという保証は?ないよね?」ムムム・・・もう少しというところで・・・。
「ところで・・・君、結婚はしていないよね?婚約者はいるのかな?」
は?なんでこのタイミングで私の話?
「おりませんけど・・・それが何か?」ちょっと不審気に答えてしまった。
「君、年はいくつ?」
「?20ですけど・・・?」すいませんね・・・やや行き遅れの部類で!
「そう、私は29だよ、丁度いいね」何が?領主様20代だったんだ。まぁどうでもいいけど・・。
「君、私と結婚しない?」・・・・・・はぁ????
「ルビアーナ嬢、私と結婚してほしい」
州都に出て、緊張しながらもまずは領主館を訪ねた。領主様って領主館にいるものだと思っていたから。でも領主館にはいなくて、商会の方にいらっしゃいます、と言われたからまさか王都?!って慌てたけど、領主館は郊外で、商会は州都の街中なのだった。
先ずは商会の入り口でカナンの北部の代官代理であることを告げ、領主様に報告があるため訪問した旨を告げる。一瞬怪訝な顔をされたけど、そこは領主様の方から報告の要請があったように匂わせて、上の階に案内されることに成功した。
で、問題はここからで、代官代理であることを告げても、領主様に大切な報告があるといっても“お待ちください”の一点張り。おそらく隣の部屋にいるであろう領主様には何も告げず、「お待ちください」とのたまわった秘書?と思われる赤毛の美人は自分の机で爪の手入れに余念がない様子。かれこれ1時間近くはたっただろうか・・。黙って案内されたソファに座り、開かない隣のドアと赤毛美人を見比べてはムムム・・・と考える。もはや不信感しかない・・・(ホントに領主様って有能なの?この赤毛美人よりはまだ家の飼い猫のルーシーの方が役に立つのでは?なんといってもいるだけで癒されるし、こちらの話もミャァー、と合いの手を入れながら聞いてくれるし・・・。ただ座って髪と爪の手入れをするだけの秘書なんていらないでしょ。)っと考えていると、突然隣のドアが開いて、中から上品な身なりの壮年男性と赤毛とは違ういかにも優秀そうな男性秘書?らしき2人が連れ立って出てくる。「ありがとうございました、良いお返事をお待ちしております。」チラリとこちらを見たもののすぐに壮年男性に向きなおおり、印象の良い笑顔をしながら男性秘書が出口の方へ壮年男性を案内する。赤毛も慌ててお見送りに参加しようと立ち上がり、後ろに続いた。
三人が出ていったのを確認して、壮年男性と男性秘書?が出てきた扉に近づいてコンコン、とノックして返事は待たないで素早く中に入ってドアを閉めた。
一瞬ビックリしたような顔をして、それから面白そうに、というかちょっと皮肉めいた感じで唇の端を上にあげて、中の中央の机の前に座っていた見たこともないような素敵な顔(カンバセ)の男性が口を開いた。「君は新しい秘書かな?」
顔がいい!とはこういう人のことをいうんだろうと思う。目、鼻の造形はもちろん、バランスが良い、神様いい仕事してますね~という感じだ。うちの父もそれなりのナイスミドルではあったし、弟も未だ若いながらもそこそこ良い男の部類には入ると思うのだけれど、この目の前の方は次元が違う、もはや王子様レベル?(いや、本物の王子様は見たことないけれども)年は20代?30代じゃないよね・・・?
「違うのかな?」と、もう一声かけられて我に返った。
「あ、違います。カナン北部の代官代理をしております、ルビアーナ・シマエーガと申します。」
「北部?・・なるほど、シマエーガの代官家は姓は領地名だったね。それでカナン領主である私に用があるんだよね、商会の会頭としての私ではなく、約束はしてあったかな?」
「申し訳ありません、約束は致しておりません、ですが、シマエーガの川の氾濫での被害に関することで何度もご連絡を差し上げたのですが、一向にお返事を頂けないもので、参上させて頂きました」
川の氾濫の被害と聞いて少し眉間にしわが寄った気がしたけどほんの一瞬で、机の向こうからこちらに出てきて、近くのソファに座るようにとてもスマートに案内された。
「被害はどの程度なのかな?人害は出ているの?川のどのあたりが決壊したんだろうか」
「人害は今のところは出ていません、3年前の堤防の決壊を教訓にして、被害が想定される区域の住民には早めに避難勧告を出しましたので。ただ今年は梅雨入りが早いと予想されていますし、堤防造成が間に合っていない氾濫予想地域があるんです。」
「三年前というと、君の御父上が亡くなられた時だね、災害の対応中の事故であったとか」
「そうです、問題なのはその時に堤防造成ができていないところです。冬場でも港が凍らなくなったことで増えてきた港経由での外国人の居留地域がそこにあって・・・」
「ちょっと待って!!冬場でも港が凍らない?初めて聞いたよ?!シマエーガの港は冬は使えない凍港だったはずだよね?凍らないって何時からなの?」
そこなんだ、気になるとこ・・・。でもそれならこの話には食いついてくるはず!「確か2年前からです。最初はたまたまシマエーガの港が凍港だと知らなかった外国船がラッキーなことに着岸できたと思ったと皆考えたのですけど、間を置かずに続けて船が入港できていることで、不凍港になったのではないかと思うようになって」
「三年前の大きな川の氾濫による堤防の決壊と地形の変形がもとで何かが変わったということか・・・?」あごの下に握った手を当ててちょっと考え込むようにした後、にっこりと笑ってこちらを向いた。「君、何度も連絡をくれたって言っていたけど、ひょっとして君の名前で手紙をくれていたってことかな?」
