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第2章 王子と私
第17話 お勉強ダルイでしゅ
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日々は穏やかに過ぎていく。
姫としての環境にも慣れてきたし、父公認で城内も自由に歩き回れるようになった。
おかげで、調理室にも大手を振って通う事もできたし、以前より、より快適な生活環境にはなってきた。
隠れて抜け穴を使う楽しみはなくなったけれど、まあ、あの抜け穴の先は、アールの寝床にも通じているらしいし、むしろコンクリートで封印してやりたい。
朝から、侍女達に可愛い、こっちよーと、ピンクだ水色だ黄色だと、フワフワとレースモリモリのドレスを何度も着せ替えさせられて、顔は笑っても疲労困憊だ。
今日は白地に薄い青のレースが重なったフワフワドレスに、頭もお揃いのリボンでポニーテールでくくられている。
そろそろ私の少しクセのある金髪も伸びてきたので、切って欲しいと頼んでみたら、とんでもないと泣かれてしまった。
「きっと孤児院では、貧しさのあまりに髪を売っていたに違いないわ」
「なんて不憫な! もう宜しいのですよアリアナ様」
「ええ、ええ、私たちが守ってあげます。だから、この綺麗な髪は伸ばしましょうね」
解せぬ。だが泣かれて面倒なんで、泣かないでと適当に声を掛けたら、より感動して号泣された。
私の罪深い可愛さは、侍女達だけでなく、教師たちにも発揮された。
午前の授業で、私専用の学習部屋が用意されている。
王家ともなると、やはり沢山の学びから逃れられないらしい。めんどくせ。
「素晴らしいです! アリアナ様の答えは満点ですよ」
「嬉しいでしゅ」
数字を象った積み木を重ねて、答えを出すテストだ。
幸いにも、数式は前世と同じで助かった。
脳内年齢が八十歳の女が、小学生低学年の算数を教わる図はシュールであった。
ただし、この世界ではまだ三歳。正確には、来週には四歳になる孤児院育ちの私が、この計算を解ける事すら天才レベルだと周囲を驚かせている。
いや掛け算もできるんですけど、でないと割引率とかスーパーで得できないじゃない。
半額だとしても、容量で割ると割高だったりするんだから、計算は主婦にとっては必須スキルなんだよ。
夫のお人よしが災いして、私たちは多額の借金を背負った。
幼い息子たちが三人もいて、私は働くこともできずに、できる事は節約のみ。
まあ、もともと貧乏底辺育ちなので、サバイバルは得意だったし性格にも合っていた。
いつかは返せるはずなんだからと、意外と私はケチケチ生活を楽しんではいたのだ。
年ごろの息子たちは、時には反発したりもしたけれど、なんとか借金を返せたのは下の息子が社会人になった頃だった。
ずっと私に引け目を感じて、謝罪ばかりする夫のその態度が嫌いだった。
「まゆまゆに苦労ばかりさせてごめん」
その言葉を聞くたびに、私は彼を怒鳴りつけた。
「この程度で、私があなたを嫌いになると思ってるの?」
やっと、二人でささやかに暮らしていける、そう思った矢先に、長男の子である初孫のハヤトに難病が見つかった。
ハヤトの心臓病を治すのは、多額の資金が必要だった。
「お金で救える命で良かったじゃない」
私は笑って夫と共に、ハヤトの治療費に協力した。
病室にいくたびに、ハヤトが無料で読めるラノベとやらを教えてくれた。
「ばあちゃん、タダでいっぱい読めるんだ。どんな世界も、どんな話でも読んだり書いたりできるんだよ」
「へー、ところでハヤトはどんなの読むんだい?」
「最近流行してるさ、異世界転生ってのがあってさ」
「へーそうかい」
無料だし、孫のためにと読み始めたら、年甲斐もなくハマってしまった。
まあ、年取って時間だけはあったものだし、短いパートが終わって家事も済ませて一息つくと、次男から貰ったお古のスマホで読み漁った。
おかげで、孫との会話は尽きなかった。
うちの花壇の花をむしった小学生がいた。
どう怒鳴ってやろうかと、ふとランドセルを見ると、ハヤトの言っていたラノベのキャラクターキーホルダーがつけられていた。
「おや、ランドルフが好きなのかい?」
「おばあちゃん、『異世界いったら暇だった』を知ってるの?」
「あんた小学生なのに、ラノベを読むのかい?」
「アニメで見たんだよ!」
このガキは何度か我が家の花壇に座り込んで、私を待ち伏せするようになった。
ちなみに花をもいだ三回目で、きっちり怒鳴ってやったら来なくなったが。
最後に我が家の玄関に、ランドルフのキーホルダーを置いていった。
だから、返してやらなくてはいけない。
