ルビアーナの恋

素亭子

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翌日領主様一行は午前中の早い時間にシマエーガに来られた。馬車だと半日はかかるけど、騎馬だったから時間短縮できたらしい。
(客室の掃除が何とか間に合って良かったよ・・)
リュウとロンは平民だが、我が家(代官屋敷)の傍に住んでいて、年下だが小さな頃からの友人であり、血のつながらない弟のようなものだ。その二人に三年前の堤防の補強場所や今回の川の決壊場所について、領主様一行を案内して、説明してもらう。その後でハンスには外国人居留地について説明してもらうのに、港の方への領主様御一行を案内してもらった。
港で話している領主様とハンスを少し離れたところで眺めていると、リュウとロンが声をかけてきた。「領主様って思ったより若くてビックリしたよ、でも聞いてくる質問が厳しくてさぁ・・・俺たち上手く答えられないところもあったんだよね、だいじょうぶかなぁ?」前では領主様とハンスがなにやら白熱した議論をしている・・・。
「大丈夫かはわからないけど、その時々でやれることは精一杯やってきたんだし、そのままをいうしかないでしょ?」そんな風に答えていると
「ルビアーナ!!」突然こちらを振り向いた領主様に名前を呼ばれた。突然のファーストネーム呼びに領主様の傍にいるハンスが驚いた顔をしているのがわかる。私の傍にいるロンとリュウも固まっている気がした。
「はい!・・・」なんとなく顔が赤くなってしまっているのを感じながら、ててて・・・・と防波堤近くにいる二人に近づいた。
「君の意見も聞かせてほしい」領主様は私の方に近づいて背中に手を添えて、上から顔を覗き込むようにしてにっこりと微笑みながら言う。
ハンスの視線が痛い・・。(いつのまにそんなに親しくなったんですか?)と問われているような・・。
領主様は私の肩に手を添えたままハンスの方を向いて「ありがとう、君の説明は大変分かりやすかったよ。後はルビアーナと話をしたいから、少し向こうで待っていてもらえるかな」と有無を言わさぬ感じで告げる。
私は領主様に肩を抱かれるようにして二人で防波堤の傍を歩いた。
この距離なら親しげに見えていても話の内容は聞かれないだろう、という所まで二人で歩いてから、領主様は私の目を見て聞く。
「私の妻になってくれる気持ちは決まったかな?」
「はい・・私の希望を叶えてくださるなら」
「ありがとう、午後に地質と海洋分析の研究に携わっているものが馬車で来る、詳しいことは彼らの調査結果を聞いてからになるけど、シマエーガに堤防を造設したいという君の希望は叶えてあげられると思うよ。」領主様はそれから私の両肩に手をかけて、じっと見つめながら話を続けた。「なるべく早く式をあげよう、君には州都の私の屋敷に一緒に住んでもらうことになるから、君の代わりに代官の代理としてシマエーガの弟君の補佐ができる優秀なものをこちらに派遣しよう。」
私はちょっと考えてから答えた「たぶん・・・ハンスがいるので、それは大丈夫だと思います。」
「ハンスというのはさっき説明をしてくれた彼のこと?」リュウとロンのところまで戻って、二人と一緒にいるハンスの方を振り返って見ながら領主様が聞いてくる。「君のところの家令だっけ?たしかに優秀そうだけどね」ちょっと不機嫌そうなのは気のせい?
「そうです、でも私と弟にとっては兄に近いような存在なので」
「そうか・・・。それなら私は州都に戻り次第シマエーガの代官宛に君に正式に婚姻を申し込むという手紙を出すよ、まぁ、結局見るのは君なんだからなんで今更と思うかもしれないけど、形というのは大切だからね」
「はい、わかりました。あの・・・領主様?」
「違うよ、ルビアーナ」(???)
「私のことはリンデルと呼んでほしい、もうすぐ夫になるんだからね」
アワワ・・・(やだなぁもう・・・絶対また顔が赤くなっちゃってるよ)
「わかりました・・・。リンデル様」
こうして私たち二人の結婚は決定となった。


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