「そうです、もちろんシマエーガの代官代理であることが判るように公的な封書は使用しましたけど、差出し名は私でした。」
ちょうどその時、壮年紳士の見送りから帰ってきた男性秘書?が私を見つけて目を三角にしながら近づいて来ようとしたけど、領主様が手を挙げて制止して、“必要ない”というように首を横に振った。
「アンドリュー、お茶の用意をしてくれ、それから、レディ・サンデールにはもうお帰りいただいて、明日からは出社に及ばずと伝えてもらっていいかな、領主宛の公的な手紙を私情で止めていたからね。こちらはシマエーガの代官代理でルビアーナ嬢だ。シマエーガの災害に関することで私宛に何度も手紙を公的封書で出してくれていたそうなんだけどね」
アンドリューと呼ばれた男性秘書?はちょっと目を見開くような仕草をした後、全てを理解したように不機嫌そうにうなずいた後入ってきたドアから出ていった。ドアの外で多分赤毛美人と何らかのやり取りをしているんだろう、女性の怒るような声がしばらく続いたあと、アンドリューさん?はお茶の用意をして戻ってきた。
私にも紅茶を勧めてくれながら、領主様は優雅にカップをもってお茶を味わっていた。
「あの・・・レディ?なんですよね、お一人でお帰りいただいても大丈夫なんでしょうか?」
爵位もちのお嬢様にぞんざいな扱いをして大丈夫なんだろうか・・・心配になったので尋ねると、何でもないように領主様は答える。
「かまわないよ、向こうが勝手にきて役にも立たない秘書役をしていたんだからね、あぁ、たまに下手なお茶出しで男性の来客者の目を少しは楽しませていたのかな」にこやかに言いながらも物凄い皮肉な気がする・・・。
確かに、お嬢様にしてはスカート丈も短かったし胸元も随分開いていたような・・・
顔が少し赤くなってしまったかも・・・おかしそうにこちらを見ている領主様を無視して私もゆっくりと紅茶を口に含んだ。
と・・・!!「あ!これ、スプリング・ロイヤルブレンドですね?!久しぶりに飲みました!やっぱり美味しい。」思わず笑顔になってしまう。
「紅茶に詳しいの?よくわかったね」領主様も嬉しそうに尋ねてくる。
「いえ、これだけです、ちゃんとわかるのは。母が大好きでしたので、王都にいたときはよく飲みましたし、シマエーガに戻ってからも取り寄せて飲んでいました。」本当に久しぶりに飲んだ、値段が高いので中々手が出なくなってしまったのと、何よりこの紅茶が大好きだった母はもういない、父も母も元気で、年の半分を王都で暮らしていたころの懐かしい味だ。
「母君はお元気なのかな?」
「いえ・・・昨年の秋に病で・・・。すいません、丁度葬儀と領主様の代替わりのお祝いの式典が同時期だったので、式には伺えなかったんです」そう、父が亡くなり、翌年には母も亡くなって、未成年の弟と二人、本当に大変だったのだ。
「そうだったんだね、失礼した。式典に参加しなかったのではなく、できなかったということだったんだ、いや、そういう事情だったとは・・・私の方こそ失礼したね、お悔やみの連絡もしなかった。」
「いいんです。」にっこりして続ける。「前年の父に続いての葬儀でしたので、身内だけでひっそりと済ませましたし。」
「ところで・・・」領主様はこちらをみて続ける「堤防の補強や修繕は基本その土地の代官の仕事だけど、君が私のところに来たのは、新たに堤防を造成したいので、領主にも援助をしてほしいということでいいのかな?」
きたぞ~!!ここが資金を出してもらえるかの正念場よね!ちょっと息を整えて話し出す。「そうです。というのも、不凍港になったことで、冬でも外国船が次々とやってきて、港周辺はちょっとした外国人居留地となっています。シマエーガでは、今そこが一番発展して、にぎわっている場所なんですが、そこは三年前の補強場所からは外れていて、しっかりとした防波堤がないんです。」
「三年前までは冬は凍る港だったから、人も少ないし、船もなかったからだね、なるほど・・・カナンの地で港はシマエーガだけ、しかも不凍港となれば大切にしなければならないね」
さすが有能といわれる領主様!これで上手く堤防造成の資金援助をしてもらえると心の中でガッツポーズをしようとしたとき、領主様はおもむろに立ち上がって窓の方に行き、こちらを向いてニッコリとした。
「外国人居留地に堤防を造設することは私も賛成だよ、本当に不凍港ならそこを中心に貿易が回り、シマエーガは発展していくだろう」
うんうん、そうだよね、わかってらっしゃる。
「でもね・・・」???何か?
「港が今後も不凍であるとは限らないし、領の税収だけで堤防造成の資金を賄うことは難しいだろう。他にもしなければならないこともあるしね」
う!・・・・まぁ・・・そうなのかな・・・。
「資金が足りない分、私が自分のお金を出す価値はなんなんだろうね?」
「えーと・・・領主様の商会の支店をシマエーガに出して、輸出入に関する権利を・・・」
「港が今後も不凍港であるという保証は?ないよね?」ムムム・・・もう少しというところで・・・。
「ところで・・・君、結婚はしていないよね?婚約者はいるのかな?」
は?なんでこのタイミングで私の話?
「おりませんけど・・・それが何か?」ちょっと不審気に答えてしまった。
「君、年はいくつ?」
「?20ですけど・・・?」すいませんね・・・やや行き遅れの部類で!
「そう、私は29だよ、丁度いいね」何が?領主様20代だったんだ。まぁどうでもいいけど・・。
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