私は、ランドルフより敵役の男前がいいんだよ。
男ってのは、本当にいくつだろうと乙女心がわかんないものさ。
姫としての環境にも慣れてきたし、父公認で城内も自由に歩き回れるようになった。
おかげで、調理室にも大手を振って通う事もできたし、以前より、より快適な生活環境にはなってきた。
隠れて抜け穴を使う楽しみはなくなったけれど、まあ、あの抜け穴の先は、アールの寝床にも通じているらしいし、むしろコンクリートで封印してやりたい。
朝から、侍女達に可愛い、こっちよーと、ピンクだ水色だ黄色だと、フワフワとレースモリモリのドレスを何度も着せ替えさせられて、顔は笑っても疲労困憊だ。
今日は白地に薄い青のレースが重なったフワフワドレスに、頭もお揃いのリボンでポニーテールでくくられている。
そろそろ私の少しクセのある金髪も伸びてきたので、切って欲しいと頼んでみたら、とんでもないと泣かれてしまった。
「きっと孤児院では、貧しさのあまりに髪を売っていたに違いないわ」
「なんて不憫な! もう宜しいのですよアリアナ様」
「ええ、ええ、私たちが守ってあげます。だから、この綺麗な髪は伸ばしましょうね」
解せぬ。だが泣かれて面倒なんで、泣かないでと適当に声を掛けたら、より感動して号泣された。
私の罪深い可愛さは、侍女達だけでなく、教師たちにも発揮された。
午前の授業で、私専用の学習部屋が用意されている。
王家ともなると、やはり沢山の学びから逃れられないらしい。めんどくせ。
「素晴らしいです! アリアナ様の答えは満点ですよ」
「嬉しいでしゅ」
数字を象った積み木を重ねて、答えを出すテストだ。
幸いにも、数式は前世と同じで助かった。
脳内年齢が八十歳の女が、小学生低学年の算数を教わる図はシュールであった。
ただし、この世界ではまだ三歳。正確には、来週には四歳になる孤児院育ちの私が、この計算を解ける事すら天才レベルだと周囲を驚かせている。
いや掛け算もできるんですけど、でないと割引率とかスーパーで得できないじゃない。
半額だとしても、容量で割ると割高だったりするんだから、計算は主婦にとっては必須スキルなんだよ。
夫のお人よしが災いして、私たちは多額の借金を背負った。
幼い息子たちが三人もいて、私は働くこともできずに、できる事は節約のみ。
まあ、もともと貧乏底辺育ちなので、サバイバルは得意だったし性格にも合っていた。
いつかは返せるはずなんだからと、意外と私はケチケチ生活を楽しんではいたのだ。
年ごろの息子たちは、時には反発したりもしたけれど、なんとか借金を返せたのは下の息子が社会人になった頃だった。
ずっと私に引け目を感じて、謝罪ばかりする夫のその態度が嫌いだった。
「まゆまゆに苦労ばかりさせてごめん」
その言葉を聞くたびに、私は彼を怒鳴りつけた。
「この程度で、私があなたを嫌いになると思ってるの?」
やっと、二人でささやかに暮らしていける、そう思った矢先に、長男の子である初孫のハヤトに難病が見つかった。
ハヤトの心臓病を治すのは、多額の資金が必要だった。
「お金で救える命で良かったじゃない」
私は笑って夫と共に、ハヤトの治療費に協力した。
病室にいくたびに、ハヤトが無料で読めるラノベとやらを教えてくれた。
「ばあちゃん、タダでいっぱい読めるんだ。どんな世界も、どんな話でも読んだり書いたりできるんだよ」
「へー、ところでハヤトはどんなの読むんだい?」
「最近流行してるさ、異世界転生ってのがあってさ」
「へーそうかい」
無料だし、孫のためにと読み始めたら、年甲斐もなくハマってしまった。
まあ、年取って時間だけはあったものだし、短いパートが終わって家事も済ませて一息つくと、次男から貰ったお古のスマホで読み漁った。
おかげで、孫との会話は尽きなかった。
うちの花壇の花をむしった小学生がいた。
どう怒鳴ってやろうかと、ふとランドセルを見ると、ハヤトの言っていたラノベのキャラクターキーホルダーがつけられていた。
「おや、ランドルフが好きなのかい?」
「おばあちゃん、『異世界いったら暇だった』を知ってるの?」
「あんた小学生なのに、ラノベを読むのかい?」
「アニメで見たんだよ!」
このガキは何度か我が家の花壇に座り込んで、私を待ち伏せするようになった。
ちなみに花をもいだ三回目で、きっちり怒鳴ってやったら来なくなったが。
最後に我が家の玄関に、ランドルフのキーホルダーを置いていった。
だから、返してやらなくてはいけない。
私は、ランドルフより敵役の男前がいいんだよ。
男ってのは、本当にいくつだろうと乙女心がわかんないものさ。
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