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街路樹の木が少しずつ葉を落として寂しくなって、遠くの空が良く見えるようになった頃、テンバーの町に初雪が降った。その日、町の象徴である大きな湖で、観光船が小型のボートに衝突するという普通は考えられない事故が起きた。
悪いことは重なるもので、街中で馬車同士の事故で巻き込まれた人も含めて大勢が怪我をするという事件も発生し、入院施設のある病院だけでは対応が間に合わず、私たちの診療所も朝から湖へ応援に駆け付けたり、怪我人の対応に追われていた。
通常の来院患者さんの診療も合間に行いつつ、最後の患者さんの診察を終えたのは、日付も変わろうかという時間だった。
「疲れた・・・・」診療用のベッドに腰を下ろして立ち上がる気力もなく、下を向いて私は呟いた。
「お疲れさん」いつの間にか私の分のお茶まで入れてくれたベンが傍に来て、カップを渡してくれた。ベンは少し距離をおいて、同じ診療用ベッドに腰かける。
「今日はホントに大変だったな、こんなの、この診療所を始めて以来ないことだよ」
「そうでしょうね・・・・まぁ、亡くなった人がいないことが幸いだったけど」
「はぁーーーーー」どちらともなくながーい溜息が出て、お互い笑ったしまった。
「送るよ、お互い早く帰って寝ないとな、明日が休みで良かった。」
「ありがとう、ほんとね。」
夜の街を二人並んで歩く。昼間の騒ぎがなかったように、町は静かだった。アパートの傍まで来たのでベンの方を見る。「送ってくれてありがとう、もう遅いからお茶には誘わないけどごめんなさい、又月曜日ね」ドアの方に足を踏み出そうと向きを変えた時、ふいに腕を引かれて抱きしめられた。
「ルビアーナ、俺と似てる人のこと、未だ忘れられない?」腕の中で抱きしめたままベンは続ける。「俺は、もう君を通して彼女を見てるわけじゃない、ルビアーナのことが・・・」
「ベン!!」腕を突っ張って腕の中から抜けて距離を取る。「それ以上は聞けない、聞いたら、答えなくちゃならなくなるでしょ」
ベンはビックリしたような顔をした後、ちょっと切なそうに表情を変えて微笑んだ。
「そうだな、いきなりで自分勝手だった。・・・・又月曜日な・・・」
ベンはちょっと手を挙げてあいさつした後、振り返らずに帰っていった。
月曜日、ベンと二人、なんとなくギクシャクしながら診療に当たっていると、私に来客が来ていると受付の人から告げられた。
診察室を出て待合室に出ると、椅子に座っていた人が立ち上がるのがわかった。
きっちりとスーツを着こなして、相変わらず素敵だけれど、少し痩せた気がする。
「リンデル・・・」思ったより落ち着いたまま、私はその名前を口にすることができていた。
悪いことは重なるもので、街中で馬車同士の事故で巻き込まれた人も含めて大勢が怪我をするという事件も発生し、入院施設のある病院だけでは対応が間に合わず、私たちの診療所も朝から湖へ応援に駆け付けたり、怪我人の対応に追われていた。
通常の来院患者さんの診療も合間に行いつつ、最後の患者さんの診察を終えたのは、日付も変わろうかという時間だった。
「疲れた・・・・」診療用のベッドに腰を下ろして立ち上がる気力もなく、下を向いて私は呟いた。
「お疲れさん」いつの間にか私の分のお茶まで入れてくれたベンが傍に来て、カップを渡してくれた。ベンは少し距離をおいて、同じ診療用ベッドに腰かける。
「今日はホントに大変だったな、こんなの、この診療所を始めて以来ないことだよ」
「そうでしょうね・・・・まぁ、亡くなった人がいないことが幸いだったけど」
「はぁーーーーー」どちらともなくながーい溜息が出て、お互い笑ったしまった。
「送るよ、お互い早く帰って寝ないとな、明日が休みで良かった。」
「ありがとう、ほんとね。」
夜の街を二人並んで歩く。昼間の騒ぎがなかったように、町は静かだった。アパートの傍まで来たのでベンの方を見る。「送ってくれてありがとう、もう遅いからお茶には誘わないけどごめんなさい、又月曜日ね」ドアの方に足を踏み出そうと向きを変えた時、ふいに腕を引かれて抱きしめられた。
「ルビアーナ、俺と似てる人のこと、未だ忘れられない?」腕の中で抱きしめたままベンは続ける。「俺は、もう君を通して彼女を見てるわけじゃない、ルビアーナのことが・・・」
「ベン!!」腕を突っ張って腕の中から抜けて距離を取る。「それ以上は聞けない、聞いたら、答えなくちゃならなくなるでしょ」
ベンはビックリしたような顔をした後、ちょっと切なそうに表情を変えて微笑んだ。
「そうだな、いきなりで自分勝手だった。・・・・又月曜日な・・・」
ベンはちょっと手を挙げてあいさつした後、振り返らずに帰っていった。
月曜日、ベンと二人、なんとなくギクシャクしながら診療に当たっていると、私に来客が来ていると受付の人から告げられた。
診察室を出て待合室に出ると、椅子に座っていた人が立ち上がるのがわかった。
きっちりとスーツを着こなして、相変わらず素敵だけれど、少し痩せた気がする。
「リンデル・・・」思ったより落ち着いたまま、私はその名前を口にすることができていた。
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